『愛を叫ぶ。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「すきだよ!」
「わたしもすき!」
幼馴染の女の子。幼い頃から僕らは両思いだった。
僕が好きと言えば君も好きと返してくれて、君が好きと言えば僕も好きと返した。
「世界で1番大好きだよ!」
「ふふっ、私も大好きよ」
大きくなってからも僕らの愛は変わらなくて。お互いの両親や友人に見守られながら愛し合っていた。
大人になったら結婚するんだって、白詰草の指輪を交換して笑った。
「好きだよ」
「…」
「ねぇ…大好きだよ…」
それなのに君はある日突然冷たくなってしまった。何度好きと伝えても言葉が返ってこなかった。
「可哀想に交通事故だったんですって…」
「男の子だけ助かって女の子の方は…」
「あんなにお似合いだったのにねぇ…」
周りの声が煩くて、君を抱き上げて煙が薫る部屋から抜け出した。幸せでいっぱいだった君の身体は、僕が両手で抱えられるくらい小さくなってしまった。
「あのね、君に伝えたいことがあったんだ」
あの日渡せなかった本物の指輪を君の上に乗せる。金属と金属がぶつかる音が小さく響いた。
「僕と結婚してください」
君の返事は返ってこない。
「好き」
「大好き」
「愛してる」
いつも聞こえる君の声がしない。
両目から涙がこぼれ落ちた。
「…っ!ずっとずっと大好きだよ…っ!!」
止まらない涙ともに君への愛の言葉を吐き出す。
声が枯れるまで叫んでも、君の答えは最後まで返ってこなかった。
【愛を叫ぶ。】
言葉にしなくても愛が伝わる関係性には憧れるけれど、時々は言葉にして愛を伝える関係性にも憧れる。
親愛なる相手だからこそ、伝えやすいことがあったり、逆に伝えにくい・伝えずらいこともあるのだろう。
「おはよう」「大好き」「ありがとう」「おやすみ」
愛を伝えられる言葉は人それぞれにあるはずだ。
小声で呟いても、大声で叫んでも、どちらでもいい。
ただ相手に伝わったのなら、きっと大丈夫。
#83 愛がある限り
良くも悪くも
オトナになってしまって
叫ぶほどのスタミナはもうないけれど
ささやくくらいならまだまだできそうだ
そこに愛がある限り...
お題「愛を叫ぶ。」
ーーーーーー!!
ーーーー!!!
ーー!ーーーー!
ーーーー!!!
ーーーー!!!
「短時間で同じ内容が投稿されています」
Twitterに注意された推しへの愛。
#愛を叫ぶ。
叫べるもんなら叫んでるよ。
いくらでも言いたい。いくらでも言ってやりたい。
2文字だけだって、言えよ!俺。
届かないかもって怖いのなんて分かるよ。
でも今言わないともう伝わらないかもしれない。
いつもありがとう。
助けてくれる君が大好きでした
叫び声は水面の波紋と
涙は海沿いのコンビナートと
挨拶を忘れてしまっていたのを
思い出したので
空と波の隙間を定規で計った分だけ
花束の死骸を拾っておいた
愛を叫ぶ。
この広い海のさざ波が、鼓膜を震わせる。
奥に見える島は薄く霞んでいて、波が視界を攫う。
下には崖が、後ろには森が。
僕は思い切り目の前の海に飛び込んだ。
入水音は、波によって掻き消された。
僕が漂っているのは誰も知らない。
きっと…ね。
いつもの日常に、入り込んだ一つのストレス。
俺は正直どうしたらいいのか分からないでいた。
(またここに居るよ…)
いつも俺の店の横に立つ、背が高くて髪の長い、男の幽霊。コイツが来て早一ヶ月になる。霊媒師をここに呼びつける訳にも行かないので、取り敢えず塩を撒いてはいるが、何せ目の前に海があるのだから塩に耐性でもあるのか、一つも消えやしない。なんなら濃くなっている気すらしている。
(とりあえず、見て見ぬふりがいいよな。…っていうのがダメなんだろうな…)
ため息ばかり吐く毎日。
お客さんに見えている人は居ないようなので、まあいいかと放置気味である。
「あれあれ、あおちゃん、こんなとこで何してるんだい」
「お!肉屋のばあちゃん、久しぶりー。俺ここにパスタ屋開いたんだ。良かったら食べてって!」
「まあそうだったのかい。じゃあ今度ミツルさんを連れて寄ってみるよ」
「げっ、ばあちゃんの旦那さんちょっと怖いんだよなー」
「ほほほ、ああ見えて、あおちゃんのこと結構好きなんだよ。あおちゃんも、またコロッケ買いに来てちょうだいな」
「本当かよー…。うん。近いうち行くから待ってて」
前に見た時より小さくなったばあちゃんに手を振る。 昔はよく、出来たてのコロッケを頬張る為に買いに行ったものだ。懐かしの味に涎が出そうになる。
( …そうだ。確かあの頃、ちょうどコイツと同じような奴と買いに行ってたんだ。そうそう、あいつ…)
「…ひろと…」
「……ぅ…あっ…あお、ちゃ…ん」
幽霊が喋った。目の前に歩いてくる気配がする。
「ねえ、あおちゃん」
ついに話しかけてきた。話しかけられてしまった…。
名前に反応したのなら、コイツは、あの ひろと なのだろうか…。気になる。好奇心が抑えられない。少し見るだけなら、大丈夫だろう。
「あおちゃん…」
チラと幽霊を見遣ると、俯き前髪で隠れた瞳は、隙間から見え隠れしていた。二重で睫毛の長い瞳。鼻は高く顎はシャープで、上々なビジュアルではないか。
確かにコイツは ひろと かもしれない。
当時はそこまでイケメンだとか思ってなかったが、面影がある。
「あおちゃん、ずっと…好きだった…」
「…」
「男よりもかっこいい、あおちゃん。背も高いし、最初はヤンキーみたいで怖かったけど、ほんとはすっごく優しくて…。」
「……っ」
「女みたいだって、いじめられてた僕を助けてくれたよね。へへっ、懐かしいな…。本当にありがとう、あおちゃん」
「ひろとのばか…」
「わぁ!どうして泣くの?ごめんあおちゃん…泣かないで…」
「あぁ…どうして気づかなかったんだろ…そのまんまだったのに…塩投げてごめんな…」
「ちょっと痛かったけど、大丈夫だよ」
すっかり、あおちゃんは女性らしくなったと思う。前なんか僕よりも短い髪の毛で、金髪にしてたのに。今じゃすっかり黒髪ロングだ。
顔つきも、前より柔らかくなった。
「お前、なんでこんなとこに居るんだよ…早く戻れよ!」
「戻れって…?僕はあの日…」
「生きてるんだよ…。ベッドの上で、今でも…」
確かにあの日、僕は死んだはずだった。
沈んでいくのが分かる。
もがく事すら出来ない水圧が身体を襲う。
キラキラとした太陽が海を照らしていて、満点の星空の下に居るようだった。
波に揺蕩う僕はこのまま、消えてしまうのだろう。
ただ大好きなあおちゃんに、また会えないのだけが心残りだった。
あおちゃんと過ごした日々がパノラマのように流れる。
初めて会ったのは幼稚園。最後に会ったのは高校三年の夏。一緒に海水浴をした。
あんなにかっこよかったあおちゃんは、大人の女性に近付いていて、女々しかった僕は恥ずかしかったっけ。
朦朧としていると、誰かに触れられた気がした。
僕はてっきり、天のお迎えかと思ったが、違ったのだ。
…あおちゃん、君に助けられてばかりだよ…。
「…またぼくは、あおちゃんに…」
「ぁ…っ…ひろと!待て…っ!!」
「またね」
「おい!待てって…!」
そして僕はそのまま意識を失った。
「自分だけ、言いたい事ぶちまけてんじゃねえ…ばか…!」
そこに居たはずの彼は跡形もなく消えてしまった。
こうしてはいられない。そそくさと店じまいを行うと俺はひろとの待つ病院へ向かった。
「松永さん!今、長尾さん目が覚めました!」
「…あ、お、ちゃ…」
「喋んな…」
こっちにも言いたい事は山程ある。
でも、まずは…
「…おかえり、ひろと」
昔はあんなに可愛かったのに、かっこよくなったもんだ。背だって抜かされてる。
俺も好きなんて、まだ言ってやらねえ。
ただ、密かに愛を叫ぶ。
まだ見合う女性になりきれていないから。
おわり
「国境を超えて好きだー!」私達は、世界の中心で愛を叫ぶ。私達は、暇さえあれば、愛を叫び、愛を誓う。私との未来の為に一生懸命仕事を頑張る貴方、だけど、私の前になると、まるで犬の様に甘えて来る貴方…貴方のそのギャップも何もかもが好き。ホントに貴方の事が好きで好きで堪らない…久々の職場内恋愛では無い恋愛…私は、それでも、貴方との未来の為に、今は、耐えて、貴方と同棲した時の喜びを倍にしたいと思ってる。今は、会いたい時に会えない辛さも時々あるけれど、その分、同棲した時の喜びが倍になる様にするの。初めてこんなに人を愛せたんだ。この先も永遠に貴方の隣で愛を叫ぼう。「例えこの先何があっても永遠に貴方の隣にいる」と。
『屋上から愛を叫ぶ。』
その名の通り、屋上から生徒が告白をするテレビ番組の企画だ。その撮影に、僕の通っている学校が、その告白者のひとりに僕が選ばれた。
まず初めに言っておくと、僕は所謂陰キャである。クラスメイトよりも猫と話すことの方が得意な、この手の企画とは本来無縁の人間だ。なのに、どうして参加しようと思ったのかといえば、まぁ、普通に好きな人がいるからで。卒業を前に告白するかしないか悩んでいたところに、この企画が舞い込んできた。もし、100人以上いる希望者の中から平等なじゃんけん大会で勝ち残り、告白出来る8人に選出されたなら、それはもう天啓じゃあないかと。
当日。屋上にスタンバイしている僕は、手のひらに書いた人という字を100人ほど飲み込んでいた。口から心臓が飛び出す心地とは、まさにこのことかと思った。僕が屋上の隅っこで緊張からくる吐き気に耐えていた時、背中をそっと擦ってくれる手があった。誰かと振り向いてみれば…
「大丈夫?」
「……うん、あ、ありがと」
彼女はクラスメイトの、僕が今まさに告白しようとしている相手だった。しかしどうして今こんなところに?彼女は告白者ではなかったはず…疑問がそのまま顔に出ていたのか、彼女は笑って僕に言った。
「泉ちゃん風邪引いちゃってさ、あたしはその代打」
「そ、そうなんだ」
え?ということは、それって…
「あたしの番だ。行ってくるね!」
僕に軽く手を振り、彼女は告白台へと上っていった。そして大きく息を吸い込むと、その朗らかな声を校庭に集まった人たちの頭上へと降らせる。
「あたしはー!2年前からー!好きな人がいまーす!」
オーディエンスは応える。
「だーれー?」
「同じクラスのー!」
黄色いざわめきが校庭を埋め尽くす。
「坂本くんでーす!!」
驚いた。坂本は僕の唯一の友達だ。彼も僕と同じく陰キャである。
「あたしと、付き合って下さーーい!!」
一気に集中した視線に戸惑いながらも、グラウンドにいた坂本は屋上を見上げた。そして、叫んだ。
「お、俺で良ければーー!!」
慣れない大声で少し裏返っていたが、そんなことは細事である。意外なカップルの誕生に歓声に包まれる会場を、僕は呆然と見ていた。
冷めやらぬ空気に背を向け、彼女は満足気に台を下りた。そして次の告白者である僕の横を通り過ぎようとした時、「頑張れ!」と笑顔で小さく肩を叩いていった。僕はそれを受けて____泣いた。
ひどい平和主義(惨めな臆病者)である僕は、せっかく成就したふたりの恋の妨げになるのも、おしている撮影を滞らせるのも嫌だった。だから、涙目でも心が砕けても、予定通り告白台の上に立った。告白する前から泣いている僕に、校庭がどよめいている。全校生徒に惨めな姿を晒しながら、それでも僕は大きく息を吸い込んだ。
「僕は…!ずっと…!君のことを、見ていました!!」
令和の時代ではストーカーなんて思われてしまうだろうか。昭和にはこれを純愛と呼んだらしいのに。
「君の気まぐれなところ、コロコロ変わる表情が、僕を魅了して止まないのです!」
良い意味で、人を翻弄するのが本当に上手い。一体どれだけの人間が、君にハートを盗まれたかなんて、君は考えたこともないのだろう。
陰キャの告白に観衆が引いているのをよそに、僕は続けた。恐らく今から更に引かれる発言をする。しかし、卒業は目前だ。もう何を気にすることもない。ゆっくり深呼吸して、僕は叫んだ。
「君を!一生養っていく覚悟があります!どうか、僕と!家族になってもらえませんかーー!!!」
最高潮のどよめきの中、僕はポケットから取り出した誓いを天高らかに掲げ、また叫ぶ。
「お願いです!マドンナちゃーーん…っ!!」
マドンナちゃん。それは学校に住み着いている野良猫の名である。真っ白でふわふわの毛に、外国の海を思わせる吸い込まれるような蒼い瞳。動きもどこか気品があって、まるで野良猫とは思えない。我が校の有名人…いや、有名猫だ。僕が手に持っていたのは、奮発して買った猫缶である。
その日、僕は伝説になった。猫に告白をした男として。
実際は、告白前に失恋しただけの男なのだが、観客の目には、卒業によって学校に住み着いている野良猫と別れるのが泣くほどつらい猫好き男と写ったのだ。つまりは笑い話になった。
あれから10年の月日が過ぎたが、今も僕の隣には、変わらずマドンナちゃんがいる。
有名な崖の上に、ふたりで並び立つ。
私が彼の袖を引いてせがむと、彼は顔色を変えて「嫌だよ」と呟いた。
「どうして?」「いつもは私のこと、あんなに『愛してる』『好きだ』って言ってくれるのに」
彼は首を横に振る。
「こんなところでなんて」
「そんなの関係ないじゃない! ねえ、私のことが好きなら、やってみせてよ!」
渋る彼に、私は言い募る。少しばかりムキになっている。でも、ここに来たのに『やっぱり無理』なんてムシの良い話だ。
彼は覚悟を決めたように、両手を柵にかけた。緊迫した顔持ち。
彼が私の名前を呼ぶ。少しひずんだ掠れた声。緊張のせいだろうか。
「っ、⋯⋯、愛してるよーーーーーー!!!」
尾を引いた叫びの木霊がうわんうわんと山や谷を反射する。
古い映画のワンシーンの再現にほうと胸が高鳴る。
息を吐いた後、真っ赤な顔で俯いた彼に、愛おしさが溢れてたまらずに私は抱きついた。
推しが好きだ。
推しが頑張っているから、私も頑張ろうって今日も思える。
何もかも嫌になってた時にちょっとした切っ掛けで推しに出会った。
運命とかそういうのではなく、ただただ、偶然。
たまたまあの日私は疲れていて、たまたま手元にいつもよりもお金があって、なんとなく衝動買いをした先に出会いがあった。
ガチ恋とかでもないし、全力で追いかけてる訳でもない。
ただなんとなく推しが頑張ってるなら、私ももう少しだけ頑張ってみようと思える。
そんな日々をあなたはくれた。
だから届くはずないってわかってるけど、ありがとうと、大好きと、応援と色んな思いを込めてあなたに愛を叫ぶよ。
夜の片隅にいる。
夜風が時折カーテンを翻し、遠く世界の中心で炸裂する光を見せた。たまにずうんと低い衝撃が伝わって部屋がわずかに揺れる。
何度目かの揺れの後、あなたは俺に聞こえるように溜め息を吐き、読み差しのエリスンの短編集をベッドサイドに置いた。俺を招く指は細く長く、麗しい。また光が閃いて、あなたの不機嫌な顔を一瞬照らし出した。
連中のことは仕方ない、ああすることが正しい表明の仕方だと思っているし、表明しなくてはいけないものだと頑なに思いこんでいる。秘める想いの美しさなど知る由もなく。
俺は俺を招く手に誘われて、あなたに寄り添う。夜の一部を切り取ったようなあなたの髪を指で梳き、そっと頬を寄せる。身の内から狂おしくこみ上げる叫びは、夜気をかすかにふるわす囁きに変える。それは、夜という頁に記された一篇の詩だ。
俺の首に腕を回したあなたの囁きが、俺の耳を濡らす。俺は武骨な手で精一杯に優しくあなたを奏で、あなたの唇は俺の指に応えて妙なる音を夜の中に紡ぐだろう。
光も振動も、もはや夜を妨げない。お前たちはせいぜい世界の中心で叫び続けるがいい、その愚かしさに世界が堪えきれなくなって崩れ落ちてしまうまで。
すべてが失くなった跡に、ただこの夜だけが在るだろう。
(書くまでもないこととは思いますが、“あなた”が読んでいた本はハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』です)
『愛を叫ぶ』
愛叫ぶ 届くことなく 地に落ちて
また集めては 静かに眠る
『モンシロチョウ』
泣いていた わたしのこころ 濁るけど
幼いまま 生きたくはない
声が枯れるまで、必死に君への愛を叫ぶ
僕の心の中だけで
いつになったらこの声たちは
外へ出ていけるのだろう
出してやれるのは僕だけだという事実に
今は目を逸らして
(愛を叫ぶ。)
【愛を叫ぶ】
愛を叫ぶ
心の中で
声にはしない
愛が陳腐なものになりそうで
言葉にはしない
気持ちが嘘になりそうで
音にはしない
風の音にかき消されそうで
愛を叫ぶ
目と目で
私は手を震わせて
あなたの体に触れる
あなたの手をとり
私の体の炎で温める
あなたの鼓動と
私の体温を互いに確かめ合う
愛を叫ぶ
声はいらない
互いの吐息が愛の叫びだから
言葉はいらない
感じ合う鼓動が言葉になるから
音はいらない
吹く風が2人を燃やす音になる
愛を叫ぶ
目と目で
心と心で
互いの温もりで
#3
テーマ【愛を叫ぶ。】
俺は走った。とにかく走った。限界も公開も投げ捨て、最後にもう一度だけ別れを告げる為に。
現在時間は『午前八時』。ここから駅まで全力疾走を続ければ十分間に合う距離だろう。
周りに居る人達から奇人を見るような視線を集めながら、息も絶え絶えで駅に転がり込む。
もう、君と合うことはないだろう。それでも俺の人生に彩りと幸せを教えてくれた君に、俺なりの愛を叫ぶ。
「メチャクチャうめぇぇぇ……!」
俺は、今日販売終了の期間限定料理を涙を流しながら頬張るのであった。
●塞翁が馬●
先日の事、
愛を誓い合ったはずの
彼の浮気が発覚して、
別れを言い渡した。
結婚式の時に浴びた、
チャペルでの祝福のライスシャワー、
やけに打球が強かった奴がいたが、
そいつが彼の浮気相手に違いない。
結婚から1ヶ月も経ってないのに、
ひどいと思ったが、
私も、同棲時代の彼の姿をみてて、
これで、うまくやっていけるのかな?とか
不安を抱えていたし、彼の浮気を知った時、
やっぱりね。とか、まぁ、いいか。と、
冷めてた所があったので、
これからの人生プランを練り直すには、
早く分かって、別れて良かった。
そして、
慰謝料もたんまり取ってやったし、
今、私は
傷心旅行に来ている。
私だって
全く傷付いていない訳じゃ無い。
沢山の思い出だってあるし、
確かに彼の事を愛してた。
適当に選んだ遠い異国の地、
観光地として来た場所は
世界の中心だとか
大地のおへそだとか呼ばれている場所。
残念ながら今は、
眺めることしか出来ないけど、
とても、大きくすごかった。
でも、日中はあまりの暑さに
「愛ってなんじゃい!」
と叫んでしまった。
不覚にも世界の中心の少しズレた所で、
愛への疑問を叫んでしまった。
暑さを我慢し、日が傾く頃、
大地のおへそは姿を変え、
…壮大な…何だろう、
言葉で言い表せないような、
今すぐにでも、世界が終わっても
全く後悔が無いような景色が
目の前一杯にひろがっていた。
私の心の傷なんて、
かすり傷と、いわんばかりに、
壮大な景色は私に語りかけていた。
そんな時、一人の観光客の外国人が
ハンカチを渡してくれた。
どうやら私は涙をながしていたらしい。
何の涙かは分からない。
「サンキュウ…」
カタカナ英語で精一杯のお礼。
「イイエ、ドゥイタシマシテネ!」
ハンカチを渡してくれた、
陽気で楽しそうなその人は
片言の日本語でそう言ってくれた。
彼は、後の私のダーリンになる人である。
そして、それはまた別のお話し。
fin.
#今回のテーマ(お題)は
【愛を叫ぶ】でした。
終わりが見えた。
破滅を謳歌する君に伝えたいことがある。
もう君はだいぶ堕ちてしまって遠いところにいるんだろうね。僕はもう君の姿を見ることはないだろうけど、言いたいことがあるんだ。
僕は狡をしてしまったんだ。君は僕と天国に行くために罪を償っているというのに、僕はもう諦めてしまったんだ。教会の神様が僕を騙して突き堕とそうとしている。僕は神様を愛してる。君との約束は果たせなくなった。
きっと神様は、君から僕の記憶を消すだろう。それでいい。僕のことは忘れて、破滅でもなんでも楽しんでくれ。けれどもし、終わりが見えてしまった時は、迎えに行くよ。
【愛を叫ぶ。】
私、東雲初芽(しののめはじめ)はクラス担任の鈴木先生から「しののめめ」と呼ばれている。入学したときから卒業を間近に控えてもなお、顔を合わせるたびにこう呼ばれては生徒から集めた課題のノートやプリントを準備室まで運ぶよう命じられた。
「先生、「しののめめ」って呼び方、何か恨みがあるようにしか聞こえないんですけど。『おのれ、××め』って親の仇みたいな。もう、卒業も近いしそろそろやめてもらってもいいですか」
「別にいいじゃん、呼びやすいんだし。お前、もうすぐ卒業だろ。じゃあ、今更変えることないじゃんか」
「でも、「しののめめ」って東雲より一文字多いんですよ? クラスのみんなは『めめ』って呼んでくれるし」
「いいんだよ、別に。俺は友達じゃなくて「先生様」なんだから」
最後はジャイアンみたいなことを言って、結局呼び名は変わることなく卒業の日を迎えた。なんだかんだで3年間の高校生活で最も関わりが深かったのは鈴木先生だったので挨拶しようとするも、常に他の卒業生たちに囲まれていて話せそうにない。諦めて校舎の外に出ようとしたそのときだった。
「東雲!」
振り返ると、そこには鈴木先生の姿があった。先生が私の苗字を正しく呼んだのは、このときが最初で最後だったかもしれない。
「卒業おめでとうな!」
先生は笑顔でそう言って、私の頭に手を置いた。
先生、本当はあなたが好きだと伝えたかった。あなたと過ごす時間が何より大切だった。この先も、ずっとずっとこの想いは変わらないと言いたかった。「先生と生徒」という関係でなかったら、伝えたい想いはたくさんあるはずなのに。
「先生、3年間見守ってくださってありがとうございました」
こぼれそうになる涙を必死で抑え、こう言って一礼するのが精一杯だった。
「そのままでいろよ、東雲。じゃあな」
先生はそう言うと、後ろ向きで右手をヒラヒラさせながら校舎へと戻っていった。
その後、大学を卒業した私は縁あって母校の図書室で司書として働き始めた。鈴木先生とは「先生と生徒」から「先生と先生」になり、今では「家族」として共に暮らしている。仕事上は旧姓を使っているが、結婚して苗字が変わったのは夫である先生の方だった。
「だって東雲ってカッコいい苗字じゃん」
それが、夫が改姓した最大にして唯一の理由らしい。
「その割に、ちゃんと苗字呼んでなかったじゃない。いっつも「しののめめ」って」
「いや、あれは、つまり、その…だな」
どうにも歯切れが悪い。気になって問い詰めると、ようやく白状した。
「他とは違う、俺だけの呼び名でお前のことを呼びたかったの!」
初めて知った。あのときから、あなたは私を呼ぶたびに愛を伝えていてくれたんだ。今、耳まで真っ赤になっている先生の隣でそっと囁いた。
「ありがとう、マコトさん。大好きだよ」
愛を叫んだとて、君が戻らないことは痛いほど知ってる。
思い出してたんだ。昔のこと
好きって言ったって、君が振り返らないことを知っている。
茶化して笑うんだろ。
「嘘言うな」って
「慰めるな」って
知ってるよ。
幼馴染なめんな。
恋から愛に変わっても、君は変わらないから、
愛を叫んでも応えてくれないんだろ。ほら、
君がいないのは知ってる。
でも、でも、それでも、叫ぶしかないんだ。
愛を叫んだとて、君が戻らないことは痛いほど知ってる。
それでも、
きみが応えてくれなくても、
戻ってくれなくても、
叫ばずにはいられない。