るった

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4/19/2024, 3:47:51 AM

【 無色の世界 】

ボクは、いわゆる透明人間らしい。
誰にも見つからず、あらゆることができる。

でも、誰かが言っていた。

『透明人間は誰にも見えないけど、自分からも見えない』

そう。
ボク自身、周りが見えない状態にある。
まるで、存在そのものがないかのように、何も見えない。
これが本当の孤独ってやつだと、本能的に知ってる。

ねぇ、気付いて?
ボクはここにいるんだよ!

3/27/2024, 1:07:10 AM

【 ないものねだり 】

お前はいいなぁ…。
食べて寝て、調子崩したら世話してもらえて。
…なんて、飼い犬にグチる俺、カッコ悪ぃなー。

   頭撫でながら言われても…。
   もしかして、何かイヤなことでもあった?

聞いてくれよー。
バイト先の先輩、俺の狙ってた子と結婚するんだって!
付き合ってるのも知らなかったんだぜ?
始まる前に失恋とか、悲しすぎだよな…。

   仕方ないけど、辛いよね。
   前向いて、新しい恋を見つけよう!

はぁ…もう…お前、なんでモフモフなの気持ち良すぎ…。

   ご主人のおかげですよー。

会話はできないけど、やっぱ癒やされる…。

   ボクも、この気持ちが伝えられないけど、
   ご主人がいるから今があるんだ。
   存分にモフモフして癒やされてね!


   

3/15/2024, 4:13:13 AM

【 安らかな瞳 】

あの日、彼女は光を失った。

夫の裏切りで友人とやらに弄ばれたと、
消え入りそうな声で掛けてきた電話。
心を乱されて、視界は暗闇に覆われて、体も衰弱して、
駆けつけた時にはもう遅かった。

入院した彼女は、漆黒の世界に何を見ているのか。
悪夢に苛まれ、体を震わせ、一人で恐怖に耐えるばかり。

僕がしてやれることは、ただ一つ。
ひっそりと、奴らを葬ることだけだ。

時間はかかったが、なんとかやり遂げ、彼女に知らせる。
一瞬、化け物を見たかのような表情をされたが、
状況を理解したのだろう。
優しい微笑みを僕にくれた。

ありがとう―――

その言葉を発した彼女の眼は、安堵に満ちていた。

3/12/2024, 6:45:22 AM

【 平穏な日常 】

あちこちから上がる煙の筋。
黒焦げて崩れ、元が分からなくなった建物。
一歩ごとに蹴躓く何かの死体。

一瞬で消された風景は、一瞬で思い出せなくなった。
断片しかない記憶を必死に繋いで辿ってみた。

真っ昼間の建屋内でも分かるほどの強い光が、
突然空から降り注いだ。
目が眩んだかと思えば、追いかけるように爆音が響く。

意識が飛んで、気付いたらこの状態だ。
あまりの呆気なさに、引きつったような笑みすら浮かぶ。
(これは何だ?どういうことだ?)
思考が先へ進まないまま頭を抱えていたら、
今度は瞬時に暗闇に覆われ、また意識が無くなった。

「お疲れ様でしたー。体験終了でーす」
間延びした声で目覚めると、全身に取り付けられていた装置が外されているところだった。
「『リアル戦争最前線』、アンケートお願いしまーす」
次第にすっきりしていく頭が、ようやく状況を理解した。

夢のようで夢じゃない、不思議な感覚だった。
あんな思い、現実でなくて良かった―――。
肩が震えるのを無理やり抑え込んで、会場を後にした。


2/26/2024, 6:52:24 AM

【 物憂げな空 】

最近、気になる子がいる。
でも、あの子には別の思い人がいるのも知っている。

(せっかくの晴れだから、お出かけに誘おうか…)

分かってはいる。
どんな時も、あの子が向いているのは別の方で、
チャンスなんて無いのだと。

(あ、やっぱり…)

まごついてたら、案の定、あの子の思い人がやってきた。
偶然か必然か。
何かが起きる前に、お出かけの予定は潰えてしまった。

その気持ちに応えるように、雲が広がりだす。
あーあ、思いを汲んでくれるのは空だけか…。

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