『柔らかい雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ねぇねえ、君は帰らないの?」
傘が無いの、帰れないの
「僕の傘を使いなよ」
汚れて、骨も折れている
「よかったら使ってよ」
そしたら君が濡れちゃうよ
「僕は家が近いからさ」
優しい子、ほんとにいいの?
「それに今日の雨はあったかいから、平気だよ」
嘘つき、嘘つき こんなに冷たいのに
「じゃあ僕帰るね!」
待って、待って
必ず返すから
かえしたいけれど
なふだのなまえがよめないの
ひらがながわからないから
かえしたいけれど
なふだがあめでにじんでよめないの
せっかくおべんきょうしたのに
かえしたくないのに
あのこのなまえがわからないから
こちらにつれてはこれないの
柔らかい雨
「春雨じゃ濡れていこう」
という台詞が好きだ。
春には心の中で5回は言っていると思う。
春雨は…やさしい感じかな。
じゃあ、柔らかい雨は?
柔らかく感じる雨。
その時の自身の感情に寄り添ってくれるような
雨とかかな。
優しかったり、柔らかかったり。
なのに朝の天気予報が雨だと、
憂鬱になったりして、
ちょっと雨に申し訳ない気持ちになった。
paki
◤秋雨と先輩◢
秋の雨というのは、冷たく刺々しい印象である。今日も今日とて冷たい雨に当てられて帰る私は傘をさしても足先が濡れ、温度が冷えてゆくことを感じた。小雨でこれなのだから、早く帰らなくては行けないことは明らかである。また生理が重くなるな、なんて考えれば憂鬱な気持ちになる。顔をあげれば信号が赤に変わる。とことんついてない日である。
一個前の信号で渡ったのか、先輩が向こうを歩いていた。同じ傘の中には私の親友が収まっている。何とも小さくて可愛らしい彼女は私なんかよりよっぽど先輩の隣が似合っている。二人で身を寄せ合っている姿は羨望と諦めを私に齎した。
いつの間にか土砂降りに変わった雨は私の心に追い討ちをかけるかの如く濡らしていった。涙とも雨ともつかない何かが流れ落ちて、既に濡れきった地面の水溜まりの一部となる。重くなった足を引き摺るようにして家に帰る。
マンションの前に辿り着いた。途端に雨はまた小雨になる。例えば何か、私は悪いことをしたのだろうかと心配になる。余りの運のなさには正直悲しみを通り越して呆れしか回ってこない。
「大丈夫?」
珍しく、良いことが起きた。さっきの今で良いことという私はどうかと思うが、先輩からの心配にはそれほどの価値がある。ニコリと笑えば先輩は心配そうな表情が一層深まった。
ああ、こんな程度で気持ちは軽くなってしまうのだ。今降っている雨が柔らかいかのように錯覚する。先輩がどんなクズでも、色んな女に手を出す黒い噂の絶えない人であったとしても、いいのだ。一時の優しさに愚かにも溺れていればそれでいいと。思ってしまえる程の人なのだ。
「言われたのでしょう?」
あの可愛い親友に。そんな含みを持たせて、目の前の先輩と同じ、計算的な女誑しの笑顔を纏った。
テーマ:柔らかい雨
安堵したあなたの琥珀と春雨と
眩しい朝日で虹がかかるよ
(柔らかい雨)
柔らかい雨は慈愛のように降り注ぎ、傷ついたあなたの肉体をやさしく押しつぶしてゆく
鋭い刃が、次々に頭上から降り注ぐ。
どんどんどんどん降ってきて。
痛い痛い、と。
辛い辛い、と。
苦しい苦しい、と。
何度言っても、何度叫んでも。
それは無惨にも降り止むことはない。
あぁ、いつになったら...この言葉の刃は、降り止んでくれますか?
どうしたら...言葉のハートは、降ってくれるようになりますか?
---二作目---
...雨はいい。
涙を流しても、誰にも気が付かれないから。
どんなに泣いても、降り注ぐ雨がそれを上書きしてくれるから。
そして同時に頭も冷やしてくれるから。
偶にこんなふうに雨に打たれて...一人ぼんやりと曇った、代りばえのない空を眺める。
全てがどーでも良くなって、辛くなって、苦しくなって、何も分からなくなった時に。
雨は全てを洗い流してくれるような、そんな気がした。
...今日の雨は一段と激しいから、より強くそれを感じられる
そんなことを考えながら空を眺めていると、突然空の色が重苦しい灰色から、青空のように綺麗な空色へと変わった。
「...やっと見つけた」
少し驚きつつ当たりを軽く見渡してみると、そこには2本の傘を差し出しているせいらの姿があった。
「...お前...どうしてこんな所に...?」
「それはこっちのセリフだ...まぁいい。取り敢えず帰るぞ」
「..................」
...まだ、帰りたくなかった。もう少しだけ、冷たく鋭い雨に当たっていたかった。
この雨に浸っていたかった。
...だから、俺は差し出された傘を受け取ることをしなかった。
「...はぁ、仕方ないな...」
そう言うと、せいらは器用にも片手で自分にさしていた傘を閉じ始めた。
...は?と思いながらそんな光景を眺めていると、突然こちらに近ずいてきて、腰を抱かれながら相合傘というものをされる。
「はッ...!?おまッ、何を!?」
「どうせ今の状態じゃ、よっぽどの事じゃない限り俺の話を聞かないだろう?だから無理やり引き込んで入れた」
「だっ、だからって...」
「...ごちゃごちゃうるさい、早くしないと風邪ひくのだから、さっさと帰るぞ...」
それに...お前が一人で思い悩んでるのは...嫌だからな...((ボソッ
「!!」
...ズルい...そんな事を言われたら...言われたら...
「!...わいむ大丈夫か」
「ッッ!?うるっせぇ!雨水だよ雨水!!」
...今は絶対に顔を見せられない...だって、今は俺の涙を隠してくれる雨はないのだから。
いつの間にか、あの激しかった雨は止み、優しい雨が空から降り注いでいた。
#柔らかい雨
111作目
あなたと入った相合傘
無愛想なあなたが少し柔らかく感じたのは、
雨の柔らかさのおかげかしら
「柔らかい雨」
柔らかな雨が降る夜に
静寂が包むこの世界で
やわらかな音色が心に響く
雨粒が奏でる穏やかな旋律
「柔らかい雨」
撫でるように頬を伝う雨
そう、これは雨で
ただの雨で
少しなまぬるい
秋雨といふには遅き雨降れり。
七十二候は紅葉の蔦黄ばむとあるを、
木々も並べてならぬ暑さに戸惑いけるにや、
その便りもいまだ聞かず。
しのぶることの多き世なれど、
いつか時めく夢見て、
などか諦めるよしあらむ、
いまだ散るほどにあらずと
勉むる人のいかで羨ましからむ。
もみぢ葉や
時ならぬ雨風
荒るとも
染め果つまでは
散らぬとばかりに
人言ふ、ままならぬ世ほど面白きはなし。
【柔らかい雨】
大雨の中わたしは傘もささずに外に出た
何となく泣きたい気分で
外に出るとさっきまでのバケツをひっくり返したような雨から私を労るように少し柔らかい雨になった
その時だけは私に味方が出来たような気がした
柔らかい雨
柔らかい雨?
ニュアンス的に優しい雨かな?
具体的にだと、小雨、霧雨?
どちらにしても、激しい雨ではないはず。
優しくて、温かい雨
私の心を慰めくれる
辛い時にツライと言えて
泣きたい時に泣けること
なんでも独りで抱えずに
困ったら助けを呼ぶこと
恥ずかしくなんかないよ
もっと頼っていいんだよ
そうやって生きるんだよ
誰かが困っているときは
どうしたのと声を掛けて
そうやって生きるんだよ
難しく考えなくていいの
もっと自分を労るんだよ
大人になると忘れるんだ
今夜の雨が語りかけてる
『柔らかい雨』
大地や森をうるおす柔らかい雨は、ヒナの眠る小鳥の巣を濡らしはしない
うっかり落とした小さな雫は、木々の葉がやさしくはねのけるから
信号待ち交差点 街路樹の傘で
相合傘 ふたりぼっち
【柔らかい雨】
君がいなくなった日もこんな天気
ポツリと何かを呟いた
その場で立ち尽くすしかなく
僕の悲しみ
雨が癒やしてくれたなら
雨が流してくれたなら
嬉しいのにな
瞼を閉じる
笑う君が見えるのです
あの日…何故いなくなってしまったの?
一緒にいれば、事故に巻き込まれることなんて
なかったはずなのに。
守れたのに
でも、時間は過ぎるばかり
過去の悔しさをバネに
僕は生きるよ
君の思い出を抱いて
ちゃんと、頑張って生き抜くよ。
この世界を
【柔らかい雨】
ぽつりと頬に何かが当たる。
地面に模様が描かれていく。
見上げると青く澄んだ晴れ間の広がる空から、雨が降っている。
「お狐さんが嫁入りしてはんのやねぇ。」
小さい頃に、祖母がそう言っていたのを思い出した。晴れた空から雨が降ることを、狐の嫁入りと言うのは、その時祖母から教えてもらった。
どうして、狐の嫁入りというのだろうか。
昔、祖母から教えてもらった記憶を辿りながら歩いていると、着物を着た行列とすれ違った。
私は、はっと顔を上げて振り替えってみたが、行列はいなかった。
私の見間違えかと辺りを見回して、ふと思い出した。
「なんで狐の嫁入りって言うんか言うとね、お狐さんの嫁入り行列を、人に見られへんようにするためなんよ。」
小さい頃の私は、その話を祖母から聞いて、お狐さんは恥ずかしがりやなのだと思った。
もし、私がその行列を見ることが出来たなら、それはとても愉快で優美ものなのだろう。
そんな想像をしながら、私は歩き始める。
幻想的な晴れた日の雨の中を。
#柔らかい雨
柔らかい雨に打たれながら静かに涙を流した
誰にも悟られないよう
感情を押し殺したんだ
柔らかい雨には久しく出会ってない。それに、今は冬へ向かう季節で、「一雨ごとに寒くなる」冷たい雨ばかりだ。
でも「柔らかい雨」にも覚えがないでもない。暖かい季節の軽い雨模様のとき。
雨、といえば作物には日照とともに必須の日本。昔、農家をしていた知人があったんだが、雨が少なくて難儀していた年があった。畑の土が乾燥してひび割れ、家の水道からホースで長時間かけて広い畑に水を撒いてしのいでいた。ある日、やっと薄い雨雲が出て、「お湿り程度」の雨が降った。雨はすぐにやんでしまったので、知人はまた水を撒きに畑に行った。すると、わずかな雨しか降らなかったのに、畑の土からひび割れが消え、しっかりと水分を含んだ畑になっていた。
「私が人間の力で何とかしようと思って、一生懸命一日がかりで水を撒いても全然だめだったのに、ほんのちょっとの雨でこんなになるのよ。お天道様って本当にすごいわ…」と、しみじみ、なんだか厳粛な感じで言っていたのが印象深い。
私はこの知人の畑や水田の場所が好きだった。空は遮るもののひとつも無く、大きく深く、美しかった。厚い雲の隙間から太陽の光が差し込むとき、それは幾つもの「天使の階段」よろしく荘厳に光を降らせていた。育ちゆく稲穂が風の姿を教えてくれるさまは水の波打ちのようで、長いこと見ていても飽きなかった。
残念ながら知人は伴侶を亡くしてから身体を壊してしまい、農家をやめてしまったのだが、作物を育てることが好きだったから、何がしか少しずつ作っているらしい。
私の印象の中の雨は、太陽の光と稲妻と風、そして雨が生かすものといつもセットになっている。
天から降る柔らかい雨は、地の生命の求めに応えるような優しさと、絶大な力の顕れのような気がする。
うん、感謝しながらごはん食べよう。
柔らかい雨
少し温かくて、痛くもなくて
優しい雨なのかな
柔らかい雨にあたると
みんなの心が
柔らかくなるといいね