ノナメ

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涼しい秋の夕方、僕は家へと帰る。夕方といっても日が夏よりも短くなり夜みたいだ。夕方と夜の境は時間なのか、はたまた日が空に出ているかどうかなのか、とかなにやら考えて帰宅している。いつもと変わらない帰り道、暗がりの中、私は家の前に差し掛かっていた。すると、足元で何かがキラリと光った。キラリと光るナニカを取ろうと足を屈めるにつれて期待が膨らむ。中々掴めない、そういえば昨日爪を切ったのだ。高校生が屈みながらナニカを取ろうとしている姿は客観的にみて変だ。僕は最終手段を実行することにした。それは指先の油だ。指の油で取る手段は、ちょっと汚いかなと思い避けていた。道端に落ちているものを拾っている時点で衛生的ではないのだが…べっとりとナニカが僕の指にくっついた。「お金だ!」しかし、お金で間違いはないのだが、真ん中に穴がある。こうなると必然的にゼロのある方が欲しくなる。そこでスマートフォンで明かりを照らしてみると、そこにはゼロのないものがあった。「御縁、縁起はいいよね」と周りに聞かれないよう小さな声で言いながら家の扉を開けた。「ただいま」

10/28/2023, 3:07:48 PM