祭りという非日常な時間と空間がある理由が、なんとなく分かった。
着馴れぬ浴衣や、見慣れぬ屋台。普段は静かな神域が飾り布で彩られ、笛や太鼓、鈴の賑やかな音が鳴る。
すれ違う人は皆、どこか浮かれた表情をしている。
そして誰も――他人の事なんか見ていない。
「·····」
だから自然に、どちらからともなく指先が触れ、それを合図に互いに指を絡ませた。
雑踏の中を少し足早に歩く。
繋いだ手から互いの温度が伝わって、一つになったような気がする。
誰も――自分達の事なんか見ていない。
この非日常の時間と空間は、この為にあるのかもしれないと、ふと思う。
薄暗がりの中、互いの存在だけが明確で。
長い参道をこのまま手を繋いで歩き続けていれば、やがて繋がったまま一つの生き物になれるのではないかと、そんなありもしない妄想にかられた。
END
「手を繋いで」
12/9/2024, 3:25:06 PM