彩士

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 夜の蛍光灯の光が雨が斜めに降る様子を照らしていた。傘をさす必要がないほどだと思っているけれど、こうやってみるとかなり降っていたのだなあ、と気がついた。
 時計の針が十二時を回っても人通りは決して減ることがない。道端でスマホを触って誰かを待っている女性たち、急ぎ足でどこかへ向かっている男性を尻目に、私はちょっと高いヒールを履いて空港への道のりをカツンカツンと音を立てながら歩いている。
 実は仕事を辞めた。本当にしたかったことが分からなくなったから。
 大学を卒業して何も考えずに流れるように就職して、自分の時間よりも仕事を優先してきた。何も文句はなかった。やりたいことが特になかったから。
 部下を持つようになって、管理職になって責任が重くなることが増えた。嫌ではなかった。
 女がここまで昇進できるのは、今の世の中では珍しかったかもしれない。男女平等に見てくれていた上司には感謝の心でいっぱいだ。
 ところが、なんだか最近迷うようになった。何に迷っているのかさえ、分からないけれど。
 私のいいところなのかどうなのか決断は早かった。仕事を辞めて、海外に行くことにした。借りていたマンションを解約して、水道も電力も解約した。心優しいホストファミリーに今後はお世話になるつもりだ。
 英語は得意ではないけれど、どうにかなるとおもってる。少し楽観しすぎかもしれない。まあ、後悔する時は後悔すればいいと思う。そんなスタンスが私らしい。
 食生活も日本の中での当たり前が当たり前ではなくなるだろう。そんなカルチャーショックさえも、楽しみに変えていくことができれば、上出来だろう。

それじゃ、ちょっとこれからアメリカ行ってくる

11/7/2023, 9:09:26 AM