一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→短編・ひとり酒

 ハート型ボトルのウィスキーが実家から送られてきた。親父がゴルフコンペのニアピン賞でもらってきたものらしい。実家は全員下戸なので、唯一酒の呑める俺に回すことにした、と母親はそう説明した。
 コロンとしたハートがなんとも可愛らしいボトルだ。ミニサイズを想像しがちだが、実はフルボトル。しかもラベルに「愛」の文字入り。ファンシーさとイカツイさを併せ持ったボトルだ。
 そして20代独身男の部屋に微妙な哀愁をもたらしてくれている。
 早々に終わらせたいのだが、ウイスキーのフルボトル、なかなか減らんのよ。
「う〜ん」
 一声唸って、ボトルのウイスキーをグラスに注ぐ。気合いの入った達筆の「愛」の強烈な存在感がすごい。同じ愛なら人間の愛がイイ。
「愛を注いで、愛を求める……、なぁんてね、ハハ」
 破れかぶれな独り言が辛い。
 ヤバい、マジで人恋しくなってきた。マッチングアプリ、登録しようかなぁぁ。

テーマ; 愛を注いで

12/13/2024, 4:54:49 PM