るった

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【 高く高く 】

人の世の遥か下、地底が生活圏の俺。
たまに堕ちてくるヒトをいたぶるのが唯一の楽しみだ。

ある時堕ちてきた奴は、変わり者だった。
恐怖に怯えるわけでも、パニックで喚くわけでもない。
自分の置かれた状況を理解しているのか、冷静だった。

「お前、何でそんななんだ?」
「長く生きてきたんだ、今更何を騒ぐというんだ」

興味が沸いた。
変り映えのない日常を彩るかのように、
博識なソイツとの会話は止まることを知らない。

だが、相手は所詮ヒト。
堕ちてきても、いずれは朽ちる存在だ。

「お前、もう死ぬのか? 俺がつまらなくなるだろ」
「人生最期にまで貴重な体験だった。ありがとう」

ヒトは、こんな生き物だったか?
俺から害を為さないからといって、
この状況で平然としていられるものか?
これほど魂の気高い生き物は、俺の永い生涯で初めてだ。

願わくは、俺もアイツと同じ高みに逝けますように…。



10/15/2024, 8:37:19 AM