霧夜

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鋭い刃が、次々に頭上から降り注ぐ。
どんどんどんどん降ってきて。

痛い痛い、と。
辛い辛い、と。
苦しい苦しい、と。

何度言っても、何度叫んでも。
それは無惨にも降り止むことはない。

あぁ、いつになったら...この言葉の刃は、降り止んでくれますか?

どうしたら...言葉のハートは、降ってくれるようになりますか?

---二作目---

...雨はいい。
涙を流しても、誰にも気が付かれないから。
どんなに泣いても、降り注ぐ雨がそれを上書きしてくれるから。
そして同時に頭も冷やしてくれるから。

偶にこんなふうに雨に打たれて...一人ぼんやりと曇った、代りばえのない空を眺める。
全てがどーでも良くなって、辛くなって、苦しくなって、何も分からなくなった時に。
雨は全てを洗い流してくれるような、そんな気がした。
...今日の雨は一段と激しいから、より強くそれを感じられる

そんなことを考えながら空を眺めていると、突然空の色が重苦しい灰色から、青空のように綺麗な空色へと変わった。

「...やっと見つけた」

少し驚きつつ当たりを軽く見渡してみると、そこには2本の傘を差し出しているせいらの姿があった。

「...お前...どうしてこんな所に...?」

「それはこっちのセリフだ...まぁいい。取り敢えず帰るぞ」

「..................」

...まだ、帰りたくなかった。もう少しだけ、冷たく鋭い雨に当たっていたかった。
この雨に浸っていたかった。
...だから、俺は差し出された傘を受け取ることをしなかった。

「...はぁ、仕方ないな...」

そう言うと、せいらは器用にも片手で自分にさしていた傘を閉じ始めた。
...は?と思いながらそんな光景を眺めていると、突然こちらに近ずいてきて、腰を抱かれながら相合傘というものをされる。

「はッ...!?おまッ、何を!?」

「どうせ今の状態じゃ、よっぽどの事じゃない限り俺の話を聞かないだろう?だから無理やり引き込んで入れた」

「だっ、だからって...」

「...ごちゃごちゃうるさい、早くしないと風邪ひくのだから、さっさと帰るぞ...」

それに...お前が一人で思い悩んでるのは...嫌だからな...((ボソッ

「!!」

...ズルい...そんな事を言われたら...言われたら...

「!...わいむ大丈夫か」

「ッッ!?うるっせぇ!雨水だよ雨水!!」

...今は絶対に顔を見せられない...だって、今は俺の涙を隠してくれる雨はないのだから。
いつの間にか、あの激しかった雨は止み、優しい雨が空から降り注いでいた。

#柔らかい雨
111作目


11/6/2023, 1:18:18 PM