『宝物』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
宝物
小さい頃は宝物って言ったら冒険してやっと見つけた宝箱に入っているきらきらした宝石をイメージしてた。
今は宝物なんていう言葉が頭の片隅にすらないことに気づく。
あなたにとって宝物って何?って聞かれたら何が思い浮かぶだろう。何か思い入れがあってこれからも大切にしていきたいものが宝物だと私は思うのだけれど、短い人生しか生きていないのにその候補がいくつもある私は幸せだなと思った。
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こんばんは、青春碧と申します。今回は小説ではなく、このお題を見た瞬間にパッと思ったことを文章にしただけです。自分が素直に思ったことを文章にして誰かに伝えるというのもなかなかいいものですね。なんだかすっきりします。
「寒緋《かんひ》さん。少しいい?」
全てが終わり。後に残った面倒事も一区切りがついた頃。少女は男へと声をかけた。
その腕の中には黒い子猫。しなやかな尾を大きく揺らしながらも、少女の腕から逃れようとする様子はない。
「何だよ」
訝しげに男は少女を見る。僅かに苛立ちが浮かぶのは、少女の腕の中の子猫が記憶の中の唯一と同じ名を持つからだ。
そも、兄姉以外とは関わりを持とうとしない男が未だにこの場にいるのは、兄に後始末を指示されたからに過ぎない。
男にとってはこの屋敷に住まう者がどうなろうと、それこそ死に絶えてしまおうと興味はなかった。屋敷内に来た際、広間に立て籠もる者達に手を貸したのも、邪魔をされたくなかったからに過ぎない。
ただ兄に残れと言われたから。それだけがこの場に留まる理由の全てであり、他と交流を持つ事など端から求めていなかった。
「この子。陽光《ようこう》と言うのだけれど。無茶ばかりをしていてね。だから無茶が出来ないようにしようと思って」
「それが何だってんだ…って、おいっ!」
はい、と子猫を手渡され、思わず受け取ってしまった男の顔が不快に歪む。
遠い昔の男の大切な唯一の名は、男の記憶の柔い部分を揺さぶり、酷く不快な気持ちにさせる。況してやこんな畜生に名付けられていると思うだけで、腸が煮えくり返りそうだというのに。
けれども少女は男には見向きもせず。子猫に向かい、呆れを乗せて話しかけた。
「もう人の姿を取れるくらいまで回復したでしょう。さっさと姿を見せてあげなよ、陽光」
少女が子猫の名を呼んだ刹那。子猫の姿が揺らぎ、人の形へと変わっていく。
その姿に男は目を見開き、息を呑んだ。不快に耐えられずその小さな体を握り潰そうとした腕は、焦り抱き留めるようにして人に変わった子猫の体に巻き付いた。
「主!お許し下さい。後生ですので行かないで下さいまし!」
子猫が必死で少女へと手を伸ばす。それに笑顔で手を振って去って行く少女を、それでも諦めきれず男の腕から逃れようと藻掻き出した。
「離して下さいまし!このままでは主に置いて行かれてしまわれます」
「陽光」
「お願いで御座います。主は私のような畜生めを救って下さるほどの尊いお方。今世では主にお仕えする事こそが私の務めなのです。ですのでどうか離して下さいまし、父上」
子猫の言葉に、男は名を呼ぶばかりで離そうとはしない。
「陽光」
噛みしめるように愛しさを込めて名を呼ぶ。男がかつて愛した者との間に生まれたただ一人の、何にも代え難い大切な娘の名を。
霞み色褪せてしまってはいるが、忘れた事など一度もない。
気高く、美しい娘だった。聡明で何事にも動じる事のない強さを抱いた、男の自慢の宝だった。
きつく目を閉じる。それでも耐えられず溢れ落ちた涙が子猫を濡らし、その冷たさに、己の言葉を聞く事のない男に、焦りを浮かべた子猫の表情が段々と苛立ちと怒りに変わっていく。
「父上。離して下さい」
「陽光」
ぷちり、と何かが切れる、音がした。
「いい加減にせぬか、親父殿!離せと何度言うたら理解するのか、この軟弱者めがっ!」
「陽光だ。本物の陽光だ」
「ええい、いつまでも泣くでないわ!あれから何百年も経っているというに、その泣き癖は変わらぬとは全くもって嘆かわしい。疾く離せ。擦り寄るでない」
子猫の手が男の頬を張る。それでも男は子猫を離す事はなく。目尻を下げ、口元を笑みの形に歪めて、嬉しくて仕方がないのだとさらに強く抱きしめた。
「陽光。ごめんな。俺がもっとしっかりしていれば、あんな野郎に嫁ぐ事なんてなかったのに。あんな脆弱で女一人守れんような奴なんかに」
後悔を口にする。娘を手放した事を、男は今も悔いていた。
例えその婚姻が娘の意思であったとしても。男の唯一の宝である娘を手元に置いておきたかったのだ。
「殿を謗るのはやめよ。親父殿よりも余程素晴らしきお人であったわ」
男から顔を背け、子猫は窘める。
だが子猫の纏う気は幾分か落ち着いている。夫婦であった時は僅かではあったものの、穏やかで愛おしい過去を懐かしむように子猫は目を細めた。
子猫にとっては男と共に過ごした時より、己が認め愛した殿との記憶が何よりも大切な宝であった。
それに不満を覚えて、男は子猫を幼子を抱くようにして抱き上げ視線を合わせる。愛しい者との記憶を辿る行為を邪魔され、子猫はまた苛立たしげに男を強く睨めつけた。
「何だ、親父殿」
「…俺の方が、強い」
微かな、訴えかける呟きを、子猫は鼻で笑う。
「殿は最期の時まで人前では涙一つ見せぬ、立派な男子であったぞ」
押し黙る。それでも目だけで不満を表す男に、子猫は致し方ない、と呆れて柔らかく笑った。
かつて娘であった子猫は、男のこの表情に弱いのだ。
「分かった分かった。そうだな、親父殿は誰よりも強い男であったな。詫びに暫くは親父殿の元で厄介になる故、許せ」
「本当だな。嘘じゃないな」
「この陽光に二言はない。それに此度の所業に主は甚く気分を害されてしまった事であるし、今更戻れぬ」
「そうか」
子猫の言葉に、男は泣くように顔を歪めて笑う。
幸せだと、目を細めて。男は己の唯一である宝を強く抱きしめ、その額に口付けた。
「あ。ふっとんだ」
男達とは離れた場所。
少女と少年は、男が子猫に殴られ蹴られ吹き飛ばされていくのを笑いながら見ていた。
「師匠。陽光はあれでいいのか?」
笑いながらも不安を宿して、少年は少女に問いかける。少年の記憶にある限り、子猫はかつての親の元へ帰る事を拒んでいたはずであった。
「いいんだよ、あれで。陽光は素直でないからね」
子猫は男と会いたくはないと言ってはいたが、男が嫌いだとは一言も言わなかった。ああして男に手を上げる事はあれど、男と離れてもその場を去ろうとしないのが何よりの証拠だ。
それを指摘すれば、少年はそういうものかと首を傾げながら、男と子猫のじゃれ合いを眺めていた。
「あのおっさん。陽光に頼まれてちび達がおっさんの永遠を解こうとしたって知ったら、どう思うんだろうな」
「さあね。でも案外嬉しがるんじゃないかな。手段はどうであれ、一人を苦しむ父を救うためだったんだから」
実際は、男にはすでに共にいてくれる兄姉がおり、一人を苦しむ事はなかったようであるが。
それでも愛娘が己を想い続けていたと知れば、幸せ者だと男は泣くように笑い、終を受け入れるのかもしれない。
男達から視線を逸らし、庭中を駆け回る童女達に視線を向ける。
傍らの少年よりもさらに幼い少年の指示で、あやとり紐を手に走る二人の童女はとても楽しそうだ。指示役の少年も、いつもより表情は柔らかいように見える。
目を細め、笑みを溢し。
けれどそう言えば、と笑みを消して、少女は傍らの少年に話しかけた。
「様子見だって言ったのに勝手に動いた事のお説教がまだだったね」
ぎくり、と少年の肩が跳ねる。
「嵐《あらし》がおちびのお願いに弱いのは知ってるけど、意味のない事だって知ってたでしょう?ちゃんと止めてよ」
「だってさ、ちび達が失敗して落ち込んでたし、褒めてほしかったんだって。あのおっさんと同じくらいの呪いは、あれくらいしかなかったし」
もごもごと言い訳をするも、次第に声は小さくなり。
小さなごめんなさいの言葉に、少女は仕方ないと笑った。
「まあいいや。そろそろあの子達も休憩した方がいいだろうし。皆が揃ってからお説教をしようか」
えぇ、とぼやく声は聞こえないふりをして。
「晴《はる》、天《そら》、光《ひかり》。戻っておいで。休憩にしよう」
視線に気づき、笑顔で手を振る少女の宝物達に声をかけた。
20241121 『宝物』
ー宝物ー
『君が好き。』
君を見つめる度に、私の心の奥は煌めく。
それはまるで宝石のように。
君の存在も、君の気持ちも、何もかもが大切。
君の幸せをいつでも願ってる。
それでも、何よりも、私の心の奥にある宝物を一番に大切にしていないと、君を上手く愛せないから。
だから、その宝物を大切に大切に扱う。
いつか君にこの宝物を渡せる日を夢見て、今日も煌めき続けている。
私の宝物
それは 見てわかるほど輝いてはいない
それは 手に取れるもの
それは 言葉の集まり
それは ある人の素敵な想像
それは 語らうことも描くこともできるもの
それは 自分自身でも記せること
たからもの
私の宝物。
綺麗に磨いた通学用のローファーと、バイト代で新しく買った好きなブランドのブーツ。
スフレヤーンのもこもこマフラー。
それから、あの子がくれたベロアのカチューシャとホワイトリリーのハンドクリーム。
この冬を共にする大切な宝物。
あの子と過ごす時間が、この宝物たちに染み付いて残るように。
宝物を守るミミックは、本日もダンジョン内をおさんぽ中である。
薄暗い地下ダンジョン。
攻略難易度は高めな方で、実際、そのミミックは百戦錬磨の無敗であった。
実はラスボスの魔王や裏ボスであるダンジョン最下層に座す主よりも強いのではないか、という噂もある。
実際、箱の中には、ラスボスをハムのようにスライスしてしまうほどの伝説の武器が何本も入っていたりする。
しかし、ミミック的にはそれら伝説の武器たちを丁重に運ぶことなどせず、ガッチャン、ガッチャンと、中身を揺らして歩いている。
いわゆるジャンプしての移動はしていない。
歩いているのだ。
ミミックは宝箱であるので二足歩行ができる足は生えてないが、どこか生えているような気がする。感情もある気がする。
スキップ、スキップ。
身体(箱)の重心を交互に、左右に、傾かせて。
見えない音符と見えないリズムを奏でている。
「……」
ミミックは、ふと耳を澄ますようになった。
身体を固まらせて、閉じた宝箱となっている。
変な場所で静止したが、その辺は問題ない。
意外とツッコまれたことはない。
電源が切れたように、もう動かない。
ちなみに箱の装飾はちょっと豪華である。
以前は普通湧きのボックスのように、錆だからけの金具に薄汚れた木箱を連想させる見た目だったが、いざこれがミミックだと分かると、冒険者が舐めてかかってきてしまう。
犠牲者の屍の山がダンジョンに積もって、掃除が大変だと魔物たちが愚痴を零していた。
だって歯向かってくるんだもん……。
ミミックがシュンとしていると、魔物たちは提案した。グッドアイデア。ミミックは宝物の中からアクセサリーを取り出し、箱の装飾を頑張って飾った。
十字の分岐路の一方から、冒険者一行がやって来た。
「おい、あれ」
「あ、宝箱……」
男が気づき、女が目ざとく視線を揺らす。
赤色のネックレスの反応が良い。
典型的なメンバーで構成されている。まだミミックだとは気づいていない。女が近づいて、箱を開けようとした……。
恒例行事。
口を大きく開けて、伸びた手を噛みちぎろうとした。
「うわっ、ミミック!」
「くそ……」
一行の目がきつくなり、臨戦態勢。
ミミック側は、ちょっと甘噛みして逃がす予定だったのだが、そんなにやる気なら仕方がない。
本日は気分が良いから相手になろう。
箱の蓋をぐっぱりと回し開け、中身をよぉく見せた。
中には山盛りの綺羅びやかなゴールド、歴戦の勇士が所持した豪華な戦利品。それから紫色の……よく知らない空気の塊。
それらをとことん見せてから、戦闘に入る。
そうすると、ゲームのシステム上「逃げられないバトル」に進化する。
とりあえず、男どもをザラキで即死させてから、可愛い女の子を土下座させたい。
1分後にそうなって、3分後には意気投合。
一緒にダンジョン内デートをすることになった。
女の方が少し怯えているようだが、ミミックにはよくわからない。
スキップ、スキップ。
こうやって、地下ダンジョンの魔物たちに見せびらかすことを毎日やっている。気分が良いのはそれである。
ダンジョン外にこの噂は広まることはない。
その辺は抜かりない。
「逃げられないバトル」なのだから、男たちに死に戻りなんてさせない。
宝物
今は破棄しましたけど、昔に宝物ボックスみたいなの作ってました!!笑
その中に、始めて裁縫したときに縫った布切れと、飼い猫の抜けたヒゲと、飼い猫が虫歯?になった時に獣医さんに抜いてもらった歯が入ってました笑
久しぶりの投稿となってしまいすみません💦
テスト週間とか、色々あって…
テスト明日が最終日です!!
生きてるだけで、儲けもの――そんなのは嘘だ。
生きていれば、金が減る。
生きていれば、心が削られる。
生きるとは、損失の連続だ。
「今月も安定のドン底生活……あー死にてえ」
ぼんやりと天井を眺めて、俺はため息をつく。
もういっそこのまま、なんて何度思ったことか。
引き籠もりの学生時代から始まり、やっとの思いで就職した会社は鬱で半年前に退職、頼れる親友人もおらず。
何のために生きているのか分からなくなる。
生きる意味を見つけることすら、億劫で。
空になったペットボトルやカップ麺を周りに退け、気持ち程度のホコリを払って寝転ぶ。最後に掃除機をかけたのなんて、一体何ヶ月前なんだろう。それすらもどうでも良くなって、目を閉じる――
「――うわ、きったねえ家」
「……は」
しばらく開けていなかったはずのベランダから、勢いよく風が吹き込みカーテンが膨らんでいた。そこから覗き込んでいたのは、全身真っ黒な服を身にまとった男。
……見るからに空き巣じゃねえか。
「え、まじ? 人居んじゃん会社は??」
「半年前に退職しましたけど……」
遮光カーテンを付けていたせいで昼夜が分からなかったが、どうやら今は昼時らしい。いや、真っ昼間にそんな格好してたら目立つだろ。夜に忍び込む用だろその服。
「うわーなるほどね? オーケー出直しますわ」
「いや、できるならもう来ないでください」
男は俺の話などまるで聞いてないようで、興味津々というふうに俺の散らかった部屋を見渡した。
「ふふん。おにーさんも人生失望したクチっすか?」
「……まぁ、はい」
じゃあコレあげます、と言って、男は俺に缶ビールを投げて寄越した。缶の表面がベコベコで、開封すれば今にも内容物が吹き出しそうな見た目をしている。
「あ! それは盗品じゃないんで安心してくださいネ」
イタズラっぽく笑って、男は手を振りそのまま消えた。
缶ビールに、めくられたままのカーテンから差し込む久々の日光。そして、どこか心配になる空き巣との出会い。
捕まるなよ、なんて呆れた笑いがこみ上げてきながら、俺は缶ビールのプルタブを押し倒した。
ぬるい上に炭酸も少し抜けているが、今まで飲んだビールのどれよりも格別な味がした。
「……これはとんだ『儲けもの』だな」
――ささいな宝物は、突然に。
2024/11/20【宝物】
「My treasure is...」
窓の外の荒天とは別世界のように長閑な空気に包まれた教室。この時間が終われば今日という日に何事もなく幕を下ろすことができる。早く過ぎ去らないだろうか。……なにもかも。
パチパチ……
心のこもらない拍手に、ハッと身を震わせる。慌てて頬杖を解くと、拍手はすでに消えかかっていた。
「Thank you〜」
ALTが1人テンション高くリアクションし、それから簡単な質問が繰り出された。スピーチを終えた学級委員は緊張が収まりきらない赤い顔でそれに応えている。自分の時は時間が足りないとかで質問が省略されたらいい。そんな後ろ向きな願いを胸に、また外を見る。誰もなにも言わなくても、季節はちゃんと進んでいく不思議。全てがプログラミングされているんじゃないかと思う。神様は信じてないけれど。
「Next!」
はい、と堂々たる日本語で返事をして立ち上がったのは、千早。スラックスの制服がよく似合う。男子と違ってウエストがゴム仕様なのがスタイルに悪影響だと嘆いていたけれど、背が高い千早はシュッとしていて十分かっこいい。
「My treasure is this one.」
手のひらを開いて見せる千早。人差し指に引っ掛けたリングからぶら下がっているのは、遠目にはよくわからないほど小さな飾りだった。ギリギリ判別が付けられそうな前の席の人達が少し身を乗り出したのが分かる。後席は諦めモードが漂っている中、……数人は体を硬直させていた。私も含めて。
「I love our team.I love members.」
千早が手のひらを再び握ったので、キーホルダーは見えなくなった。でも私達には鮮明に思い出せる。1人1人違う色で揃えられたアクリルのハートも、それをくれた時の美耶の顔も。
義理感満載の拍手に軽く頭を下げてから、千早は質問の受け答えに入った。バレーボールチームの話。ドクドクと異常な速さで脈を打つ私の体は、少し震えていた。
千早が堂々と席に戻るのを、私は直視できなかった。ズルい。私はズルい。それに対して、チームの全てに向けて一石を投じた千早の潔さ。口ばかりの私とは違う。子供の頃の写真は確かに「宝物」だ。だけど、今を逃したら私はもっと大きな宝物を失うことになる。
次のスピーチが始まるのも構わず、私は机の横に下げられたカバンに手を突っ込んだ。見えにくい内ポケットに、捨てることも下げることもできず入れっぱなしになっていたキーホルダー。私は薄い黄緑だ。千早は黄色。美耶は青。
久しぶりに直視するそれを、私は指先でそっと撫でた。
なんでこんなことになってしまったのか。なんでもない諍いが美耶を孤立させたこと、美耶と対立した数人の激化していく態度に物申せなかったこと。美耶とはその数人の陰口を叩きながら、チームに行くと美耶には近寄れなかったこと。
これもプログラミングされているのだとしたら、次のコードはきっとこれだ。ぎゅっとキーホルダーを握り締める。考えてきたスピーチの原稿は無駄になった。ほぼ即興で話す下手な英語で、私は一体なにを伝えられるだろう。でも、胸を張って伝えなければ。
My treasure.
私の宝物。
それはかつての、そしてこれからの私達のことだよって。
《宝物》
キミの宝物ってどんな物なのかな。形が有る物かな。それとも、形が無い者かな。
どちらにしても、形が有る物でも無い物でもいいんだ。宝物って言うのはね。
けれど、経験に勝る宝は有ると思うかな。それとも無いと思うかな。
経験の切っ掛けとしての宝は有って良いと思う。だけど、どんな経験をしたのか。それが大事になってくるのさ。
スライムばかりを倒していった経験よりも、ドラゴンと戦った経験。どちらが価値が有るのか。キミには分かるかな。
スカイダイビングをした経験と、その動画を見た経験。どちらに価値が有るんだろうね。
データが消えれば、ゼロからのやり直しになるのと、1や2からのスタートになる経験。どんな経験をしたいかな。
さて、改めて問うけど、キミはどんな宝物が経験となっているのかな。
答えはキミ自身が知っているはずだよ。キミの中にある経験という宝物は誰にもシェアし難いもの。キミだけの経験なのだからねーー。
「宝物」
わたしのおへやは たからものでいっぱい
たからもので いっぱい
だって みんながなきさけぶから
しんじゃったわたしのこころのぼうれいたちが
なきさけびつつげるから
ぼうれいは いろんなものをほしがる
かわいいおようふく ふわふわのぬいぐるみ
てにいれられない あいじょう
たくさん たくさん ほしがるの
だって だれも ほんものを くれなかったから
にせものさえ くれなかったから
だからわたしは いまのわたしをぎせいにして
ぼうれいたちを なきやませようとする
なきやませようとする
かわいいおようふく ふわふわのぬいぐるみ
なんでも ほしいものはすべて てにいれるの
それでも
それでもぼうれいはなきつづける
どうして どうして?
だって さびしいから あいされないから
ずっと かなしいから もうやりなおせないから
もういきかえれないから しにつづけているから
だからわたしは わたしのこころのぼうれいたちは
なきさけびつづける
たとえわたしのおへやが
たからものでいっぱいで ぐちゃぐちゃになっても
「きょうだいのたからもの」
1ねん2くみ はるのかなと
ぼくには、たいせつなたからものがあります。
それは、ぼくがいつももっている、このえんぴつです。
このえんぴつは、におにいちゃんがくれたものです。
おにいちゃんが
「これは、おばあちゃんからもらったたいせつなえんぴつだから、ずっとたいせつにもってたんだ。これ、あげる」
といって、ぼくにくれました。
そのあと、ぼくとおとうさんとおかあさんが帰ったあと、おにいちゃんはなくなってしまいました。
もしもおにいちゃんがこのえんぴつをくれなかったら、ぼくはおにいちゃんからもらうものがなかったことになります。
なので、このえんぴつは、ぼくにとってさいこうのおにいちゃんからもらった、さいこうのたからものです。
これからも、このえんぴつを、たいせつにしていきたいです。
そして、ぼくもおにいちゃんみたいに、これからうまれてくるいもうとが、いちねんせいになったら
「これは、きょうだいのたいせつなもの」
とおしえて、たくしたいとおもいます。
「きょうだいのたからもの」
僕の宝物、
かけがえのない、家族。
いないと、本当に困る。
泣いて泣いて、涙がかれるまでって、
そんな表現じゃ、足りない。
宝物は、今、こうして僕がいるために、、、。
いた証。そう思う。
『宝物』
宝物
他に替えがないかけがえの無いもの。
物以外にも思い出とか、親友、相方、子供…。
たくさんある。
自分が小さい頃は、◯ちゃんに貰ったシールとか、ビーズで作ったアクセとかそんな身近な物でも宝物で、
可愛いお菓子の空き缶が宝物入れだった。それもすぐいっぱいになっちゃう。
小さな宝物に囲まれてた。
親から見たらガラクタも私には宝物だった。
それで良かった。
いや、それが良かった。
だって、
「ビーズのアクセが宝物?
どうせ宝物というならちゃんと本物のダイヤになさい。」
なんて言う親がいたとしても、その本物のダイヤは子供の頃の私には『価値ある物』だとしても『宝物』になるとは限らない。
何の思い出、愛着もなく買い与えられただけでは宝物にはならない。
ま、思い出や愛着があればそりゃ本物に越したことはないでしょうけどね。
ん?今の私の宝物?
『貴方』と『貴方と過ごした日々』
そして『貴方の成長そのもの』よ。
お菓子の空き缶じゃ入りきれなくて困っているのは昔とちっとも変わらない。
たくさん傷ついて
優しさを知って
感謝してもらって
感謝して
笑って
泣いて
まだ、経験することはある
でも、今の自分が一番の宝物
たくさん傷つけて
何度も立ち直して
色んな道を歩いてきた
泣いて 笑って 悩んで 苦しんで
でも結局 よく生きたって
そう思える自分が
私自身が きっとずっと
一生抱える 宝物なの。
_ ₁₉₄
話しかけたら笑顔になってくれる。
お互いが言う事を笑い合える。
いつまでも話のネタが尽きない。
そんな私の友達が私の〝宝物〟だ。
遅くなりました。
▶20.「宝物」
19.「キャンドル」の値段
18.「たくさんの想い出」
:
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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人形は宿屋の受付にいた娘から蝋燭を買い、部屋に戻ってきた。
日は傾いてきているが、
完全に沈むには、あと少しだけ時間がある。
蝋燭を机に置き、✕✕✕は部屋についている水場に向かった。
この国は水源が豊富で、安い宿屋でも身を清める程度の水は料金内に入っている。タンクに付けられたコックを動かし桶に水を出す。
濡らした布を使って体を拭いていく。人形は体表面の代謝がないため短時間で終わった。
窓を見ると空は赤から紺へのグラデーションを描いている。
人形はそのまま、日が沈み暗くなっていく様子を眺めることにした。
この国は光源を専ら炎に頼っており、太陽と共に寝起きしている。
日没後2刻も経てば、大抵の住民は眠りについているだろう。
そうなれば人形は安全に自己修復機能が作動する休止形態に移行できる。
蝋燭は、それまでの繋ぎなのである。
日没を確認した✕✕✕は、蝋燭に火を灯した。
今までと異なり、ほんのりと甘い香りが部屋に漂う。
しかし炎の大きさや勢いには差がないようで、
人形が取り込むエネルギーも同様である。
✕✕✕は椅子に腰掛けて、蝋燭の炎を見つめる。
取り込めるエネルギーが変わらないなら、価格の安い方が良い。
決まりきった結論である。
しかし、この香りは宿屋の娘の✕✕✕に対する思いやりそのものだ。
(この宿にいる間は、この蝋燭にしよう)
香りがデータとして記録されていくのを感じながら、
人形は甘い香りの蝋燭を宝物と定めた。
昔、どんぐりを拾っては集めていた。つやつやしていようが、ボロボロに汚れていようが、虫がはい出してきてもお構い無しだったから、母親はさぞ苦労しただろう。
もらったバスケットに積まれていくどんぐりを眺めていると、達成感みたいなものがあらわれてきて、まあ気分が良かった。
そしてこの世のどんぐりを全て集め終わったんじゃなかろうかという頃、隣に住んでいた気のおかしなおばちゃんがどんぐりたちを燃やした。今から思えば気のおかしいのは自分の方だったのかもしれない。
ともかく、そこで自分は世の儚さを悟ったのである。あと、どんぐりはそんなに価値があるものじゃないということも。
キープさせていただきます。
今週は忙しいので、もしかしたらずっと書けないかもしれません。申し訳ないです。
本当に大切な宝物は、大切な人以外には教えたくないです。……私だけかもしれませんが。
あと、昨日は投稿も出来なかったのですが、いつかアロマキャンドル使ってみたいです。