『時計の針』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ぐるりぐるりと回ってくれればいいと思う。
そうすれば彼と会う時間になるのに、何度見ても時計の針は全然進んでいなかった。会えないこの時間がもどかしいけど彼と会えた瞬間に勢い良く回る。それは反対であって欲しかった。
だから、行動をゆっくりにしてみることにした。
ゆっくりゆっくり歩いて、休憩に入ったカフェではメニュー表とにらめっこして時間たっぷり使って。カメ、ほどではないけどのんびりしてる。時間も私に合わせてくれればいいのにやっぱり時間はあっという間で、不平等だ!なんて心の中で叫んでいた。
別れ際になっても悪あがきをして歩調を保っていた。
「今日は何してるの?」
彼は急かすことなく歩幅を合わせてくれるから私の行動がおかしいことに最初から気付いてたんだと思う。デート中に水を差さないようにして帰り際で聞いてくれる。
「あなたと会ってる間って時間がいじわるだから…」
時間を遅くさせようと足掻いてました、とはあまりにも幼稚な考えかもと口をつぐんでしまった。ひらめいた時はなんとなく名案だと思っていただけにいざ彼を前にすると…。
子どもっぽいなと感じてしまって。
何時もよりゆっくりな私の動作がすでに我が儘を言っているようなものだった。マフラーに顔を埋めて、視線はあちこち。繋いでいるのは手袋だから私の頬や手がいかに熱いかなんて彼は知りもしないのに。
「もっと居たいって聞こえた」
「そう、なの」
恥ずかしなくなって手を離そうとすると彼は手袋ごとポケットに突っ込んだ。しっかり掴まれてて引き抜けそうになくて。
「離すのは家に着いた後かな」
帰り道とは別方向、私に歩幅を合わせたまま彼の家へ向かっていた。
『時計の針』
ノートパソコンに開いた白紙のエディターと見つめ合ってからずいぶんと経つ。散歩には行ったしコーヒーもまあまあ飲んだので気分転換はもうできない。明日やろう作戦は期日が迫っているのでもう効かない。時計の秒針が立てる音が普段は気にならないのに今はやけに気になってしまっている。もう一回ぐらい散歩に行っておこうかと思っていると、どんよりとした曇り空から雨粒がいくつも落ちて部屋の窓をしとどに濡らしたので希望が潰えた。
「雨かぁ」
薄暗くなった部屋から降りしきる雨の様子をぼんやり見つめ、小学生の夏休みの頃から追い込み型が変わっていないなぁとぼんやり思う。のろのろとノートパソコンの前に戻り、とりあえず空白を埋めるべくキーを叩く。次第に筆が乗る感覚があり、これならイケるかもしれないという思いと、いや油断するとケガをするぞという思いとが同時に湧き上がる。ノートパソコンのバックライトが暗くなった部屋を照らし、キーボードを叩く音だけが響く。秒針の音は存在を薄れさせていった。
時間の流れは平等でも、針がどれだけ進むかは不平等。
誰かの針は3で止まって、誰かの針は7まで。
針の止まることがわかっている誰かと、針は止まらないことがわかっている誰かの、そういうふたりのお話しが好き。
時計の針
私は、針を進める事しかして来なかった。
私は、
針を進める、だけしか出来ずに恐怖していた。
私は、何も変わっていないのに
只只、針が進んでいる事に気がついた。
私は、何も変わっていない。
ふと、周りに目を向けるとみんな幸せそうに育んだ根も育ち、みんな私の事なんて忘れてしまっているのかも知れない。
けれどそれは、私が拒んで選んだ道。
振り返ると何も残されていない暗い夜道
私の限り有る道の先は、まだ不透明で光が消えた暗闇先を見通せず。
怯え壁に手を当てそれでもゆっくりゆっくりと進んで行かなけれ行けないのかも知れない。
この先が破滅だとしても、手のひらの中で光る。
小さな、小さな、
砂粒みたいな光だとしても
ツバメ.2024/02/07
時計の針が刻々と進んで、時の流れを感じる。
時の針が優しく導いて、心の旅路を照らしてくれる
過去も未来も束の間の時。
ただ今を生きることを示す時計は、ただ時を刻む。
当時の私は香港をぶらぶらするのが好きだった。
行来行去と書いて、ハンレイハンホイ…行ったり来たりでぶらぶらだ。
香港行きの予定を聞き付けた仲の良い先輩が「ちょっとお願いがあるんだけど」と腕時計の特集記事みたいな紙片を見せて寄越した。
美しいロレックスの写真がこれでもかと並べて紹介している。
「あのう、香港ってさぁ、ロレックスのニセモノとか簡単に手に入るんでしょう?」ときた。
私は、残念ながらブランド物には少しも興味を感じない性質である。ましてやその偽物がどこにあろうが知った事ではない。
しかし相手は本当に仲の良い先輩だ、美味い酒を何度奢ってもらったか知れない、
「うん、こんなの友達に聞けば訳ないと思います、どのニセモノが欲しですか?」と安請け合いした。
事実、それらはあっさりと手に入ったのだ。
女人街(ロイヤンガイ)の小店で先輩から託された紙片を見せたら次から次へとロレックス(のニセモノ)を持って来て見せてくれた。
値段をハッキリ覚えていないが、1個1500円程度だったような…それを3 個ほど求めた。
ニセモノとはいえ、見た目は本当に本物そっくりである。確かによく出来た見た目だった。
しかし、さすがに安いだけあって直ぐに壊れた。笑えるくらい脆い。
秒針は抜け落ち、バント部分はボロボロと崩れた。腕時計なのに付けてると落ちる、こんなもの付けて夜の街に行ったら大恥をかくだろう。
女人街でニセモノ時計を買った後、香港の友達と食事をし、買った品を見せてやった。
意外にも物珍しそうに、シゲシゲと品々を眺めたあと、友人は不思議そうに私に言った、
「どうして日本人はニセモノを欲しがるの?」
しばし返答に困った。
若気の至りである。
ごめんなさい。
何回時計の針止まるだろう
やっと動い出した幸せの時計
幸せの時計は壊れやすくて針がすぐに止まる
今気丈に振る舞っているけれど
空を見上げて。。。
時計の針って見てたらあっという間に過ぎる時もあれば、ゆっけりゆっくり進んでいく時もある
不思議なもんだ
心の余裕と気持ちの問題かな
時計の針
チクタク、チクタク。
時計の音。
時計の針が、12時をまわると、
私の魔法が解けてしまうよ。
魔法使い、お願い、
もう一度、
大好きなあの人のために、
魔法をかけて。
我が愛猫は、強くなるにゃ。
主人様と、にゃーと鳴いた。
にゃんざぶろう
時計の針が進む
別れが近づいてしまう
ハッと後ろを振り返る
終わりを告げる鐘の音
急いでいるのごめんなさい
わたしを呼ぶのは貴方の声
貴方の声を忘れない
貴方との時間を忘れない
『時計の針』
何かに没頭している時は何も聞こえないのに、あの人の返事を待っている時は時計の針が動く音が私を煽るように大きく聞こえてくる。
かれこれ1時間。思いきって聞いてみたのは間違いだったかな。そう思った瞬間、あの人から返事が来た。私は心臓と一緒に体が飛び上がった。
______やまとゆう
「アカウント開設2年目の物語進行をどうするかについては、丁度、考え始めてんのよ」
その点に関してなら、「時計の針」が動き始めた、かな。某所在住物書きは過去投稿分を辿り、呟いた。
使っているのはWeb小説をオフラインで読めるようにダウンロードするアプリ。外部に頼らなければ、どうにもスワイプスワイプで、過去作参照が手間なのだ。
「あと約3週間で、1年分の大雑把な、だとさ」
物書きは言った。
「3週間で、1年分のハナシの方向性、検討……」
俺にできるの?無理じゃね?吐いたため息は誰にも届かず、ただ部屋の空気に溶ける。
――――――
スマホで時刻を確認するようになって、チクタク、時計の針の音をあまり聞かなくなったように感じる物書きが、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。東京に雪積もった次の日、寒い寒い夜のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社は、東京にしてはわりと深めな森の中。落葉樹はだいぶ葉を落とし、フワフワだった筈の枯れ葉の絨毯、枯れ葉のお布団が、
前日の白い白い積雪で、溶け気味のかき氷のように、しゃくしゃく、濡れて微妙に凍っておりました。
神社敷地内の一軒家には、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益豊かなお餅を作って売って、ただいま絶賛修行中。
今日も雪残るなか、唯一のお得意様な人間のアパートに、お餅を売りに行くのです。
心の傷をちょっと治すお餅、悪い風邪をちょっと遠ざけるお餅、朝までバチクソぐっすり眠れるお餅。
色々カゴに詰めまして、お餅を売りに行くのです。
「おとくいさん、こんばんは、こんばんは!」
「すまない。すぐ出なければならない用事がある」
ドアが開くなりお得意様、名前を藤森といいますが、
白いコートに青マフラーで、お急ぎの様子。
「いつもの餅を、いつもの個数欲しい。それとも、明日ならゆっくり話せるが、日を改めるか?」
藤森の手には、中の歯車やネジが見える、上品で落ち着いたデザインの懐中時計が入った小箱。
あれれ、でも、おかしいです。
人間の何倍も何倍も良い子狐の耳に、時計の針の音が届かないのです。どうしたのかしら?
「思い出の時計だ」
藤森、小箱に鼻と耳を近づける子狐に言います。
「これを買った時計屋が、先週店を畳んで、来週には田舎に引っ込むらしくて。店主のご厚意で、最後に一度だけ、急きょ整備してもらえることになったんだ」
それは、雪国出身の藤森が、「懐中時計」に惹かれて上京1年目に買った、少しお高めの時計でした。
運命的な一目惚れをして、給料貯めて節約もして、
数カ月後それを買ったは良いものの傷を付けたくなくて、飾って十数年、動かなくなって。
懐中時計は綺麗なまま。動かない時計の針だけが、流れた時間の長さを教えてくれます。
「時計屋さん?」
「マガミ時計店という店だ。ここと違う区の、」
「キツネ、マガミのおじちゃん、しってる」
「なに?」
「ととさんの病院の、常連さん。どこも悪くないのにととさんとお話して、かかさんのお店のお茶だけ飲んで帰ってくおじちゃん。来週ナガノに帰る」
「長野?」
「キツネ、いっしょに行く。かかさんのお店のティーバッグセット売りつけて、ボーリ、ムサボルーする」
「あのな子狐……?」
くっくぅくぅ、くっくーくぅ。
困惑藤森を放っぽって、コンコン子狐、鼻歌うたいながら尻尾をビタンビタン! フォックスファーのマフラーに擬態すべく、背中をよじ登ります。
「……暖かい」
子狐の人間より少し高めな体温と、リアルモフモフファーの相乗効果で、藤森の首元はポッカポカ。
「へっッ、……くしゅん!」
時折イタズラに鼻をくすぐられて、くしゃみなんか連発しながら、公共交通機関を乗り継いで、
区をいくつか越えた藤森、目的の時計店へ。
その夜お店に預けた懐中時計は、後日チクタク、時計の針の音をしっかり鳴らして、藤森のアパートに帰ってきましたとさ。 おしまい、おしまい。
時計の針。最近はデジタルが多いから時計の針ってなんのことかわからない人っていそう。ジェネレーションギャップってやつだな。
昨日はなに書いたっけな。覚えてないけど最後のほうでちらっと雪がどうのとスノーブーツのことを書いたような気がする。
それで今日も雪がまだ残ってるから寒いし自転車はパンクするしで散々な日だった。
寒い上に不幸が重なるとほんと生きる気力ってやつがなくなっちまうよ。寒いのは嫌だね。
「まず始めに、志望動機とご自身のPRポイントをお願いいたします。それでは右端の方から――」
また、始まった。
僕はこの空気が大嫌いだ。だけど、就職を希望するからには避けては通れない空気。弊社を志望する動機は何ですか。貴方は弊社でどのような活躍ができますか。将来どんなことを成し遂げたいと思いますか。馬鹿馬鹿しい。答えは全部クソ喰らえだ。許せるものならそう答えている、が、寝ずに創り上げた嘘ばかりのエントリーシートの内容を頭の中で思い浮かべながら思ってもないようなことを次々口にする。
「はい。私の強みは、コミュニケーション能力が高いことです」
そんなの分かるわけないだろ。だいたい、コミュニケーション能力って何なんだ。会話のキャッチボールとか空気が読めるのはここにいる皆ができて当たり前のことなのだ。
「御社に採用をいただくことが出来ましたら、何事にも一心不乱に取り組み事業成功の力になりたいと思います」
そんなことは当たり前だ。社会人になるのだから会社の役に立って当然、数字を伸ばして業績を上げなきゃ雇われる意味がない。
「将来は会社という枠にとらわれることなく、世のため人のために様々な活躍をしたいと思います」
だからその“様々な活躍”って何なんだ。そこを具体的に語れなきゃ内定は取れないぞ。上辺ばかりの言葉をペラペラ噛まずに言えたところで何の説得力もない。
もう、何なんだよ就活って。
「はあ…………」
通算何十社めかももう分からない不採用通知メールを受け取った、土曜日の朝。胃と瞼が重くて、とてもじゃないけど部屋から起きれる状態じゃなかった。何の音もしない部屋で、時計の秒針が無機質に時を刻む。かちかちかち、とリズムを崩さないその音が、あの集団面接の時に味わった閉塞感を思い起こさせた。
僕にできることはあるんだろうか。僕は社会に必要とされてるんだろうか。
さすがに、幾度もこけてばかりだと弱気な気持ちも起きてくる。このままじゃいかん、と思い気分転換にラジオをつけた。
『お次のリクエストはー……ラジオネーム“タカシのオカン”さんからです』
うちの母親かよ。偶然にも僕と同じ名前の息子を持つ母親からのリクエストらしい。
『うちの息子が就活でもがいているので是非元気の出るこの曲をお願いします、とのこと。そうよねぇ、今そんな時期だもんね、全国の就活生のみなさんにエールを!ということで聴いてください――』
紹介のあとに流れ出すイントロに目を見開いた。だってこれは、僕が大好きでよく聴いてた曲だ。そういえば最近聴いてなかった。懐かしいなあ。こっちのタカシもこの歌好きなのか。なんかちょっと親近感湧くな。
「へへへ」
いつの間にか鼻歌を歌ってる僕がいる。時計の針の音が気にならないくらいラジオの音量を上げて、終いにはわりと大きめの声で歌い上げていた。この曲を聴いてると自然と元気が出てきそうで、だからすごく好きなんだ。
そうだ、もう少し、やれるんだ。僕はこんなんで潰れるヤワじゃない。
「アイワナビーア君の全て!」
ちょっと休んだら、また僕らしく頑張ろう。
きっとうまくいく。今ならそんな気がする。
『チクタクチクタク』
「お前、何いってんの?」
『え〜?何ってー?』
「だからその、チクタクってやつ」
『なんだろね〜』
「はぁ?うるさいからしずk.....」
『ボクたちの命かもね〜』
時計の針は平等に進む
彼女との別れが惜しい時
友達との楽しい一時
愛しい人との別れの時
止まって欲しくても無慈悲に進む
平等に進むのならばできるだけ
穏やかな毎日を進んで欲しい
その部屋の壁には、無数の丸い形の壁掛時計が架かっている。
あぁ、時計の針がまたひとつ、ひとつと動いていく。私はこんなに泣いているのに。時よ止まれと何度も嘆いているのに。
時は私に寄り添って止まってはくれない
ある日、頼んだ記憶のない変な小包が届いた。
それと同時に知らない電話番号から電話がかかってきた。
「その時計はあなたの[妻終末時計]です。その時計の針が1周したら、あなたの奥さんに何かが起こります。」
それだけ言われて電話は切れた。
小包を開けると、一般的な目覚まし時計のような見た目だが、針が長針だけだった。しかも数字も書かれていなかった。
マンガやドラマとかでよく見る典型的な話だと思った。
だが、笑い事ではない。
妻に何が起こるというのだ?
何か恨みをかったか?
「どうかした?」
妻がおっとりと不思議そうに聞いてきた。
「いや、何でもない。ただの間違い電話だった」
電話の内容を言ってしまうのは、なんとなくまずい気がしたのでやめた。
ふと時計を見てみると、針は1分も進んでいなかった。
あれから2週間が経った。
いまだに時計の針は進んでいない。
ただのイタズラなのだろうか?
そう考えて、あまり気にしなくなった。
ある日妻が倒れた。
単なる風邪と疲労だった。なので病院に行き、薬ももらい、しっかりと休息をとった。
一応時計を見てみた。
「よ、40…分?!」
2週間経ってもびくともしなかった針が一瞬にして40分に到達していた。
「そんな…バカ…な」
妻を見ると、幸せそうに眠っている。
3日が経った。
妻はずっと眠っている。
時計は55分を過ぎていた。
俺は高校で同級生だった、医者になった友達を呼び、診断してもらった。
新たな薬もだしてもらった。
俺はもらった薬を妻に注射した。
次の日、隣で寝ていたはずの妻がいなかった。
時計の針は頂点に到達していた。
すぐにリビングに出た。
そこには何かがいた。
皮膚からヌメヌメした液体を出し、髪の毛は、毛ではなく、何か植物みたいな緑色の筒状のものになっていた。
その何かが振り向いた。
「おまえっ…」
思っていた最悪なことは現実だった。
妻だ。ほとんど原型をとどめていないがそれは確かに妻だ。
目は白目になり、口からは血と唾液の混合液が垂れる。頭には500円玉くらいの穴が何個か空いており、そこから緑なのかピンクなのかわからない液体が無尽蔵に出てきていた。
「どうした?!何が起きた?!」
問いかけても何も答えてくれない。
「誰が?!何のためにこんなことを?!」
妻が近づいてきた。
「どうした?辛いか?」
妻は泣きながら抱きついてきた。
ヌメヌメや変な液体が身体中に付着した。
そんなこと関係なく抱き返した。
「大丈夫だ。俺はここにいるよ」
妻が台所の引き出しを指差した。
「包丁がほしいのか?何をする気だ?」
とても嫌な予感がした。身動きが取れないくらい抱きしめた。
妻は髪を引き出しまで伸ばして、髪で包丁を持ってきた。
「や、やめろ!だめだ!」
妻は俺を引き剥がし、包丁を自分の胸に突き立てた。
俺は手を包丁の先端で刺されながら、包丁をば止めた。
妻は力が抜けたように倒れた。もう放っておいても死にそうなくらい辛いのだろう。
俺は包丁を捨てて、妻の隣に寝て、抱きしめた。
「辛いよな?大丈夫だ。俺がいる」
俺は妻にキスをした。
「ありがとう」
妻がそう言った気がした。抱き合っていると、どんどん妻の力が弱くなっていった。気づくと、妻は死んでいた。
俺は包丁を拾い、自分に刺して、妻をずっと抱きしめた。
「グハハハハハ」
「ハハハハハハ」
病院の病室には2人の男が、笑い合っていた。
「いつも幸せそうなあいつも苦しい声するんだな」
「いい気味だぜ。ハハッ」
時計の針…
眠れずに秒針の音ひびく部屋
あなたのこころで休みたいのに