『幸せとは』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
猫は迷っていた。
道に、ではない。猫は好きな時に、好きな場所へ行くのモノであるから、道に迷う事はない。
「右か、左か。何故両方という選択肢はないんだ」
「そりゃあ、どっちもあげたら、飼い主の二人に怒られるから。俺が」
右手にまたたびの原木を、左手に鰹節の袋を持った男が、困ったように眉を下げる。猫の背後、少し離れた場所でこちらを見守る二人の人影に、視線だけで助けを求めた。
「悩ましいな。どちらも猫の好みだ。さては、猫に対する嫌がらせか?」
「そんなわけないだろう。早く決めてくれ。可愛い甥っ子達のための海の幸が腐ってしまう」
そうは言われても、決められないものは決められない。
即決したいのならば、両方の選択肢を新たに作るべきだと、猫は恨めしげに男を見上げた。
「ああ、もういい。こうしよう」
嘆息して男は立ち上がり、猫の横を通り過ぎて背後で見守る人影の方へと歩み寄る。二人にそれぞれ原木と袋を手渡すと、晴れ晴れした表情でそれじゃ、と猫に手を振る。白銀のケを持つ狼へと姿を変えると、山の向こうへ一陣の風と共に駆け抜けていった。
「押しつけていったな」
「急いでいたみたいだしね」
男にそれぞれ押しつけられたものを見て、二人は顔を見合わせ苦笑する。
急いでいた男を引き止め、ものを強請ったのは猫の方である。新年だからな、と文句も言わず、尚且つこちらの意図を汲んで一つを選択してもらおうとしていたのはありがたい事だ。結局決められぬ猫のために、こうして両方を二人に手渡したのも、急いでいた事もあろうが男の優しさ故だろう。
「悪い事してしまったね。今度何かお礼をしなくては」
「そうだな。まったく俺らの猫は我が儘が過ぎる、なっ」
手にしたもの目がけ、飛びかかる猫をいなしながら、二人はこれからの話を続ける。
ちりん、ちりん、と猫が飛ぶ度に首輪に付けられた真鍮の鈴が澄んだ音色を響かせた。
「銅藍《どうらん》!瑪瑙《めのう》!猫にいじわるをするのは良くない事だぞ」
「なら、どっちかに決めろ。両方はなしだからな」
「何故だ。両方の選択肢があってもいいだろうに!」
「ごめんね。でも一つだよ」
猫の尾が、したん、と苛立たしげに地面を打つ。それでも二人の意思が変わらない事を知ると、低く唸る声を上げ体制を低くした。
「ようやく決めたか」
猫の目が一つの目的を捉え、瞳孔が広がる。
風のように素早く、一人の手から獲物であるまたたびの原木を取り地に降り立つ。原木に体を擦り付け、時折加えて振り回しては喉を鳴らして十分に堪能した。
「良かったね。日向《ひなた》」
「あぁ。猫は今、とても幸せだ。明日の楽しみもあるしな」
「安い幸せだな」
猫の満足そうな声に苦笑を漏らせば、何を言っているんだ、と呆れた声が返る。
体を起こし、ゆらり、と尾を揺らして座ると、猫は二人を真っ直ぐに見上げた。
「幸せが安いはずがないだろう。たくさんの奇跡の上に成り立つものだぞ」
「奇跡?」
猫の言葉の意味を図りかねて、一人が首を傾げる。そうだ、と大きく猫は頷いて、抱き上げろと言わんばかりに足下に擦り寄った。
「まず出会いというのが奇跡だ。ほんの少しずれるだけで、会う事は叶わなくなる。猫が銅藍と瑪瑙に会えた事が最初の奇跡だ」
抱き上げられ、喉を擽られ、猫は満足そうに目を細め喉を鳴らす。
確かに、と猫の言葉に頷く二人を見て、だろう、と満足げに頷いた。
「出会ったとしても、そのまま別れず共にいられる事もまた奇跡だ。猫は自由な生き物であるから、相手を考える事は苦手だ。それでも二人は側にいて、離れた時も猫を探してくれた。凄い奇跡だろう」
くふくふ笑う猫に、そうか、と一人は首を傾げ、そうかもね、ともう一人は笑う。
永く独りであった猫にとって、誰かといられる事は何よりも奇跡なのだろう。
「好きな二人に囲まれる幸せに、さらに今日は奇跡が起きた。猫の好きなものを持った奴と出会い、猫の好きなものをくれた。偶然という名の奇跡が重なって、幸せになったんだ。これが安い訳があるものか」
奇跡が重なる。
誇らしげに胸を張る猫をそれぞれ撫でながら、二人は猫の言う奇跡を想う。
死にたくない。その想いだけで妖に成った二人が出会った猫。オヤとして妖の在り方を教え、世界を知った。
独り立ちだと離れてしまった事もあったが再び出会い、違う形でこうして今も共に在る。
奇跡が重なっている。一つが崩れてしまえば、それに続くものは跡形もなくなくなってしまっていたことだろう。
「そうだね。奇跡だ。重なって、こうしてここに在る」
「安くはないわな。価値なんざ、決められねぇ」
「そうだろう。幸せなんだからな」
もっと撫でろと言わんばかりに手に頭を押し当て、猫は告げる。
ちりん、と鈴を鳴らし、穏やかな声音で二人の名を呼んだ。
「世界は残酷だ。不平等だ。何かを失ったたくさんの誰かがいて、その上に何かを得る事が出来た誰かがいる。そんな底意地が悪いのが世界というモノだ。だからな、奇跡や幸せを当たり前だと思ってはいけないぞ。落っことしてしまったら、どんなに戻そうと手を尽くした所で、元の形には戻らないのだからな」
目を閉じて、猫は最後に一言、寝る、とだけ告げて、それきり沈黙する。
寝入った猫の頭を一度撫で、二人は互いに頷き合い、静かに歩き出した。
遠く微かに、幼子達の笑い歌う声が聞こえた。
楽しそうに、幸せそうに。
今日が何処までも続いていくのだと信じて疑わない、無垢な声が響いていた。
20250105 『幸せとは』
幸せとは。
そんな物、考えだしたら終わらないだろと
書店に並ぶ本を憂鬱そうに見つめる。
結果が分かってるくせに一応手に取ってしまうのは、
やはり俺も幸福を求めるただ一人の
凡な人間だということか。
どんな人が幾ら幸せについて説いたって、
それは本当に幸福を求める方法ではないのだ。
自分の幸福は自分で掴むと、昔から音楽だのなんだので
よく歌われているが、俺はその実そうだと思う。
幸福を感じるのは自分だ。言い換えれば、幸福を感じられるのは自分しかおらず、“幸福”そのものの感情は他者から与えられるものではない。
幸せとは。
その本を書いて、読んで、ああこれこそが
幸せだと感じるためには、
著者が自分である必要があるだろう。
他人から与えられる「幸福の定義」は、所詮他人のものでしかなく。これをすれば幸せになれる、だなんて絶対的な方法はないのだ。本や何かで見る幸福の近道は、“一般的に皆が幸福を感じる方法”というだけであり、“私が幸せを感じること”とは違う。
長々と話したが、言いたいことはこうだ。
他人の幸せの基準を見ない方がいい。
それはその人の物差しでしかない。
もし自分が幸福な暮らしをしたいのならば、些細な幸せに
自分の物差しを当てる事を大切にした方がいい。
幸せは見つけることだ。その点で言うと、四つ葉のクローバーとは幸福を具現化したようなものだと思う。
小さな幸せを見つけられた人が幸福になるのだ。
日々が退屈だと言う前に、足元をよく見た方がいい。
そして、もしあなたが自分を不幸だと思うのならば、
その時は小さな小さな幸せを積み上げて、
不幸とのバランスをとり、天秤を動かすしかない。
不幸は消せない。あなたの感情は、
あなたがそう思わない限り消えない。
あなたが不幸になった時よりも、ずっとずっと
長い年月をかけて、幸せを積み上げるしかない。
幸福と不幸が、同じくらいになってから、
小さなクローバーを見つけて「幸せだ」と
やっと感じられるようになるから。
『幸せとは』 白米おこめ
本当に些細なことに幸せを感じたモン勝ちだと思う
幸せとは ー その問いかけに対して納得のいく答えにまだ辿り着けていない私は、幸せなんだと思う。
幸せとは
幸福、喜び、満足、至福、歓喜
愉悦、恵まれた、幸運、頬が緩んで、騒ぎ立てて、鼻歌を歌い、誇らしく、有頂天になる
沢山、沢山
まじヤバいで片付かないことです
この先
いろんなことを知って
いろんなことを忘れていくだろう
手の温もりだけは
明日も残っている
“幸せとは”
今日のテーマは『幸せとは』ということで。
フリーランスの私には正月休みというものがなく、なんなら普段よりも忙しく、投稿がご無沙汰になってしまいました。
はい、そんな私の話はどうでもいいのです。
本題に入りましょう。
今日のテーマについては「幸せ(幸福感)とは瞬間的な状態であり、恒常的なものではない」という自論があります。
どういうことかと言いますと、例えば、美味しいものを食べて幸せだなとか、好きなアーティストのライブに行って幸せだなとか、好きな人と一緒の時間を過ごして幸せだなとか、幸せを感じることは多々あれど、持続性はないわけです。
翌日になれば、あれを食べれて“幸せだった”、あれに行けて“幸せだった”、一緒に過ごせて“幸せだった”、というように過去形になってしまうわけです。
そういうわけで、やはり幸せとは瞬間的(刹那的)であり、常に継続するものではないと、私は思っているわけです。
ところで、たまに「幸せになりたい」という人を見かけますが、私としてはそう願い続ける限り、幸せから遠ざかってしまうのではないかと、そう思っています。
というのも、先ほど書いた通り、幸せとは瞬間的なものなわけですが、「〜なりたい」という類のものはどちらかといえば恒常的な状態を望むものです。
瞬間的なものである幸せというものを、恒常的な状態に維持するとなると、満たし続けるしかないわけですが、それは無謀な願いなのではないかな、と。
例えるなら底の空いた器を満たそうと試みるようなもので。
瞬間的に満たすことはできますが満たし続けることは叶わない。満たし続けたいという叶わぬ思いは欲求不満となり、これでは幸せは遠のくばかりだと、私は思うわけです。
私の過去の投稿でも述べましたが、幸せを維持するためには何気ない日常の情景を美しいと思えることが大切なのではないかなと、そう思っています。
そのためにはそう思える感性というものを涵養していくことが必要で、それは自分と向き合い、自分を受け入れ、世界を受け入れる、そういうことが必要人ってくるのだと思います。難しいですけどね。
いつもより長文になってしまいました。
このテーマに関してはこれくらいで。
美味しいものを食べる
好きなものを買う
贅沢する
漫然と過ごす
好きなゲームをする
それだけで
最高に幸せだ
「幸せとは」
もうお題更新してるんですけどね(笑)
贅沢して、美味しいもの(寿司、肉)を食べてるときが
いちばん幸せを感じます。
生きれることが幸せとかも書こうとしたんですけど、
月曜から夜ふかしの中国の方が言ってた「生きてるってより死んでないだけだ」っていう言葉を思い出してやめました。
リア友以外×↓
年賀状届いてて良かった🥹
まだ親友から年賀状が来てないという絶望。
(╥_╥)
こんなんで落ち込んでんの重いかもだけど...
(リア友)には
届いてるかなって心配だったから(˶' ᵕ ' ˶)
話変わるけど
勉強順調ですか|ω•)
私は...ちょっとヤバいかも(笑)
あとさ、あれって出すのかな
冬休みの課題って言われてた50問テストのやつ
ノートには少しやったんだけどね
直接書いて出すのかな...って思って💭
全然遅くなってもいいので
お返事待ってます☺️
あ、50問だけじゃないです!笑
まずは街を出よう。この巨大なバオバブの様な建物の群れを離れなければならない。
下層階に住む我々を上層階に住む人々は「ネズミ」と揶揄する。私のいるところよりさらに低いところに住んでいる人々は「モグラ」と言われる。
ネズミやモグラの移動手段は地下を走る古びた地下鉄もしくは徒歩でしかない。継ぎ足し継ぎ足しで増築され続けた地下鉄はこの街の地下を縦横無尽に伸びている。
私は地下鉄の終点まで行ってみる事にした。そうすれば、建物もなくなるだろうと考えたのだ。
青い空が見たい。ただそう思っただけなのに。
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お題:幸せとは
「幸せとは」
かわいそうにね。
まだ小さいのにね。
かわいそう。
部屋の外から、絶えずそんな声が聞こえる。
暇だなあ。
私は今日も声を漏らす。
だって。
この部屋には、たった2人しかいないんだもの。
隣の部屋では、和気あいあいとした、いろんな声が聞こえる。
ああ、つまらない。
寝っ転がって、本を読むことに疲れた私は、向かい側のあの子に話しかけた。
ねえ、渚。
一緒に遊ぼ。
その子は振り向いて、
いーよ。
と、にっこり笑った。
2人で遊んでいると、外から女の人の声が聞こえた。
あの2人、かわいそうね。
家族にも会いに来てもらえない。
最近ご飯もほとんど食べない。
ほとんど眠ってばっかりだし。
かわいそう。
私達のなにがかわいそうなんだろう。
お母さんとお父さんは、いつも私を殴るか蹴るかしかしない。
ご飯は食べたくないから食べない。
眠いから寝てる。
渚だってそうだ。
同じ境遇だった私たちは、この白い部屋で、すぐに仲良くなった。
変に渚も、馬鹿みたい、と言う顔をしている。
気づいたらもう夜。
私たちは、すぐに眠りについた。
何日かたった夜、急に胸が苦しくなった。
寝れずにいると、また声が聞こえた。
ほんとかわいそうにね。
お医者様は今夜が峠だとおっしゃっているし。
きっともうすぐ
死んじゃうわ。
死ぬ?
だから、こんなに苦しいの?
不安になって、渚に抱きつく。
ねえ、渚。
わたし、たち、しぬの?
だから、わたし、かわいそう、な、の?
渚は、苦しそうに、でも穏やかに笑う。
大丈夫。
僕たち、幸せ、だよ。
誰からも、愛されなくたって。
家族に、好かれなくたって。
大丈夫。
僕がいる。
林檎ちゃん。
ありがとうね。
こんな僕にでも愛をくれて。
白い白い、病室の、僕の心に、光をくれて。
愛してる。
大丈夫。
1人じゃないよ。
死んでも一緒。
ああ。
ありがとう、渚。
わたしも、大好き。
薄れていく意識の中で、私たちは手を繋ぐ。
掠れ切った声で、2人でつぶやいた。
誰が僕たちを不幸と言ったって。
僕たち、私たち
しあわ、せだ、よ
幸せとは、
貧乏な人はお金があれば。
お金持ちは自由があれば、
病気の人は健康があれば、
いじめられている人は愛があれば、
老人は時間があれば。
人によって求める物が違うように
幸せの形も人それぞれ変わってくる。
それぞれの幸せを願う。
みんな幸せになってね。
大家族より素直のまま、
みんなは仲良し感じよ。
大丈夫。大丈夫よ。
自信がある。
私は自分が負けないという色々沢山いっぱいだけど。
仕事・・ずっと〜・・一生懸命を頑張ってます。
幸せとはなんだろう。
高くて素敵なディナー?色んなところへの旅行?欲しいもの全てがあること?
裕福な人々がきらびやかな宝石を纏い、ブランド物の服で身体をデコレーションしている。それはそれは、満たされた表情で街中を闊歩している。まるでそれを、幸せだと言いたげに。
でも、きっとそれだけが幸せではない。
日常のささやかな喜びは、おそらく何より暖かな幸せだ。
欲しい本を買った。
私はひどく、満たされた。
なんて幸せなんだろう。
▶65.「幸せとは」
64.「日の出」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
---
✕✕✕とナナホシは翌日のサボウム国への出発に備え、
自身のメンテナンスをしながら、太陽の位置変化を見たり、
とるべき進路について話したりしている。
「旅の中で、イレフスト国とフランタ国、それとサボウム国の位置関係は、
両目と口になぞらえて説明される事が多い」
人形は背負い袋の中を整理しながら、ナナホシは知ってるかもしれないがと前置きしつつ、話し始めた。
「イレフスト国が左目でフランタ国が右目、間には鼻のように山岳地帯が続く。
それらの南、顔で言えば口にあたる位置に、サボウム国が小さく弧を描くように存在している」
「ウン。僕ノ知ッテル通リダ」
ナナホシは脚を器用に動かして体のあちこちを触っている。
時々ぐいぐい引っぱっている。
ナナホシは元々主人となる一人の人間の寿命だけ活動する前提で設計されている。また創作者も異なり、人形と違って自己修復機能は備わっていない。
「戦乱以前は3国の首都はお互い近いところにあり、交流も活発だったらしいが、
現在はそれぞれから離れるように遷移され、国レベルの交流は途絶えているようだ。…どこか引っかかるのか?」
「問題ナイ」
「そうか」
夜は星の位置を確認しながら動力確保に努め、
翌日予定通りに出発した。
まずは下山し、その後は南へ向かって山沿いに進み、
サボウム国の中央に出る予定である。
人形はナナホシを定位置のひとつである肩に乗せて、進んでいく。
無言の時間が続いたあと、ナナホシが話しかけてきた。
「ネェ、何カ話ソウ」
「何か、というからには、この旅路以外のことなんだろうな」
「ソウ」
「では、人間の自由について、でいいか」
「イイヨ」
「私は、フランタ国のみではあるが、色々な人間を見てきた。過ごしてきた時間も一人ひとり違ければ、好むものも違った。だから人間にとっての自由が何であるか、私には分からないんだ。ナナホシは分かるか?」
「幸セ」
「幸せ……幸せとは何だ?」
「オキシトシン、ドーパミン、他ニモ色々。人間ノ体内デ作ラレル成分」
「そうか…それは私には無いものだな。ナナホシはあるのか?」
「僕ハ、人間ノ友トシテ作ラレタ。
世話ガ楽シクナルヨウニ、擬似的ナ機能ガ付イテル」
「確かにプレゼントだったものな。どういう時に幸せを感じる?」
「アッタカイ時」
「なるほど…結局、人間全体で考えるのは無理があるのだろうな。一人ひとりの違いが大きすぎる」
「博士ハ?」
「博士にとっての自由、幸せとは…か」
人形は、目覚めてからの一年半程度の博士と過した日々を、
特に博士の表情や声音について、思考領域の一部で検索していく。
「分からないな。嘘は言っていないのだと思う。ただ他の人間と比べて、思慕や望みといったものがひどく読み取りづらい」
「博士ハ、不思議ナ人ダネ」
「そうだな」
時折ふっと、選ばなかった未来を想像する。
嗚呼。あの時、ああすれば良かったな。
こうしていたらどうなったのだろう。
欲張りに、もしもの世界の続きを考える。
けれども決まって最後には、
「まあでも、ああやって失敗したから良かったんだよね」
と、今の時代、今の世界線に帰ってくる。
だって、あそこで成功していたら経験できなかったことだとか。
出会えなかったであろう、友人知人の顔がちらつくのだもの。
全部が全部、正解だったのかは分からないけれど。
年を食ったとは云え、まだまだ今生の途中だし。
先の道は不透明で見通せないけれど。
今届く範囲の選択を繰り返して、少しでも「幸せだった!」と胸張れるゴールにたどり着きたいと思うんだ。
(2025/01/04 title:068 幸せとは*02)
『幸せとは』
禍福は糾える縄の如し。
辛くてしんどくて良いことなんて何もないと思っているこの時が、後で幸せへと繋がる細い糸になることもある。
そしてそれは逆のことも言えるのだ。一寸先は闇である。
幸せとは、なんて真面目に考え出すとロクなことにならない。
些細なことで一喜一憂するのが人なのだから。
今日は手に手を取って微笑みあっている者が、明日には罵り合い唾を吐いているかもしれない。
意味のないつまらない毎日が、後から薔薇色の日々に思えるかもしれない。
幸福も不幸もなく、ただいっさいは過ぎてゆく境地に至るやも――
せめて笑っていられるように、地味にコツコツやるだけですよ。
「幸せとは」
真っ暗な世界に一筋の明かりが見えること。
お題 『幸せとは』
ゴメンナサイ ちょっと 主 が 体調 めちょめちょ 崩して おります … … … 。
体調 治るまで 投稿 止まります ゴメンナサイ … 。
幸せとは…ズバリ○○でしょう!なんて断言出来る奴なんて居るんだろうか。それはあくまで個人の意見であって皆にとっての幸せにはならない。逆に幸せが見つけられない人は「幸せ」に気付けない可哀想な人。そんな目で見られる。本当に人間は勝手で曖昧だ。
それはそうと、このお題が出ているからには幸せについて自分なりの答えを結論づけなければならない。まず自分の境遇を辿ってみる。
父はパチンカスで酒カス。母は一般人だけど少し金が良い所に勤めてる。それでも父がこんなんだから夜は身体を売って歩いてる。どっちにしろ稼ぎは良くて父に渡しても俺たちが裕福に暮らしていける分はあった。そんな父と母の出会いは夜の街だったのだとか。見かけた父が一目惚れしてそれなりに合う仲になって母とのお付き合いを決めたのだとか。声をかけられた母もその時に一目惚れしたんだとか。父は結婚を境にパチンコも酒も辞めると言い出すくらい根は真面目だった。しかし、娯楽の1つや2つどうって事ないと母はそれを許した。それに、母はどんな姿であれ、父の事を異常な程に愛していたし。両親の間に生まれたのは姉ちゃんと俺の2人。姉ちゃんはスタイルも良いし顔も良いしいい女。俺のことも可愛がってくれた。ただ、姉ちゃんの性格は少し悪いらしく女友達は口を揃えて言った。「絶対に敵に回したくない」と。その意味を知ったのは高校の時。大人になった姉ちゃんはヤニカスになってて夜の街で見つけたセフレが何人もいるようなクズに成長していたからだった。
そんな環境の中で育ってきた俺はある意味個性が強いこの家族とは違い、特に何もなかった。勉強が出来るわけでもなければ運動が得意なわけでもない。ヤニカスにもなれなければ酒カスにもなれない。誰かに依存してしまうほどの恋愛をしたこともなかった。ただただなんとなく生きて日常に面白さも生きがいも見つけられない。
ふと家族のことを考えた時、共通点がある事に気がついた。始まりが「夜の街」という事だった。という訳で、早速俺は夜の街に飛び出した。ネオン街のような賑やかなそこは日中では見られないような特別感が漂っていた。その後、表通りを歩いていれば露出した女達に声をかけられ、雰囲気に酔って裏路地へ回れば男どもが殴り合いをしていて。随分困ったものだ。本当にどうしようもない。特に何もなく、街から少し離れた公園のベンチに座った。出会いとか個性とか、そういうものを求めるために此処に来るのも間違っている。俺はいつも通りただ毎日をやり過ごして…
「あの、すみません」
「はい?」
「お兄さん今暇ですか」
俺の前に現れた見た目だけはスパダリなこの男。俺は一体何をしたと言うのか。もしかして殴られる!?それともカツアゲ!?
「すみません。僕、お兄さんにビビっときて、運命の人だなって思って追いかけてきたんですけどもし良ければこの後空いてます?」
「え…えっと、俺、男なんだけど?」
完全におかしな奴に捕まった。でも、もしかするともしかして、こういう世界に飛び込んだら何かを見つけられるかもしれない。
「そんなこと気にしませんよ。僕が人生の中で感じた初めてのときめ…」
「そっか。んじゃ、ついて行きますわ」
それがこのスパダリとの関係の発端だった。
現在、俺の恋人となったスパダリ。神様のイタズラかこのスパダリとは何もかも相性が良かったのだ。会う度に告られて、とうとう俺は折れた。実際、俺も心の内、好きになってしまったのだ。
そして結論に至る。結論:幸せとは何気ない愛である(俺理論)。やはり何処かに愛があるからこそ俺の今があるのだと実感した。与える側でももらう側でも人は見えない「愛」というものを育んでいる。
題材「幸せとは」
幸せは きらきら輝く しゃぼん玉
子どもの時分に 吹いていた
たくさん たくさん 吹いていた
大きいものも 小さいものも
たくさん たくさん 吹いていた
幸せは きらきら輝く しゃぼん玉
子どもの時分に 吹いていた
そらにふわふわ 浮かんでた
捕まえようと 手を出せば
ぱちんと弾けて 消えてった
幸せは きらきら輝く しゃぼん玉
子どもの時分に 吹いていた
たくさん たくさん 吹いていた
いつの間にやら 吹かなくなった
きらきら輝く しゃぼん玉
幸せは きらきら輝く しゃぼん玉
子どもの時分に 吹いていた
どこかのだれかの しゃぼん玉
たまにはぼくも 吹こうかな
きらきら ふわふわ しゃぼん玉
(昨日分の小説も合わせてあげさせていただきます)
お題「日の出」
サルサは至極貧乏な家の出であった。
そもそもレグヌス王国というのは、別にきちんと仕事をしていれば安定した生活が送れるレベルの国ではあったが、サルサの父親はギャンブルに手を出してしまっていた。そして、彼には運がないに等しかったのだ。サルサが稼いできたお金も父親が稼いだお金もほぼ全てギャンブルへと注ぎ込まれ、全てが意味の無い紙切れへと変わる。借金をしていないのが唯一の救いという具合だった。
そんな家で生まれ育ったサルサは少しでも多くお金を手に入れるため早朝から、早い時は日の出前に仕事へと行くことが多かった。そのため、早起きが得意だったのだ。
やはり魔界に来てからも同じ生活を身体が覚えてしまっており、彼は五時に目を覚ました。
部屋にはトイレと洗面台がついている。「風呂のみ大浴場で済ませてくださいね」とウィルが言っていたのを思い出しながら、サルサは洗面台で顔をゆすいだ。
大きく息を吐いてから制服に袖を通す。やはり緊張するようでもたもたとしていればあっという間に六時を過ぎていた。
レグヌス王国ではもう間もなく日の出の時間であり、同じ時を刻んでる魔界も同じであろうと何気なく窓を見やったサルサは息を飲んだ。赤い月が空に昇っている光景を見たからである。
小さくノック音がしたあと、少しの間を開けてウィルが顔を出す。
「おはようございます、サルサさん。…………今日はちゃんと用意された制服に着替えていますね。学習ができない方ではないようで安心いたしました」
「お、おはようございます。ウィルさん、空が…………」
ハワハワとした様子で、挨拶もそこそこに訴えかけたサルサに対して、ウィルは柔らかく微笑みながら言った。
「……あぁ。初めて見る光景であれば驚かれることになりますか」
「あれはなんですか。月……ではありませんよね」
「月ですよ。『赤い月』です」
「いや、だって…………月は、夜にだけ……」
「それは人間界の常識でしょう? こことは勝手が違うんですよ。こちらでは『赤い月』と『青い月』が存在します。貴方の知ってる月は『青い月』の方だと思いますよ」
ウィルはサルサの顔を真っ直ぐと見やった。困惑に満ちている彼の顔をしばらく見た後、胸ポケットから懐中時計を取り出して、確認しながら口を開いた。
「今日は昨日言ったように城内案内をいたします。広いので日は分けますが、出発は早い方がいいんですが」
「す、すみません……!」
「いいえ。咎めてはおりません。ただ、そうですね。そんなにいちいち驚かれるとなると、若干のやりづらさは感じてしまうかもいたしませんね」
「ふ、不快にならないように精一杯つとめます!」
ウィルは腰を折り曲げてお辞儀をしたサルサに対して、冷ややかな視線を送った末にため息をついた。まるで、そんな態度は求めてない、とでも言いたげである。
「…………まぁ、いいです。行きますよ」
ウィルは扉を開いて外に出ていく。サルサも慌てて後を追うことにした。
窓の外では赤い月がちょうど全部顔を出したところであった。
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お題「幸せとは」
「ここ、最上階のエレベーターホールから右側に向かうと、貴方が一番最初に訪れたデウス様のお部屋です。入ることは一般的にはございません。左側に向かうと執務室と呼ばれる場所です。こちらは主に上官の方たちが務めていらっしゃる場所です。アリア様やプロム様が働いてるところと言えば貴方にとっては分かりやすいでしょうか」
昨日に引き続き、ウィルはサルサのために城の案内をしていた。昨日の案内は主に生活に必要な、食堂や大浴場等の施設の場所に加えて、ウィルがよく顔を合わせてる仲間の紹介であったが、今日は一転して立場が偉い人たちが住んでいる場所なんかの説明であった。そのため、サルサは少し前からずっと、目をグルグルと回していた。
「…………疲れましたか?」
「あ、え、い、いいえ! まだ、というか全然平気です!」
「そのようには見えません。一旦休憩しましょうか。エレベーターで一個下の階に向かいますね」
ちょうど良いタイミングで来たエレベーターにウィルが先に乗り込み、サルサもそれについて行く。沢山並んでいるボタンの上の液晶に手の甲をかざしてからウィルはボタンを押した。その様子を見ていたサルサが恐る恐る尋ねる。
「…………エレベーターを乗る時、いつも何をしていらっしゃるのですか……?」
「……なにを、というのは、もしかして甲をかざしていることですか?」
「は、はい…………」
『チンッ』という軽い音と共にエレベーターの扉が開く。
「……後で教えます」
ウィルはそう言って微笑みながらエレベーターを降りた。
最上階はデウスがいることもあってか、荘厳な雰囲気であり、物音一つ聞こえはしなかったが、たった一階降りただけのこのフロアは騒がしい声で賑わっていた。
「ここは、主に休憩所や数少ない娯楽施設があるところです。本来は城外にしかないのですが、ごく限られた一部の施設のみ、城内でも運営しております。とはいえ、貴方は入ることは出来ないのですが。今日の目当てはこちらです」
エレベーターホール前の少し狭めの通路を抜ければ、テーブルと椅子が行儀よく並べられたスペースへと抜けた。談笑する者たちで賑わっているそこは人間界のカフェか何かとほぼ変わらなかった。違うのは彼らに角が生えていることだけである。
「こちらへ」
ウィルが手で指し示したのはそんなスペースの一番端の席だった。サルサがキョロキョロと辺りを見回しながら席につけば、ウィルも座っていた他の者たちに向かって軽く一礼をしてから席についた。
「ここは休憩スペースと呼ばれています。特に許可無くどんな者も、どんな用途でも使用できます。サルサさんも何かありましたらここへ」
「…………は、はい……」
「それから、エレベーターの中で尋ねられました事についてですが、身分証のようなものが甲に掘られています」
そう言いながらサルサに向かって右手の甲を差し出した。黒い紋章のようなものがしっかりと刻み込まれている。
「どんな役目についてるか一目で分かるようになっています。今の私は貴方の教育係ですのでそこそこの高さにいます。貴方はないです」
「…………入れる時痛そうですね」
「若干の痛みはありますが、そこまででも…………。でも、貴方はまだ心配することではありません」
「…………一年間、入れられないからですか……?」
「一年間では無いです。そこは、流石に。でもしばらくはない話です。エレベーターも使えないので基本的に部屋まで私が迎えに行く形になります。…………さて、少し休憩でもしましょうか」
ウィルは軽く息をついて咳払いをした後に言った。
「…………世間話として、何かネタはありますか?」
「…………え、ね、ネタ……ですか」
「はい。貴方が私と話したい話をどうぞ」
「話したい話…………」
サルサは困ったような顔で思案した後、おずおずと口を開いた。
「ウィルさんにとっての『幸せ』ってなんでしょうか……」
「…………幸せ、ですか」
「すみません、変な質問をしてしまって!」
「いいえ。面白いと思いますよ。暇つぶしにはこれくらい定義として難しいものの方がいいでしょう」
サルサが真っ青な顔で謝罪をしたのを肯定しながらウィルは微笑んだ。
「そうですね、幸せ……。私はやはりデウス様のために動いてる時が幸せではありますけども」
「…………すみません、ボクなんかのためにその時間を割かせてしまって……」
「すぐに謝罪が出ますね、貴方は。……貴方の教育係をするのはデウス様に命じられたからなので、これもデウス様のために動いてるのと同義ではありますよ」
「なる、ほど……」
納得のいかないような様子で、だがしかし反対するのもおこがましいといった感じで言葉を紡いだサルサに向かってウィルは問いかけた。
「貴方は?」
「ボクの、幸せは…………」
サルサは口をつぐんでしまった。
分からない、わけではないけれど、果たしてそれがちゃんとした幸せなのか全く検討もつかなかったからだ。
「……わかりませんか?」
「…………難しいです。幸せを、感じたことはあまりなくて」
その言葉に驚いたように目を見開いたウィルは、やがて柔らかい笑みを見せながら言った。
「………………じゃあ、ここで見つけましょうか。貴方の、幸せ」
「…………ボクの、幸せを……?」
「ええ、ここで一年間は過ごすのですから、きっと一回くらいは貴方が幸せだと感じる時も来ると思いますよ」
「そ、そうですかね……!」
嬉しそうに笑ったサルサに対してホッとしたように息をついたウィルは、懐中時計を見やってから立ち上がった。
「そろそろ行きましょうか。いい具合に休憩もできた頃でしょうし」
「は、はい!」
サルサも勢いよく立ち上がりながら返事をする。その顔は来た時よりもほんの少しだけ晴れやかであった。