規範に縛られた軟弱根性無し

Open App

ある日、頼んだ記憶のない変な小包が届いた。
それと同時に知らない電話番号から電話がかかってきた。
「その時計はあなたの[妻終末時計]です。その時計の針が1周したら、あなたの奥さんに何かが起こります。」
それだけ言われて電話は切れた。
小包を開けると、一般的な目覚まし時計のような見た目だが、針が長針だけだった。しかも数字も書かれていなかった。
マンガやドラマとかでよく見る典型的な話だと思った。
だが、笑い事ではない。
妻に何が起こるというのだ?
何か恨みをかったか?
「どうかした?」
妻がおっとりと不思議そうに聞いてきた。
「いや、何でもない。ただの間違い電話だった」
電話の内容を言ってしまうのは、なんとなくまずい気がしたのでやめた。
ふと時計を見てみると、針は1分も進んでいなかった。

あれから2週間が経った。
いまだに時計の針は進んでいない。
ただのイタズラなのだろうか?
そう考えて、あまり気にしなくなった。

ある日妻が倒れた。
単なる風邪と疲労だった。なので病院に行き、薬ももらい、しっかりと休息をとった。
一応時計を見てみた。
「よ、40…分?!」
2週間経ってもびくともしなかった針が一瞬にして40分に到達していた。
「そんな…バカ…な」
妻を見ると、幸せそうに眠っている。

3日が経った。
妻はずっと眠っている。
時計は55分を過ぎていた。
俺は高校で同級生だった、医者になった友達を呼び、診断してもらった。
新たな薬もだしてもらった。
俺はもらった薬を妻に注射した。

次の日、隣で寝ていたはずの妻がいなかった。
時計の針は頂点に到達していた。
すぐにリビングに出た。
そこには何かがいた。
皮膚からヌメヌメした液体を出し、髪の毛は、毛ではなく、何か植物みたいな緑色の筒状のものになっていた。
その何かが振り向いた。

「おまえっ…」
思っていた最悪なことは現実だった。
妻だ。ほとんど原型をとどめていないがそれは確かに妻だ。
目は白目になり、口からは血と唾液の混合液が垂れる。頭には500円玉くらいの穴が何個か空いており、そこから緑なのかピンクなのかわからない液体が無尽蔵に出てきていた。
「どうした?!何が起きた?!」
問いかけても何も答えてくれない。
「誰が?!何のためにこんなことを?!」
妻が近づいてきた。
「どうした?辛いか?」
妻は泣きながら抱きついてきた。
ヌメヌメや変な液体が身体中に付着した。
そんなこと関係なく抱き返した。
「大丈夫だ。俺はここにいるよ」
妻が台所の引き出しを指差した。
「包丁がほしいのか?何をする気だ?」
とても嫌な予感がした。身動きが取れないくらい抱きしめた。
妻は髪を引き出しまで伸ばして、髪で包丁を持ってきた。
「や、やめろ!だめだ!」
妻は俺を引き剥がし、包丁を自分の胸に突き立てた。
俺は手を包丁の先端で刺されながら、包丁をば止めた。
妻は力が抜けたように倒れた。もう放っておいても死にそうなくらい辛いのだろう。
俺は包丁を捨てて、妻の隣に寝て、抱きしめた。
「辛いよな?大丈夫だ。俺がいる」
俺は妻にキスをした。
「ありがとう」
妻がそう言った気がした。抱き合っていると、どんどん妻の力が弱くなっていった。気づくと、妻は死んでいた。
俺は包丁を拾い、自分に刺して、妻をずっと抱きしめた。

「グハハハハハ」
「ハハハハハハ」
病院の病室には2人の男が、笑い合っていた。
「いつも幸せそうなあいつも苦しい声するんだな」
「いい気味だぜ。ハハッ」

2/7/2024, 1:21:36 AM