私の名前はルナ。
花も恥じらう女子高生。
私には、一卵性双生児で自分にそっくりな妹、レナがいる。
食べ物の好みや、服のセンスが全部一緒。
理想の異性も一緒だ。
だから言葉に出さなくても、お互いに考えている事は手に取るように分かる。
まさに以心伝心、私の心とレナの心は繋がっているのだ。
そんな私たちはいつも一緒。
今日も仲良くレナとテレビを見ていた。
お笑い番組でゲラゲラ笑っていると、買い物から帰って来たお母さんが言った
「ケーキ買ったから、一緒に食べなさい」
私とレナは喜んだ。
早速お母さんが買ってきたケーキの箱を開封する。
けど中身を見て驚いた。
そこには5つのケーキが入っていたからだ。
私はケーキが好きだ。
ということは、当然レナも好き。
そして一つでも多くのケーキを食べたい私たちは、ケーキの取り合いになってしまうのは必然、喧嘩になる。
だからお母さんは、いつも分けられるものか偶数を買って来るのだけど、今日はなぜか奇数だった。
うっかりしていたのだろうか?
どちらにせよ、戦争は避けられない
けれど私たちはいい大人。
暴力で解決する年齢は卒業した。
殴り合いをせず、スマートな方法で解決する
その方法とは――
ジャンケンだ。
『喧嘩するくらいなら運で決めてしまおう』。
という、多くの血を流した私たちが導き出した、教訓だ。
私はレナにアイコンタクトを送る。
するとレナは『当然』と言わんばかりの目線で返してきた。
これで勝負は成立、後は神に祈るのみ。
私たちは、ゆっくりと拳を握り――
「ちょっと二人とも待ちなさい」
けれど勝負を始めようとした瞬間、お母さんが割って入ってきた。
「私がジャッジするわ」
私のレナの間に、お母さんが座る。
お母さんは、私たちのジャンケンを見るのが好きだ。
なんでも私たちの勝負が『頭脳戦』で、見ごたえがあるらしい。
まあ、お互いの考えが分かる手前、相手の裏をかこうといろいろ考えるからね。
でもルナも裏をかこうとするわけで、でも私もさらに裏をかき……
そして最期に読み間違えた方が負ける。
少しの誤差で、勝敗は決するのだ
うん、立派な頭脳戦だ
「今日の二人を見ると長期戦になりそうな予感がするわ……
観戦の用意をいないと……」
「「はやくしてよ、お母さん」」
「二人とも急かさないの。
そうねえ……」
そう言ってお母さんは、辺りを見回す。
「あ、ケーキがあるじゃない。
これ、一つ貰うね」
私たちの勝負は、勝負する前に、勝負が決まった瞬間であった。
12/13/2024, 4:07:30 PM