『桜散る』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
またこの季節が巡ってきたんだ
窓の外を眺めると、記憶が勝手に甦った
桜散る景色、風の温度と感触
昔々に葬ったはずの気持ちが
今もまだ燻っているんだ
この想いを抱いて生きていく
それも悪くはないかと、今ではそう思えている
(桜散る)
最後の桜が散った。
もうこの木は死にかけている。そう樹医に言われていた桜が開花してから丸一年。まるで時が止まったかのように咲き続けていた花が、昨夜の嵐に耐えかねて散った。
きっともうこの木で花が咲くことはないだろうと、今朝方木を見た樹医は告げる。
だが本当にそうだろうか。
散った花びらが浮く川面を見つめながら、私は思う。最後の一本となったこの木が、そう簡単に死ぬのだろうか。この塵にまみれた世界で悠然と立つこの木が、そう簡単に命を終えるのか。ろくに日も差さぬこの世界で生き残った樹木なのだ。
人間などよりよほど強いのではないか。私なんかよりはきっと、この木は長生きするだろう。
「競争だな」
桜色の川を眺めながら私は笑う。
私はきっと来年もこの桜を見る。そしてあの樹医に言ってやるのだ。藪医者め、と。
桜散る
桜が散り 大好きだったあの人との別れ
たくさんの幸せをありがとう。
お世話になった先生との別れ
たくさんの教えをありがとうございます。
喜怒哀楽を共にした友との別れ
たくさんの笑顔をありがとう。
たくさんの涙が流れていく
それは桜の花びらが散るように
桜が散り 新しいあの人との出会い
どんな幸せをはぐくめるだろう。。
新しい友との出会い
どんな笑顔が見られるだろう。
新しい先生との出会い
どんな学びが始まるのだろう。
たくさんの期待が溢れ出して行く
それは新たな希望へと咲いていくくつぼみのように
桜散る。それは別れと出会いを告げる光
桜散る
散るたびに熱を帯びていく
そんな姿に興味も無いように
足早に去る貴方
僕の想いも散っていく
「2,000年だぞ」
「2,000年ですか」
「確かに桜の散る姿は美しい。残る桜も散る桜と歌われるように、桜の咲き誇る時間は短く、夏を前にしてすべての花は消えてゆく。
しかし、桜は樹木。樹齢が2,000年に届くものもある。桜はすべて散るが、次の年には同じように咲き誇る……そう考えると、儚さを見出すのは何か違うような気がしてこないか? むしろ、1年にいちど大盛り上がりする、そう、パリピ的な感じさえする」
「死語じゃないですか、それは」
「桜よりも言語の方が儚い」
俺は深いようで浅いことを言う先輩の横顔を見つめる。
どういう流れでこんな話になったのかは忘れてしまったけれど、先輩にしては無理に捻り出した逆張り論理、という感じが否めない。
そこを後輩としてどのように反応するべきかを目を泳がせて少しの間考えて、ふと思い出す。
「そういえば、この前ネットの記事で読んだんですけど、植物ってストレスを感じると悲鳴を上げるらしいですよ。超音波で」
「超音波?」
「トマトとか、実を収穫される時なんかに特に大きく声を上げるらしくて。
樹木は一個の生命体ですけど、花も受粉して実になるわけですから、それに付随した小さい命かも知れないじゃないですか。
そう思うと、桜が散る姿も儚く……」
瞬間、脳裏に再生される散っていく桜の花たちの奏でる、超音波の大合唱。
「……ならないな、違いましたね」
「お、悲鳴を人間が聞けるように加工した音があるらしいぞ。聞いてみるか?」
俺の返事を待たずに、先輩はスマートフォンでその音を再生する。ぷちぷちと泡の弾けるような音声は、なるほど断末魔のようにも聞こえる。
カバンの中に、昼飯に買ったあんパンが入っているのを思い出して、俺は唇を曲げた。
カバンの中には桜の死体が埋まっている、というわけだ。
#桜散る
『 桜散る』
桜が散ると同時に辛いことも終わればいいのにな…
テーマ:桜散る #156
貴方は言ったよね?
桜散る広場でまた会おうって……。
君がいなくなって、
8度目の春が来た。
私は広場のベンチに座り、
ぼーっと貴方のことを考えた。
「約束、守ってよ……」
貴方のことを思うと自然と涙が溢れてくる。
泣いてもあなたは帰ってこないのに。
今年も桜が散った。
私の貴方への思いは散ることを知らない。
辛かったのなら言ってほしかった。
嫌なことがあったなら、
私も一緒にどこか遠くへ二人で逃げたって良かった。
私をおいて逝かないで。
桜は散れど、
来年になれば、また必ず咲くだろう。
桜は散れど、
青い若葉が、ぐんと生えるだろう。
何も悪いことはない。
新しい可能性が広がるだけ。
#桜散る
厳しい冬の寒さを越えて
ようやく春が訪れた
小さな薄墨桜が1番に咲く
山神様が降りていらした証
いよいよ田畑が忙しくなる
桜散るころ田畑を耕す
土のいい匂いがする
日本の一年がようやく始まった
下を向きよろよろ歩く人間さえ
必死に喜ばそうと地面に散る花びら
花というものは散ってなお
人の心を誇ろばせてくれる
「桜散る」
『斉一性桜(せいいつせいざくら)』
「さくら」
「なぁに?」
僕には幼なじみがいる。さくらと言う可愛らしい名前の女の子だ。
少しぐらいしか会えないけれど、会える期間は毎日話している。
学校のことや家族のこと、相談なんかも聞いてくれている。
「ねぇ、さくら」
「なぁに?」
「僕、もうすぐで死ぬかもしれない。」
さくらは何も言わず、ただ、静かに虚空を見つめていた。
「僕、いじめられてるんだよね。」
最近周りの皆が冷たくって全然僕と話してくれないの。
「なんかしちゃったかなぁ」
窓の縁に座り、満月を眺めていた。
「ねぇ、さくら」
「なぁに?」
「僕、今年は一緒にいけるかもしれない」
「ねぇ、あの子」
「あー死んだんだっけ?」
「え、誰?」
「何か花に向かって喋ってて気味悪かった」
「なんそれキモw」
君が居てくれた時は毎回楽しかった。
僕、話す相手っていなくってさ。
君だけは何も言わず、ただ聞いてくれるだけだから心地よかった。
毎年春が過ぎると寂しくなるけど、今年は一緒に逝けるね。
人間は散る時美しいのなんてごく少数だけどさ、花はいつも美しいよね。
僕も来世ではもう少し美しく散ってみたい。
お題『桜散る』
※斉一性(せいいつせい)=物事が一様であること。ととのっていること。
※虚空(こくう)=何もない空間、大空。
お題《桜散る》
美しい夢が終わる。
散ってしまうこともひとつの、舞台。
哀しいことじゃない。
寂しいことじゃない。
そこからまた、新しい夢が咲いて、また散る。
いつだって舞台は魅せるものだ。
〜桜散る〜
春になると、また桜が満開に咲きまして、
季節が変わろうとする頃にはまた桜が美しく散りました。
春になると、また恋を初めまして、
色が消える頃にはまた切なく恋が散りました。
夏になると、桜木の色が見えず、
散っても色を変え、葉が咲き誇っています。
夏になると、奥にある恋音は聞こえず、
散っても色を変え経験が咲き誇っています。
秋になると、葉が散り、桜木の色が切なく見えます。
秋になると、寂しくなり、人肌が恋しくなります。
冬になると、桜木は静かに生き、春を待っています。
冬になると、私の恋音は静かに落ち着き、春を待っています。
そしてまた春になり、夏になり、秋になり、冬になり…
私達はいつも何かを繰り返している。
桜散る
ふうっと溜息一つ。薄曇りの道を俯きながら、一人歩いている。時折やはらかな春風が吹いて、並木の桜が小さく揺れる。不図立ち止まると、視界の端で薄紅色の花片がそよいだ。そして、少し強い風が吹き、はらはら桜が溢れる。思わず顔を上げると、長い髪のあのひとの横顔が遠く見えた氣がした。
二人揃って歩く桜並木。
珍しく日本に訪れた兄は、不思議そうにその光景を眺めていた。僕とは違うサラサラな金髪に青い瞳を持つ兄は、この花見スポットと言われる桜並木では浮いて見える。
「日本人は、皆サクラが好きなのか?」
こちらに目を向けず、桜に釘付けになりながら兄は問う。
僕ら兄弟はバラバラに住んでいたこともあり、兄は桜というものがどれ程日本で愛されているか知らない。昔会った時に説明すると、たかが花に何故そこまで必死になる?と純粋に首を傾げていた。
確かにそうだなと思ってしまった自分は、かなり日本の考えが染み付いていたようだ。
「皆かは分からないけど、好きな人は多いと思う。」
ザーっと音を立てて吹く風に、誘われるように散る花びら。ふわふわと舞う桃色が兄の色白の肌と色素の薄い髪を際立たせ、美しい絵を見ているような錯覚に陥るほど綺麗だった。
「…確かに、君が言う通り綺麗だな。」
今まで桜に向いていた青がこちらに向き、兄は少しだけ口角を上げて笑う。
久しぶりに見た兄の笑顔に、ぴしりと固まってしまった体で、目だけがその美しい光景を焼き付けようと動く。僕の黒髪と濡羽色とは正反対な容姿を持つ兄を、密かに誇らしく思う。昔はそれがコンプレックスになったこともあったけど、兄が褒めてくれた瞳の色は今では僕の自慢だ。
突然、今までで一番強い風が低い音を立てて吹いてきた。思わず目を瞑り、強い桜の香りが僕の鼻を刺激する。風も強いし、そろそろ帰ろう。そう言おうとして薄目で兄を見た。けど、
「に、さ…」
声は掠れた。ふわりと舞った地面の桜と振り落とされた花びらに、兄は隠されたように姿を桜の吹雪の中へと消した。
目の前が桃色に染って、ふと昔の記憶を引っ張り出した。
『美しい人は、桜に攫われるんだねぇ。』
近所のおじいさんが優しく微笑んで言った言葉。
美しい人、兄にピッタリだ。
「兄さん!」
思わず桜の中に伸ばした腕が、空を切る。なんてことはなく、がっしりと誰かに掴まれた。風が止み、目の前に兄は現れた。なんとなく今まで考えていたことが恥ずかしくなってきて、誤魔化そうと頭の中に言葉を浮かべる。何を言おうか迷っていると、兄の方が先に言葉を紡いだ。
「桜の中に消えそうだったな。」
どうやら兄弟、同じことを考えていたようだ。
少しおかしくなって、笑ってしまった。
桜が咲いたから見に行こう
そう言ったのに
すれ違いが続いた
やっと行けたのは満開が過ぎた頃
ところどころ緑の葉をつけた桜並木を
2人で歩く
少し肌寒い4月の夜
冷たい風が吹き抜けた
薄桃色の花びらが君の周りを彩る
桜の妖精になったみたい
そう言ってはにかむ君の笑顔は
なによりも綺麗だった
ひらひらと、桜が散る。
散る姿まで綺麗だ。
私もこんな風に、美しく散りたいな。
【桜散る】
重たい曇天から打ちつける雨が、満開に咲き誇る桜の花を散らしていく。道行く人々が残念そうに息を漏らすのを聞きながら、僕はビニール傘の向こうにべったりと貼りついた薄紅色の花びらを見上げた。
「何でそんな憂鬱そうな顔してるの?」
不思議そうに首を傾げた君が、僕の横でくるりと自身の差した空色の傘を回す。その足取りは、天候に似合わず軽やかだ。まるで君の周りにだけ、晴れた青空が覗いているかのように。
「もったいないなって思ってさ。せっかく咲いたのに、雨なんかで散っちゃって」
溜息混じりに応えれば、君は不意に足を止めた。傘を少しだけ持ち上げて、雨に打たれる花々を瞳を細めて眺める。
「でも、私は好きだなぁ。だってさ、雨が頑張ったねって言って、桜の花を包み込んであげてるみたいじゃない?」
その横顔に浮かんだ笑みの朗らかさに、息が止まるかと思った。天からこぼれ落ちる雨粒が君の笑顔を、満開の桜の花びらを、美しく飾り立てる。
――ああ。いつだって君の語る世界は、どうしようもなく優しく鮮やかだ。君の隣に立っていると、つられたように僕の世界までキラキラと輝いていく。
「……そうだね。桜雨も悪くない」
微笑んでくるりと、僕も自分の傘を回す。ビニール傘の向こうには、桜の花びらが雨の雫に包まれて、柔らかく透けていた。
今年は雨降りの時期に重なって、すぐ散ってしまった気がする。
桜は散る時、舞う時が美しいとされていて、
言わんとしていることはわかる。
でも、私は散り切って緑の葉をつけている、今の桜の樹の方が生き生きしていると思う。
生命力がみなぎっている、というか。桜の薄桃色の花びらは、あまりに儚くて見ているうちに不安になる。
散って根元に落ちた花びらたちは、すっかり茶色く変色していた。
桜は散る時が綺麗、と言った人は、終わった後の姿なんて見向きもしてないんだろうな。
自分だってその中の1人に過ぎないことは、うすうすわかっているけれど、見えないふりをして。
残酷だなあ、と思った。
『桜散る』
桜散る
あなたと観た桜は
毎年観る桜とは格別に違う景色だった
歳を取る幸せをあなたと噛み締めたい
桜散る景色すらもあなたと観たら美しい