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20℃50%。
ピアノにとって理想の数字だ。

つまり、紫陽花が雨にしとど濡れるこの時期は
音が狂いやすくなる。人間も同じようなものだ。

たとえば雨の日にばかり、遠い昔にやめてしまったピアノを弾きたくなることとか。湿ったピアノは鈍く響いて、私の指ものろのろと、思い出を探るように動くばかり。

低気圧で死にかけの私と、憂鬱なピアノの音色。
その不調の重なりが妙に心地よくて、薄ら暗い曇天の心模様にマッチするんだ。

だから梅雨なんて、まるで生きた心地がしないよ。


そういいながら、あなたは今日もピアノを弾いている。ほとほと参っているような力ない微笑みを浮かべ、それでもあなたの繊細な指は、正確に音を叩く。

雨の日のあなたのピアノを聴くたびに、私は胸の高鳴る想いがする。「梅雨だからね。君の調子も狂ってるのかもしれない。」なんて、あなたは笑って返すんだろう。



6/2/2023, 9:19:35 AM