『暗がりの中で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【暗がりの中で】
手探りで何かを探す。
「違う。どこなの。」
暗闇の中、自分の声だけが響いていた。
ここは特別広い場所ではないようであった。
ただ、いくら探しても探し物は見つからず、心臓の音が大きくなっていくのを感じた。
ピタ……。
突然、何か水のようなものが足に触れたのを感じた。
先程まであったであろうか。
そう思いながらそれを辿った。
そこには微かに月明かりに照らされていた。
虚ろな目がそこにはあった。
死んでいるのか生きているのかもわからなかった。
辿っていた水は、赤く染まっていた。
そしてその水は虚ろな目の主へと繋がっていた。
「……っ……ぁ……。」
その時、声の出し方を忘れたかのように声が出せなかった。
心臓の音がさらに早まり、視界は虚ろな目から離せないでいた。
「どうして。なんで。」
突然、目の主が話し始めた。
「君が…なんで。」
何度もその言葉を聞く度に、自責の念が募っていった。
そしてまた暗がりへと視界が落ちていった。
次に目を開けた時、視界は明るかった。
「……私…のせい…。」
だが、その心に抱えたかつてのトラウマは、私を暗がりへと連れ去るのだ。
娘が死んだ。
鍵をあけて、戸をあける。
バタン、と戸が閉まる音が聞こえてから、あ、家に帰ったのかと、暗い玄関を見ながら気づいた。
片手を見たらビニールの袋を持っていて、アルミの缶が汚く擦り合っている。その音が苛立たしく、いや、気持ち悪い、という方が正しいかもしれない。
袋の中にカンカンと、軽く鳴る音が、重たく耳に届いて、意識にぶつかる。
音を振り切るように、暗い玄関を歩き、暗いキッチンを通り過ぎ、暗いリビングのソファの腰を落とした。
プシュッと、空気が抜ける音に続いて、臭うアルコールの嫌な香り。消毒液の苦手な娘なら、そんなものとっとと捨てろ!とでも言うだろうか。
生前の思い出がチラつき、それから逃れる思いで、グイッと缶を垂直に傾け、気づけば空になっていた。
頭から足の指の先まで、体がほたっているのを感じるほど、着ているネクタイまで黒いスーツに首が締められる感覚。
酸素が行き届かなくて気絶するように、目を閉じた。
全てが暗いままだった。
暗がりの中で
赤ちゃんの寝顔を見て
ほっこり癒やされました
暗がりの中で。
暗い、明るい。この表現は、物理的なものだけではなく、精神的なものにも使う。「暗がりの中で」というお題で脳をよぎったのは、洞窟を抜ける非現実的な映像と現実的に直面する状況。今回は後者の話。
暗がりの中で人がすること、出来ることというのは限られている。少ない光を頼りに行動する。おそらくそれが限界。ただ、暗がりだからこそ休まる状況もある。個人的には、嫌いではない。ただ、こと精神的なものになると別の話。
精神的に「暗がりの中で」何かをするというのは負担が大きい。少ない光の中でもがいているような状況に近いかもしれない。頼れるものが少ないのか、抜け出せる手立てが見つからないのか。いずれにせよ早く抜け出したいものである。
暗がりの中で、何を探しているのか。それは人・状況によりそれぞれ。目的は違うものの、「暗がりの中で」というように、完全に暗くはない。暗くなっていくのか、明るくなっていくのか、それはわからない。
それでも今は僅かにでも光がある状況なのは間違いない。その光を逃さず、今出来ることをやるのがベストなのでは、と私は思っている。
暗がりの中の洞窟を抜けると、新しい景色が見えるはず。雪景色が見えてくれば、それは小説の世界。
私は小さな光を見つけました。その光はとても優しくて不思議で、私は吸い寄せられるようにその光に向かっていきます。
わたしはひとりっ子で
叱られたりすると
隅っこや小部屋の片隅で
じっと小さくうずくまり
時をやり過ごしていました
その癖が抜けないのか
大人になっても
叱られると
とてつもなく虚無が襲い
やはり同じポジションで
無意識に同じポーズをとっています
私は結局
何も成長していないということか
暗闇の中、少年は一人彷徨っていた
辺りに人影はなく、ただ木々が等間隔に並んでいた。ここはどこだ?早く家に帰りたいと思いながらただひたすらに少年は歩いた。彷徨っていた場所は丘と言っても言いような低めの山だったようで、歩き始めてから数分で無事、道に出てこれた。しかし歩道がない、辺り一面道路と畑だけだ。一応家もあるが一軒も光はついておらず、只々不気味でしーんとしていた。少年は焦った、どんな道を通って来たんだっけ?何故だか急に思い出せない。かゆいところに手が届かない?そんな気分だ。あー、不安だ。怖い怖い怖い。家に帰りたい。
家に、帰りたい。そうだよ、僕は家に帰りたいんだ。
あれ?そうだ、そうだった……そういや燃えたんだった、僕の家。僕の体ごと。
#暗がりの中で
「にゃ~ん。」
影響のない奴が家にいた!
私はビタミンAの摂取が足りないのか、暗がりに弱い。
夕方なんか完全に目が霞んじゃって、字が読めない。
…歳のせいか?
猫は暗闇でも目が見える。
瞳孔を開いて調整出来るらしい。
しかも瞳孔開いた猫の可愛さは昼間の十倍とも言われている(私に)。
猫が可愛く見える暗がり。
やはり自分の視感度を上げて、その可愛さを堪能したい。
暗がりの中で私は、目の健康サプリに思いを馳せるのだった。
電気つけろ。
暗がりの中で、何を思うのか
ただ、フカフカの布団に身体がふんわりと沈みこむと
あまりの気持ちよさと、襖のすき間から漏れる明かりにどことなく秘密基地のような雰囲気もある。
こんなに暗いのに、懐かしさと、ホッと安心できるような感覚は一体なぜだろう。
時間になっても戻らない幼い私を探して、押入れの襖を開けた家族は「ここに潜り込んだのか」と私を抱き下ろしてくれた。
いくつものの布団を仕舞い込んでる押入れは、いつだって私の大好きな場所だった。
大人の身体になった今も時々、小さな子どもの身体に戻れたなら、あの秘密基地に行きたい。
自分の部屋のベッド。ほのかな間接照明だけが灯された薄暗がり。寝る前の静かな時間。私はこの時間と様々な思い出を共にしてきた。
しんどい部活で疲れ切った日、
好きな人とのラインを見返して一喜一憂した日、
お付き合いしてた人に酷いことを言われて泣いた日、
反抗期で当たりたくないのに親にあたっちゃった日。
1番素直に自分と向き合える時間。
人に見せる自分とはきっと違うけれど、これも私。全部わたし。
考えすぎって思われるくらい小さなことに傷ついちゃう私だけどそんな私でもいいですか?
誰もわかってくれないなんて言わない。私には私がいればいいんだ。自分の一番の味方であればいい。
「もういいよー!」
ロッカーの中に縮こまった私は鬼役の友達に合図を送る。放課後暗くなった学校で、わたしたちはかくれんぼして時間を潰していた。外は大雨。わたしを含め複数の子供は親の帰りがあるまでこうして遊んでいるのだ。
大雑把な足音が聞こえ、教室の扉が開かれる。友達は教壇に座っている先生に声をかけた。
「せんせぇ、ここ誰か来た?」
「えーそれ聞いちゃダメでしょぉ。範囲だってこの階だけって言っても結構隠れる場所あるし、こんな簡単なところは隠れないよ」
「えぇ〜嘘っぽい」
それとなく否定した先生の言葉は呆気なく見抜かれ、友達はズカズカと教室中を散策し始める。
ロッカーのすぐ近くまで来た瞬間、ピカッと眩しく空が光った。直後、地球がまっぷたつに割れるのではないかと思うほどの大きな音を立て雷が落ちた。反射的に小さく悲鳴が上がる。
「わあっ!!」
「おわー、おっきかったね、大丈夫?」
「うん」
扉の向こうで友達と先生の会話が聞こえる。私は先程の悲鳴が聞こえてしまっている気がして、いっそう体を縮こまらせ息を潜めた。友達は再び散策を始める。ロッカーの前まで足を運んだところで、今度はカチッと電気が消えた。
「うわっ!なに!?」
「あら、さっきの雷かな。ちょっと確認してくるから、そこ動かないでね。危ないからね」
落ち着いた声で先生は注意喚起をし、教室を出ていった。友達は律儀に約束を守り、1歩もその場を動かず黙りこくってしまった。目の前に鬼がいる状態で、視界からの情報もなく自分の心音だけが耳に木霊する。
「......っ、」
潜め続けた息はそろそろ苦しくなってくる。わたしはギュッと目を瞑った。数秒後、こんこん、とロッカーをノックする音が聞こえた。やはり先程の悲鳴が聞こえていたんだろう。わたしは妙に安心し、笑顔で勢いよく扉を開けた。...だが、そこに友達は居なかった。それどころか、教室が無かった。机も、黒板も、窓も。床でさえも飲み込んだ深淵は、今度はわたしを飲み込もうと大口を開けていた。
[題:暗がりの中で]
暗がりの中で私はうずくまっていた…
すると君が手を差し伸べてくれた。
それがきっかけで私は生きてる。
変わるんだ。
ただただありがとう…
暗がりの中で、もがく。
光がどこにあるのかもわからない。
それでも、もがき続ける。
もがいてあがいて、出口を探し続ける。
目指すべき姿を、歩みたい道を、
自分だけの生き方を。
涼しい秋の夕方、僕は家へと帰る。夕方といっても日が夏よりも短くなり夜みたいだ。夕方と夜の境は時間なのか、はたまた日が空に出ているかどうかなのか、とかなにやら考えて帰宅している。いつもと変わらない帰り道、暗がりの中、私は家の前に差し掛かっていた。すると、足元で何かがキラリと光った。キラリと光るナニカを取ろうと足を屈めるにつれて期待が膨らむ。中々掴めない、そういえば昨日爪を切ったのだ。高校生が屈みながらナニカを取ろうとしている姿は客観的にみて変だ。僕は最終手段を実行することにした。それは指先の油だ。指の油で取る手段は、ちょっと汚いかなと思い避けていた。道端に落ちているものを拾っている時点で衛生的ではないのだが…べっとりとナニカが僕の指にくっついた。「お金だ!」しかし、お金で間違いはないのだが、真ん中に穴がある。こうなると必然的にゼロのある方が欲しくなる。そこでスマートフォンで明かりを照らしてみると、そこにはゼロのないものがあった。「御縁、縁起はいいよね」と周りに聞かれないよう小さな声で言いながら家の扉を開けた。「ただいま」
暗がりの中で
見えないのは怖いね
でも慣れたら
ちょっとなら見える様になる
まったくの暗がりってないから
あるとしたら人工物
でも作られてるなら何処かに隙間がある
密封するにしても入り口が必要
暗がりで言えば宇宙はそうじゃない
星は光ってはいてもさ
地球も暗がりの中にいるよね
たまたま太陽はあるけど
自らに光を持たない
惑星は光を持たない
恒星は光を持つけれど
光で何も見えない気はする
光と闇があるから見えるわけなんだけど
見える側は光を持たない
光虫はいるね
でも光を何かしらの物質から得てる
生物にしか通じない感覚かも知れないな
人間の人生は暗がりの中で
僅かな灯火をもとに群がっている
暗がりに灯火を灯すものが
暗がりと共に生きている
暗がりとは未知なのかもしれない
緞帳みたいなカーテンが下がる私の部屋は、昼でも暗い。時計はあれど、これはどっちの五時なのか?
枕元に酒瓶と灰皿を置いて、絡まっては眠ってまた絡まって。時々腹が空いて外に出る以外を真っ裸でずっと。カーテンは閉じたまま、灯りは傘を外したテーブルライト(すなわち裸電球)。何日経ったか、外は。
薄く汗の残る背中を眺めながら、あんたの体の形が好きよ、と言った。俺もお前の体の形が好きだよ、と言われた。
骨の輪郭がよく分かる、綺麗な形。あんたに私がどう見えたかは分からないけど。
寝入るまで怪談をし合ったり、半日ゲームでわあわあはしゃいだり、空になっていく酒瓶と、満たされていく灰皿傍らに、楽しいね。
あんたの体も時間も好きだけど、見送った後、数日ぶりの一人も好きよ。
ライトを消して、暗がりの、本物の暗がりの中、目を開いて、ああ一人だっていうこの空間がさ。
なんだか本物なんだなって。
(暗がりの中で)
『闇堕ち』
老人は闇の中 枯葉を踏んだまま硬直してしまった
猫の目で踊るジルバ 進む時があれば止まる時もある
複雑な交差点のようだね 振り返れば別次元 アパレルブランドの紙袋 中身が何かもわからない 冷めた風が髪を揺らすよ 未知なる自分への独り歩き 身体の半分がモノクロームだ 変わってしまう何もかも
【92,お題:暗がりの中で】
壊れかけの蛍光灯が点滅している
生きた人間の気配なんて微塵も感じない、そんな暗がりの中
「兄ちゃぁぁぁん!どこぉぉ!」
ぐすぐす嗚咽を上げながら、年端もいかない少年が歩いていた
「うぅ...ッ...兄ちゃんッ!うあああっ」
いつからここにいるんだっけ、きのう?そのまえ?
まだそんなにたっていない気がするのに、もう何日もここにいるような気もする
おなかすいた、足もいたい、かえりたいよぉ
『#@8/*=?ー=-??;*8@92#(%:』
「な、なに...?」
『#8/+#@ナ、ナ...ナナナニ*%;(?!+』
「だれか...いる?」
『#%&:(イ、イッイイル...イル、イルヨ(%&!=+[』
「...だれ」
『アソボ アソボ』
『コワクナイ コワクナイ』
『コイ コイ』
『オマエ モ ナ カ マ』
「ッ...えっ」
ガッッシャアアッッッン!
窓に映った灰色の満月、それを粉々に蹴破って誰かが入ってきた
赤い髪、左手に構えた霊刀、そして自分に良く似た顔立ち
ビッ
『ヴグォオォ!オッオオオオオマ オマエ モ ツレ[!:):**%))』
...グシャッ
瞬きする間も与えずに、目の前の霊を叩き切った人影
それでもなお呻く肉塊をブーツで踏みつけ、湿った音が響いた
「兄ちゃん!」
「雷、怪我はない?」
暗がりの中、慌てたように駆け寄り聞いてくる
「平気!」と答えると「良かった」と安堵し、それからすぐ表情を引き締めた
「早く外に出て!そこの階段を下りてすぐだから!」
手を引かれ階段を駆け降りる、外に出た瞬間後ろの建物が地響きを立てて崩れた
「あ、危なかったぁ...」
心の底から安心したような笑顔で笑う兄
雷も釣られて笑い、ふと自分が今すごく空腹なことに気付いた
「お腹空いたね~、雷どっか行きたいとこある?」
言う前に先回りされ少々驚いたが、何でもいいと答える
「じゃあ、お寿司とか行ってみよっか」
暗がりの中、手を繋いで歩く兄弟の姿があった
暗くざらつく視界より
手のひらを滑る肌が色濃く
鮮やかに脳裏に焼き付く
(暗がりの中で)
疲れたら言うんだよ。っていつも言ってあげたかったけれど、そうしてもきみは逃げられるわけじゃなかったから、遂に今日の日まで言えなかったな。立ち止まってしまった足を動かしてあげられるほどのじょうぶさはもう捻り出せないから、手を繋いで、多分つまんないとは思うけど、これからたくさんのありえないような話をするね。きみはこんなところでくたびれて座り込んでいるのが好きじゃあない人なのは知っているから、おんなじ気持ちでしなやかに寄り添ってはあげられないや。
でもいいんでしょう。きっと一人よりいいんでしょう。いつかきみがまた立ち上がって、この深い底のところから立ち上がってさ、もう一度太陽の光をさんさんと浴びて、気持ちよさそうに伸びをするまで一緒にいようね。そうしていつか、きみが隣にいるくだらない人間のことに気付いたら…、
眠りたいなら言うんだよ。つまんないとは思うけど、ずっと話していてあげるから。