『子猫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
路上ミュージシャンは引退を考えている。
別にデビューもしていないのだが、何年やっても観客はゼロだと、今更ながらに気付いてしまったからだ。
そうしてギターをしまおうとしたときに、ねずみが彼の前に現れた。彼にはそれが観客に見えた。
おまえのために歌ってやるか。
これが最後の歌だ、よく聴いておけよ。
路上ミュージシャンが歌い出すと、さらに観客が続々と。
うし、とら、うさぎ、龍、へび、うま、ひつじ、さる、とり。
最後に子猫がやってきた。
イノシシじゃないのかい。と思わず歌ってしまう。
子猫は、あなたのファンなんです、と言った。
あと12年は引退しないと彼が歌うと、観客たちは各々の鳴き声を上げた。
【子猫】
子供の頃、出逢った小さなオス猫。
名前は、ハリー。
黒猫というより、青猫。
毛並みが綺麗で、とっても可愛かった。
けど、祖父母と旅行行って帰ってきたら、亡くなってしまった。
あっという間だった。
沢山泣いた。
今でも、横になるあの子の毛質はちゃんと覚えてる。
もっと生きれると思った。
子猫だった。
悲しかった。
今思えば、悔しかった。
何もしてあげらなかったと思う。
それでも、私が生きてる間は思い出そうと思う。
あの子の存在は、確かにここに今も存在してるから。
もし、あの子に来世があるなら、もし会えるならもう一度撫であげたいかな。
今でも、大好きです。
一人の望まれない人間としてではなく、金を出してでも手に入れたい人間が世界中にいる、猫や犬といった何かの愛玩動物として産まれていたら。
そしたら、俺は更に幸せになれていただろうか。
そしたら、夜道を行くあてもないまま彷徨っていた、一番救いを求めていたあの時に、拾ってくれる誰かに出会えていただろうか。
……なんて、くだらないたらればを考えながら、コンビニ帰りの俺はとある空き家の前に立ち止まる。
ここは昔、猫好きのおばあさんが一人で住んでいた。近所の野良猫達に別け隔てなく猫缶をあげていた姿を何度か見たことがある。特に、軒下を借りて子育てをしていた三毛猫母さんとその子供達を、我が子のように気に入っていたように見えた。
今は、おばあさんも猫達もどこにいったのか。いつの間にかすっからかんになっていたこの家には、もう誰もいない。知らないうちに総て消えてしまった。
ただ、最後に産まれた子猫達の行方だけは知っている。
車に轢かれ、烏に襲われ、保護団体のような人達に捕獲されて……多分、皆死んだ。
俺が子猫だったら。きっと、誰にも知られず、彼らと同じ末路を辿っていただろう。
まだ、文章という救いがあるこの人生の方がマシだ。俺は自分にそう言い聞かせ、身体が冷え切らないうちに歩き出した。
子猫
うちの子猫ちゃんは気性が荒い。
今日は帰るのが遅くなってしまった。
「ただいま、遅くなってごめんよ」
そう言って玄関に入ると、駆け寄ってきて小さな手で叩いてくる。
そんな小さな手で叩いても痛くないよ。自然と笑みが溢れる。
急いで夕飯の準備をする。
その間もずっと僕の周りをウロウロしている。
きっと僕が帰ってきて嬉しいのだろう。
夕飯を前にして様子がおかしい。
どうやらお気に召さないようだ。
しかし、怒りながらもしっかり食べている姿は可愛くてしょうがない。
今日はプレゼントを買いに行っていたから遅くなってしまったのだが、これを渡したらご機嫌は直るかな。
ツンと離れて座っている彼女に新しい首輪のプレゼントをつけてあげる。
「可愛いなぁ、ずっと一緒にいようね」
そう言いながら撫で回す。
ご機嫌は直ったようだ。今日も一緒の布団で眠る。
「あれ?先輩、こんな時間まで大学にいるの珍しいですね」
「ああ、今日は彼女の方が長くてね」
「ちょっと!終わったんだけど!」
「おっと、終わったみたいだ。うちの子猫ちゃんがお呼びだから行くね。君たちも気を付けて帰るんだよ」
「はーい」
「お疲れ様でしたー」
「あの先輩ってイケメンで優しいけど変わってるよね」
「ね、彼女さんのこと子猫ちゃんって呼んでるし」
「いやいや、それだけじゃないのよ。彼女さんを軟禁してるって噂!」
「えー?あの気性の荒い人が軟禁されてるなんて嘘でしょ」
「先輩と付き合い始めてからバイトも辞めたし、先輩以外と話してる様子がないんだって!連絡も繋がんないらしいよ!」
「ええ?何それ。でもブランドの新作ネックレスしてたじゃん、バイトしてないと買えないでしょ」
「先輩がプレゼントしたんじゃない?」
「ええ、いいな!だったら私もあのイケメン先輩に飼われたい!」
『子猫』
小さくて自分だけでは何も出来ない子猫。
私がいなきゃダメなんだ。
この気持ち、なんだか似てるな。
そっか、この子猫は君と似てるんだ。
お題〈子猫〉
『かわいい子猫』
そこの道行くあの人は
いつもの仲良しメンバーは
そして隣にいる君は
そこでにゃーにゃー鳴いている
子猫に何を思うだろう
子猫を想う人ならば
きっとああだこうだって
そうじゃない人を見下したようなこと
私は別に言わないけれど
君が言ったらどうしよう
斜に構えている私だから
そんなことまで思うのです
純粋に「かわいい」とだけ言えたらな
小賢しいようで嫌いだな
あいつは人を騙すのが好きなんだろうなんて
そんな言葉を放つしか
あたしに術はないのだろうけど
今日もまたみゃおみゃお
甘い声を掻き鳴らす
路地裏の誰も来ない
夜の帳の中で
今日もまたみゃおみゃお
甘い声を惑わして
『子猫』
テーマ“子猫”
友人の家で子猫が生まれたというので
貰いに行った。
母猫の名前は、“ミケ”
父猫の名前は、“タマ”
何とも、昔ながらの猫の名前。
子猫は6匹。
名前はまだ無い。
「みぃぃ…」
僕はその中でも、鈍くさいと言うか
ドジと言うか
むしろそこが愛しく思えて
1匹だけ、子猫の群れから逸れている子猫を
貰うことにした。
「名前は何にするんだ?」
友人に訊かれて
僕は少し悩む。
「うーん…コロコロしてるし、タマの子どもだから、コダマ…」
「安易だなー」
「うん、それ、一番言われたくない。ミケとタマだって安易だろ。」
「俺は結構悩んだぜ?でも一番しっくり来たのが、ミケとタマだった訳で」
「本当かぁ?」
「マジだって」
「まあ、どうでもいいけど。とにかく、コイツはコダマで決定」
「猫飼うための注意点とか、書いておいたから、ちゃんと目を通せよ?」
「おー、ありがとう。一応、調べてはあるけど助かる。」
学校で使っていた数学のテキストくらいの分厚さがある、冊子を渡される。
「こんなに…?」
戸惑うと
「必須!」
圧が強い。
「分かった。ちゃんと読むよ…」
そう言って、早速目を通す。
「今読むのか」
「え、駄目か?」
「まさかお前、なにも準備してない?」
「いや、ある程度は準備してある。トイレとか爪とぎとか。こうやって猫を入れる鞄持ってきてるし」
「そうか」
「ただ、餌がわからないから、その辺を聞こうと…思ったんだが…思った以上に注意点多いのか」
「ペットって簡単に言うけど、生き物を育てるって大変だからな。前にも飼った事があったとしても、個々で違うから、その辺で色々把握しないといけないし。後半は、観察メモだ。」
「観察メモって…」
「色々把握する為には必要だと思うんだよな…」
「まあ、観察メモって言い方はどうかと思うけど、使わせて貰うよ。」
「ただ、コイツ…コダマは、シャイみたいだから、いっぱい気にかけてくれよ。」
「ああ。」
そう言われて、家に連れ帰ってきた瞬間。
何処がシャイだ!と思うくらい
家の中を走り回っていた。
そんな事を、昔撮った、コダマの写真を見ながら思い出す。
今のコダマは、時々家の外を駆け回っている。
外に探索に行って、仕事から帰ってくるタイミングを見計らった様に、前を歩いている時もある。
鍵はかけてある。
ペット用の出入り口から抜け出しているようだ。
「にぁー」
「どうした?」
「にぁーー!」
猫じゃらしを咥えてくる。
「あー…遊べと。分かった」
アルバムを片付け、猫じゃらしを手に持ち
遊ぶ。
シャイだと言われた、この猫は
全くシャイでは無かった。
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第五十話」
「私、憧れの斉木君とお茶が出来るなんて、とっても幸せでハッピー!」
「喜んでくれて、嬉しいよ」
四人が楽しくお茶をしていると、突然、男性二人が目の前に現れました。
「斉木優人さん、お仕事の時間です」
ベージュの肌、黒の細目、ショートヘアの銀髪、中肉中背だけどやや長身、黒のスーツ姿の冷酷でクールな男性は、優人に言いました。
「曽池由衣花さんも、お仕事の時間です」
ベージュの肌、黒の細目、ショートヘアの銀髪、中肉中背だけど長身、黒のスーツ姿で慎重なお調子者の男性も、由衣花に言いました。
「あの…今日は撮影は休みの日ですよ?」
「今日は休みだって監督から聞いています」
優人と由衣花は、男性二人に説明し始めました。
「オイ、おかしいぞ?ポール君、ちゃんと下調べしたんだろうな?」
「グラックさん、抜かりはありません。撮影の日程はちゃーんと調べて置きました」
「じゃ、何でターゲット二人が今日は休みみたいな事、言ってるん?」
「多分、ガセの日程表だったのでしょうね…」
「……」
「ま、ともかく。お楽しみの所、申し訳ありませんが、今日は撮影日なのですよ。お二人には撮影所まで向かってもらいます」
「申し訳ありませんが、監督のミスでスケジュールが間違っていたとの事です」
「そうですか…」
「マネージャーさんじゃないのが、少し気になりますが…」
「マネージャーの方は、大変忙しくて猫の手も借りたい程でしたので、我々に頼んだのですよ」
グラックとポールは、優人と由衣花にマネージャーがいかに忙しそうだったか説明しました。
「芸能人って、大変だねー。つかの間の休みですら仕事が入っちゃうんだもん」
由里は、ラスベリーティーを飲んでいました。
「二人には、映画を完成させる使命がありますからね。仕方無いですよ」
章司は、遠くの方に目をやると、宇治金時パフェを食べている老人の姿が目に入りました。
「由里、時計の側の席に居るおじいさん、監督じゃありませんか?」
「んな、まったまた…あ!九鬼監督!ホントだ…」
由里は、小声で驚きました。
「とにかく、お二人を監督が呼んでいますから、今すぐ来てもらいますよ?」
「撮影が遅れたら、映画を楽しみにしている方々に多大な迷惑がかかってしまいますからね」
「監督が呼んでいるんじゃ、仕方ありませんね…」
「用意が出来次第、向かいます」
優人と由衣花は、席を立ちました。
「…ねぇ、監督って、今は撮影所に居るはずでしょ?ココに居るのっておかしくない?」
「僕も、それ思いました。この人達、怪しいですよ」
由里と章司は、今、カフェに監督が居るのはおかしいと気付きました。
「『マネージャー』さん、監督さんはココでパフェを食べているよ?」
「あなた達は、偽物ですね?芸能人の人達に何の用ですか?」
由里と章司は、グラックとポールを問い詰めました。
「バレちゃ、仕方無いですね…」
「二人、連れて行くぞ」
グラックとポールは、芸能人二人を連れて行こうとしました。
「いや…!放して!」
「抵抗すると、どういう目に遭うか分かってるだろうな?」
グラックは、
「拷問空間!」
と唱えると、由衣花は動けなくなり、拷問器具が現れました。
「い、痛い…嫌ぁあああ!」
拷問器具は、由衣花の胸を掴み、強引に引っ張って引きちぎりました。由衣花は出血多量で気絶し、動かなくなりました。
「コイツら、何者よ…?!やる事、酷過ぎるじゃん!」
由里は、震えと涙が止まりませんでした。
「由衣花さん、大丈夫ですか?!僕は救護術の使い手です!」
章司は、由衣花を治療し始めました。
「メディカルヒール!」
章司の術で、由衣花の傷は治って行きました。
「章司君、助けて…」
由衣花は、涙を流しながら章司を抱きしめました。
《子猫》
君の子猫を撫でるゴツゴツした手
君に撫でられる子猫は羨ましい
野良のくせに甘えるのが上手で
私も子猫みたいに上手に甘えることができたら
君はその手で私の頭を撫でてくれるの?
子猫は可愛いよなぁ
必死に鳴いていつも私も探してる
あの片手で持ち上げられる軽さと抱き締めると消えてしまいそうな小ささ
ご飯を食べながらおいしいおいしいって鳴くんだよな
ああ、かわいい
鼻から吸ってしまいたい
んにゃ
題 子猫
秋風に
サラサラな毛鞠
母は追う
#子猫
朝起きると、少し離れたソファーで子猫が気持ちよさそうに眠っている。 私は欠伸をしながらベットを降り、子猫を起こさぬようなるべく静かにカーテーンを開けた。ふわっと柔らかな日光が部屋いっぱいに広がり、身体に当たる暖かい日差しと少し寒い空気感から朝が来たことを改めて実感する(を全身でかみ締める)。
大きく空気を吸い(ってから)、子猫を見た(一瞥した)。 子猫はピクっと片耳を動かしたかと思うと、目をぎゅっとつむり、肉球を手一杯広げて顔をごしごしと擦り始めた。 起きるのかと思ったが、まだ眠るらしい。
愛しいこの子の頭を撫でてから、私は朝の支度を始めた。
子猫
最近、野良の子猫を見かけた。
前から居る、さば柄の野良の子どもだろう。
酒屋さんに聞いたら子猫ではないと。餌やりしていた高齢の奥さんが引越して、さば猫が痩せてしまったようなのだ。
複雑な気持ち。ウチではどうにもできないし。気持ちの持って行き場が見つからない。
さば猫とはここに越してからだから、 5年の付き合い。居たらいたで癪に触るが、来なくなった時は気になりもした。
この状態どうにもしょうがない。
猫好きの酒屋さんに任せるしかないと、自分を納得させた。
子猫。
子猫は
本当に可愛すぎる。
子猫みたいな
上目遣いが
してみたい。
子猫みたいに
気まぐれな
性格って
言われた事あるなぁ。
…子猫…
僕は小学六年生 世良優真。
あの雨の日
小さな声で鳴いた 子猫と出会った。
それから毎日会いに行き
次第に両親達に飼っても良いか
相談することにした。
「父さん母さん
お願いです
子猫を飼いたいんです」
息子の僕の頼みなら了承得れると思い
何度もお願いしたが
結局両親達は納得してくれなかった。
その後
僕は両親から子猫と会うことを
禁じられた。
あれから3年後
僕は中学二年になった。
近所に新しい方が引っ越してきて
芹沢さんという方で
そこの娘さんと僕は偶然にも同級生であり
今日は期末テスト前の勉強会をする事になった。
「はい、世良くんお茶をどうぞ。」
「ありがとう。芹沢さん。」
ズズ…とお茶を飲んでると
芹沢さんの部屋にあった
写真立てに
目を向けた。
「…芹沢さん、この写真って…!!」
僕には衝撃だった。何故なら
「あぁこの子猫さんは私が三年前に
拾ったんだけど引っ越す時に
両親に捨てられちゃったの。
当時の私は大反対して大泣きしたんだよね。
だけど後から私の住んでた家の近所の人が
拾ってくれたんだって。
それで私も安心したんだ。」
僕は一瞬泣きそうになったが
何よりも子猫が
無事で嬉しかった。
「そうだったんだね。実は僕も
この子猫を飼うつもりだったんだ。
ちなみにこの写真っていつのか聞いてもいい?」
芹沢さんはうーんと唸りながら
「その拾ってくれた人が一ヶ月に一回
写真を送ってくれるんだけど
この写真は
最近送られてきたばかりの写真だよ。」
と首をかしげる。
僕はますます嬉しくなり
「教えてくれてありがとう!
ねぇ芹沢さん
もし良かったら
また写真を観に来てもいいかな?」
と少し前のめりになりながら尋ねたら
「うん。いいよ!是非是非!」
と笑顔で承諾してくれた。
「「じゃあ約束!!」」
僕と芹沢さんは笑顔で指切りをした。
これは一匹の子猫を繋ぐ物語。
_end_
お題 子猫
普段あまり笑わないあなたが
子猫を手にして微笑む姿に
私は惚れたのでしょうか
見つめる度に胸が高鳴って
思いだすあなたの笑顔
こんな私は子猫のようね
修学旅行で笑う君。
バスで全てが終末に届いたと感じる僕。
朧気な未来は、卒業式が終わってから始まる。
紅い放課後、子猫は、失った日々を思い返す。
あんたは良いわね、甘えるのが上手くって。
「子猫」
獣
鋭い眼光で
捕らえ
鋭い牙と爪
喉笛を
噛み砕き
引き裂いて上げる…
血を啜りて
潤して
肉を喰らい
欲の業
欲のまま
狂気と宴の快楽に…
孤独を纏う
衝動の残劇
感情は捨て
殺戮の狂者
生きる為の
知を獲る者