『愛を注いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
愛を注いで溢して
愛を注いで受け止めて
愛を注いでゴミ箱行き
愛を注いで返された
愛はなんと脆くて安いのだろう。
今だってホラ
そこかしこに落ちている。
お前のその姿こそが、愛なのだ。
→短編・ひとり酒
ハート型ボトルのウィスキーが実家から送られてきた。親父がゴルフコンペのニアピン賞でもらってきたものらしい。実家は全員下戸なので、唯一酒の呑める俺に回すことにした、と母親はそう説明した。
コロンとしたハートがなんとも可愛らしいボトルだ。ミニサイズを想像しがちだが、実はフルボトル。しかもラベルに「愛」の文字入り。ファンシーさとイカツイさを併せ持ったボトルだ。
そして20代独身男の部屋に微妙な哀愁をもたらしてくれている。
早々に終わらせたいのだが、ウイスキーのフルボトル、なかなか減らんのよ。
「う〜ん」
一声唸って、ボトルのウイスキーをグラスに注ぐ。気合いの入った達筆の「愛」の強烈な存在感がすごい。同じ愛なら人間の愛がイイ。
「愛を注いで、愛を求める……、なぁんてね、ハハ」
破れかぶれな独り言が辛い。
ヤバい、マジで人恋しくなってきた。マッチングアプリ、登録しようかなぁぁ。
テーマ; 愛を注いで
今日は何かとトラブルに見舞われた1日だった。レジの不具合、スタッフの教育、クレーム対応エトセトラ。勤務年数が長いというだけで、何か起きるたびに呼び付けられて対応をさせられる。最後のクレームに至っては、お客さんがスタッフの接客態度が悪いと伝えたスタッフの対応が悪かったと呼び出され、誠心誠意謝罪をしたがお客さんの怒りが収まらず、他の客が気に入らないだの、私の容姿がよくないだの、怒鳴るだけ怒鳴ってそのまま店を出られた。お客さんが出て、後輩に「あの、大丈夫ですか」と声をかけられて漸く、自分の手がガタガタ震えていたことと、放心してしまっていたことに気づいた。
トラブルが発生したら、不在がちな店長に宛てて引き継ぎをしなければならない。今日起きたことをちまちまメールに打ち込んで、翌日に送信されるように設定して、営業中に終わらなかった仕事を片付けていたら、後輩たちがさっさと退勤していった。
「なんで、私ばっかり」
一人きりの店内で思わず呟く。同時に目の奥が酷く痛んだが、大きく深呼吸をしてぐっとこらえた。
ようやく仕事を終えて、へとへとの体を引き摺るようにしてバックルームに戻った。荷物を大雑把にまとめて持ち、戸締りをして店を施錠して、しんと静まった深夜の街を歩く。人はまばらで、駅に近付くにつれてベンチで横たわっている人や、道に座り込んだ仲間を介抱するグループなどが増え、ふと今日が金曜日の晩であることを実感した。
そういえば、今日は推しの新情報発表の日だったっけ。
ポケットに押し込んでいたスマートフォンを取り出す。公式LINEやアプリからの通知が並ぶロック画面をスクロールして、推しのSNSの通知を長押しして詳細を開いた。
『新曲MV公開しました!CDの発売日は◯月×日。予約はこちらから!』
駅のホームに停まっていたいつもの終電に乗り込みながらイヤホンをつけて、ガラガラの車内の座席を確保してから、ロック画面を開いてURLをタップした。
デビューしたばかりの推しグループのMVが流れ始める。新曲はロックな曲調で、前向きな歌詞の多い応援歌のような曲だった。こちら側に向かって力強くガッツポーズをしながら笑顔で歌う推しの姿に、気付けば涙が溢れていた。
ガラガラの車内とはいえ、乗客がいないわけではない。嗚咽を漏らす私に構う人はいないが、訝しげにこちらを見ている視線に気がつく。恥ずかしくなって袖口で涙を拭いながら、同じ投稿についていた動画を再生した。
『デビューシングルをたくさん買っていただいたおかげで、光栄な賞をいくつもいただくことができました。いつも僕たちを応援してくれる皆さまの愛に応えられるように、そして、僕たち同じようにファンの皆様を愛していることが伝わることを願って、この曲を作りました』
ふと。部屋の隅に積んでいる彼らのデビューシングルのことを思い出した。フリーターの少ない給料を、可能な限り注ぎ込んで、自分でできる限り貢献した証、愛の証。それを彼らは上回る形で返してくれる。デビューしてからというもの、推しのできる仕事の範囲が広がって、日々いろいろな新情報をくれる。テレビ出演、ラジオレギュラー決定、コンサートにファンクラブにグッズ。どんどん変わる環境と新しい情報に、私はお金を払うことしかできないけれど、でもこれが唯一彼らに愛を注ぐ方法だから。
SNSの投稿には続きがあった。デビューコンサートの追加公演の決定、チケット申込の開始、CD予約開始の案内。それらをひとつひとつチェックしながら、やさぐれてる暇なんてないと姿勢を正した。どんなに仕事がクソだって、ついていなくたって、私にはこれがある。早速CDを全形態予約して、追加公演も全公演申し込んだ。
彼らに愛を注いでいくことが、私の生の活力になるから。
電車を降りると冷たい風が全身に突き刺さる。職場よりも田舎な我が家のそばは、向こうより体感3度ぐらい寒い気がする。
家の方向に歩いていきながら、それにしたって供給が多いなと思わず笑ってしまった。
「……うん、転職しよう」
静かな住宅街に響いた小さな一言は、やがて私の世界を変える。
愛を注いで
わたしがこれまでの人生の中で
こんなにも好きになれたのはあなただけ
周り友達が好きな人などと恋バナに花を咲かせてる中で
わたしはちっとも話についていけなかった
もしかしたら、わたしは一生ひとりなのかもしれない
そう本気で思った
恋がわからないとはいえ、
一生ひとりで生きるというのは、とても寂しかった
でも、あなたに会った瞬間、わたしの人生が変わったの
あなたの声が、ずっとわたしの頭の中でループする
あなたの声を聞くために、あなたに会うために
毎日を頑張ろうって思えた
わたしの人生を、あなたが彩っている
でも、一方通行に愛じゃ、嫌なの…
わがまま、だよね
わかってる、でも
あなたからも、愛を注いで…
【愛を注いで】
いつの頃からだったか
それまで注ぐ気にはなれなかった
自分に愛情を注いでみるようになった
少しだけ
やってみると
その少しは
意外と効果が大きく
今ではすっかり
愛らしい体型にもなり
多少はクッション代わりにもなってくれてる気がする
少し甘やかせ過ぎた気もするが
前よりエネルギーを蓄えてるに違いない
肥大した自己愛に
そろそろ節制の必要も感じる
だけど
実際のところは
入れ物が小さくて
注いだ愛情は
ほとんど溢れ出てる
表面張力ギリギリまで
大きくなったふりをして
愛を注いで
ひょんなことから私が一人っ子だと言ったとき
とても驚かれたのを覚えている。
「弟か妹がいるんだと思ってた」
「お姉ちゃんっぽいのに」
「そんなの外面がいいだけだよ〜」
本当は面倒を見られる側の人間なんだ。
あとは、そうだな…性格だよ。
そんな姿を見られたくないだけなんだ。
上手に甘えられないんだ。
ずっと、ずっと隠して。そろそろ限界だ。
でも表現ができない。伝えられない。
どうしたらいい?
両極端で、紙一重の
この感情を、どうすれば
誰か、愛してくれないか
どこで間違ったのだろう。
何度自問自答しても解は出なかった。
友人に聞いても「爆発しろ」と返されるばかりだ。
後悔はできない。
過ちが分からないから。
一片の光も届かない暗闇の中で、俺は過去を振り返る。
◇◇◇
小学一年生。
入学して一ヶ月過ぎ、みんなが打ち解け始めて賑やかになった頃。
俺のクラスには、いつも一人ぼっちの少女がいた。
佐藤あかり。
長い黒髪と冷たい表情の少女だった。
そして、誰よりも身長が高かった。
今だと、ただ人見知りで成長が早かった普通の女の子だと簡単に理解できる。だけど、幼いクラスメイト達にとって彼女は関わりづらい存在だったみたいだ。
そんな中、俺は彼女に話しかけてみた。
「ねえ、一緒に遊ぼ?」
突然目の前に現れた俺をおどおどしながら彼女は見上げた。
俺は彼女の瞳に吸い込まれそうになりながらも見つめ返す。
「……うん」
彼女は時間を掛けてコクリと首を縦に振った。
そうして、俺は昼休みを彼女と過ごした。
それからだった。彼女は常に俺の傍にいるようになった。
小学高学年になると、彼女は綺麗になり周囲からモテ始めた。それでも、俺の傍から離れなかった。
俺はそんな彼女を妹みたいだと思っていた。
そんな彼女がおかしくなったのはいつからだろうか。
中学で隣の席の女子と仲良くなった時?
体育祭でクラスの女子と二人三脚をした時?
後輩から告白された時?
「優くん、あの子誰? 何を話してたの? 何で私以外の子と仲良くするの? 私いらなくなった? ねえ、捨てないでよ。お願いだから。優くんがいなくなったら私どうにかなっちゃう。ごめんね、突然こんなこと言われても困るよね。でも、もしも、優くんがあの子に盗られたら私……優くんと一緒に死んじゃうかも」
俺を壁際まで追い詰めた彼女の瞳は暗く昏く黒く染まっていた。本能が察する。
彼女は本気なんだと。
ゾクゾクと背筋が震えた。
それから、俺は女子に対して最大限の警戒をして生活していた。
そのおかげで、高校では友人は男しかいなかった。
交際したいという気持ちはあったが、命は捨てたくなかった。大学は別々の進路に進むように頑張るからそれまでの辛抱だと心を強くした。
だけど、そんな生活は突然終わりを告げた。
放課後、いつものように彼女を家に届けた時だった。
背中からバチッと音と共に焼けるような痛みが襲った。
そして、気づけば身体はロープで拘束されて目隠しまでされた状態で寝転がっていた。
◇◇◇
ガチャリ、と扉が開く音がした。
そして、目元の目隠しを外される。
目の前には、ここ数年で学校一の美少女と呼ばれるまでになった彼女が立っていた。
そして、辺りを見渡し生活感のある部屋、つまり彼女の部屋だと理解した。
「あ、あかりちゃん、どうして?」
断じて言うが、女性とは本当に関わっていない。
だから、こんなことされる覚えはない。
俺は彼女の顔に訴えかける。
「ごめんね」
「……え?」
彼女は壊れたような笑みを浮かべていた。
恐怖か緊張か身体は小刻みに震え、瞳はドロドロと濁り、呼吸は荒くなっていた。
身体が強張る。
「私、不安なの。優くんが他の女に興味ないのは知ってる。でも、他の女が優くんを誑かすかもしれない。私は優くんを勿論信じているけど、もしかしたら優くんはその女に堕ちるかもしれない。そう思ったら、怖くて怖くて……っ。だから、ごめんね。手遅れになる前に優くんをここで保護することにしたの。優くん、ここで一緒に暮らそう? 食事もお風呂もトイレも全部私がやってあげるから。私、優くんの為なら何でもできるの。だから、お願い。傍にいて?」
……何だそれ。
俺の今までの我慢は何だったんだ。
俺だって、周りの男子みたいに彼女を作ってデートしたかった。キスだってしてみたかった。その先だって……っ
どこで間違えた?
分からない。
この女と関わったからか?
でも、一人で悲しんでるコイツを見捨てることなんか出来なかった。
じゃあ、どこで!?
分からない。分からない分からない分からない。
訳も分からず自由を奪われる。
……けんなっ
「ふざっけんなっ! 頭おかしいんじゃねぇのか、イカれ女ッ!!」
俺は初めてこの女に怒りをぶつけた。
何だかんだで、やっぱり妹みたいに思っていたから、今までは我慢できたんだけどな。それと、逆上されたら何されるか分からないっていう恐怖もあった。
だけど、今回ばかりは怒りを吐き出さずにはいられなかった。
俺に怒りをぶつけられ、彼女は満面の笑顔で座り込んで俺に視線を合わせる。
そして、俺の頬に両手を添えた。
ヒヤッとした感触に思わず喉を鳴らす。
背中からは冷や汗が噴き出る。
「ごめんね。おかしいよね。でも、優くんのこと愛してるから」
「……ぁ、」
初めから関わるべきじゃなかった。
俺はようやく答えを見つけた。
だけど、それが正解であろうが不正解であろうが、状況は変わらない。
既にバッドエンド。
警察がここを特定すれば、このバケモノは無理心中する。
……あ、あは、あはははは、
「優くんも私のことを愛してくれたら嬉しいな」
鼻と鼻が触れそうな程の距離から、ドロドロの瞳で俺の瞳を覗かれる。
まるで俺の中身を見ようとするように。
バケモノの唇は三日月のように釣り上がっていた。
バケモノの瞳が動いた。
いや。動いたのはバケモノの瞳に映る自分だった。
無表情だった俺の唇が蠢く。
ゆっくりと吊り上がっていく。
そして、目の前のバケモノと同じように三日月を形作る。
「……愛しています」
耳に届いた声は間違いなく自分のモノだったけど、どこか他人事のように聞こえた。
【愛を注いで】
惜しみない愛を注いでもらっても、
それを溜める器が無いの。
満ちる器も無いくせに、
満たされることを望んでいるの。
注がれる愛を肯定出来るほど、
自分自身を肯定出来やしないのに。
安易に愛されることばかりを模索して、
愛の注ぎ方がわからない、醜く滑稽な獣。
コーヒーを丁寧に淹れるときって、あれ、飲み物を作っているっていうより、愛情を注いでいると思うんだよね
じっくり 深く
はい、どうぞ
#愛を注いで
どれだけこぼれようとも
ずっと愛を注ぐから
どうか笑っていて
_愛を注いで
お題「愛を注いで」(雑記・途中投稿)
後で考える!
ごめんね
他のことにいっぱいいっぱいで
最近自分に愛注げてなかったね
自分に余裕ないと周り大事にできないからさ
しばらく殻に閉じこもらせてね
袖が広がっている
病院には不釣り合いな洒落た服を着た
少し不気味な少女は
誰もいない病室で1人、
具合が悪いわけでも
怪我をしたわけでもないのに
ベッドに寝っ転がり天井を見る。
すぐそばには
ガーゼ、ハサミ、
そして1本の注射器。
少女は何かあったのか、
急に叫び出す。
止まらない、止まらないよ。
溢れて止まらない。
早く止血剤をくれ!
すると1人の看護師が入ってきて
棚から飲み薬を出す。
少女は急いで体内に流し込むが、
すぐに吐き出してしまった。
看護師は目を細め、
一度ドアの方を見てから床を吹く。
唸り声を上げながら
ポロポロ涙を流す少女に
もう1人、マッシュの看護師が入ってきた。
その看護師はすぐそばにある
1本の注射器に
ピンクと青の液体を入れ、
少女に打つ。
少女が穏やかな表情に戻っていく。
液体のピンクは恋、
青は怠惰。
まるで愛を注いでいくように
マッシュの看護師も穏やかな表情をしている。
最初に入ってきた看護師は
床を吹き終えたのか
ドアを開けて出ていく。
ほどほどにね。
そう笑ったマッシュの看護師も出ていく。
少女はまた天井を見上げ、
また吐いた。
まだ食べていないからか
出てくるのは胃酸ばかり。
穏やかな表情をしていたのは
さっきの一瞬きりで
少女はのたうち回った。
注射を打てばどうにかなると思ったのだろうか。
少女は何も入っていない注射器を持ち上げ
まるで注射器にキスをするように
喉の奥に突き刺した。
すぐに抜いたが
胃酸以外の、
真っ赤な血が口から溢れ出て、
血反吐と混ざり
どす黒く床に溜まっていった。
眠るように倒れた少女は
絶望が幸福になった幸せそうな顔をしたまま
冥界を見た。
"Good Midnight!"
ほどほどにって言ったのに。
ニコニコ笑いながら少女を見下ろす
マッシュの看護師。
本当に怖いのは人間か、
それとも人間の皮を被ったただのバケモノか。
私の名前はルナ。
花も恥じらう女子高生。
私には、一卵性双生児で自分にそっくりな妹、レナがいる。
食べ物の好みや、服のセンスが全部一緒。
理想の異性も一緒だ。
だから言葉に出さなくても、お互いに考えている事は手に取るように分かる。
まさに以心伝心、私の心とレナの心は繋がっているのだ。
そんな私たちはいつも一緒。
今日も仲良くレナとテレビを見ていた。
お笑い番組でゲラゲラ笑っていると、買い物から帰って来たお母さんが言った
「ケーキ買ったから、一緒に食べなさい」
私とレナは喜んだ。
早速お母さんが買ってきたケーキの箱を開封する。
けど中身を見て驚いた。
そこには5つのケーキが入っていたからだ。
私はケーキが好きだ。
ということは、当然レナも好き。
そして一つでも多くのケーキを食べたい私たちは、ケーキの取り合いになってしまうのは必然、喧嘩になる。
だからお母さんは、いつも分けられるものか偶数を買って来るのだけど、今日はなぜか奇数だった。
うっかりしていたのだろうか?
どちらにせよ、戦争は避けられない
けれど私たちはいい大人。
暴力で解決する年齢は卒業した。
殴り合いをせず、スマートな方法で解決する
その方法とは――
ジャンケンだ。
『喧嘩するくらいなら運で決めてしまおう』。
という、多くの血を流した私たちが導き出した、教訓だ。
私はレナにアイコンタクトを送る。
するとレナは『当然』と言わんばかりの目線で返してきた。
これで勝負は成立、後は神に祈るのみ。
私たちは、ゆっくりと拳を握り――
「ちょっと二人とも待ちなさい」
けれど勝負を始めようとした瞬間、お母さんが割って入ってきた。
「私がジャッジするわ」
私のレナの間に、お母さんが座る。
お母さんは、私たちのジャンケンを見るのが好きだ。
なんでも私たちの勝負が『頭脳戦』で、見ごたえがあるらしい。
まあ、お互いの考えが分かる手前、相手の裏をかこうといろいろ考えるからね。
でもルナも裏をかこうとするわけで、でも私もさらに裏をかき……
そして最期に読み間違えた方が負ける。
少しの誤差で、勝敗は決するのだ
うん、立派な頭脳戦だ
「今日の二人を見ると長期戦になりそうな予感がするわ……
観戦の用意をいないと……」
「「はやくしてよ、お母さん」」
「二人とも急かさないの。
そうねえ……」
そう言ってお母さんは、辺りを見回す。
「あ、ケーキがあるじゃない。
これ、一つ貰うね」
私たちの勝負は、勝負する前に、勝負が決まった瞬間であった。
周りを見れば愛を注がれている人を
多く見かける。
確かに親親戚には私も
愛を注がれているが
26年生きてきて友達職場から
愛というものに恵まれてもなかった。
よく愛を欲しがるのは
家族から愛されなかった人と言われているが、
身内以外での愛を欲しがる人も多数いるであろう。
其の解消方法が分からないだけである。
悪い道(闇系ではないが)進んだこともあった。
一瞬の愛はもらえたりもするが、
物足りない、そういうものは
一時的でしかない。
世の中ルッキズム?というもので
愛を多くもらえるのは容姿端麗な人だ。
この世も世だとは思うが。
私は誰かから愛を注がれる日は来るのだろうか。
まずこの皮肉れた思考を捨てなければならないのだろうが、26年で蓄積された性分は治るのだろうか。
文を書くということで鬱憤は晴らしてはいるが、
さてこれも私のかく物が好まれるのか?
同じ思考はいるのだろうか?
この世に希望を持ってもいいのだろうか。
誰か私に愛をそそいでください…。
「愛を注いで」
自分が注いだ愛は見えないけど、
貴方が優しくしてくれた時、私が注いだ愛を感じる。
貴方が誰かに愛を注いだ時、
貴方は自分の愛が見えないかもしれない。
貴方がその子に優しくされた時、
貴方も自分が注いだ愛を感じるだろう。
愛を注いで、注がれて。
愛を携えて、感じられて。
「〇〇してやったのに」とか思っちゃうようになったら、
それはもう愛とは呼べないよなぁ。
条件付きの愛はもはや無い方がマシ。
愛を注いで
並々にとは言わないけど
お湯を沸かして注ぐマグカップのように
注がれるお湯を待ってる
こぼれないように
冷めないように
両手でカップを包んで
今日も誰かに注がれるのを待ってる
「人も植物も一緒だよ」
老人はそう言って、冬枯れの庭を見つめた。
私は椅子に座る彼の傍らに膝をつき、窺うようにして見上げる。皺だらけの口元は笑っているようにも、悔やんでいるようにも見えた。
「水をあげすぎて根腐れしてしまう花もあれば、水辺の近くでなければ育たない花もある」
目の前の庭は何年も手入れがされていない。
草は伸び放題で、かつては色とりどりの花がつけていたであろう木々は草に埋もれ、葉を全て落として貧相な姿を晒していた。
「陽の光、土の養分、虫の駆除。どれも植物一つ一つで対応が違ってくる。間違った育て方をしていては駄目なんだ」
しわがれた声に疲労が滲む。
「私は·····間違えた」
一代で財を成した老人は、多くの子供と愛人に恵まれていた。全盛期にはメディアを賑わせたことも一度や二度では無い。
だが今は·····この広い屋敷にいるのは彼と私だけ。
子供達も、愛人達も、みんないなくなった。
彼が丹精込めた筈の庭は荒れ地に成り果て、広い屋敷も年月のせいで全て色褪せてしまっている。
豪奢な調度品は持ち去られ、不釣り合いな小さな椅子とテーブルだけが残されていた。
「愛情の注ぎ方を間違えた」
子供達のことか、愛人のことか。それとも庭の植物達のことか。言葉だけでは判然としない。
私は彼の膝に乗った手に自分の手を重ねる。
かさついた指。皮膚のたるんだ甲。年月を感じるそれはまるで枯れ枝だ。
「旦那様」
努めて柔らかく呼びかける。
「旦那様には私がいますから。どうかご安心ください」
庭も、彼自身も。最後まで傍にいて見守らなければ。
――彼には私しかいないのだから。
冬枯れの庭を見つめる彼の目は、虚ろで。
かさついた指が私の手に重なる。
「――旦那様?」
ぎゅ、と唐突に強い力で握られた。
「気付いていないと思っていたのか」
しわがれた声。だがその鋭さは往時となんら変わっていない。
――あぁ、私も間違えた。
そう思った。
END
「愛を注いで」
クリスマスソングが
今年も街に鳴り響き始めた。
ああ。
強制的にクリスマスモードにさせられる、この感じ。
平和と言えば平和なのだろう。
鮮血を見なければならない場所なら
きっとこんな音楽は鳴り響かない。
平和というのは、ぼんやりとしていて少し物足りない。
もしくはつまらないと感じるようなものなのかもしれない。
許容範囲の刺激を日々感じることで
現代人は平和ボケを回避しているのだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今まではクリスマスだと何かしら飾っていたのだが
今年はちっともやる気が起きない。
子供が居るわけでもないし
初々しいカップルの当事者でもないからだ。
他の理由もあるといえばある。
最近の年の瀬といえば、
この1年どれだけやれたのか反省をするような時間に
なりつつある。
あれはやった、コレはまだ途中
やっぱりあの計画は達成できなかった…などなど。
毎年12月が来るたびに
己の老化と対峙するような気がして
落ち込むというのもある。
うん。あまりいい季節には感じないな。
ただ毎年一つ、思い出すことがある。
それはサンタクロースの ある顔だ。
外国の白い髭を生やした、テンプレなサンタクロース。
コーラのCMだったと思うのだけど、ひと仕事を終えて
シュワッと炭酸のよく効いたコーラを飲んでリフレッシュしながらソファで寛いでいる彼を思い出す。
毎年毎年、飽きずに子供にプレゼントを届けて
達成感のある顔をして、もう思い残すことはない!
というような充実感のある表情。
まあ大人だし、プロだよね。
(なんか見返りでお菓子とかもらってたような気もするが)
あれは私達オトナに向けて
「オイ!おまえたちいい仕事してるか?」
等のような意味合いを発信しているのではないだろうか、と巷のgeminiに聞いてみたくなるのだった。
…そんなことを考えながら、車のエンジンを切ってコンビニに入った。ファミチキが揚げたてだった。匂いがぷんぷんする。
ぱっとコーラが目に入る。
あの顔がツヤツヤなサンタが目に浮かんだ。
『良いじゃないか
それなりにやれた1年だったよ
多分コーラ、うまいよ』
喉が渇いていたのを
サンタからのお告げ、と言い訳しながら
コーラを買って家に帰った。
その日、大げさじゃなく
自分自身に 愛を注ぐように
グラスにコーラをゆっくりそそいだ気がする。
12月はコーラのいちばん美味い月、ということで。