崩壊するまで設定足し算

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遅くなりました。
▶20.「宝物」

19.「キャンドル」の値段
18.「たくさんの想い出」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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人形は宿屋の受付にいた娘から蝋燭を買い、部屋に戻ってきた。

日は傾いてきているが、
完全に沈むには、あと少しだけ時間がある。

蝋燭を机に置き、‪✕‬‪✕‬‪✕‬は部屋についている水場に向かった。
この国は水源が豊富で、安い宿屋でも身を清める程度の水は料金内に入っている。タンクに付けられたコックを動かし桶に水を出す。
濡らした布を使って体を拭いていく。人形は体表面の代謝がないため短時間で終わった。

窓を見ると空は赤から紺へのグラデーションを描いている。
人形はそのまま、日が沈み暗くなっていく様子を眺めることにした。

この国は光源を専ら炎に頼っており、太陽と共に寝起きしている。
日没後2刻も経てば、大抵の住民は眠りについているだろう。

そうなれば人形は安全に自己修復機能が作動する休止形態に移行できる。
蝋燭は、それまでの繋ぎなのである。

日没を確認した‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、蝋燭に火を灯した。
今までと異なり、ほんのりと甘い香りが部屋に漂う。

しかし炎の大きさや勢いには差がないようで、
人形が取り込むエネルギーも同様である。


‪✕‬‪✕‬‪✕‬は椅子に腰掛けて、蝋燭の炎を見つめる。
取り込めるエネルギーが変わらないなら、価格の安い方が良い。
決まりきった結論である。

しかし、この香りは宿屋の娘の✕‬‪✕‬‪✕‬に対する思いやりそのものだ。

(この宿にいる間は、この蝋燭にしよう)

香りがデータとして記録されていくのを感じながら、
人形は甘い香りの蝋燭を宝物と定めた。

11/21/2024, 9:25:33 AM