蒼月の茜雲

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テーマ“子猫”

友人の家で子猫が生まれたというので
貰いに行った。
母猫の名前は、“ミケ”
父猫の名前は、“タマ”

何とも、昔ながらの猫の名前。
子猫は6匹。

名前はまだ無い。
「みぃぃ…」
僕はその中でも、鈍くさいと言うか
ドジと言うか
むしろそこが愛しく思えて
1匹だけ、子猫の群れから逸れている子猫を
貰うことにした。
「名前は何にするんだ?」
友人に訊かれて
僕は少し悩む。
「うーん…コロコロしてるし、タマの子どもだから、コダマ…」
「安易だなー」
「うん、それ、一番言われたくない。ミケとタマだって安易だろ。」
「俺は結構悩んだぜ?でも一番しっくり来たのが、ミケとタマだった訳で」
「本当かぁ?」
「マジだって」
「まあ、どうでもいいけど。とにかく、コイツはコダマで決定」
「猫飼うための注意点とか、書いておいたから、ちゃんと目を通せよ?」
「おー、ありがとう。一応、調べてはあるけど助かる。」
学校で使っていた数学のテキストくらいの分厚さがある、冊子を渡される。
「こんなに…?」
戸惑うと
「必須!」
圧が強い。
「分かった。ちゃんと読むよ…」
そう言って、早速目を通す。
「今読むのか」
「え、駄目か?」
「まさかお前、なにも準備してない?」
「いや、ある程度は準備してある。トイレとか爪とぎとか。こうやって猫を入れる鞄持ってきてるし」
「そうか」
「ただ、餌がわからないから、その辺を聞こうと…思ったんだが…思った以上に注意点多いのか」
「ペットって簡単に言うけど、生き物を育てるって大変だからな。前にも飼った事があったとしても、個々で違うから、その辺で色々把握しないといけないし。後半は、観察メモだ。」
「観察メモって…」
「色々把握する為には必要だと思うんだよな…」
「まあ、観察メモって言い方はどうかと思うけど、使わせて貰うよ。」
「ただ、コイツ…コダマは、シャイみたいだから、いっぱい気にかけてくれよ。」
「ああ。」


そう言われて、家に連れ帰ってきた瞬間。
何処がシャイだ!と思うくらい
家の中を走り回っていた。

そんな事を、昔撮った、コダマの写真を見ながら思い出す。

今のコダマは、時々家の外を駆け回っている。
外に探索に行って、仕事から帰ってくるタイミングを見計らった様に、前を歩いている時もある。
鍵はかけてある。
ペット用の出入り口から抜け出しているようだ。
「にぁー」
「どうした?」
「にぁーー!」
猫じゃらしを咥えてくる。
「あー…遊べと。分かった」
アルバムを片付け、猫じゃらしを手に持ち
遊ぶ。

シャイだと言われた、この猫は
全くシャイでは無かった。

11/15/2022, 10:36:46 AM