涼しい秋の夕方、僕は家へと帰る。夕方といっても日が夏よりも短くなり夜みたいだ。夕方と夜の境は時間なのか、はたまた日が空に出ているかどうかなのか、とかなにやら考えて帰宅している。いつもと変わらない帰り道、暗がりの中、私は家の前に差し掛かっていた。すると、足元で何かがキラリと光った。キラリと光るナニカを取ろうと足を屈めるにつれて期待が膨らむ。中々掴めない、そういえば昨日爪を切ったのだ。高校生が屈みながらナニカを取ろうとしている姿は客観的にみて変だ。僕は最終手段を実行することにした。それは指先の油だ。指の油で取る手段は、ちょっと汚いかなと思い避けていた。道端に落ちているものを拾っている時点で衛生的ではないのだが…べっとりとナニカが僕の指にくっついた。「お金だ!」しかし、お金で間違いはないのだが、真ん中に穴がある。こうなると必然的にゼロのある方が欲しくなる。そこでスマートフォンで明かりを照らしてみると、そこにはゼロのないものがあった。「御縁、縁起はいいよね」と周りに聞かれないよう小さな声で言いながら家の扉を開けた。「ただいま」
校庭が広がりその奥には山。山の上に煙突があり山の下には河が流れている、いつもと変わらない景色。今日は雨上がり、虹がかかった。何か良いことあると良いいなぁ。
僕は日曜日の午前中わざわざ椅子を窓際に寄せカーテン越しの柔らかい陽射しを浴びていた。突然インターホンが鳴った。両親は朝早くから買い物に出かけ、家には僕1人しかいない。重い腰を上げてインターホンを確認してみると’’君’’がカメラ越しにこちらをのぞいていた。同じクラスの女の子、斜め前の席で同じ班の名前は〇〇ちゃん。いつも不思議なオーラを纏い休み時間は読書をしているような子だ。比較的に周りの子と比べて活発な僕ではあるが、君の雰囲気は嫌いではなかった。しかし、名前で呼ぶほどの仲ではないし、かといって名前で呼ぶのがなんか小っ恥ずかしい気もあり僕は彼女のことを’’君’’と呼んでいた。ドアを開けると君は手提げ袋の中に本を一冊入れていた。どうやら先日僕が君と話す口実として貸した本らしい。君が僕の家に訪ねに来てくれた。この現状が僕はとても嬉しかった。そして、僕は君を家に招き、気がついたら君は僕の部屋に座っていた。それはあっという間のことで、僕は君のことが好きなんだと確信した。
雲行きが怪しい、僕はそう思った。
そうなのにも関わらず学校の貸し出されている傘を横目にしながら昇降口を出た。昇降口から3、4歩ほど歩くと小雨、それから5、6歩歩き、校門を前にすると自転車置き場のトタン屋根を打ち付けるような雨が降ってきた。
僕は、こんな妄想をする。後ろから女の子が駆け寄ってきて傘に入れてくれるのではないかと、そんなことがあるはずがないのはいうまでもない。主観的に見れば僕は妄想の世界で女の子に傘に入れてもらっている、しかし、客観的にみると僕は雨に佇み、妄想によりやや口角を上げてるただの変人だった。
私の日記帳なんてない。
自分の1日の生活なんて記録するほどのことがないとかではなくて、普通にめんどくさいからだ。
ここで言う普通は自分を基準としたちっぽけな普通だ。
めんどくさいという理由だけで今までの人生で自分の選択肢を狭めてきた。これからもそうして生きていくのだろうか、でもめんどくさいが減っていけばいいな。