『心の灯火』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
永遠と燃え盛ると思っていた。
時に死ぬほど苦しみ、時に死ぬほど喜ぶような人生で、永遠に。
それが、こんなに弱くなるとは思わなかった。
朝日がよく見える病室のベッドに横たわるあなたの手を握る
「…一生、惚れてくれたな」
笑いながら言うあなた。
『生涯、惚れた相手と結婚したい』
そんなことをあなたにずっと言っていたから、ずーっと気にしていてくれた。
苦し紛れに吐いた息と、新しい不安を吸おうとした刹那、少し冷たいあなたの唇と私の唇が重なる。
おそらく最期のキス。噛み締めることも出来ずに、あなたはベッドに倒れこみ、徐々に体温を失っていく。
心の灯火が消えかかってます
やる気が無くなりそうです
なので皆さん、私の心に着火してください
応援されました
少し火が強くなったようです
やる気が出てきたので、ちょっとやってみます
褒められました
火に勢いがついてきてます
その調子です、どんどんやる気をください
心強い言葉を貰いました
心の灯火、燃え盛ってます
どんなことでもできそうな気がしてきました
皆さん、ありがとうございます
温かい言葉の数々で
やる気が頂点まで上がりました
皆さんのおかげでやるべきことを達成できました
いつか皆さんの心の灯火が消えかかったら
今度は私が皆さんの心に着火します
『心の灯火』💚
僕の心の中にある
あたたかい光は
あなたの笑顔。
あなたがいなきゃ
僕は潰れてしまう。
だからずっと、
僕の心を灯していてよ。
『心の灯火』
もう消えてなくなりたいと四六時中思っていた頃、それでもあと一歩を踏み出さずにいられたのは本と歌があったからだった。
「ハリー・ポッター」「ダレン・シャン」「守り人」「ナルニア国物語」etc.…続きを読まずには死ねない!と本気で思っていた。例え憂鬱の元凶が隣に居たとしても歌を歌うことが何より楽しかった。あの頃の私が私であるためにいちばん大切だったもの、消えてなくならないための大事な灯台の明かり。
㉛心の灯火
どんなに
仕事で疲れていても
どんなに
理不尽な事を押し付けられても
その姿を見れば
たちどころに
笑顔になれる
あなたという
心の灯火よ
心の灯火
あなたの
存在が
わたしの
心の灯火
ずっと
そばにいてね
なな🐶
2024年9月2日2049
もし、わたしにホルンという存在がなかったら、わたしはからっぽになっていたかも。
ホルンを吹いているとき、触れているときは、わたしは存在していていいんだ、っていう安心感を感じられる。
だからこそ、最近は、部活を引退したあと、何を心の灯火にしたらいいだろうって考えて不安になる。
中1で吹奏楽部にはいって、ホルンに触れて、そこから私の生活はホルン中心に回ってた。
高校も、ホルンをより高いレベルで吹けるようになりたい、もっといい音を目指したい、って思って選んだ。
でも、大学までホルンを中心に選ぶわけにはいかなくなった。
音大に行きたいけど、そんなお金はない。
ほんとに、虚しくなるなぁ。
けど、そんな事を言ってたって何もかわらないし、ただ現状維持しようとし続けるわたしがいるだけになっちゃう。
あと1年、部活を引退するまでは、ホルンが心の灯火であってもいいかな。
けど、1年後には、新しい灯火を見つけていなきゃだめ。
わたしには、すごく難しいことだけど、それを乗り越えていかないと。
がんばれ、わたし。
新しい、心の灯火を、みつけて。
心の灯火
あなたがいれば生きられる。
あなたがいなければ生きられない。
私の人生は辛いことばかりだ。
良い事なんてなかった。
唯一の幸せはあなたに出会えたことだ。
あなただけが私の心を灯してくれる。
あなたがいないと耐えられない。
いなくなるなんて言わないよね?
「心の灯火」とかけまして
「河原を裸足で歩く」と解きます。
その心は「かたい意志/かたい石」を感じるでしょう。
風があっても、嵐があっても、消してはいけないもの。想いの深さ。
🪄🪄🪄
彼らの心が満たされるまで、新しい香りを纏って、私も邁進する。笑顔が止まらない。また、惹き寄せられた。あまりない出会い。どれだけ愉しかったと思う?
心の灯火92
また来週月曜日
【心の灯火】
「お疲れ様です」そう言って僕は会釈をして会社を後にする。上司からの叱咤、同僚の陰口に妬み、使えない後輩。あぁ、イライラする。人が殆どいない電車に揺られて、人気のない道を行く。疲労困憊の身体にはこんな当たり前の事すら辛い。だが、僕は一度も折れた事はない。何故なら大切な人がいるから。誰にも知られていない唯一の人。ね、僕だけの灯火ちゃん。怯えた目も素敵だよ
君は炎に質量があると思うかい?
ふむ、酸素が燃焼して二酸化炭素になるエネルギー熱をむりやりこじつけて質量に変換すればエネルギー保存ができる、と。ふふ、面白い考えだね。しかしエネルギー保存の法則は総エネルギー量が変化しないということだと思うんだけどねぇ。
しかし、燃焼エネルギーが大きいほど仮に質量に変換した際の重量はすさまじいものになるというわけだね。ふふ。僕はその考え好きだよ。
だからさ、他人を押し潰すことができる位の質量を持った心の灯火を……。
いや……火を灯すのであればわざわざ重さに例えなくてよかったかもしれないね。
……えっと。あの、とりあえず。相手を焼き尽くすほどの!相手を押し潰せるほどの!エネルギーを持って!がんばってくれたまえ!!!
心の灯火
そんな本があるところにはあるらしいが
わたしは興味ないです。
ともしびが、なぜか友死日と変換されて
あまりいい感じがしない。
心の灯火
目標達成 任務完了
そうすることができたら
どんなに気楽か
心の灯火を消すな
他人に吹き消されるな
自分で自分を守るんだ
両の手を翳して
そっと守る
揺らがないよう
消えないように
たとえちいさくても
………心の灯火
心の灯火
あなたと居れば
風が吹いても大丈夫だと思える
久々に書いてみようと思ったら全然書けなくて途中でぶった切られてます。南無三。
題 心の灯火
「ア"ハアハアハ⋯⋯ ハ、ハァハハ」
木下はひっくり返って笑った。
死んだはずの親友が目の前に現れたからだ。やーこれはいかん、いかんと思いながらも、頭の上半分がない親友の姿を見て、気分を良くしていたのである。
いやしかしなぜ今になって現れたのだろう、と木下は斜め上、何も無い自室の天井を見た。笑いが収まらないまま⋯⋯ 。
親友の真名部(まなべ)とは中学時代からの縁である。平生無口な彼に、騒がしい性分の木下は存外懐いていた。何となく彼の傍は安心して、スリスリ擦り寄っては拒否されることは無かった。
それから高校、大学と同じ学校に進学した。人文社会科学部なんて言う何となく名前の格好良いトコロに何となく入った。
しかし仕事ばっかりは違う会社に勤めた。こと俺に至ってはそれまでの勉学なんぞ無縁の職に就いた。
つまり俺たちの関係はそれで終わった。単純接触の効果が無くなればそんなもんである。
大学を卒業してから5年、真名部が交通事故で死んだとの連絡を受けた。ああ懐かしい名前を聞いたなと思ったその時、真名部はおそらく三途の川を渡っていただろう。
葬式には行かなかった。仕事のプロジェクトが大詰めだったからだ。
さてもう一度目の前の霊と顔を合わせてみる、顔の上半分がないので目は合わないが。顎が外れているかのように口を開けて、ちょこんと礼儀正しく床に正座している。腹からはとめどなく血が溢れ、フローリングを赤で汚し⋯⋯てはいなかった。真名部の周辺に落ちる血は、滲みが乾いていくようにス、ゥと消えていった。因みに、何故このバケモノが真名部だとわかったかと言うと、彼はちょっと特殊な舌ピアスをしていたので。中学時代からのお気に入り、真名部曰く、この法治社会へのちょっとした反発らしい。無口でボソホゾ喋る彼はついに卒業までバレなかった。実に中学生らしい。
「ナァおい久しいな。俺に会いにわざわざ三途の川を戻ってきてくれたのか⋯⋯ おい、返事をし。その口はなんのために残されたんだ、恨み言でも言いに来たのか」
「⋯⋯」
「昔話でもするか、それとも冥土の土産話(笑)でも聞かしてくれるのか。⋯⋯ オーイ生きてる?グーテンアーベント!」
「⋯⋯」
「⋯⋯ キノキノキノコ!」
「⋯⋯」
学生時代の持ちネタでもダメらしい。マ本来キノキノキノコはチョップまでやるのだが、こいつに触れられなかったらと考えるとちょっと恐ろしくてやめた。
「⋯⋯ァ」
ここでやっと、真名部が喉をふるわせた。ふるわせたと思ったら、
「ァア"、アァ"アァァ⋯⋯、」
とヘタな牡羊の鳴き声のような音を出した。
木下はアホな顔して、なるほどと思った。こいつ多分地獄に落ちたんだな、と。そこで脳髄も取られちまったんだろうな、と。真名部は悪さをするタイプではなかったが、いいやつでもなかったので。
「⋯⋯ なんか食ってく?酒とつまみしかないけど」
「⋯⋯」
「お前缶ビールだと何好きだったっけ」
キッチンを覗きに行けば、真名部もそろそろと立ち上がって着いてきた。小さな冷蔵庫の中身(ビールと冷食しかない)を見せてやるが、物色する素振りがないので、勝手にスプ×ングバレーを2本取って閉めた。ちょっといいやつにしたのは、親友が会いに来てくれたので。
「カンパーイ!!」
「⋯⋯」
「乾杯」
勝手に開けて勝手にカンパイした。2回目のやつは真名部が正座して動かないのでカシュッと開けてやった時に言ったただの名詞である。ウチにソファなんてものはないが、人をダメにするもちもちはあるので俺だけそいつに腰を沈めた。
「飲まネーノォ?せっかくコッチに戻ってきたんだからパーとやろう、な、ハイ、ごっくん」
「⋯⋯」
「ア"ハハハハハハハハ」
「⋯⋯」
「ハイ、ギョウザ、もぐもぐしまちょうねー」
「⋯⋯」
「ア"ッハァハハハ⋯⋯ハァハハハッ」
木下は酔っていた。真名部の開いた口にものを入れては腹から出てくるのを面白おかしく思ったのだ。ギョウザなんてそのままの形してベチャッと出てコロコロしたものだからもうダメだった。
そのうちに、木下は涙を流してひーひー言いながら笑い疲れて寝た。頭のどこかで「アァ俺殺されるかもな」とか思いながら。
真名部は木下を見ていた。いや目玉は無いのだが、舌に通った小さいアクセサリがジィっと木下を見ていた。ただそれだけだった。
「エきも」
木下は嫌な顔をした。親友が、クラスメイトに見えないように手で隠しながらベーっと舌ピアスを見せてきたからだ。
「なにそれ反抗期か、生意気め」
「ルールに抗ってみたくなった」
「ァイケメン」
真名部はニコニコ(真名部をよく知らない者からはニヤニヤして見える)しながらカッコイイことを言う。彼はあまり笑う方ではないが今日は気分がいいらしい。
秋も深まり、窓際の席でぬくぬく夢野久作を読んでいた真名部に吸い寄せられたのは今日も木下だった。学ランのよく似合う真名部は一見優等生だが、こいつは社会的に良くない思想を持っている。それが木下には新鮮で、カッコよくて、何となく心安らぐのだ。
「かっこい?」
「かっこい」
「同じのつける?」
「いやぁ⋯⋯」
正直憧れはある。だが目玉の舌ピアスとは俺にはハードルが高いな、と木下は思ったので、「痛そうだから」と最もらしい言い訳で断った。
アラームの音で目を開けた木下はちょっと驚いた。真名部が包丁を手にして自分を見下ろしていたからだ。「アー寝てる間に殺してくれないのね」なんて思いながら、それを真名部らしいなと感じると微笑ましかった。
「おあよ(おはよう)」
「⋯⋯」
「そういや眠剤飲まずに寝れたの久しぶりなんだよね、昨日は楽しかったなァ。殺してくれ」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
⋯⋯ マいっか。そう思ったので木下は昨日作った悲惨な現場を片して、急いでシャワーを浴びた。融和的なのだ、この男は。
スーツを着て髪を整え、サ今日も張り切っていきましょう!みたいな顔で家を出た。
「なんだこの数字は。売上落ちてんじゃねぇか」
「スミマセン」
「すみませんじゃねぇよ。どうすんだよ、ナァ。なんでお前は何を任せてもろくな成果が出ないんだよ、おい、給料泥棒かお前は」
「スミマセン」
「お前みたいな無能はなァ、いるだけでみんな迷惑してんだよ、仕事しねぇなら辞めちまえ」
「スミマセン」
死ねばいいのに。木下はカーペットを見つめながら思った。なんでこのハゲ死なないんだろう、とも。このハゲが声を荒らげるのはいつもの事なので、みんな何事もなく仕事をしている。席に戻れば誰かしらから心配の声をかけられるが、「だったら助けてくれよ」と思うだけで終わるのがいつものパターンである。
が、今日はちょっと違った。真名部がいたからだ。朝、真名部は支度をする木下を部屋の隅でジ、ィと見つめて、一緒にマンションを出てそろそろ着いてきたのだ、右手に包丁を持ったまま。
いやそれはマズイのでは、と木下も思ったが、マいっか、と結論をつけたので良しとした。そもそもコイツの存在がマズイので。
ついに会社までついてきたが、木下以外のニンゲンに真名部は見えていないようだった。電車でも気づかれないので、ぎゅうぎゅうに詰められて羽虫のようにジタバタしていた真名部は見ていて愉快だった。
そして今も、木下の後ろにぽ、つんと立って⋯⋯
「⋯⋯ギャォ」
と幻のポ×モンのような音を出した。ふらふら歩き出した真名部は右手だけゆらと上げて、真っ直ぐに下ろした。
「ア"──────ァア」
何度も何度も、上げて下げてを繰り返し、ハゲを抉っては、右脳だとか左脳だとか、そういったものを乱暴にしていた。
「おい聞いてんのか」
「聞いてます、スミマセン」
「聞いてねぇだろ、ゴミが。本っ当に無能だな、なんで生きてんだよ」
「スミマセ⋯⋯ フっ⋯⋯」
木下は、頭の上半分が無くなったハゲが、普通に言葉を喋っているのを面白おかしく思った。笑ったらもっと怒られるので下を向いて我慢していたが、ハゲにはそれが、怒られて泣いているように見えたらしい。木下は心の底から笑うと涙が出るタイプだった。
普段マイナスなリアクションの少ない部下が泣いたので、流石にバツが悪くなったハゲはいつもより早い目に説教を終わらせ、
「マァ、次頑張れよ⋯⋯」
と、フォローまで入れた、すでに木下にはハゲのハゲは見えていないが。
「お前、俺の嫌いな奴全員殺してくれるの、」
「⋯⋯」
木下は残業を終わらせ、夜風に吹かれながら帰路についていた。真名部はやはり木下の後ろを、口を開けながらひたひた着いてくる、その手に3人分の血をつけた包丁を持って。あの後、クズとボケも、ハゲと同じ目にあったのだ。
助かった、と木下は思った。もし、
「いいよ、殺してやる」
なんて言ってくれたら、多分、みんな殺してくれって頼んだだろうから。
「お、お⋯⋯ 」
木下は感心した。世間では仕事終わり(笑)と呼ばれる金曜日、上司の顔の上半分が、ことごとく無くなっていたからだ。
あれから真名部は、沢山刺した。
真名部の腹部の傷は治らない。
転
木下は通り魔に刺された。はずだった。病院に運ばれた木下の腹に傷はなかった。
木下が刺されたのは真名部の腹の傷と同じ場所だった。真名部は消えた。
退院後、真名部の墓参りに行ってみた。しかし地元駅に降り立った時点で墓の場所なぞ知らないことに気づいた。うっかり。
真名部の実家に行ってみた。インターホンを押すか押さないかで2時間躊躇した。だって最後に真名部の実家に顔を出したのは確か高3の時だ。しかも友達だったくせに葬式に顔を出さなかった無礼者なのだ自分は。2時間後、ままよと思いながらインターホンを押した。押したあと逃げ出したい衝動に駆られた。
真名部の母親は心良く木下を迎え入れた。少し話をして、真名部の遺品をひとつくれた。
教えてもらった真名部の墓に行ってみた。墓石は家族が手入れしているのか綺麗だった。ここに来てやっと分かった。真名部の反社会的思想は、木下の心を支えていたのだと。
結
復帰後、ハゲにはハゲが戻ってきていた。色々文句を言われる前に辞表を叩きつけてやった。最後にあっかんべと変顔をして出ていった。
その舌には、目玉のピアスがあった。
「心の灯火」
目の前に崖があった。
これから飛び込むのだと思うと、嬉しくなった。
目を細める。崖下にある海に日差しが反射して、眩しい。
君に合いたかっただけだった。
死にたかった。
何も、楽しくなかった。
何も、嬉しくなかった。
全てが、嫌になった。
だから、探した。
死ぬことのできる場所を。
死ぬことのできる道具を。
楽しかった。死ぬという目標に向けて遊んでいるようだった。
心が軽くなった。
だが。
軽くなっただけだった。
心は癒えてくれなかった。
傷ついたままだった。
君が死んだ。そう聞かされたのは、二年前だ。
首をかっ切って死んだそうだ。
死体は見なかった。見れなかった。
見たくなかった。
あの日から僕は、何も、したくなくなった。
誰とも話したくない。
誰とも笑い合いたくない。
そんな感情と、君の笑顔が、心を渦巻いていた。
でも、やっとそんな日々が終わる。
これで、君と一緒になれる。
そう思いながら、海に飛び込んだ。
──はずだった。
誰かに腕を掴まれた。
驚いて、後ろを振り向く。
「君」がいた。
どうして、君がいるの?
なんで? 生きてたの?
思考が停止する。
君はそのまま、力ずくに僕の体を引き寄せる。
一瞬、体は中を舞って。君のどこにそんな力があったのだろう。なんて思いながら。
そして、二人で倒れ込んだ。
しばらくは、無が空気を包んでいた。
なにも、考えられなかった。
「良かった」
君がその言葉を発したとたん、止まっていた脳が覚醒する。
そのまま、君の顔、腕、手、体、足と緩やかに、視線が動いた。
そして、愕然した。体が固まった。
君の体は、透けていた。
生きて、いなかった。
「死んでるよ」
嘲るように、それが普通も言うように、君は言いきった。
「二年も前に、死んじゃったよ」
そのまま、透けた部分は広がるように。
侵食するように。
なにも、言えなかった。
言おうと思っても、唇が震えた。
そうだよな。君が死んだことは分かっている。でも。だけど。
君は僕の唇に、人差し指を当てる。
不思議と、そこから暖かさが伝わってくるようだった。
「じゃあね」
そういって、君は立つ。
そのまま、後ろを向いて。
風が吹いた。
一瞬だった。
瞬きする間に君は消えてしまった。
しばらく、呆然としていた。
ボーッと先の出来事を考えていた。
僕は、君に助けられた。
それは、今起きた出来事が本当だからで。
『良かった』
君は死んでしまった。それは事実であり、変わらない話で。終わった話で。
でも。
君は僕を助けてくれた。
さっきまですくんで動けなかった足を、無理矢理立たせる。
太陽に手をかざした。その手はきちんと太陽を隠して。
死ねなかった。それに、後悔の想いはなくて。
ただ、君逢えたこと、それが嘘か本当か。
もう、死のうとは思えなかった。死ぬ気にはなれなかった。
ただ、君を思って、生きていきたいと、体は叫んでいた。
君を心の灯火にして、生きたかった。
【心の灯火】
月曜から金曜まで午前2時から3時間、生放送でお届けしている『ミッドナイトレインボー 真夜中の虹』通称まよにじ。本日もたくさんのメッセージをいただいております。どうもありがとう。
で、その中で気になる1通がありまして…いつもの放送でお届けしているのとは違う雰囲気の内容なんですけれど、ちょっとここで紹介させてください。
「はじめまして、僕は高校1年の男子です」とメッセージをくれたのはラジオネーム『まよにじの信者』くん。おぉっ、とうとうこの番組にも信者さんがつくようになったんだ。嬉しいかぎりですねぇ。
「僕は今、「まよにじ」を聴くのが唯一の楽しみです。学校では、毎日のようにクラスメイトにしつこくからかわれたり、持ち物が隠されたりしています。本当は行きたくないけど、親がうるさくて毎朝追い立てられるようにして登校しています」
「家では、いつも楽しそうにしている家族とうまく話せなくてずっと自分の部屋にこもってます。正直、生きてるのが辛いです。でも、「まよにじ」が聴きたいから生きてます。でも、辛いです。どうすればいいですか?」
…うん。
まず『まよにじの信者』くん、メッセージありがとう。きっと、君にとってとても勇気のいることだったと思います。それでも、一歩踏み出してくれたことに僕は心を揺さぶられました。本当に、どうもありがとう。
きっと、この番組を聴いてくれてるリスナーさんの中にも『まよにじの信者』くんと同じように生きづらさを抱えたり、過酷な状況に身を置いたりしている人がいると思うんです。
僕が『まよにじの信者』くんの代わりになったり、物理的に何かアプローチをしたりすることはできません。ただ、できることがあるとしたら何だろうって、このメッセージが届いてからずっと考えていました。
今から少し思い上がったことを言うけど、どうしても『まよにじの信者』くんに、そしてこれを聴いてる全ての人に伝えたいことがあるんだ。
できれば明日も明後日も、月曜から金曜までず〜っと、この番組を聴くために生きていてほしい。君が生きるためにここが大切な場所であるなら、僕はそういう場所で在り続ける
ように精一杯努力していく。君には、その道程を見届けて、いや聴き届けてほしいんだ。
『まよにじの信者』くんのメッセージは、僕が番組を続けていく上で大切なことを考えさせてくれました。何度も何度も読み返すうちに、心の中にポォっと灯りがともった感じがしました。きっとそれは今の僕らの足下を照らす灯りであり、これからの僕らが歩む道程を照らす灯りでもあると思っています。
ありがとね、みんな。
聴いててくれて、ホントありがとね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さて、そろそろお別れの時間ですが…あっ、さっき『まよにじの信者』くんが新たにメッセージ送ってくれまして。
「こちらこそ、僕の拙いメッセージを受け止めてくれてありがとうございます。明日も明後日もずっと『まよにじ』聴くために生きていきます。真っ暗だった僕の心に灯った火、これから大事に大事にします!」
うん、これからも聴いてて。また、メッセージも待ってるよ。それでは、また明日!
故郷を出るまで、俺はずっと這いつくばるようにして生きてきた。先ほどまでは物理的に這いつくばっていた。そして今は仰向けに寝そべっていた。
――今日もずいぶん派手にやられたな。
首に手を当てると、先ほどまで食い込んでいた帯の跡が残っている。そしてどこがとは言わないが、とにかく痛くて身動きがとれない。寝返りをうとうとして失敗し、小さくうめくと、テーブルで酒肴を楽しんでいたそのひとがちらりとこちらを見たが、すぐにこちらへの興味を失ったようだった。
俺がしたいのは、復讐でも破壊でもない。俺が求めるのは自分の納得だ。故郷を出るために老人たちに並べたことは方便、嘘八百。彼らが喜びそうなことを適当に並べただけだ。もっとも、彼らとて俺を全面的に信じて送り出したわけではないし、こちらの状況も実は筒抜けだったりするから、どこかのタイミングで彼らからの接触は覚悟しなければならないだろう。故郷は場所が場所だし、こちらも常に移動しているからそうそう捕まることもないと思うが、その時にどう対処するか考えておかなくてはならないのが少し憂鬱だ。
ただ――思った以上に、この人のそばの居心地がよかった。俺はこの人のところ、この人のいるところに逃げてきたのだが、それで俺の世界がこれだけ劇的に変わることまでは期待していなかった。のらりくらりと故郷から離れる口実にしただけ――“だけ”と言い切ることに違和感はあるし、そのわりに支払うものも多かったが――のつもりだった。それが、あの人の前に出て、よく分からないうちにああいうことになって、結局あの人とあの人のそばにいることにのめり込んでしまっていた。それは半分望んでいたことだし、ある部分で期待していたことですらあったのだが、それでもこれだけとは想像外だった。
“そんなこと”で俺の問題が解決するとも思っていないが、それでも、今が心地よいのはどうしようもないのだ。
この人の側にいることで――
俺はそっと酒を注ぎ足している彼女を見た。
――俺は俺の納得する生き方ができるようになるのだろうか。
場合によっては故郷の老人たちをどうにかしたら、故郷以外のいくつかのものも俺は捨てることになるだろうが、それを選ぶ力を俺は得たい。
うっすらと涙が浮かぶ。憎く、疎ましく、忌々しいと考えてきた故郷を捨てることを切望してきたから、自分でも涙の理由は分からなかったのだが、俺はそれを拭おうとは思わなかった。
「どうした、まだ痛むか?」
そんなに痛かったのか、とそれに気づいた彼女がグラスを手にしたままやって来る。
「いえ、――」
彼女に話すべきなのかと、俺は少し考える。
「その酒、飲ませてくれませんか。口移しで。あのときのように」
「はぁ?」
珍しく驚いた声を彼女はあげた。俺はそれが面白くて、思ってもいないことを、できるだけふてぶてしい態度で訴えた。
「まだ動けないんですよ。あなたに滅茶苦茶にされたから。少しは加減してください」
「――、本当に生意気になったな。うんざりするほど飲ませてやろうか」
「ええ。でもそのときは、あなたが介抱してくださいね」
眉をつり上げてこちらを見下ろす彼女に、俺は笑いかけた。