烏羽美空朗

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一人の望まれない人間としてではなく、金を出してでも手に入れたい人間が世界中にいる、猫や犬といった何かの愛玩動物として産まれていたら。

そしたら、俺は更に幸せになれていただろうか。
そしたら、夜道を行くあてもないまま彷徨っていた、一番救いを求めていたあの時に、拾ってくれる誰かに出会えていただろうか。

……なんて、くだらないたらればを考えながら、コンビニ帰りの俺はとある空き家の前に立ち止まる。
ここは昔、猫好きのおばあさんが一人で住んでいた。近所の野良猫達に別け隔てなく猫缶をあげていた姿を何度か見たことがある。特に、軒下を借りて子育てをしていた三毛猫母さんとその子供達を、我が子のように気に入っていたように見えた。

今は、おばあさんも猫達もどこにいったのか。いつの間にかすっからかんになっていたこの家には、もう誰もいない。知らないうちに総て消えてしまった。

ただ、最後に産まれた子猫達の行方だけは知っている。
車に轢かれ、烏に襲われ、保護団体のような人達に捕獲されて……多分、皆死んだ。

俺が子猫だったら。きっと、誰にも知られず、彼らと同じ末路を辿っていただろう。

まだ、文章という救いがあるこの人生の方がマシだ。俺は自分にそう言い聞かせ、身体が冷え切らないうちに歩き出した。

子猫

11/15/2022, 10:50:36 AM