『梅雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「梅雨」
一定のリズムを刻む雨音
木の葉からこぼれた大きな水滴の音
鮮緑の谷間を流れる白い霧
紫陽花とアイリスの華やぎ
天使のはしご、きらめく水滴、ペトリコール
雨上がりの満天の星空
※梅雨というより、雨の話になってしまいました。
雨は嫌われがちですが、日本では水が豊富なのも雨のおかげですし、好きなところを。
梅雨について
・梅雨になると、湿度を求める生き物たちが外に出てくる。そして、シャワーを浴びているかのように雨粒を浴びて、湯船に浸かるかのように水溜まりに浸かっている。
・窓に雨粒がたくさん、一日中付いている。梅雨が来た。
梅雨になると身体は何となくだるくなるが、なぜか嫌いではない。
雨の音が、癒される。梅雨は恐らく、家でゆっくりしなさいというメッセージなのかもしれない。
・世界に、梅雨のある国はどのくらいあるのか。少ないのだろうか。
雨の全く降らない国にとっては、梅雨を羨ましく思うだろうか。彼らの気持ちは分からないが、私が彼らだったら、多分梅雨を羨ましく思う…かもしれない。
・…ところで、なぜ梅雨は"梅"雨と書くのか。
今日のテーマ
《梅雨》
電車を降り、駅を出ようとしたら外はザーザー降りの雨。
梅雨の真っ最中、朝から雨も降ってたから傘は当然持ってるけど、こんな降りの強い中を歩くのは避けたい。
少し待てば小降りになるだろうか。
電車が遅れるかもしれないからと早めに出て来たからまだ少し時間の余裕はある。
このままここで様子を見るか、それともどこかで時間を潰すか。
人の通行の妨げにならないよう端に寄りつつ空を見上げていたらポンと肩を叩かれた。
「おはよう、そっちも雨宿り?」
「お、おはようございます」
声をかけてきたのは同じ部活の先輩だった。
同じ中学出身という縁もあって、こうして気さくに話しかけてくれる。
もっともそれはわたしにだけじゃない。誰に対しても同じ。男女問わず親切で優しいみんなの兄貴分みたいな人。
特に際立ったイケメンではないけど、わたし以外にも憧れてる子は多いらしい。
そっか、先輩ってこの時間の電車なんだ。
それともわたしと同じで、雨での遅延を見越して早く来ただけだろうか。
何にしても、こうして朝から会えて言葉を交わせるのは幸運以外の何ものでもない。
梅雨に入って雨の日が続くのは憂鬱でしかなかったけど、こんな恩恵があるなら雨も悪くないな、なんて調子のいいことを思ってしまう。
「しかし、朝からよく降るよなあ」
「ほんとですよねえ」
話しながら、先輩は何やらスマホを操作している。
あ、もしかして彼女か誰かと待ち合わせとか?
そういう話は聞いたことないけど、噂に疎いわたしが知らないだけという可能性も大いに有り得る。
せっかくの浮かれた気持ちが瞬時にぺしゃんと凹んだけど、横目で覗き見たスマホの画面はメッセージアプリのトーク画面じゃなくて水色や青や緑で埋め尽くされた画像のようなものだった。
「何見てるんですか?」
「天気アプリの雨雲レーダーなんだけど……これは暫く小降りになりそうにないな。しょうがない、バス使うか」
「バス?」
「あれ? 知らない? 学校のすぐ近くってわけにはいかないけど、ちょっと行ったとこにバス停あるんだよ」
「そうなんですか!? 全然知らなかった!」
驚きに目を丸くしながら、そういえば入試の時の学校案内にバスで来るルートも載ってたかもし思い出す。
入学して2ヶ月もしてそんなことも知らないのかと呆れられちゃったかな。
恐る恐る隣を見上げれば、先輩は得意げな顔で笑ってた。
ああ、そういう顔も大好きです! 朝からいいもの拝めました! 神様ありがとう!
「じゃ、せっかくだから教えてやるよ。あ、でも混むと嫌だからあんまり広めるなよ」
「はい!」
元気よく頷いたわたしに先輩はくすくす笑う。
そのまま強雨の中をバス停まで早足で移動すると、ちょうどバスが来たところだった。
降車場で人を降ろした後らしくバス自体には運転手さん以外誰も乗っていない。
バス停で待ってる人の姿もまばらだった。
今の時間帯だと住宅街を循環して通勤客を駅まで乗せてくるのがメインなのだろう。
バス停にも申し訳程度の屋根はあるけど、この降り方じゃ足元で跳ね返る雨水までは避けられないから、すぐに乗れたのはラッキーだった。
先に乗った先輩は迷わず奥まで進んで、後ろから2番目の2人掛けの席に座った。
え? これは隣に座っていい流れ?
躊躇したわたしに、狭いと思ってるとでも思われたのか、先輩が少し身を縮こまらせるようにして詰めてくれる。
「あっ、大丈夫です! お隣お邪魔します!」
「そんな畏まらなくていいのに」
またもくすくす笑われながら、こっちもできる限り身を縮めて隣に座る。
あわよくば先輩とぴったり寄り添って座れたら、なんて欲望が頭を掠めたけど、図々しくそんな真似する度胸はないし、太ってるとか思われたら凹みきって死ねる。
「そんなガチガチだと学校着くまでに疲れちゃうだろ」
「いや、ちょっと緊張してるだけなんで」
「なんで? もしかして、俺、怖い?」
「全然そんなことないです! ただちょっと畏れ多いというか烏滸がましすぎて死ねそうというか」
「え?」
「いえ! ほんと全然何でもないんで!!」
ああ、これ絶対、挙動不審な変な女だと思われたやつ!!
時間巻き戻せるなら今の会話全部なかったことにしたい。
だって仕方ないじゃん!
中学時代から憧れ続けてた人と心の準備もなく密着イベントなんか発生したらテンパりもするでしょ!?
動揺のあまり誰にともなく心の中で言い訳をしてしまう。
恥ずかしさで居たたまれず、ますます身を縮ませていると、先輩がどこか悪戯な笑顔で覗き込んできた。
「緊張してるのは、俺にセクハラされる心配とかじゃないよね?」
「は!? 逆ならともかく先輩がセクハラとかマジ有り得なくないですか!?」
「逆ならともかく?」
「あ、いえ、その、何でもないです」
シャツ越しに伝わってくる体温だとか、仄かに香る制汗剤の匂いだとか。
そういうものを意識しすぎて心臓バクバクさせてますなんて口が裂けても言えないし知られたくない。
というか、これは口にしたら絶対駄目なやつ! まさにセクハラじゃん!
のぼせたように熱くなっていく顔を手で仰ぎながら、誤魔化すように笑う。
「その、蒸し暑くて、ちょっと汗の匂いとかしちゃったらやだなーって」
「ああ、確かに。俺、匂わない? 大丈夫?」
「全然っ、いい匂いしかしないので問題ないです! ……あっ」
ああ、またやってしまった。
もう駄目だ。
先輩とこんな風に話せたのも、並んで座ってバス乗れたのも、心の底から幸運だと思うけど――たぶんわたしはそこで運を使い果たしちゃったんだろうな。
だからこんなにも墓穴を掘りまくってるんだろう。
情けなさのあまり涙目になってるわたしを余所に、先輩が笑いを堪えるように手で口元を覆いながら肩を揺らす。
その横顔を盗み見ながら、やっぱり好きだなあ、と、わたしは密かに自覚を強くする。
こんなに挙動不審な後輩に対しても、呆れたり気持ち悪がったりするでもなく、面白がってくれるなんて、どれだけ心が広いんだろう。
「嫌われてたり、気持ち悪がられたりしてないなら良かった」
「そんなの絶対絶対有り得ませんよ」
「じゃあさ――もしかして、少しは脈あるのかなって期待してもいい?」
「え?」
膝に乗せた鞄の上で頬杖をつきながら、先輩が首を傾げてわたしを見つめる。
その瞳に、何かを期待するような、甘やかな熱が灯っているように思えるのは、わたしの自惚れ?
まるで時間が止まったかのような沈黙に耐えられなくて、でも何も言えなくて。
止まっていたエンジンが掛かって、運転手さんの「発車します」というアナウンスが聞こえて、現実に引き戻される。
まるで白昼夢でも見ていたかのよう。
あまりに現実感がなくて、もしかして今のはわたしの妄想か何かかなと思っていたら。
「全然脈がないわけじゃなさそうだし、意識してもらえるように気長にいくか」
思い掛けない言葉が聞こえてきて慌てて隣を凝視する。
そこには、挑戦的ににやりと笑う先輩の顔。
そんな顔もまた素敵すぎて、ときめきのあまり頭もクラクラし始めて。
今まで大嫌いだった梅雨が、今年から、少しは好きになれるかもと、単純なわたしはそんなことを思ってしまうのだった。
あれからの日々は
まるで梅雨のようで
ジメジメと
カビてしまった心は
そろそろ
陽の光を求めてる
無意識に
触れてきた人に
少しだけ
力を貰った
でも
やっぱり
違うんだ
やっぱり
駄目なんだ
違うんだよ
駄目なんだよ
君じゃなきゃ・・・
「梅雨」
雨音を耳に馴染ませ30分
タオルが回るのを眺めている
お題:梅雨
今日も外は雨が降っていた。
連日雨で気が滅入る……なんてこともない。わたしは雨がそこまで嫌いではなかった。彼はそうでもないみたいだけど。
#梅雨
とうとうやってきたな
日本で、梅雨が好きな人は何人いるだろう
雨の恵みも大切なことだけど、
ほどほどにして欲しいな
災害が、起こらない程度で頼みます。
天の気まぐれさん
20℃50%。
ピアノにとって理想の数字だ。
つまり、紫陽花が雨にしとど濡れるこの時期は
音が狂いやすくなる。人間も同じようなものだ。
たとえば雨の日にばかり、遠い昔にやめてしまったピアノを弾きたくなることとか。湿ったピアノは鈍く響いて、私の指ものろのろと、思い出を探るように動くばかり。
低気圧で死にかけの私と、憂鬱なピアノの音色。
その不調の重なりが妙に心地よくて、薄ら暗い曇天の心模様にマッチするんだ。
だから梅雨なんて、まるで生きた心地がしないよ。
そういいながら、あなたは今日もピアノを弾いている。ほとほと参っているような力ない微笑みを浮かべ、それでもあなたの繊細な指は、正確に音を叩く。
雨の日のあなたのピアノを聴くたびに、私は胸の高鳴る想いがする。「梅雨だからね。君の調子も狂ってるのかもしれない。」なんて、あなたは笑って返すんだろう。
特に何の思い入れもない
ただ雨が続くだけの憂鬱な梅雨。
朝目覚めて片頭痛に重い体を起こして
そのままリビングへ
薄暗さを覗くように開けたカーテン。
雨音にほんの少しだけ耳を傾けてながら
部屋中に広がる生乾きの洗濯物と
入れたてインスタントコーヒーの香り
そこにMaroon 5 のSunday Morningのイントロが聴こえてきたら
それだけで少し胸が騒ぐ雨の日。
- rainy day -
【梅雨】
梅雨どきは、自宅にいる時間が長くて
お昼は手軽な即席め〜んってこと、
ありがちですよね?
でも、カップ麺1個じゃ何か物足りない…
これもまたありがちでしょ?
そんなあなたにお届けしたい!
【チカラがワクワク 力杯麺】
材料は、どこのご家庭にもよくある
即席カップ麺とパック切り餅&熱湯
5ミリ程度にスライスした切り餅を
フタを開けたカップ麺の中にin!
あとは表示された量の熱湯を入れ、
指定された時間を待つのみ。
たったこれだけで、お餅も柔らかくなって
餅同士まったくくっつきません!
これはなかなかの感動もの。
提案者である母と私は、これにハマって
最近は週1ペースで食べています。
誰?「カロリーが…」なんて言ってるのは。
「美味いは正義」なので全てに勝ります。
1度お試しあれ♪
【梅雨】
正直、私はあまり梅雨が好きじゃない。
視界は悪くなるし、空気はジメジメするし、ぬれるし、独特な匂いがするし、傘を差すのはめんどくさいし……
なにより青空を見られないことが残念なのだ。
ただ「梅雨」というものに“美”を見いだしてきた人々の感性や作品に触れると、梅雨も悪くはないよなぁ~~と思うことがある。
梅雨特有のジメジメとした湿気には毎年うんざりする。
それに毎日雨でどんどん気分は暗くなる。
「はぁーっ。」
靴を履き傘を差そうと鞄の中から取り出しながらため息をついていた時にふと肩を叩かれる。
「なあ、ちょっといい?」
「え、は、はい!」
「ごめん、驚かせた?」
そこには私の想い人である彼が笑って立っていた。
「い、いや別に。ていうかどうしたの。」
「実はさ、傘忘れちゃって。」
「珍しいね、こういう時はいつも準備してるのに。」
「まあ俺だって完璧じゃないから忘れる事くらい
あるよ。そこでお願いなんだけどさ一緒に入れてもらってもいいかな?」
迷惑なのはわかってる、と彼が手を合わせながら頭を
下げてくる。迷惑じゃない。むしろ嬉しさでいっぱいになる。だってそれはつまり一緒に帰れると言うことでは
ないか。ああ、でも好きな人の隣なんてとても緊張するしどうすればいいだろう、と悶々としていると
「やっぱり、迷惑だよな。ごめん。」
「ううん、違うの。いいよ、一緒に帰ろう。」
「いいのか! ありがとう。」
彼の笑顔を見て今まで梅雨で憂鬱としていた気分が一気に晴れる。今日は雨で良かった。そう思いながら二人で学校を出た。
『梅雨』
「梅雨なんて嫌い」
頬を膨らませそっぽを向く子供らしい仕草は、大人っぽい優等生の雰囲気とかけ離れていて妙な優越感を感じさせた。これを知っているのは自分だけなのだと。
「息が詰まる」
閉塞的。そんなふうに言いながら降り注ぐ比較的小さな雨粒に手を伸ばす。まるで光を求めるように、やけに淋しそうに。
押しつぶされそうな色に囲まれることを恵みには思えない。たとえ必要不可欠だとしても。手のひらに溜まった雫を紫陽花の葉に落としながら君は謳う。
「声も聞こえないぐらいに荒れればいいのに」
傘に隠された横顔。微かに見えた表情は言葉とは裏腹に、やたらと綺麗な笑みを乗せていた。
指先が動いて くるりとまわる大きな花びら。水しぶきを飛ばして軽やかなステップをふむ。
「早く帰ろっか。扉に隔たれらればこの音も悪くない」
よくわからなかった。嫌いだと言ったそれから楽しみを見い出せる理由が。文学的な言い回しを好む瞳に映る世界が、自分と同じものを見ているという事実が。
だって大概の人と同じように 梅雨を嫌う理由は不快だからで、家に入ろうと感想は同じだった。音は耳をさ奏でる騒音で気を滅入らせる要因以外の何でもなかった。
「哀しい音楽。匂いを連れて耳を撫でる」
不思議なメロディー きっと気に入る。なんていう君はいつだって知らない世界を見せてくれる。
どんな 香りも風景も空気すらも、いつもと違うように彩られていく。それはまるで魔法のようにすっと心に染み込んだ。
「嫌いだけど、たまにはいいかな」
そうやってまた景色が変わった。みずみずしい花弁が、揺らいだ姿を映し出す水たまりが きらめくコンクリートが特別になった。
テーマ: «梅雨» no.8 73
雨の日は
雨音が他の雑音をかき消すから
雨音だけが 聴こえる。
静かで
雨の日は
雑音が無い分 ちょとセンチメンタルで
どうしようもなく 人恋しくなる。
淋しくて
雨の日が
だらだら続く 梅雨は
だから キライ。
#梅雨
朝から雨が降りだして
風もごうごううなってる
光が射さないこんな日の
薄暗い部屋におりますと
海の底へと沈むよな
奇妙なほどの静寂に
秘密の時間に迷いこむ
おはなしの中の主人公
孤独はふいに美しく
居心地のよさに眠くなる
ゆらゆらゆれてハンモック
猫をお腹にのせうつら
ざんざんざわめくホワイトの
雨のノイズがループする
#梅雨
―梅雨―
あじさい寺とも呼ばれる鎌倉の明月院行ってみたい
【梅雨】
最近、そこまで雨は降らないな。
せっかく新しい傘を買ったのに。
雨の日は、いつもより暗くて
窓側の席だと、雨の音を聞きながら
授業を受けるって最高じゃない?
寝ちゃいそうだけど…。
梅雨が近づいてくると、毎年私は傘を買いに行く。二週間もない短い間だけ使う特別な傘。
今日もそのための傘を買いに来ていた。駅前にある傘専門店で色んな傘を広げては閉じていく。特別好きな色や柄があるわけではない。直感でこれだと感じたものを買う。今年はなかなかその傘が見つからなかった。
すると、私があまりにも長時間悩んでいるせいか、店主が出てきた。
「今年も来てくれたんだねぇ」
「お久しぶりです」
まさか顔を覚えられているとは思わなくて少し驚く。
「どんな傘をお探しですか」
「特に決まってなくて、直感で探しているんです」
「いいですね。運命の傘探し、私もお手伝いさせてもらえますか」
そう言うと、二人で店内の隅から隅まで思うがままに傘を開いては閉じてを繰り返した。
「お嬢さん、これはどうですか。私のお気に入りの一品なんです」
そういって店主が広げたのは、真っ赤な布地にしだれ桜とその花びらが舞っている絵の描かれた傘だった。金色で縁どりされていてとても豪華だ。
「梅雨時になるともう桜は季節外れになってしまってね、売れないんですけどお気に入りなんですよ」
これだと思った。今年の最傑作はきっとこれだと感じた。これにしますと言ってレジに持っていくと店主は嬉しそうな顔をして丁寧に閉じて、留めてくれた。学生だからという理由で割引すると言われたが、断った。
「こんな素敵な傘の価値を下げないでください。ぜひ定価で買わせてください」
「嬉しいねぇ。でもお嬢さんがこの傘を大切に使ってくれるだけで、この傘にはその価値が宿るんだよ」
ぺこりと頭を下げて、お店を出た。雨は降っていなかったが、早速傘を広げた。
「やっぱりお嬢さんは赤が似合うねぇ。毎年買ってくれてありがとう」
「こちらこそありがとうございます。また、来年も買いに来ますね」
きっとこの傘をあのお店で買ったことを母が知ったら怒るのだろう。だけど、それでも私は祖父が一から手作業で作った傘が欲しかった。認知症になっても、技術が手に残っているうちは傘を作り続けるのだろう。いつまで私のことを覚えてくれているかはわからないが、来年も祖父の最傑作を買うために私はあのお店を訪れる。
子供の頃、雨が降ると傘に当たる雨音に何故か安らぎを覚えていた。雨の精が傘に当たって踊り出している様子を空想していた。今思えば、何故そんな空想をしていたのか分からない。中学生になると、そんな空想はしなくなっていた。だが、雨の日の空気の匂いが好きだった。雨の精の空想はしなくなったが、学生時代は雨の日の下校などは少し楽しかった。
大人になると、雨の日に何の感情も抱かなくなっていた。想像力がなくなったのか、自然を愛でる心がなくなってしまったのか。多分、どちらもだ。体調を崩した事もあり、退職して暇になると、ようやくまた空を見る機会が出来てきた。今までは仕事を言い訳にしてきたのだろう。深夜まで動画など見ていよいよ眠る時、聞こえてきた雨音にほんの少し安らぎを覚えた。
雨は湿気で髪がめちゃくちゃになるし、嫌な暑さを感じるし、降り過ぎれば人間に襲いかかる。でも、まだ嫌いにはなれない。
梅雨
雨が降るのは、私が泣くから。
叩かれて、痛いから。
私は望まれたわけじゃないから
母から嫌われて、みんなと違うから周りから煙たがられて、悲しいから。
こんな変な力を持って産まれたから。
涙が雨となり地に降り注ぐ。
私が死んだから、痛かったから誰かからの哀れみも雨になる。