『微熱』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
とりあえずこれをと差し出されたのは、丁寧にアイロンがけされた真っ白なハンカチ。
礼を言いながらそれを受け取り濡れた顔にあてると、柔軟剤の柔らかな匂いがした。
タオルを持ってこようとしたその執事を引き止め先程の修羅場の一部始終を撮影出来たか問いかけると、映像音声共にとだけ答える。
本当に、優秀な男である。
聞いたこと以上の情報と結果をたった一人で淡々と成し遂げる所は、今も昔も変わらない。
そこが一番好きなところだと彼女は常々思っている。
幼い頃から結婚した今でも愛している彼が、ずっと隣にいてくれる。
それがどれほど尊いことなのか彼女はよく知っている。
だから彼女は結婚した。二番目の男と。
だから彼女は身体を重ねない。一番愛する男と。
いつまでもずっと、微熱に浮かされたようなこの関係で繋がっていたいがために。
「あなたが好きよ。誰よりいちばん」
「存じております」
口付けを受け入れてもそれ以上を求めはしない男を、少しだけ憎たらしく思いながら。
りくが傷つくことがありませんように
幸せにすごしてますように
微熱
心がだめで、わからなくなってる時、
体が、もう休みなよと熱を出す。
微熱の時の、あのふわふわする感じは、
心地よく感じる時がある。
ただ私は彼とたくさん話をしたかったのだ。
黙ったままで本当に大事なことは何一つ言ってくれない。
私もそうなのかもしれない。
「そりゃ、あれだ…」
「あれじゃ分かりませんもん」
頭をかいて、目線をウロウロさせて、なぁなぁで終わらそうとしないで。
彼のひんやりした頬を両手で触れる。
「きっと私達は、分かってくれているはずだからと闇雲に信じて、大事な言葉を避けていたんですね」
一番大切な人にこそ、思いを違えてはいけないはずなのに。
微熱が、私は生きているんだと伝えてる。対して私は死にたいというのに。果たしてこれは、一種の皮肉だろうか
ほのかにあつい肌に手を当てて、もしかしてこれは熱があるんじゃないかと期待する。休日に熱が出たら最悪だが、平日なら基本ハッピーだ。午前いっぱい休めば、午後は部屋でゴロゴロ幸せな時間を過ごせる。体温計もいつもよりヒンヤリしているように感じた。期待に胸ふくらませながら表示を見ると、37.3度。なんだ、これじゃ休めないなあ
塩町 睡( Shiomati Sui )
血液型:B
身長:173cm
体重:64kg
誕生日:1/18
年齢:32
性格:
さっきからゲームセンターの騒音が感じない。
この集中力が勉強に向けることができていたら人生ちょっ
とは変わってたのかなーって今考えることじゃない!今は
一手でも早くこの景品を落とすんだ。100円をいれてクレー
ンを操作するボタンが光る。クレーンに触れた景品が揺
れ、またもう少しで取れそうなところに留まる。あと少し
なのに。体温が上がっているな、って思いながら額の汗を
拭う。次で取れる、次で取れるから、、
ボタンが光り、私はクレーンの動きに集中している。
【微熱】
学校では微熱すら出ないくせに夜になって気分よくゴロゴロしてると何か顔熱いかも?ってなって熱を測ってみると37.4度。
夜に出ても意味無いのに。
微熱
あの子を見たり、想うと、心がドキドキして、顔が熱くなる。
のぼせた僕を心配した友達に、熱を測ってもらうと
これはこれは。微熱があった。
しかし、僕は至って健康だ。
僕はしばらく友達と顔を向け合って考えた。
これは…
「恋だ!」
僕達は声を揃えてそう言った。
僕達は驚いてお互いしばらく無言で顔を合わせた。
しばらくすると、二人の間でドッと大爆笑が起こり、改めて僕達の仲の深さを再確認した。
偶には青春も想い描きたいものですね…
微熱
君がそばにいると、なんだかわたしは変になる。
かすかな熱が体内を駆け巡った。やがて落ち着くと、じんわり広がり溶けていく。木漏れ日に照らされ、心地良さげにまどろむ君から、目が離せない。
君がそばにいると、いつもわたしは熱をだす。
頬に耳元、首筋までもを赤く染めあげる。林檎みたいになったわたしを、ふふっと笑って撫でてくれた。君は涼しい顔をしているのに、わたしだけなんてずるいよ。
この熱に、君も侵食されちゃえばいいのに。ずっと一緒にいたいから、はやくふたりで溶けちゃいたい。
これくらいが一番嫌だ。
仕事を休むほどじゃなく、薬で何とかなりそうだから結果無理をして、その日一日しんどいまま過ごさなきゃいけないから。
そして卑屈な私は、割とすぐ仕事を休む同僚に「ずるくない?」と鬱屈した妬みを募らせる。
そんな事ばかり考えてしまう無限ループ。
あーあ、我ながらめんどくさい性格!
地面を歩いているのに
歩いてるように思えない
ふわふわとして
何も考えられない
そんな今日の私
微熱が出ている。
熱とはすなわちエネルギー(厳密には移動形態)であるので、私はいつもよりエネルギッシュであると考えられるかもしれない。
しかし、この熱エネルギーは生体の免疫によって生じた再利用不可能なエネルギーであり、つまりは高エントロピーな廃熱だ。エネルギーは量ではなく、その質が重要であると再確認させられる。
いつも浴びているシャワーの温度が少し温いなと感じた時、微熱があることを悟った。測ってみれば案の定、三十七.一度というなんとも言えない数字が出てきた。トーストも緑茶も問題なく喉を通ったけれど、親と相談した結果、大事を取って高校は欠席することになった。
制服からスウェットに着替え、共働きの親をそれぞれ見送る。平日の家に一人でいる違和感が、足元を少し揺らした。
せっかくの機会だと思いテレビを点けてみたけれど、朝の情報番組ばかりが流れていて男子高校生には退屈な内容だった。学校を休んで観るテレビは面白いと聞いていたのに、全くもって期待外れだ。テレビは音量を絞って流しっぱなしにしたまま、結局スマホを起動させる。
動画投稿アプリを惰性で流し見ていたけれど、面白かったのは一時間ほどだった。次第に時計が気になり始め、学校に行ってれば今はこれこれの授業を受けているとか、そういうことばかりが頭をよぎる。
これではいけないと思い、昼飯を作ることにした。どうせなら手間のかかるものをと考え、メニューは餃子に決まった。
足りない具材は近くのスーパーで買い足した。いつもみている街並みが心臓に牙を立てた感覚がした。
家に戻り、手洗いうがいを済ませてキッチンに立つ。スマホで調べた手順を拙く真似しながら餃子を作っていく。分量を間違い四十個を焼き終えたところで、時刻は十三時に迫っていた。
食べる前に片してしまおうとフライパンやらを洗っていると、食卓に置いていたスマホに着信があった。
『もしもーし。生きてる?』
着信は級友の一人からだった。ビデオ通話になっていて、そいつだけではなく何人かが思い思いの面白いポーズを取っている。向こうも丁度、昼休憩に入ったようだ。
「スマホ取られるぞ」
『大丈夫、弁当箱で隠してっから』
大丈夫というなら止めはしない。サプライズ的な嬉しさを感じたのも確かだった。
食卓に餃子と白飯を、奴らは机に弁当を並べ、いただきますを合唱する。通話によるズレはご愛嬌といったところだ。あとは各々の昼ご飯を食べながら、ズル休みに違いないとか暇すぎて餃子を作り始めたとか、とてもくだらない話をした。
昼休みも終盤に差し掛かった頃、運悪く担任が教室を訪ねてきた。いかに隠しているとはいえ違和感は残る。スマホを使っているのがバレてしまった。
何事かが遠く知らないところで言い争われ、先生が『ここに俺も映ってるのか?』と画面を指さした。
「見えてますよー」
声をかけると、先生は嬉しそうに手を振った。
『ちゃんと水分取ってるかー?』
教室中に響き渡る大きな声で訊かれる。
「取ってますよ。身体は全然平気です」
先生は『そうかそうか』と鷹揚に頷いた。
『早く治して学校ちゃんと来いよ』
「明日はちゃんと行きます」
嵐のように訪れ、嵐のように先生は去っていった。去り際に『次は普通に没収するから、これが普通だと思うなよ?』と釘を刺すのも忘れなかった。
『じゃ、そろそろ昼休み終わるから切るな』
「おう、ありがと」
通話が終わってからは、時間割に合わせてその教科の勉強をした。いつもは退屈なテキストが案外面白く、スマホを触っているより胸が踊った。
翌日の朝、浴びたシャワーは肌に温かく刺さり、制服の袖に勢いよく腕を通した。心なしか、昨日着たそれよりも軽くなっていた気がした。
すこしだるい
でもほんとにすこし
身体は正直である
頑張れる余力があるからこそ
今はちょっぴり一休み
きっと明日は、大丈夫。
僅かな熱が灯る。それは憎悪とも愛情とも執着とも取れるひどく曖昧な灯火で、しかし燃え盛るほどの熱量はさしてない、ちんけなものだった。やり場のない僅かな熱は、燻るだけである。いっそ大量の燃料でも注がれたなら燃え尽きることもできるのに、その燃料になる材料さえ手に入れる事ができない。
何せ、凡庸な人間だ。
目立つ中心人物にはなれないし、劇的な日常を送れるような人間でもない。ルーティンを熟し、日々をただ消化する歯車人生だ。炉心で燻る熱が発露することは決してない。それが悪いとも思っていない。穏やかで居られることの重大さは身に沁みている。
微熱。
いつもゆうに
微熱。
逢える間も
逢えない間も
微熱。
あなたから受ける視線で火照る私は微熱を患う。
息をするのも切なく、胸の鼓動は高鳴り、心があなたで満たされて、もうあなた以外が目に見えない。
昨日まで何も感じなかったあなたのひと言が、私の感情を揺るがす魔法の言葉にも聞こえてしまう。
あなたの顔が見られなくて、視線を逸らすたびにまたあなたからの視線が私に刺さる。そしてそれがさらに私の熱を上げていく。
その視線の意味を知らないほど私は無知じゃない。
けれどその意味を理解するほど私はそれを知らない。
だからもう少し待っていて。
ただ熱に浮かされただけじゃ怖いから。
あなたにそんな視線を向けられて、火照った私の答えなんてとうに決まっているようなものだけれど。
あなたの視線を受け止めて、あなたの言葉に微笑い返して、真っすぐあなたを見つめられるその時まで。
もう少しだけ、待っていて…。
【微熱】
あの時、私は
あなたの大袈裟な反応にしかめ面しながら
素直に布団に押し込まれて
欲しいものの問いにプリンと返して
ドアを閉じる音を見送った
柄にもなく頭を撫でた
あなたのせいで熱が上がって
プリンもゼリーも買ってきた
あなたのおかげで熱が冷めたの
そんなこと思い出しながら今、私は
平気な顔してお勤めに向かって
勿論平気なままで帰ってきて
自分で布団に包まって
帰り道買ったちょっといいプリンを頬張る
これくらい大したことないわって
意気込んで熱をあげて
誰にも気づかれないのねって
寂しさに少しだけ熱を覚まして
強いって、さみしいなって
あなたにもらったプリンがおいしかったって
布団の中の世界で、今日だけは泣いてしまおう
『微熱』2023/11/2710