みどり

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 子供の頃、雨が降ると傘に当たる雨音に何故か安らぎを覚えていた。雨の精が傘に当たって踊り出している様子を空想していた。今思えば、何故そんな空想をしていたのか分からない。中学生になると、そんな空想はしなくなっていた。だが、雨の日の空気の匂いが好きだった。雨の精の空想はしなくなったが、学生時代は雨の日の下校などは少し楽しかった。
 大人になると、雨の日に何の感情も抱かなくなっていた。想像力がなくなったのか、自然を愛でる心がなくなってしまったのか。多分、どちらもだ。体調を崩した事もあり、退職して暇になると、ようやくまた空を見る機会が出来てきた。今までは仕事を言い訳にしてきたのだろう。深夜まで動画など見ていよいよ眠る時、聞こえてきた雨音にほんの少し安らぎを覚えた。
 雨は湿気で髪がめちゃくちゃになるし、嫌な暑さを感じるし、降り過ぎれば人間に襲いかかる。でも、まだ嫌いにはなれない。

6/2/2023, 7:40:14 AM