楽園 空に浮かんだ庭園には、それはそれは美しいひとが暮らしていたらしい。 長く透き通った髪を風に遊ばせて、小鳥も恥じ入るほど澄んだ声で自由気儘に歌い暮らすその日々は、大地から離れられない人間にとって天上の理想そのものだったのだとか。「けれども、ねぇ。それならなぜ、そのひとは翼を棄ててしまったの?」 私なら、ずっとそこにいたでしょうに。 窓辺から空を見上げて呟いた少女へ、語り部は淡く微笑んだ。「退屈だったからさ」
4/30/2023, 3:02:38 PM