【 柔らかい雨 】
ただ死にゆくだけと、諦めていた。
生き長らえるために逃げた地は、乾ききっていた。
およそ、生き物の住まう環境とは思えない場所。
敵がいない代わりに、生きるのも難しい。
何のために、今、ここにいるのだろう?
何のために、生かされているのだろう?
諦めたはずの命は、己の意思を問わず、
直向きに鼓動を打ち続けている。
ふと、頭上から降り注ぐものに気づく。
恵みの雨か、いや、殺戮の雨だ。匂いで分かる。
あまりにも優しい、毒の雨。
呆気ない終わりだと思う反面、幸せな終焉を喜ぶ。
なんて、暖かい雨なんだろうな。
11/7/2023, 8:58:44 AM