手を繋いで』の作文集

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手を繋いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

12/9/2024, 3:56:32 PM

手を繋いで


カンカンカンカン

アパートの階段を登る。
はとこの部屋は2階の一番奥だ。
持っている合鍵を鍵穴に差し込む。
まずいな、空いてる。
この辺の治安は世紀末ほどではないけど
良いわけじゃない。
鍵はかけるんだよ、といつも一声かけているけど、
鍵が空いている。



「まみちゃんはいるよー」


声をかけてからドアを開ける。
ドアはゴミ袋で開きづらい。
ゴミ箱の中身は殆どがシリアルやバランス栄養食、
プロテインバーの紙箱や袋だ。

はとこが調理した食事を部屋の中で
食べられなくなってから何年も経つ。
食べられなくても
なんとなく栄養のあるものを選んでいるのが彼女らしい。
ただ、量が多い。
できれば一度病院で検査を受けてほしい。


そんなに広くないキッチンを通り抜け、
六畳一間の部屋に入る。

はとこが万年床の上で座り込んでいた。
彼女の膝にはスマホがある。


「まみちゃん起きてた?」


はとこのそばに座り込み、顔を覗き込む。
うん、とはとこが頷く。

ここに彼女が住んでいると聞き出したのは半年前だ。
半年前、この部屋はゴミで溢れていた。
ゴミだらけの部屋の中で、ゴミに埋もれてはとこは寝ていた。


はとことは年が離れている。
小さい頃、お正月に本家で集まった時、
本家のお嬢さんをしていたのがはとこだ。

当時のはとこは大学生で、にこにこつやつやしていた。

他の親戚の男の子に持ってきた本を買って破かれて
こっそり泣いていた時、自分を探しにきてくれて、
泣き顔を見つけると抱きしめてくれた。
そっと手を繋いで自分の部屋に連れて行ってくれた。

そして出版社は違うけど、と同じ題名の本をくれた。


私はもう読まないから良かったら貰って頂戴?
私から貰ったって言えば意地悪されないから。

「女の子が本を読んでも良いのにね」

そう言ってもう一度抱きしめてくれた。



そんな優しかった人がゴミに埋もれて動けなくなっている。

はとこは祖父母に進学を大反対されていたが、
押し切って進学した。
会計士の資格を取り、会計事務所で働いていたと
聞いていた。


そこで、酷い目に遭ったらしい。


詳しいことは聞いていない。
ただ、本家の娘がこれでは体裁が悪いという理由で
このアパートに押し込めたのだという。



初めてアパートに来たとき、
ゴミに埋もれてはとこが息をしていないと思った。

救急車を呼ばなきゃ、とスマホを開いた時、
ゆうなちゃん?と声をかけられてスマホを落とした。


ゆうなちゃん、久しぶり。
こんな姿でごめんね。


涙を浮かべるはとこを見捨てるのはどうしても嫌だった。


まずゴミを捨てた。


嵩張ってるだけで重いものは入っていなかった。
ダンボールも捨てた。
散らばって山になっていたものを縛って捨てた。
資源ごみの日ではなかったので、
ゴミステーションを検索して捨てた。


沢山のゴミを捨てたらがらんどうの部屋ができた。
照明とカーテン、布団以外何もない。


台所に調理器具も皿もなく、テレビもなく、
当然化粧水や乳液も、
櫛も歯ブラシも歯磨き粉もなかった。
洗濯機も洗剤も、石鹸もシャンプーもなかった。
ギリギリトイレに紙はあった。



あるのは布団の隣にある、
ケーブルを挿しっぱなしにされたスマホだけだった。
スマホを繋いで、ネットで食料を買い、
それで生活していたらしい。 


はとこはひどい状態だった。


変よね、ネットにはなんでもあるのに、
お前は買うのを許されてないって言葉が頭に響くの。
お風呂に入ろうとすると誰かが責めてくるの。
そうすると、何も買えないの。体が動かなくなるの。
買ってそのまま食べられるものだけようやく買えるの。


変よね、私変よね。
お金はあるの。お給料は悪くなかったから。
カードも使えるの。
私はなんでも買えるはずなのに買えないの。
わかってるの。わかってるけど
どうしていいのかわからないの。


そう言って寝たまま涙ぐむはとこを見て、
スマホを貸してと頼んだ。
自分の言いなりにスマホを渡してくれた
はとこのスマホから、通販サイトを開く。

まず野菜ジュースをカートに入れる。
常温保存の牛乳パックもカートに入れる。
バックのやつなら飲んでそのまま捨てれば良い。
サプリメントと、お湯を注ぐだけのコーヒーやお茶も
カートに入れる。

紙コップをカートに入れる。紙皿も入れる。
使わないかもしれないけど、
ないと食べたいと思った時に諦めてしまうかもしれない。
本当はもっと良い食器を使ってほしいけど、
今のはとこにはすぐ捨てられるものがいい。

あと、綺麗なベットカバーとシーツ。
枕カバーを忘れるところだった。
あと、ナイトウェアを複数。
ふわもこの暖かいのもカートに入れた。
下着は5枚セットを2つ。
ブラつけられる感じじゃないから
バッド付きのキャミソールも5枚。
ハンドタオル、バスタオルも5枚。


外に出ておかしくない楽なワンピースを2枚。
Tシャツとカーディガンも似合いそうなものを選ぶ。
おっと、靴下もいる。
玄関を見たらスニーカーが1組あったので取り敢えずいらない。


洗濯機をカートに入れる。
本当は乾燥機付きのドラム式が欲しかったけど、
この部屋のスペース的に無理だ、残念。
今のネットすごい。保証つけるだけじゃなく
設置も手配してくれる。
当然洗剤も入れる。漂白剤と柔軟剤も入れる。


電子レンジとかはもっと動けるようになってから
はとこ好みのものを買えば良い。

今必要なものなんだろ?と悩みながら選びに選んで、
これはいらないかな、というものを削除して、
はとこにスマホの画面を見せた。


ねえ、これ買っていい?
まみちゃんが買うんじゃないよ。
私が欲しいの。
ねえ、買って?


カートに入れた商品の合計額は20万を超えていた。
彼女は言った。


良いわ。私の代わりにボタンを押して。



うん、と答えて決済をした。
それが半年前のことだった。



週に2回、彼女の様子を見に行く。
最初寝たままだった彼女は起き上がるようになっていた。

でも頭がまとまらないことが多いらしい。
何かをしようと頭でわかってても
体が動かないまま一日が終わることが多くて悩んでいた。


スマホをのぞいていても字がうまく読めないし、
動画の音も聞き取れないので、
画像だけ眺めているらしい。



いつもごめんね、ありがとう。
はとこは弱々しく笑った。


はとこの手を取ってぎゅっと握る。


「こんなことなんてことないよ」


はとこは自分にやさしかった。
本家の娘という立場で、自分をいつも守ってくれた。
こっそり悩み事を話すと真剣に聞いてくれた。
家族でも何も聞いてくれないのに、
このはとこだけは真剣に話を聞いて、
ゆうなちゃんはどうしたい?
やりたいことがあるならお手伝いするよ?
と手を握ってくれた。
おやつを作ってくれることもあった。
誕生日にギフトカードを送ってくれて、
好きなものを買ってね、
と手書きのカードが添えてあった。


ねえまみちゃん。


また、手を繋いで外を歩きたい。
まみちゃんの話を聞きたいし、自分も聞いてほしい。
変なことで笑って、にこにこして、
一緒に行ったことないとこに行きたい。
食べたことないもの食べたい。
バイトしてるからお金はあるんだよ、奢るよ。



ねえ、思い出して。
あなたがしてくれたこと。

12/9/2024, 3:52:52 PM

君の手に初めて触れた日をずっと
忘れぬように記念日にした

#手を繋いで

12/9/2024, 3:49:12 PM

物心着く前、よく母と手を繋いでいた気がする。
少しひんやりとしていて優しく包み込んでくれる事に何よりも安心感を得ていた。
だからだろう。いつしかそれが癖となっていたのは。
どんな人よりも手を繋いできた。
友達との挨拶代わりは握手だったし、初めての恋人との繋ぎは昨日のように思い出せる。
だから寂しくなんかないさ。
私の目を下に向ける。そこにはあるはずの手がなかった。
交通事故。運が良かったのか悪かったのか命は無事だった。その代わとばかりに私の両腕は切除しなければならなかった
私のはもう人一倍ある思い出もあるし作り続ける。手を繋げることが出来なくても心では繋がっているから。

12/9/2024, 3:49:07 PM

『手を繋いで』


大好きな貴方に、今度いつ逢えるかは

分からないけれど

夢の中で握った貴方の手は

温かかった


ずっと前から

その暖かさを知って居るような

そんな優しい手だった


今度逢ったら

貴方に言いたい事が合るのに

夢の中以外では

素直に言えなくて

貴方のその手さえも

触れられない私は

ただの臆病者


たった一言を伝えれば良いだけなのに

そのもどかしさは

周囲を通り越して

自分でも嫌になってくる


夢の中でなら

『貴方の事がずっと好きなんだと』言えるのに

夢の中でなら

貴方の手に触れられるのに


目の前に居る貴方が

私に笑ってくれる度に

私はいつか来る終わりを思ってしまう

いずれ来るとは分かっているのに

私の心を引き留めて

貴方の手や心に

触れられなくなるの

12/9/2024, 3:46:00 PM

手を繋ぐと暖かい、安心すると感じる人が多いと考える。
私もその1人である。

小学生の頃、家庭環境が最悪で帰りたくないと思うことが毎日だった。
学校に行けばいじめられる。
どこに行っても苦しい時があった。

だが唯一安心できたのは、本担任の先生が私の名前を呼び
「大丈夫」と言って手を握ってくれた時だった。

服がなく洗われていない体操服を着て登校し「臭い」とトイレに閉じ込められた時も
お弁当がなく周りから冷やかされた時も
髪が長く貞子みたいだと言われ、無理やり髪を切られた時も
辛いと感じた時はいつも先生が手を握って助けてくれた。

いじめがなくなるようにと、いつも1人で動いてくれて
虐待から逃れられるように警察や役所に出向いてくれて
何か変わることはなかったかもしれないが、
私が今こうやって生きていられるのはあの先生がいてくれたから。
先生が手を握って「大丈夫」と助けてくれたから。

12/9/2024, 3:42:14 PM

『手を繋いで』

「実は私、幽霊なんだ」突拍子もなく女友達がそんなことを言った。何非科学的なことを言っているんだと呆れていると、「じゃあ手を繋いでみる?」と手を差し出された。差し出された手を握ってみた。冷たかった。本当にこの世のものではないと感じるくらい冷たかった。
「これで分かってくれた?」そう聞かれて俺は首を縦に振った。なぜ俺にわざわざ伝えたのかと聞くと、
「私、今日中に成仏しなくちゃいけないんだ。でも成仏しちゃったら周りの人は私の事を忘れちゃう」
そんなの寂しいじゃんと悲しげに笑い、
「だから特別な人の印象に少しでも残ればいいなと思って貴方に伝えたんだよ」と言う。俺がなるほどと頷いていると、「……貴方に告白したつもりなんだけど伝わってるのかなぁ」と思いもよらぬ事を言われた。
俺が面食らっていると、彼女は「もう行かなきゃ」と言って立ち上がった。そして、俺の方を向き、
「もしもいつか貴方とまた会ったら、その時はもう一度手を繋いで。約束ね」と言い残して去っていった。
それから彼女は本当に成仏したようだ。周りの人には彼女は最初から居なかった事になっているようで、今や彼女の事を覚えているのは俺だけだ。ただ、最近俺の記憶も曖昧になってきている。もう彼女の顔や名前は思い出せない。それでも彼女の「手を繋いで」という言葉だけは確かに記憶に残っている。彼女との約束を果たす日まで、消えることはないだろう。

12/9/2024, 3:40:02 PM

「おうい、姫子!」
 朝。登校中、交差点のところでびっくりするぐらいの大声で呼ばれた。
「天野くん」
 見ると、横断歩道の向こうで、彼がぶんぶん手を振っている。
 私はおたついた。あ、朝から、あんなおっきな声で。みんな見てるし・・・・・・・んもおおお~
 「おはよ、会えたな、ぐうぜん」
 駆け足でこっちに渡ってくる。私は、「声、大きいよ。恥ずかしいじゃない」と抗議。
 でも、天野くんはにこにこして「なんで?呼んだだけだよ」と私の手を取った。さりげなく。
「え……」
 出会った時から天野くんはとても強引な人。でも、私に触れたことはなかった。なのに今朝は、普通に手を握って私の前を往く。
 横断歩道を渡り終えたあたりで、私は我に返った。
「天野くん、--手、手!」
 振りほどこうとして、できない。天野くんは私に指摘されやっと気づいたみたいに「あ、ああ」と握っている手を見やる。
 つないだ手。
「俺たち、天の川の向こうとこっちとに離れてたじゃん? 前世で。だから、弱いんだ、道とか横断歩道とか歩道橋とかに遮られるの。お前が向こう側にいると、いるのを見ると、居ても立ってもいられなくなる」
 びっくりすぐほど心許ない目をして、彼は言った。私は彼が私の方に向かって、歩道を駆けてくる様子を思い出す。
「……天野くん」
「ん?」
「私、憶えてないから。っていうか、まだ信じてないし、私たちが前世で織姫彦星だったって。ただ、名前が似ているだけでしょ」
 そう言うと、にかっと笑った。
「相変わらずつれないなー。まあ、いいや、行こうぜ。遅刻しちまう」
 全然意に介した風もなく天野くんは歩き出す。私の手を握ったまま。
「~~んもう、強引だよ」
 困った振りをして私も歩き出す。つないだ手は離さず、私もそっと握り返した。

#手を繋いで

12/9/2024, 3:39:31 PM

手を繋いで

だれか私の手を握ってくれますか?
だれも握ってくれないと勝手に悟った。

12/9/2024, 3:36:16 PM

『手を繋いで』

何でもしまい込むあなたのポケットには

悪い癖と一緒に寂しさも入っていて

生温い街路灯と朝を待つ花の匂いが

冷えきった私には丁度良かった


あなたの袖を摘んだのは

歩行者信号が点滅してたからで、

あなたの目が見れないのは

使い捨てのコンタクトが乾いたからで、

あなたの影が近いのは

手袋を忘れてしまったから

12/9/2024, 3:36:14 PM

手を繋いでみた
初めて触れてみた
手のひらに伝わる柔らかく温かい
たおやかなあのこは
元気ですか
お元気ですか
私は元気です

12/9/2024, 3:34:27 PM

そっと私の手を包み込む。
少し骨張った大きくて優しい手。
いつだって私を安心させてくれる。

生きている限り別れは避けられない。
だからどうかその時までこの手を離さないで。




ー手を繋いでー

12/9/2024, 3:31:02 PM

【Undertaleの 重大なネタバレ 注意。】
【      ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌    】


───────────────────────


我々は空と太陽を失い、長らくは、それらの輝きに恋焦がれ、忘れ、それでも憧ればかりは止められず、いたものだ。

だがそれも、歴史の後ろにあった。
きょう、過去となったのである。

「お日様、どんどん下がっていくぞ!?しかもなんだか、天井の色が変わってる〜ッ!」

パピルスは山を走り下りながら、空を見上げて話した。
隣で走るアンダインも、なんだとッ!と空を仰ぎ、ギョッとする。
……魚だけにって?

「こ、これは……チョーゼツセンチメンタルだッ!」
「センチメートル??」
「ちがうッ!センチメンタルってのはな……えー……センチメンタルって、なんだ……?
おいパピルス!センチメンタルってなんだ!」
「しらないよッ」

アンダインは走りながら、パピルスのこめかみをグリグリしだした。「ううっ、やめてよ〜ッ」とパピルスはアンダインから離れようとするが、まだアンダインのほうが力は強いらしく、逃げられない。
ふたりは転びそうになりながらも、楽しそうに走っている。

オレはいま、めちゃくちゃニコニコしてるんだろうな。

「って、アンダインッ!ほらほら、ますます、暗くなってる!」
「……ホントだな……まるで、あそこへ逆戻りしたみたいに……」

さっきまで、木々がオレンジの光に影を落としてたのに、その影はもうそこら中を包んでる。
太陽が沈みかけているのだ。

ふたりは木々の隙間から、太陽を覗きみようとひしめきあいながら、だんだんと、減速していき、スローリーに立ちすくむ。
オレも一緒に立ち止まった。追いついて、ふたりの間に入るのは、少し気が引けるからだ。

ふたりとも、だれも一切話さず、どんどん光のなくなっていく山中のけもの道で突っ立つ。
そういえば、山なのに、全然動物の姿が見当たらない。
だから、必要以上に静かだった。

「ッわ?!」

パンッ、と音が鳴り、オレが驚いて見てみると、どうやら、アンダインがパピルスの背を叩いた音らしかった。
パピルスはそれによろめいてる。
しかし、アンダインはニカッと笑っていて「パピルスッ!やっぱり、みんなと一緒に行こう。きょうおこることは、みんな、はじめてで、トクベツなことなんだからなッ!」
暗く落ち込んだ景色には似つかわしくない、至極真っ当で、前向きな声だった。
それにはパピルスも「じゃあ、先に誰かと合流できた方が勝ちッ!」
それにはパピルスも、感動して、頷くだけかと思ったが、勝負を申し込み、踵を返して元気よく、走り出した。
つまりは、ふたりの背を追っていた、オレの方へ向かってきたのだ……
アンダインも典型的に「ずるいぞ!まてッ!」と叫んで、こっちへ来る。

そのとき、ドッと、後ろからだ。

「う、わ、……ッて、なんだ、アンタか……ビックリさせないでくれ」
「あ、……ヵッ、ハァッ、ちょ、ちょっと、ハアッ、ハアッ、やすませて……」

そのドッの正体は、アルフィーだったらしい。
ゼヒーゼヒーとか言って、オレの肩に手をのせてきてた。オレの背中に体重をかけてくる……あー、重い。

そういや、パピルスはどうなった?
向き直ってみる。

「うオっ……!」

眼前には、パピルスの怪訝な顔があった!

今度こそ、さすがにビビって、肩が大きく揺れてしまった。
ホラー映画の、ビックリシーンでも見たみたいに……
その拍子に、アルフィーが崩れ落ちた。もはや、肩にはりつく体力すら残ってないらしい。

「あー、ホント、みんなオイラをビビらせるのがすきだな……」
「ナニいってんの!それは兄ちゃんでしょッ、なんでこんなとこにつったってるの……その後ろにある土ぞうきんは……」
「アッ、アルフィー!?」

追いついてきたアンダインが、さすがに一瞬で気づいて……悪いな、アルフィーは地面に顔面から突っ伏してた。
それをアンダインは軽々抱き上げる。

「アッ、ハァーッ、アンダ……イッゼーッ……」
「あー、博士は、アンタとパピルスを追ってきたらしいぜ。
走り慣れてなかったから、スッゲー疲れてるの……暗い部屋でアニメをイッキ見して、カップラーメン汁まで飲む生活習慣、見直さなきゃ……って言ってる」
「アルフィー、そうだったのか……!」

アルフィーがアンダインの腕のなかから、こっちをキッと睨みつけてくる。

「いや、博士はそんなコト言ってないと思う……」

今度はパピルスに感謝の目線を送った。
思わず声をだして笑ってしまった。
すると、ゴミのやまを見るみたいな目で、見下された。

「でも、ここでふたりに会えてよかったぞッ!」
「たしかにそうだッ!アルフィーはこれ以上走ったらしんじゃうだろうし、そうなったら私もしんでた!」
「じつはね、山を下るのは他のみんなも一緒がいいって」
「私だッ!この私が言ったのだ!それで、みんなと合流するてはずだった」
「そしたらふたりが、オレ様たちのすぐうしろにいたッ!」

オレは、ふーんと頷いて、みんなで行くなら楽しそうだな、と言ってみる。
アルフィーもまだ落ち着かない呼吸を抱えながら、激しく頷いた。
アルフィーだって、アンダインとものすごく一緒にいたかったハズだもんな。

「よし、ふたりにも会えたし……いざ競走再開だッ!アルフィー、すこし、いや、ものすごく揺れるぞーッ!」
「えっえええっ!」

アルフィーの不安定な悲鳴を残して、すごい速さで夜の闇へと溶けていった……
パピルスはそれにまごつき、ずるいぞーっなんて、さっきのアンダインと全く同じことを言い、地団駄をふんだ。
そのまんま、アンダインを追って行くかと思ったが……

「ほらサンズ、はやく行こうッ!負けちゃう!」

オレの目の前には、パピルスの大きな手があった。
オレも一緒に、連れてってくれるつもりらしい。
……けど、走るのはごめんだな。

「いやあ、パピルス。オイラ足でまといになっちゃうぜ」
「……なにいってんのッ!もうッ」

グイッと腕をひっつかまれて、そのまんまドタドタ山を駆け上がるマラソンに巻き込まれた。
遠くから、アンダインの「遅いぞパピルス〜ッ!」という声が聞こえる……

「アンダインだって、博士抱えて走ってるんだから、オレさまもそうしなきゃフェアじゃないでしょッ」

パピルスは、いつのまに、オレよりずーっとでかくなった背中でそう、語った。
表情は見えないハズなのに、活発な笑顔が、ハッキリ見えた気がする。
そうすると、オレはすっかり、走る気にまでなってしまって、自分でチョロいな、と思う。だけど、不健康よりはいくらかマシだ。

「……あー、へへ……たしかにな……!」

走るのはいつぶりだろう。
ほんとに一瞬で息が上がっちゃって、情けない。
慣れない足取りで、土をかけあげてるうちに、スリッパがもつれ、転げそうになる。

「ウワッ、ちょっと兄ちゃん大丈夫!?」

バランスを崩したオレに、パピルスの肩もガクンと落ちて、勇ましく突き進んでゆく背中がアンバランスに歪んだ。
けど、オレは立て直したので、パピルスは振り向くことなく、しかし、より一層、オレの手を強く掴んだ。

「……ハハ、うん。新しく買えばいいさ」
「アッ、えっ!?もしかして、スリッパぬぎすてたのか!?」

振り返ってみたが、ピンク色のスリッパは、もう夕闇に紛れて、見えなかった。

土に汚れた靴下は、たしかにみるに耐えなかったが、直に踏みしめる感覚は、オレを興奮させて、顔は上気する。
ともなく、パピルスはククク……っと走りずさみながら、笑って、やがて大きく笑い始めて、オレもひさびさに、強く笑った。
さらに息が苦しくなるが、もはや、木々の香りや美味しい空気に充てられ、どうでもいい。

「ニャーッハッハッハッハ!たまにはッ!走るのも、いーでしょッ!?」
「ハハ……っ!ま、たまには、そーだな……!」

遠くに、手をふるアンダインと、その隣で丸いアルフィーの姿が見えてきた。
まだ霞んでるけど、オレが汗の塊になるより前には、きっとたどりつく。

「パピルスッ!遅かったなッ!これで私と1対1だッ!」
「エッ、さっきオレさまがサンズを見つけたのカウントされてたの!?」
「あたりまえだろッ!」

アンダインが走ってきたパピルスの頭を、握りこぶしで出迎えて、またグリグリした。
パピルスは、そっと繋いだ手を離してしまって、オレはガックリその場に伏せた。
いやあ、さすがにキツイ!
ドッときた息切れと、汗に参る。マジでいくらふいても汗が止まらない。

「えあっ、さ、サンズも走って……きたの?……って、靴下が泥だらけじゃない!スリッパは……!?」

アルフィーがオレの周囲をクルクル歩き回って、様子を確認している。
返事をしようと思ったが、ゼーゼー息がでるだけで、そんな余裕ない。動悸もしてきた……
まるっきり、さっきのアルフィーと同じ状況だ。

「なにっ!?あのサンズが走っただと!一体なにがあったんだ……ッ!?
きょうは槍でもふるのか!」
「……フフ、大切な弟が暗ーい山の中走ってっちゃったもんだから。怖くなって追いかけたらしいわ!
オイラみかけによらずビビりだから……ホラー映画だってひとりで見られないんだぜ、って言ってる!」

アルフィーがしてやったりと言わんばかりの顔でこっちを見てくる。
なんか、反論してやりたかったが、相変わらず口からでるのはヤバい息だけ……
わざとらしく目をそらしたら、アルフィーが笑いだした。

「あらあら、ウフフフ。そうなの?サンズィ」

死ぬほどタイミング悪いところに、トリィがいた。
目をそらした先に、しゃがみこんでオレを覗き込んでたもんだから、ビックリしたが、もはや驚いて吹っ飛ぶ体力もなく、息が一瞬止まっただけに留まった……
いや、運が良かった。

「アッ、と、と。トリエル……!」

アルフィーもビックリしたみたいで、盛大にどもってる。
なんか、トリィに返事もできないし、息も全然整わないしで、パピルスとアンダインの方へ目をやった。楽しげに会話している……
……マジで、息ってフツーこんなに整わないモンなの?

「そ、そ、そ、そそそうなの!!サンズはね、ものすごーく、ビビりで、ついでに心配性!
特にジャンプスケア……ビックリ系にはスゴイ弱いんだよ〜!フラッシュとかね!
有名だけど『ウォーリーを探さないで』って、動画をみせたときは、ホント傑作だったんだから〜!マジであれ2mは飛び上がってたもん!」

スッゲー不名誉な話しをされてたので、オレはヨロヨロ立ち上がって、アルフィーの肩に手を置いた。
無論、言葉は出なかったが……無論だけにな。
まあ、言葉は出なかったので、軽く払いの蹴られ、ついでにデコピンされて、オレはあえなく、また地面に膝をついた。

「あら、そうなの!意外だわ……!
そうだ。こんど、みんなで一緒にホラー映画でも見ない?」
「エッ、いいね……!あっでも、ふ、フリスクは……平気?」

フリスクのことが気にかけられるなら、オレのことも気にかけてくれよ……
って、フリスクもいるのか。
トリィの方を見てみたら、たしかにすぐ隣。手を繋いで、オレのほうを哀れそうに眺めてた。
アルフィーの質問にはまだ答えてない。

「ふ、ふ、ふり、フリスク……?」
「ハハ、はァ……ッ、フリスクは、オイランことを……はあ……しんぱいしてくれてるんだよ……やさしいヤツだ」

さっきよりマシになってきたオレは、また立ち上がって、フリスクのほうに近寄ろうとしたが、アイツ、オレが頭を撫でてやろうとした瞬間すり抜けやがって、アルフィーに今やってるホラー映画を調べてくれとかなんとか、言ってやがる。

「ふふ、じゃあ決定ね。その、ビックリ系ホラー、見ましょう!
もちろんサンズィ、あなたもね」

フリスクはこっちをみて、メタトンの番組でそうしたみたいに、不敵に笑った。
アルフィーは興奮した様子で、賛成っ賛成っ!と言っている。

オレはまたもや、地面に倒れふした。
ぐったり下に向けた顔の先に、土がうごうごして、顔を出したのは、ミミズ……
ああ、友よ、アンタだけは味方だよな。
……汗がミミズの上に滴り落ちて、ヒット!
ぐにゃっと体全体を曲げて、すぐさま地面に潜っていってしまった。

12/9/2024, 3:28:56 PM

千手観音が握手会を開いたら、

一度に1,000人も相手出来るのか…………

12/9/2024, 3:25:06 PM

祭りという非日常な時間と空間がある理由が、なんとなく分かった。
着馴れぬ浴衣や、見慣れぬ屋台。普段は静かな神域が飾り布で彩られ、笛や太鼓、鈴の賑やかな音が鳴る。
すれ違う人は皆、どこか浮かれた表情をしている。
そして誰も――他人の事なんか見ていない。

「·····」
だから自然に、どちらからともなく指先が触れ、それを合図に互いに指を絡ませた。
雑踏の中を少し足早に歩く。
繋いだ手から互いの温度が伝わって、一つになったような気がする。
誰も――自分達の事なんか見ていない。

この非日常の時間と空間は、この為にあるのかもしれないと、ふと思う。

薄暗がりの中、互いの存在だけが明確で。
長い参道をこのまま手を繋いで歩き続けていれば、やがて繋がったまま一つの生き物になれるのではないかと、そんなありもしない妄想にかられた。

END


「手を繋いで」

12/9/2024, 3:23:26 PM

僕に出来る事を探してる…


君が好き

時おり…

どうしようもないほどに…

好き

どうしようもないくらい…

好き…



いつも君を思ってる

いつもうまく言えなくて…

ごめん…


思うと胸が痛くて…

君が好き

美佐子が好き

12/9/2024, 3:18:32 PM

手を繋いでみせてよ真実なら
銀貨30枚は信頼の錘
キスを求めたのは貴方でしょう
こんなはずじゃなかった
生まれたのが間違いだった
イエローに染まった私を赦さないで
危険信号が塞いで前も見えない
怯えていること知っていたのに
手を離したのは誰かなんてわかってる
罪で溢れた安寧に沈む
裏切り者は貴方だ

私だけのものではない事を知っている。


ユダの裏切りをキリストは知っていて許したなら、それは裏切りではなかったのでは?と思って書きました。
蘇ると言った3日後、復活しないことに絶望したユダは得た銀貨を神殿に投げ入れ畑を買って身を投げた。その後きっちり3日を過ぎる頃にキリストは蘇った。少しでも疑った事が罪でしょうか。しかしキリストの復活を知らないユダにとっての裏切り者は、間違いなくキリストだったでしょう。きっと責任感があって少し臆病だっただけ。ユダは自分で罪を償い、救いを求めないのならそもそも宗教に向いていなかったのではとか思ってます。まだまだ調べ足りない。
救われるなら誰かにではなくて自分自身でありたいです。

手を繋いで

12/9/2024, 3:14:01 PM

手を繋いでいると、心がポカポカする。自分は一人じゃないって思えてくる。

12/9/2024, 3:09:13 PM

手を繋いで

仕事柄手を繋ぐ事が多かった。最初は抵抗があったが、必要に迫られてどんな手でも繋いでいるうち慣れてきた。人間とは慣れる生き物なのだ。次第にその手があまりにも柔らかく意志がないように感じられ、全てを委ねたその手が、私を優しく包むようで癒されるようになってきたのだった。肌と肌の触れ合いとは言葉などいらないかの様に真っ直ぐに心に届くようだ。

悲しいかな、それでも私は感情がなかった。癒されながらも、氷のような冷たい心には無意味だった。

母親、家族と手を繋ぐ事は殆ど無かった。子供達が小さい頃はあったのだが。嫌悪感が先に出るのだ。自分でも同仕様もなく肌が触れるのを無意識に拒否してしまう。

自然に手を繋ぐ事が出来たなら…、もっと自分を好きになれたなら、違う付き合い方が出来ただろう。

しかし、危険が迫っていたり、生きるか死ぬかの瀬戸際なら自然と手を繋ぐかもしれない。実際、母が亡くなった時何の違和感も感じられなかつたのだから。
生きている時に自然と手を繋いであげられたらよかったのにね。
生まれ変わって又、母娘だったら今度はお互いに普通の母娘として、手を繋ごうね。
簡単だよ、きっとね。

12/9/2024, 3:08:37 PM

また虐められた。今度は靴隠し。これで何回目だろうか。こんな生活なんて早く終わってほしい…。

事の発端は数ヶ月前。昔から仲の良い幼馴染みの友達と下校していた。いつものように何気ない話をしていた。段々と盛り上がっていき、ある話題になった。
「好きな人いる?」
「はぁ?いるわけないじゃん、笑」
「とか言って、本当はいるんだろ?、笑」
「誰にも言うなよ?実は前から〇〇のことが気になってる…」
恋バナは他の人の話を聞くのは楽しいが、いざ自分の番になると恥ずかしさが込み上げてくる。
「ふ~ん、そうなんだ…。まあ、頑張れよ!」

次の日の昼休み、暴露ゲームに参加させられた。こういう系のゲームは苦手なのでいつもは参加しない。しかし、幼馴染みに「もし来なかったら、昨日の話を暴露するから」と言われ、渋々参加する羽目になった。ゲームは幼馴染みの番になった。
「はいはい!!こいつの好きな人は〇〇でーす、笑」
周りが静かになった。ゲームに参加してない人たちも静かになり、一斉にこちらに視線が向いた。恥ずかしすぎる。その話は言わない約束だったはずなのに…。
「…嘘つき。お前とはもう友達じゃない。」
言葉を吐き捨て、その場から逃げた。

「…嘘つき。お前とはもう絶交だ。」
そんな言葉が心の奥深くに刺さる。やり過ぎた。いつも俺は一線を越えてしまう。昔から治らない悪い癖。俺は何回あいつを傷つければ気が済むのだろうか。早いうちに謝ってしまいたい。そして許してもらい、また仲良くなりたい。俺はあいつと会うチャンスを作るために、あいつの下駄箱の中をいじった。靴隠しから発展するいじめを偶然見かけた俺が助ける、そしてあいつと仲直りする、という作戦だ。しかし、中々上手くいかない。あいつとの距離は日に日に離れていってる気がする。もうあいつと俺が前のように仲良くすることはできないのだろう。あいつと初めて会ったとき、俺は一目惚れしていたのだと思う。俺はあいつが好きだ。今でも好きだ。前のように何気ない話ができたら…。告白してあいつと手を繋げたら…。こんな夢はもう叶うことはないだろう。

※フィクション
【お題:手を繋いで】

p.s. 前と似たような内容になっちゃったかも…

12/9/2024, 3:02:06 PM

手を繋いで
やっとの思いで、あなたと、付き合い始めて、暫く経つのに…
まだ、手も繋げない…本当は、他の恋人達みたいに、腕を組んだり、戯れあったり、もう少しその先にも…心の中では、あなたと触れ合っていたい…って求めているのに…いざとなると、恥ずかしいのと、勇気が出せなくて…
ねぇ…早く、手を繋いで…

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