『時間よ止まれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
満ち足りて
幸せな気持ちの
今このとき
時間よ止まれ
とは思わない
この幸せが
ずっとずっと
続きますように
………時間よ止まれ
痛いくらい
冷たい
指先から
温まった
心の真ん中まで
マイナスも
プラスも
ひっくるめて
包み込んでいるのは
ぜんぶがあなた
世界が終わってもいいな
明日が来なくたっていいな
あなたがいないのは嫌だな
そんなかんじで
今日も今日とて
愛してるだなんて
ぜったい言わない
今日もとても幸せ
前の方が好きでいてくれた
前の方がドキドキしてくれた
時よ止まれ
もっとあなたの傍にいたい
時間よ止まれ
今日は私の誕生日
時間よ止まれ
時間よ止まれ
今こうして
慌てないでいられるときを
味わっていたいんだ
過ぎた時間は取り戻せないから
大切にさせてくれ
時間よ止まれ
止まっておくれ
小さい頃のままで
ずっとずーっと止まっておくれ
みんなと楽しく
遊ぶんだ
子供の頃は
「大人になりたい」
大人になったら
「戻りたい」
けれどそれでも少しずつゆっくり
前向こう
それだけで偉いよ頑張った
周りの皆
自分自身
全員幸せ
なりたいな
時間よ止まれ
永遠の今なんていらない。
でも、せめて今日がもうひとつあればいいのに。
これから起きるかもしれないこと、親がいなくなること、誰に頼れなくなること、病気になること、友達と会わなくなること、あまり政治も機械もわからないこと、若いだけで許されていたことが許されなくなることがたくさん起きる。それが怖い。
【時間よ止まれ】
また同じ夕暮れを繰り返す。
長く伸びた二つの影。手を繋いで夕陽を追いかけた、いつかの朱い空の下。
「もうすぐ日が暮れてしまうの。さよならだ」
「さよならはやだな。帰りたくないよ」
暗くなる空に文句を溢し、もう少しだけを繰り返す。
いつもと変わらない光景。昨日と同じ二人の細やかな望み。
「このまま時が止まってしまえばいいのに」
「ずっと夜が来なければ一緒にいられるのに」
ね、と二人顔を見合わせて笑う。
そんな事はありえないと知っているからこそ言える、他愛のない言葉。
つかの間の別れを惜しみながら、また明日の約束をしてお互いに帰る。
そうなるはずだった。実際明日は来るはずだったのだ。
長く伸びた一人の影の先が、苔むし朽ちた碑にかかりさえしなければ。
―― カナエテアゲル。
ざらりとした、耳障りな応える声が聞こえ、一人の姿が掻き消える。
繋いでいた手を失い、彷徨うもう一人の手を置き去りにして。
閉じられた一人は、同じ夕暮れを繰り返している。
ぱりん、と何かが割れる音がした。
見上げた朱い空には罅が入り、ぱりぱりと音を立てながらその罅を広げていく。
まるで落として割れた硝子玉みたいだ、と閉じられた子は思う。
それ以上には何も思う事はなかった。同じ夕暮れの中で擦り切れていった心は、酷く鈍磨になってしまっていた。
広がる罅をただ見つめ。その先の怪しく光る黄色の何かに目を瞬く。
黄色。けれども白のようでもあり、赤にも見える不思議な丸い何かが大きな月だと気づいた時には、すでに空は粉々に割れていた。
「迎えに来たよっ!おまたせぃ!」
懐かしいようで、記憶のそれよりもずっと低い陽気な声が、割れた夜空の向こうから振ってくる。
にやり笑い手を差し伸べる青年に、あの日のもう一人の影に重なって、恐る恐るその手を取った。
「よし、行こう!さっさと行こう!」
―― イカセナイ。
閉じられていた子の伸びた影から声がする。ざらついた雑音が影を依代に、形をなして現れる。
手を掴まれる、その瞬間。
「行くんだよ。邪魔すんな」
笑みを消した目の前の青年が、腰に差していたナイフを抜いて影へと躊躇いなく投げつけた。
ぴしり、と音がして。影に罅が入る。
声も出せずに崩れ落ちていく影を冷めた目で見下ろして。けれど次の瞬間には再び笑顔を浮かべて子を、あの日失ってしまった友人の手を話さぬようにしっかりと繋いだ。
「これで邪魔されなくなったな!よかったよかった」
繋いだ手を引いて歩き出す。
空が割れ、影が消えた事で閉じていた空間にもあちらこちらがひび割れていく。
「早く帰ろう!んで、おいしいもの食べたり、遊んだり…とにかく一緒になんかしような!」
「なにか」
「そ。なんでもいいや!」
足取り軽く、青年は割れた空の向こう側へと歩いていく。手を引かれるままの友人は、擦り切れた心でかつてのあの手を繋いだ影を思い出し。今手を繋ぐ彼との差異に、戸惑うように目を瞬かせた。
夕焼けの向こう側。猫の目のような不思議な色を湛えた、望月の妖しく輝く夜の下へ。
繰り返していた擬似的に止まっていた時間が、正しく流れていくのを感じる。聞こえてくる虫の声に、吹く風の涼しさに夏の終わりを知り、繋ぐ手に縋るように力が籠もる。
振り返るその場所に、夕焼けは欠片も見つける事が出来ず。ただ苔むし朽ちた碑が粉々に割れているのが見えるだけだった。
「あれからさ。いろいろあったんだ。いろいろあって、一人になった。でも新しく出会いもあって、師匠って呼べる人もできて、たくさん出来る事が増えた。だから夕焼けを壊して助けられた」
「師匠」
「ん。すごい人なんだ。なんでも出来て、何でも知ってる。優しい人」
「優しい、人」
見上げる目と見下ろす目が合う。変わってしまったと、同じではないのだと示すその差に、手を離しかけ、手を強く繋がれる。
「師匠に会いに行こう。で、一緒に生きていこうな」
「生きて、いく」
言葉をただ繰り返す友人に、青年は強く頷いた。
足は止めない。彼が生きてきた時間と同じように、前に進み続ける。
「もう二度と時間が止まってほしいなんて我が儘言わないからさ。だから一緒にいよう?」
「一緒に、いる」
―― あの子のように。
繰り返す言葉の後に続く囁きを、必死に聞こえないふりをした。
笑って、誤魔化して。都合の良い言葉だけを拾って、大げさに繋いだ手を振って歩いて行く。
止まる事なく流れていく時間と、繰り返し停滞していた時間。
多くを経験し大人になった青年と、夕焼けに囚われ子供のままの友人。
けれどその実、青年の心は擦り切れた友人のそれよりも壊れている。あの夕暮れ時に今も置き去りにされている。
「これからはずっと一緒だ。ずっと」
何度でも繰り返す。言い聞かせるように、呪いのように。
月に照らされた青年の表情は、笑っていながらも。
一人残されて、泣いているようにも見えた。
20240920 『時間よ止まれ』
わあ、幸せ!鍵を探し当ててしまった。旅の結末を迎えて扉がきぃと開いてしまったみたいだ!これがエモーショナルの頂点だね。上がりきってしまえば下がる温度。ああどうか時間よ止まれ!積み木を崩さないで!
不安定だ。ミルク溜まりの迷宮を指先のスプーンで転がした、砂糖よりははちみつが好きだ、このときは。夢見る獏みたいに眠りに矛盾を抱えてしまうけどほんの人生を歌うように鳴らす銀のベル。
おさない夢は覚めてそのことを嘆くばかりしないで、手のひらに握った一番星でふわふわのクリームを買おう。それでがんばってかき混ぜて、とびきりのケーキを贈りましょう!そんな素敵な未来が来るから!終わりなんかじゃないから!!
-時間よ止まれ-
気づいたら更新時間…
時を止めたい気分
更新したいけど、ジャンプの某マンガのスタンドが頭に浮かんで離れないので、もう暫く考えます。
だいぶ人を選ぶ内容になってしまったので一部のみの公開に致します。すみません。
──止まれ、とまれ。
頼むから、止まってくれ。これ以上は死んでしまう。
「ことわる。おまえのそんなかおは、めったに見られない」
もう無理だって。親より先にあの世に行きたくはない。
「いやだ。もっと、みせろ」
ほんとに、まじで、もうやめろって。心臓がおかしくなる。
「おかしくなったら、医者をよんでやるから、あんしんしろ」
「っこの……! 安心できるわけねえだろうが!」
思わず大声を出しても、ぽやぽやしながら首を傾げるだけ。その様子に気が抜けてしまい、椅子の背もたれに思いきり体を預けて深い深い溜息をついた。
***
「じかんが、とまれば、いい……」
「え?」
伏せられていた水色がこちらを向いて、とろんと融けた。
「そうすれば、ずっと……おまえといられる」
2024/9/23 #5
時間よ止まれ
願うは彼の幸せ。
我、寸秒の間、流星に想いを告げる。
いつの日か、もう覚えてはおらぬが、人伝で小耳に挟んだ話がある。
其れは、「流れ星に三回、願いを唱えるとその願いが叶う」と、云うあくまで噂話だが。
まあ実に、胡散臭い話であろう。自覚はしている。
しかし、そうも云っていられなくなった。
我に出来ることはこの程度のもの。
無心に願いを唱えるが、流れ星は異様にはやい。
それもそうか、と納得するも、これでは三回どこか、二回も願いを唱えることが出来まい。
あゝどうか、時よ、時間よ
(我ながら雑な締め方だな。時期も普通、七月とかだろうに。)
『時間よ止まれ』
そう思う時は生きてる中で沢山あった
例えば——
《あれ?もう写ってる??》
《マジか、じゃあ話すかー》
学校の宿題をやり忘れた時や
みんなの前で思いっきり転んだときとか
《俺たちが初めて会ったときはさ——-》
めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、時間が止まればいいなんて、出来もしない事を考えた事なんて無かったんだ
なのに
君はいつも何かに失敗した時や嬉しい時は
『時間よ止まれ!』
なんて言ってたね
《—でさ、うーん、いざ考えると難しいね…》
その時はなぜそんな非現実的な事を思うんだろうって思ってたさ、なのに今は—-
《あ!お前と初めてケンカした時!》
《いやーお互いが初めての友達だったじゃん?》
《だから、お互い謝り方とか分からなくてさー》
《————-って事があってやっと仲直りできたよなぁ》
《でさ、そん時に変だけど》
《いやーこのまま》
《時間が止まればいいのに》
「時間が戻れば良いのに」
なんて、出来もしないと分かって居ながら願ってしまう位には、
《なんて思ったりしたわー》
「君の事が好きだったよ」
————————————————————————————
《》→ 動画の中の友達の声
「」→ その動画を見ている人の声
君が病気で余命宣告までされてるんだって聞いたとき
正直、生きた心地がしなかった
病気なんて嘘で、余命宣告もされてないんだってそう、言って欲しかった
でも、君はなんてことないように笑って言ったんだ
本当なんだって、嘘なんかじゃ…ないんだって
どうして君が…って目の前が真っ暗になったよ
本来そうなるのは君のはずなのに、いやそう思いたいだけなのかもしれないけど
君はいつも言っていたもんね
死ねるのならそのまま死にたいって
だからこのまま死なせてあげるべきなのかもしれなかった
まぁすぐに諦めるなんて、無理だったんだけど
君の死が近づいてくる、こわくてこわくて仕方がなかった
そしたら君は言ったんだ
そんなに顔しないでよ、生きててあげるからって
それでも簡単には信じられなかった
時間なんて進まないで欲しいって止まって欲しいって思ってもいたんだ
だからさ、君が余命宣告された次の日にも元気に生きてるのをみて泣けてしまったんだ
それで…って、
はぁ、ねぇ聞いてる?
君の話だよ、君の
まぁ、いいけどね
…今日も、生きててくれてありがとう
置いて逝かないでくれて、ありがとう
君がいるのなら時間なんて、止まらなくていい
【時間よ止まれ】
「時間よ止まれ」
「かがみよかがみー!じかんよとまれー!」
……なんかいろいろと違う。
「何で時間を止めたいんだ?あと自分は鏡じゃないんだけど。」
「えほんのまねー!」
あー、ちょっと前に絵本の読み聞かせをしたんだっけ。
子ども向けの絵本なんか置いてたはずないんだけどな。
あと、「時間よ止まれ」なんていうセリフのある話なんかあっただろうか。まあ子供のことだから、何かが混ざってああなったんだよな、多分。
「時間よ止まれー、はわかんないけど、『鏡よ鏡』のあとは『この世でいちばん美しいのは誰?』だったと思う。」
「そっかー。」
「じゃー、このよでいちばんかわいいのは だあれ?」
白雪姫ごっこか。仕方ない。
「この世でいちばんかわいいのはあなたですー。」
「ほんとに?ほんとにー?!!」「勿論ですともー。」
「やたー!ありがとー!うれちい!」
「でもねー、おとーとも かわいい、でちょ?」
「……そうですねー、かわいいですねー。」
「おんなじくらい かわいい、でちょ!」
「おっしゃる通りですー。」「わーい!」
「じゃー、だっこちてくらしゃい!」
「はいはい仰せのままに。」
重くはない。けど決して軽くもない。
「えへへ〜!」ご満悦って感じか。
「あ!じかんよとまれー!」「え」
「ボクがいいよー、ていうまでとまっててね!」
「あー、そういう……。」
「ボクねー、おとーしゃんにいぱーいえほん、みしぇてもらったの!たのちくてだいしゅきなのー!」
「へー、そうだったんだ。」「んー!」
「しょれでねー、じかんをとめるえほんがあってねー、うちゅーのおけがをなおすのー!」
「いいこといぱーいしゅるえほん なの!」
子どもの言うことむずいな……。時間を止める能力を持つ主人公が人知れず宇宙のトラブルを解決していく……ってどこかで見たことあるような……。
「ボクもおちごと、ちたいなー。あと ごじゅうねん だめだめなのー……。」
「まあ、お兄ちゃんなら大丈夫だよ。」
「ほんとー?!」「きっとね。」
「んー!」何か言いながら自分の胸に顔を埋める。
なんて言ったんだろう。
「そ、そろそろ動いてもいいかな……?う、腕が……。」
「えー!や!もうちょっと!」
怒ってるときの膨れっ面も……かわいい。
明日は絶対筋肉痛だなー。
そう思いながらも、自分は小さな子どもを抱きしめた。
「前回までのあらすじ」(番外編)───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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時間よ止まれ。
心のなかで念じたら、本当に時が止まってしまった。
えっ、ウソ、あれっ。
内気な小学生は保健室の中で慌てている。
自分以外の人間は皆、音が溶けるのを待つ指揮者のように静止してしまった。
体重計に乗ろうと片足立ちになっている生徒。
身長計の棒を下ろしている最中の、看護師と生徒の対話。集団行動の静寂になっていない静寂。
体重を測り終わって友達の輪に合流し談笑している集団。口を開けたままニヤつく同級生。
戸惑いつつも、強制静止の食らった保健室の隙間を縫い、廊下に出る。やはり時は止まっている。
次のクラスの見ず知らずの人たちが、列をなしている。林立する彫刻の森のように。
無造作に並べられ、視線があちこちに飛んだままになっている。
保健室に戻り、ドアを閉めた。
彼女はくくっと声を出し、そして笑った。
とても気分が良かった。
自分以外のみんなが止まってしまった。
面白い、面白い、わっと笑う。
学校でこんなに笑うのは、初めてかもしれない。
ざっと記憶を見積もっても、少なくとも3年は経っているだろう。
嫌な奴、嫌な奴、嫌な奴。
私をいじめた。見捨てた。見て見ぬふりのクラスメイト。先生。教頭。校長。
保健室に逃げ込み、保健室登校をしようとしたのに、慰めるどころか上から目線で説教をした保健室の先生。親指のような器の小さい親。
彼女が好きなのは勉強くらい。黒板くらいだった。
でも、この日は不運なことに、大好きな算数の授業を潰して、健康診断をしている最中である。
小学生は目が悪くて、壁にかけられたランドルト環がぼやけて上下左右がわからなかった。
わからなくてわからなくて仕方がなかった。
目を凝らしても見えない。
そんな精神でいられない。
こんなの、見えたって意味がない。
そろそろメガネを作らなければ、という現実を殺したかったから念じた。そしたら止まった。
夢を見ているかもしれない。それでもいい。
色のない世界に生きていたんだから、時が止まったっていいじゃない。ねぇ、そうでしょ?
近くの彫刻に足を運んだ。
特に見覚えのない命だった。
手のひらを伸ばし、指が触れた。
硬い。それはそう。
彫刻の顔、耳、エラの部分、下顎、そして首。
首に手をやる。
リボンを結ぶときのように。
将来のための新婚ごっこをするように。
ネクタイを結ぶように。
両手を添えた。
そして、一気に力を込めた。
握力計を両手でズルをするように……
……破片が散らばっている。
うわばきを履いているのに足元が痛い。痛いという感覚が罰として下った。身体を貫いてくる。
でも、いいや。
投げ飛ばすように赤いうわばきと赤いソックスを脱いだ。裸足のまま歩く。
それから1000年くらい、彼女は神さまのせいにした。
こうなったのは神さまのせい。
一人って、こんなにも楽しいんだ――と、まだ一人で笑っている。彫刻の首を縊(くび)り殺して回っている。
【時間よ止まれ】
「雨降ってきたんだー。私、傘忘れちゃったなぁ」
「傘 持ってるけど、一緒に帰る?」
放課後、校舎の下駄箱で、偶然帰路が重なった
勇気を出して掛けた一言で、傘をもっていなかった君と傘を共有して帰ることになった
隣同士で一つの傘を差して歩いている今この瞬間
もう少しで君と肩が触れそうになるかもしれない
この時だけは空からこぼれる雨の雫がゆっくりに見える
心臓の鼓動が少し早くなっている気がする
たまには雨も悪くないかもしれない
もう少しこの時間が続けばいいのに
『時間よ止まれ』
心の中で静かにつぶやいた
"時が止まればいいのに"
誰だって一度は思ったことがあるだろう。
時間は有限で、なりふり構わず流れ続けるから。
では、どんな時を止めたいと思う?
課題が終わらない時?
休みの日の時?
何かに集中してる時?
寝ている時?
人それぞれ、たくさんの時が思いつく。
時間を無駄にはしたくないから。
…自分は、どんな時間を止めたいと思うかって?
はっきり言うのは難しいけれど
ひとつだけ、言えることとすれば──
幸せな、時間。
…だろうか。
時間よ止まれ
地下へ続く階段を降り、土煙の中を進むと岩や土でできた城跡にたどり着く。キャンプとしている街をバイクで出てから3時間。やっとここまで来た。この城跡のどこかに時が止まった部屋があると言われている。何人もの考古学者が城跡の中を探したがいまだに見つけた人はいない。
時が止まった部屋がどこにあるか、どんな部屋なのか誰も知らないため、発見できれば世紀の大発見につながり、私は考古学の世界で名をはせることができる。
「博士!こっちに下へ降りられる階段があります。」
階段?誰も降りたことのない空間だ。階段は大きな岩を動かした下に入口があり、暗闇の底まで続いているようだった。
「降りてみましょう」
私のチームのリーダーが手にランプを持って階段を降り始め、私もその後を続く。
気持ちは早るが、足元が悪く降りて行くにも時間がかかり、ゆっくりとしか進めない。階段を降りて行くと部屋のような空間に着くが、ランプ1つだけでは全体の様子が掴めない。
「手分けして調査を始めましょう。何かあれば声をかけて下さい。ここが時が止まった部屋なのかもしれない。」
土でできた部屋はかなりの広さがあったが、人が生活していたような形跡はなく、ただ広い空間が広がっていた。
部屋の真ん中辺りに大きな岩があり、岩の中がくり抜かれていた。その穴の中には氷でできた箱のようなもので囲まれたバラの花が数本咲いていた。
ここは、水もない砂漠のような場所だ。こんな場所で植物は育たない。それにこのバラはいつからここにあるのだろう。バラは時が止まったように鮮やかな赤を讃え、みすみずしく生き生きと咲いていた。
「このバラが何か、ここにベースキャンプを置いて明日から調査を開始しましょう」
バラを中心にしてチームの隊員たちがテントを張ったり、調査の準備に取り掛かった。
あのバラは、水もないのになぜ枯れないのか。ずっと永遠にあのままの美しく姿で咲き続けるのか。あのバラを調べれば、永遠の美しさが手に入る。まだ誰も知らない何かがある。私だけが知ることのできる不老不死。そうだ。調査の始まる前にバラを持ち帰り私だけで調べてみればいい。
ああー
時間よ止まれ。私は不老不死を手にできる。私だけの魔法だ。
私はバラの氷の箱に手をかける。
そして時間が止まる。
心臓の鼓動も聞こえない。