『柔らかい雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
一人きりで傘をさして、黙って雫は砕けてゆく。肩を濡らす湿度だけは一緒に下を向いてくれそうだった。暮れの日々に沈んだ街で、底を擦り減らして歩いている誰かにもちゃんと屋根があるだろうか?無事に帰れるだろうか。
ありがとうが言えない心境は冷たさとかではないと思った。傷みきってしまう前に、傷跡に絆創膏を貼って。一人きりで傘をさして、痛みで雫は砕けてゆく。誰もが二人にはなれないから、肩を濡らさなくていいよ。下を向いて幸せそうな誰かの声が耳に入らないことに、救われてしまっていることを、恥じないでどうか休んでいてください。明日も降りますように。
霧のような、
だけど、霧にしては水が多くて、
服がびしゃびしゃになる。
だけど、それが嫌ではなくて。
柔らかい雨を傘をささずに歩いてた。
周りの目をきしてないふりをして。
何だか、独りで浮かれていた。
雨の中を歩いていた。
折りたたみ傘を持っていたが、使う気はなかった。
あまり雨が強くないというのもあるが、そんな気分ではないのが大きい。
大好きな恋人と喧嘩して別れた。
原因は向こうの浮気。
裏切られたという事実は私を打ちのめした。
雨が降ってきても、傘を出す気力が湧かなかった。
土砂降りであれば、いっそ清々しくなるのだろうが、ずっと弱い雨だった。
濡れるか濡れないかというような、柔らかい雨。
もしかしたら雨が慰めてくれてるのかもしれない。
おせっかいと感じるが、きっと気の所為なのだろう。
だけどそんな考えに至ってしまった自分に、ちょっとだけおかしくて笑ってしまった。
気がつくと雨は止んでいた。
雲の切れ間から陽の光が差し込み、大きな虹が架かっていた。
あまりのおせっかぶりに、おかしくなってしまう。
そして晴れていく空のように、私の気持ちも晴れ渡っていく。
新しい恋を頑張ろう。
そう思うのだった。
お別れの日 天気は予報通り晴れていた
十年来の友達が転職で遠くの町へ引っ越す
今日は引っ越し前の二人で会う最後の日
予約したお店で華やかな料理を前に彼女とおしゃべり
昔からの憧れの仕事でやっと夢を叶えられたと笑顔で言う
それが夢だったことなんて私は当たり前に知っている
だから私も笑顔で送り出したい なのに上手く笑えない
今日をお祝いの日にしようと決めたのは私だったのに
喜びだけではない感情が混ざり合って渦巻いている
食事を終えて外へ出ると予報外れの天気雨が降り出した
二人とも傘を持っていなかったので駅へと駆け足で行った
結局、別れの言葉を上手く言えないまま友達を見送った
今日見たあの笑顔を引きずって一人だけの帰り道を歩く
晴れなのにまだ降り注ぐ天気雨は私を表している
私は肩をすくめて抱えていたものを頬へ伝わせた
今ならその雨の柔らかさに許された気がして
夜の蛍光灯の光が雨が斜めに降る様子を照らしていた。傘をさす必要がないほどだと思っているけれど、こうやってみるとかなり降っていたのだなあ、と気がついた。
時計の針が十二時を回っても人通りは決して減ることがない。道端でスマホを触って誰かを待っている女性たち、急ぎ足でどこかへ向かっている男性を尻目に、私はちょっと高いヒールを履いて空港への道のりをカツンカツンと音を立てながら歩いている。
実は仕事を辞めた。本当にしたかったことが分からなくなったから。
大学を卒業して何も考えずに流れるように就職して、自分の時間よりも仕事を優先してきた。何も文句はなかった。やりたいことが特になかったから。
部下を持つようになって、管理職になって責任が重くなることが増えた。嫌ではなかった。
女がここまで昇進できるのは、今の世の中では珍しかったかもしれない。男女平等に見てくれていた上司には感謝の心でいっぱいだ。
ところが、なんだか最近迷うようになった。何に迷っているのかさえ、分からないけれど。
私のいいところなのかどうなのか決断は早かった。仕事を辞めて、海外に行くことにした。借りていたマンションを解約して、水道も電力も解約した。心優しいホストファミリーに今後はお世話になるつもりだ。
英語は得意ではないけれど、どうにかなるとおもってる。少し楽観しすぎかもしれない。まあ、後悔する時は後悔すればいいと思う。そんなスタンスが私らしい。
食生活も日本の中での当たり前が当たり前ではなくなるだろう。そんなカルチャーショックさえも、楽しみに変えていくことができれば、上出来だろう。
それじゃ、ちょっとこれからアメリカ行ってくる
朝、目が覚めると、少しだけ雨の匂いがした
朝だけど明るいわけでもなく、暗い夜ともまた違う
そんな朝
1日の始まりにコーヒーを飲みながら窓の外を見る
少しだけ濡れたアスファルトがキラキラ光っている
小さな水たまりに子どもがジャンプしている
新調したばかりの傘と長靴の出番にはしゃぐ子供の声
キラキラと雫が跳ねているような用水路の葉っぱ
色とりどりの色をより際立てさせる雨
いつもと同じようで、いつもと違う
そんな朝を迎える
柔らかい雨のある朝
某日、アパートの窓辺から、外を覗く一人の男がいた。空は快晴、熱すぎず寒すぎずの心地よいお昼時、公園には子供たちが駆け回り、世間の空気などお構いなしに今を楽しんでいる。絶好のお出かけ日和である。
しかし、男は落胆していた。
晴天にため息を漏らしては、喧騒に耳を塞ぎ、頭を抱えている。
お天道様を恨めしそうに睨みつけ、もう一息漏らしては、窓を閉めた。
次の日の朝、空に雲が飛んできて、雨のカーテンが掛かっていた。暴風に打ちつける雨、どんよりとした、憂鬱な空模様。
男はすぐに飛び起き、カッパを付け、ノート片手に駆けだした。
河川敷、川沿いに高低様々な草木が茂り、風に共に揺れている。木々が転々と生え、その合間の小さなベンチには、誰一人と姿はない。
男は、忍び足で一つの高木へ向かい、その中途で腰を下ろした。
見れば、数匹の雀が集まっている。
柔らかい雨に濡れ、毛は蝋に浸したように纏まっている。互いに身を寄せ合って、一体となり、寒さに雨が過ぎるのをひたすらに待っている。
男は、ペンを取り、ノートを広げ、まじまじと人のない世界に身を置くのだった。
『柔らかい雨』
柔らかい雨と聞いてなにも思い浮かばなかったので、検索してみました。
そしたら、絵画作品のタイトルになっているのもあるし、歌のタイトルになっているのもありました。
なにも思い浮かばなかった私は頭が硬いと思う。
頭が柔らかいほうが活躍できる仕事に就いていたこともあります。工場で作った製品をトラックに積み込む仕事です。限りあるトラックの荷台のスペースに上手に積み込むにはけっこう私は頭を使いました。なぜならパズルのように製品を積んでいくのだから、製品の形状によっては「どう積んだらいいんだろう?」と頭を悩ませることもありました。そんな時私を助けてくれた社長は製品を荷台に積んでいくスピードがすごく速い。
そういえば社長は社員からも頭が柔らかいと言われていたのを思い出しました。
【 柔らかい雨 】
ただ死にゆくだけと、諦めていた。
生き長らえるために逃げた地は、乾ききっていた。
およそ、生き物の住まう環境とは思えない場所。
敵がいない代わりに、生きるのも難しい。
何のために、今、ここにいるのだろう?
何のために、生かされているのだろう?
諦めたはずの命は、己の意思を問わず、
直向きに鼓動を打ち続けている。
ふと、頭上から降り注ぐものに気づく。
恵みの雨か、いや、殺戮の雨だ。匂いで分かる。
あまりにも優しい、毒の雨。
呆気ない終わりだと思う反面、幸せな終焉を喜ぶ。
なんて、暖かい雨なんだろうな。
【柔らかい雨】
ウッドデッキに置いたロッキングチェアに腰掛けて、雨音へと耳を澄ませる。パラパラと音を立てて降る雨は、それ以外の世界の音の全てを消し去ってくれた。
この煩わしいことに溢れた世界で、それでも私がこうして息をしているのは、こうして時折降り注ぐ柔らかな雨のおかげだ。遠い昔に死んでしまったあの人が、荒れ狂う情動をもてあましていた幼い私へと微笑んで告げてくれたから。
『君が辛い思いをしている時には、僕が雨を降らせるよ。そうして君を苦しめるものは全部、まっさらに洗い流して仕舞えば良い』
水の精霊に愛された彼はその言葉通り、いつも私の周りを雨で覆ってくれた。あの人の雨に包まれるたびに、大嫌いな世界をほんの少しだけ好きになれた。
「大好きだよ、ずっと」
雨音に溶け込ませるように囁いた愛の言葉は、果たしてあの人へと届いただろうか。優しい気持ちでそっと、私は瞳を閉じた。
桜雨のこんな日は泣いたって気づかれないよ
もう考えたって分からないし生きている意味だって無い
こんな奴生きている資格だって無い
なんて何度も何度も、自分に言い聞かせたって止まれないんだ
こんな不愉快な痛みがずっと体の中で泳いでる
なんてね、全部『ウソ』
ただの夜咄。
雨の日はずっと泳いでる。
【柔らかい雨】#77
柔らかい雨は好きだった。
この頃は見かけなくなったが、
私が静かに流す涙を見つけては
共存してくれていた。
でも、柔らかい風を好きになった。
風は私に涙を流させないように、
止めてくれた。
無理をさせようとか、我慢させようとか
そういうような類の気を感じさせない。
そんな柔らかさがある風が今は好きだ。
だが、柔らかな雨よ。
私は雨のことが嫌いになったわけでない。
今は、風の方が気が合う。
それだけのことなんだ。
「はっ!私はなんでこんなところにいるんだ。私は死んだはずなのに」
私は朝、目を覚めたら何故か生きていた頃のベットで寝ていた。私は不思議に思いベットから起きて自分のスマホで今日の日時を確認した。私は言葉が出なかった。なぜなら10年前の中学卒業の日だったからだ。考えてみたら確かに今までよりも手や足が小さい。
柔らかい雨
雨は嫌いだ。雨が降ると道は混むし、匂いもきつい。雨の匂いが好きだという人も中にはいるけれど、どうしても僕はそれを好きになれないでいた。
そんな中、理想郷は完成した。雨が降らなくなった。否、雨は降っているのだ。必要なところだけに、局所的に管理された雨を降らせていた。
あんなに嫌っていた雨なのに、いざ無くなるとどこか物寂しい感じがした。
ポツポツと雨が降り始めた。綺麗に僕の周りにだけ降り注ぐ、柔らかくて優しい雨。望めばなんでも手に入る、そんな理想郷も案外悪くないのかもしれない。
しとしとと頬を濡らす柔らかな雨。
舐め取ってみると、それは妙にしょっぱかった。
▶柔らかい雨 #36
あのころの私は、
溢れてしまった弱い心を、打ち消してしまうほど
激しくうちつける雨がほしかった
けれど、
大切な人に降り注いで欲しいのは弱さを隠す雨じゃなくて
じんわりと浸透するように、
しおれた双葉がまた立ち上がれるように、
さんさんと、ただ
柔らかい雨を降らせたい
君を見ていたらそう思った
『柔らかい雨』
【柔らかな雨】
傘をさしてたはずなのに
霧のような雨粒が
横から、後ろから、
私の身体を包み込む
触れているのか
そこにいたのかも分からないくらい
優し過ぎる手で
そっと
トントンしてくれる
こんなか弱い力
あってもなくても何も変わらないはず
むしろ拒んできた存在
なのに何故か
ありもしない温もりを感じて
傘の下
私は顔を濡らした
柔らかい雨
1人で寂しいの。
でも、あなたがいてくれるから……
私は生きていられるの。
涙の数だけ強くなれるよ。アスファルトに咲く花のように。
なんていう歌が昔は聞こえていたけれど、今ではあまり聞かなくなったわね。
というか、アスファルトに咲く花からすれば、涙を流せば強くなる人間と私たち花では全然違うの。
花には水は必要不可欠。だけど人間は違うでしょう?涙を流さなくたって生きていられるじゃない。
……あら、泣いているの?
…ふふっ、私は見ていないわ。泣いてないのなら何で私は濡れているのでしょうね?
雨よりも柔らかい雨みたいね。だって、泣いていないんでしょう?
1人で寂しかったのよ。ありがとう、話し相手になってくれて。
「柔らかい雨」
子どもを見てると
雨の日は柔らかい
「大人になった」自分が滑稽に思える
煩わしいと何時から思うようになったんだろうか
泥だらけになって笑った。
私が辛い時
僕が限界な時
私/僕 達が泣けない時
代わりに泣いてくれた貴方は
本当は冷たいのに
どこか暖かくて
私を包み込んでくれるみたいでした。
【柔らかい雨】