『形の無いもの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
・形の無いもの
感情は目に見えない。でも1番大事にしなければいけないから、紙と文字が作られて目に見えるようにしたのかな。
でもそれを使った嘘も生まれてしまったから、やはり感情は一生目に見えないものなんだろうな。
形の無いもの
音。音楽。
形にないけれど、たしかに残ってきたもの。
幾度となく演奏され続け、何年も何年も引き継がれてきたもの。
楽譜。
形のない音をどうにか残そうと、作られたもの。
そこに書き記された多くは数百年も前のもの。
音楽を目の前にした時、楽譜を目の前にした時、
その途方の無さに、愕然とする。
それでもその美しさに、どこまでも果てしなく魅了される。
形がないからこそ。残らないからこそ。
一瞬で消えるからこそ。
それはいたく啓上しがたいほどに美しい。
「形のないもの」
形がないもの――例えばそれは概念。
世界とか社会とか、愛とか。
言葉は知っていてもそれがどんな形なのか、どんな匂いなのか、どんな手触りなのかを私たちは知らない。
見えない、聞こえない、触れられない――知らない。
そんなものだからこそ、人々をつなぐことができる。
形のあるものであればこの形は好きじゃないだとか、匂いであればこの匂いは吐き気がするだとか、手触りであればこの触感は気持ち悪いだとか、好き嫌いが分かれる。
形がないからこそ人の想像によって好きなように考えることができる。
形がないもの。それは人々をつなぐもの。
形の無いもの
僕には、「形の無いもの」が視える。
こころ。
身体のなかの血の巡り。
亡くなった魂。
挙げたらきりがないくらい。
でも、いつからか言わなくなった。
何故か。
――気味が悪い。
そう、言われたからだ。自分でも、色々思うことはある。
でも、ふたりが。
『ありがとう』
『優しい力じゃないですか』
そう、言ってくれたひとがいる。
二年前に事故で亡くなった、僕の弟と、その彼女さんだ。
弟は言う。
『世の中、形のないものなんて、ごまんとある。兄さんにはそれが見える。それは、すごく優しいことだよ。きっと』
弟の彼女さんも、こう言った。
『気味が悪い、って言うひとの言葉なんて、気にしないでください。お兄さんのおかげで、私は家族へ遺言が伝えられたんですから』
そう、遺言。
僕は、彼女さんの言葉をご家族に伝えた。『視える』ことを話してから。
最初はやっぱり、信じてもらえなかった。でも、何度も伝えたんだ。本人の想いを見て。その遺言を聞いて。
そしてある時。
「ずっと、頭が混乱してるけど……。それらが全部、本当なら」
「――教えてくれて、ありがとう」
形の無いもの。
僕は今日も、色んなものと向き合う。
いつか、本当に視えなくなる日がくるだろう、魂だけの僕の弟とその彼女さん。
二人の形なき言葉を、心に抱えながら。
やりたかったゲームを何本見送っただろう
行きたかったあの店はもう、とうに潰れた
会いたいひとにも、何年会えていないっけ
空しいだけの仕事をこなして帰ったら寝る
生きるのに金は消えて休日は疲れて泥の様
ずいぶん自分の顔をちゃんと見てないけど
わたしは今ちゃんと人の形をしてるのかな
やあ。いい夜だ。オレが誰か、だって? オレはそうだな、まあ、定義上「悪魔」ということにでもしておこう。ちょいとばかりオレと話でもどうだい? どうにも退屈で仕方ないんだ。退屈はよくない。退屈は人を殺す。人じゃなく悪魔だろうって? はは、つまらない揚げ足取りだ。楽しく行こうぜ?
オマエはさ、心って何だと思う? そう、心。悪魔らしい質問だろ? 教えてくれよ、オマエの思う心を。
……フムフム、体を動かすための動力。これはまたつまらない返答だな! いやいや、馬鹿にしちゃあいないさ。実に人間らしいよ。ウン。
まあ間違ってはいないのかもな。動力。動力は大切だ。ただまあ、齟齬があるとするならば。心は別に、大切ではないかもな。なんで? って顔だ。オマエは丁寧に育成されたんだな。そういう顔だ。
たとえばさ。オマエは今此処に生きているわけだ。でもそれは、本当にそうなのか? ……はは、意味不明って顔だ。オマエは本当に顔に出る性格だな。そういうやつは、大好きだ。考えてみろよ。オマエが生きている証明はどうする。今、心臓が動いているから生きている? それはオマエがそうだと認識しているからに過ぎないだろう。その認識は本当に正しいのか? オマエは、正しくオマエか?
……そう不安そうな顔をするなよ。オレの言うことを真に受けるもんじゃないぜ? なんせ、オレだって存在しているのかどうかも怪しいもんさ。オレがオマエの見る幻覚ではない、なんてこと、オレにもオマエにも証明できはしないのさ。なあ、そんなもんだぜ。深く考えるなよ。
オレもオマエも、存在するのかも怪しいモノ同士。楽しくやろうぜ。悪魔も人間も。すべては区別するための記号なのさ。名前にも形にも意味は無い。オマエのその心だって、オマエという記号のひとつでしかないんだ。そのオマエですらあやふやだ。悩んだもん負けだ。だから、ほら。退屈しのぎは多いほどいいんだ。オマエもこっちに来いよ。
目が覚める。……ああ、寝ていたようだ。夢を見た。悪魔が囁きかける、そんな夢。
ゆっくり体を起こす。辺りを見渡し、そして、心に一抹の不安。……これは現実だろうか。それとも、ユメ? そもそも夢と現実を認識しているこの自我は。
悪魔の笑い声が、どこからか聞こえた気がした。
テーマ「形の無いもの」
目には見えないし
触れることもできない
でもたしかに、そこにある
信頼、絆、愛
綺麗なものばかりじゃない
悪意、嫌悪、不安
悪いものも当然ある
心に残るものは
いつも暗いことだけど
良いことも、しっかりと受け止めていきたい。
『形のないもの』
形がないもの…
とらえどころが無いけれど
一番欲しいもの…
あなたの心地よい声
優しいぬくもり…
穏やかな時に包まれたなら
どんなに辛い一日だって
心安らぐオアシスになる…
形がないものだからこそ
あなたと育むひとときを
一生大切にしていきたいよ…
#形がないもの 677
《形の無いもの》
人の心は、手に取れるものではない。
その時の都合によって、コロコロと形が変わる。
ううん、変えざるを得ない。
与えられた衝撃に耐えるため。それぞれの場の型に嵌まるため。
誰かはそれを協力的と言う。別の誰かはそれを素直と言う。
私は、それは弱さだといつしか気付いた。
周りに逆らう事が出来ず、自分の主張を表に出さず。
ただ険悪な空気に飲み込まれる事だけを恐れてた。
私がそんな自分の弱さ故の選択に打ちのめされていた時、相棒に喚ばれてその心に住まう事になった。
その相棒との旅の最中、あなたが目の前に現れた。
飛ぶ鳥達を見つめる優しい目。
見知らぬ旅人である相棒達にも、丁寧な挨拶に暖かい心遣い。
周りの空気を壊さないような、慎重な立ち居振る舞い。
私の弱い所と似ている。そうも取れるのだろうけど。
私には、何故かあなたが弱い人には見えなかった。
他国を制圧しようとしている帝国から来たと、あなたは言ったけれど。
ましてやそんな国に染められた悪い人になんか、到底見えなかった。
それもそのはず。
あなたのその優しさは、私のような弱さから来るものではなかったから。
心に根ざすは、硬く真っ直ぐな正義という信念。
その真っ直ぐな幹からは分け隔てない優しさの枝が伸び、弱い者を守る慈しみの葉が生い茂っていた。
心には形がないと思い込んでいた私には、あなたの心の大樹がとても尊いものに見えた。
その時、私の心にあなたの大樹から実が一粒落ちてきて。
旅の最中であなたの心に触れ続けて、殻を破いて小さな芽を出した。
今その芽は私の中で大きく育ち、形の無かった私の心にしっかりとした根を張っている。
私の想いはここにあるよと、あなたの心の風を受け葉をそよがせている。
頭痛
歯軋り
目の奥の痛み
顔の痺れ
肩こり
腰痛
関節痛
首の痛み
呼吸が浅い
動悸
めまい
肌荒れ
蕁麻疹
暴飲暴食
食欲不振
衝動買い
疲労感
倦怠感
不安感
緊張感
不眠過眠
その他もろもろ
Q.形が無いのにサインを出すものはなーんだ?
A.ストレス
『形の無いもの』
愛
恋
夢
すべて形のないものだ。
大切なものはだいたい形じゃないんだ。
その黒々としたチョーカーは、彼女が自分で選び身につけた装飾品だろうがまるで首輪の様だった。
形の無いものは、意外と近くにある
見えないだけであるんだよね。
見えないだけで
例えば、おはよう、と言ってみる。その返事が返されない日々をここ数日か、ずっと送っている。
たぶん、一番最初に視界に見えたものはやや透けた手と足だった。
なんだこれ。体って透けるものだったか? 服も透けている。首を傾げる。わけがわからなかった。
とりあえず、と思って街をぶらぶらと歩いてみると、向かい側から歩いてきた人が、こちらに気づく気配もなく向かってきた。スマホをいじっている男性だ。
うわ、と声を上げかける、間もなく相手はこちらの体をすり抜けた。不安に思って自分の体をあちこち眺め回してみるも、やや透けていること以外には別段、違和感も何もなかった。これがあって、俺は自分を幽霊なんじゃないか、と仮定することにした。
次に、ショッピングモールのガラスの前に立ってみた。何の変哲もないガラスに、やや色の薄い自分が映っている。
どうやら生前の自分は大してファッションにこだわりがないようだった。ユニクロとかに売っていそうなパーカーに、シンプルなジーパン。やあ、と片手を上げると、ガラスの中の自分も片手を上げたのがわかった。
例えばこんにちは、と言ってみる。その返事が返されない日々をここ1週間か、ずっと送っている。
だいたいこの幽霊生活にも慣れてきて1週間目。物珍しいことは一通りやり尽くして、暇になったので近くのパン屋に入った。壁はすり抜けた。自動ドアなんてもの、こちらには反応しない。
お腹は減らないし、食べ物にもさわれない。店内を眺めたあと、誰かを待っているらしき主婦の目の前に座って、相手をしばらくじっと見つめた。こんにちは、と言ってみた。もちろん、相手は飲み物を飲んでいて、こちらには人目もくれなかった。なんとなく、不毛なことをしている気がした。
例えばこんばんは、と言ってみる。その返事が返されない日々をここ2週間か、ずっと送っている。
動物は、少しとはいえこちらがわかるらしい。猫を撫でたら気持ちよさげにしているし、近づいてみた犬には異様に吠えられたので諦めてその場を去ることにした。最近、気力が何もなくなってきた気がした。
とりあえず今日は商店街に立ってみよう、と決めてはや数時間。
ひゅ、と息を呑んだ。一瞬、存在しない心臓が止まったかと思った。ほんとに。道を慌ただしげに歩く人の中にやや透けた少年がいたのだ。仲間の幽霊を見るのは初めてかもしれない。
「待って!」
声をあげるなり、人群れに飛び込んで走り出す。こちらを認めた少年は疑問に首を傾げたまま、立ち止まった。
はあ、と走り、息が上がったまま話しかけた。
「君は幽霊?」
「はい」
なんですか、と言いたげに黒い瞳がこちらを見つめていた。
「俺以外の幽霊を見たのは初めてだ。君はどれくらい、幽霊をやっているんだ?」
さあ、と首をひねる。その横顔はやけに大人びて見えた。
「わかりませんが多分数年は」
「数年か…!」
絶句する。思ったより長い。
「なら聞きたいことがあるんだ、幽霊でもなんでも、実在しないものがいてもそれに意味はあるか?」
わかりませんが、と話し出す。ああ、と頷いた。
「幽霊でもなんでも、あなたはここにいて、僕と話しているのに何もないってことはないんじゃないでしょうか?」
ふ、と息が抜けた。これまで悩んでいた、全て一人芝居みたいな行動も、それだけでなにか存在意義みたいなものが、自分の軸が、見つかったような気がして。
ありがとう、と言った。いいえ、とすました少年がやや表情を緩めて返事を返してくれた。
季節の変わり目。
白紙の未来を取り巻く不安。
高く青い空に煌めく破片。
朝の柔らかな涼しさ。
走ればツンと痛くなる鼻。
明確な起点は無いけれど、身近にあるもの。
いつ季節を感じるかなんて人それぞれ。
13.形の無いもの
【 形の無いもの 】
誰か、僕を見つけて…
僕は何も見えないし、誰からも見えない。
僕は触れないし、誰からも触れられない。
色も匂いも何も、無い。
ただ、確かに『僕』はいるんだ。
きちんと存在してる。
存在の定義をするならば、僕は『存在』自体が危うい。
証明する方法なんて、僕が知りたいくらいだ。
きっと『君』と思うモノの近くにいるはずなんだ。
見えないから確証はないけど、感じる。
『君』を守るのは僕の役目だということも認識してる。
だから、お願い。
僕を見つけて…!
もうカラダを持たない僕の、せめての願いだから…
『形の無いもの』
秋空が高く広がる下を我が家の犬が元気に歩く。暑くて長い夏がようやく過ぎてくれたので火傷しそうなぐらいに熱々のアスファルトや体力を奪いにくる直射日光に煩わされることなく、のんびり悠々と歩けることにありがたみすら感じてしまう。
あたりの匂いを思うさまに嗅いで情報収集に忙しくしていた犬は地面から中空へと鼻先を向けた。空の高いところには冷たい風が吹いていて、入道雲ばかりだった空には巻雲が細く散らばっている。もしかすると犬には秋の匂いが確かにわかっているのかもしれない。
などと思っていると、道の向こうから仲良しの犬が歩いてくるのが見えてきた。夏場はあまり遭遇していなかっただけに犬の喜びはひとしおだ。ぶんぶんとしっぽを振りリードをグイグイと引っ張る犬に慌ててついていく途中、鼻先を掠めた秋の匂いに少しだけ振り返った。
思いやりって
ムズカシイ。
誰かのために
良かれと思って
こうしたのに
こう言ったのに
相手からすれば
余計なお世話
こんはふうに言われた!
嫌がらせなの?
嫌味なの?
思いやりが
上手く
伝わらない。
むしろ
誤解されている。
思いやりも
目に見えたらいいのに。
#形の無いもの
不定形の想いは、日々形を変えて
私たちの心を揺さぶっていく
好きだった気持ちはいつしか執着となり、心を蝕む
だけども喪失の感情から、新たな出会いを生み出すこともある
私たちは、不定形の人生を歩む
形の無いもの
モノが好きだ。
形ある、物体のものが。
明確で、それそこに確かにあって、とても。
曖昧で目に見えない人の気持ちとか、
形の見えない商材とか、
よく分からないから、嫌いだよ