【柔らかい雨】
ぽつりと頬に何かが当たる。
地面に模様が描かれていく。
見上げると青く澄んだ晴れ間の広がる空から、雨が降っている。
「お狐さんが嫁入りしてはんのやねぇ。」
小さい頃に、祖母がそう言っていたのを思い出した。晴れた空から雨が降ることを、狐の嫁入りと言うのは、その時祖母から教えてもらった。
どうして、狐の嫁入りというのだろうか。
昔、祖母から教えてもらった記憶を辿りながら歩いていると、着物を着た行列とすれ違った。
私は、はっと顔を上げて振り替えってみたが、行列はいなかった。
私の見間違えかと辺りを見回して、ふと思い出した。
「なんで狐の嫁入りって言うんか言うとね、お狐さんの嫁入り行列を、人に見られへんようにするためなんよ。」
小さい頃の私は、その話を祖母から聞いて、お狐さんは恥ずかしがりやなのだと思った。
もし、私がその行列を見ることが出来たなら、それはとても愉快で優美ものなのだろう。
そんな想像をしながら、私は歩き始める。
幻想的な晴れた日の雨の中を。
11/6/2023, 1:01:29 PM