『好きな色』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
─好きな色─
私はね、人の心が色に見えるの。
私はそれが好き。
カラフルで、綺麗で、相手を信じられるから。
本心で褒めてくれる人も居れば、
むしろその逆でお世辞みたいに言ってくる人も居る。
でも私だけがこの色を見れる。私は特別だと思えるの。
今日はね、いつも通り校内を歩いていたの。
何か面白い色無いかな~、って。
そしたらね。出会ってしまったの。
今まで見たことない色を持った彼に。
それから彼を観察していた。
いつも笑っていたの。
楽しそうに。嬉しそうに。
たまに、苦しそうに。
それが作り笑いってことに気づくまで、
時間はそうかからなかった。
楽しそうに、嬉しそうに笑うのは、
全部苦しいのを紛らわす為。
皆にばれないようにする為。
だから彼の持ってる色が、
とても黒く、暗い色に見えたんだね。
赤橙黄緑青藍紫。
「私はねえ、あの藍寄りの青色が好き」と、指を指し君に伝える。
綺麗な色だねと君は言う。
きっと同じ色は見てはいないと思うけど。
私の好きな色と、君の好きな色とは、きっと違うだろうけど。
同じ虹のどこかの色が、お互いに綺麗だと思っている。そのことにふふっとほほが緩む。
好きな色
色は物質と光の技。
好きかどうかは、ヒトの感じ方。
すべての色があるから、すべての色が引き立つ。
なんかそれでいいんじゃないかな。
「好きな色」
あお。
エベレストの空、満月の夜、雪原の月、
南の海、新雪の陰、天青石
いろんなあおが好きです。
今日のテーマ
《好きな色》
「包装紙とリボンのお色はどうされますか?」
「両方とも青系で」
「かしこまりました。それではご用意ができましたらこちらの番号でお呼びしますので暫くお待ち下さい」
「お願いします」
買った品物を店員に託し、サービスカウンターを離れる。
ふと、一緒に品物を選んでくれた妹が心配そうな顔をしているのに気づいて首を傾げた。
「どうかしたか?」
「包装紙とリボン、なんで青系にしたの?」
女性に贈るプレゼントなのだからピンクや赤などの系統のもの、そうでなくても黄色やオレンジなどの色にすべきではないかと言うのだ。
意外に保守的な選択に、俺は大丈夫だと笑って請け合う。
「青は彼女の好きな色だから」
「そうなの? でも服とかはピンク系が多いじゃない」
「自分に合う色を選ぶとどうしてもそっち系になるらしい。青系統のはあまり似合わないんだって」
好きな色が必ずしも自分に似合うとは限らない。
悔しそうな顔でそんなことを話していたのを思い出す。
そして、だから俺の服を選ぶ時には青系統のを選んでしまうのだと。
自分には似合わないけど、好きな人が好きな色を纏ってくれて、一番近くでそれを見られるのが嬉しいのだと。
そう言って、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
かいつまんでその話をしたら、妹は若干引き気味の顔で「それならいいけど」と頷いた。
兄夫婦の惚気話なんて聞きたくもないものを聞かせてしまったかと反省する。
俺だって妹夫婦の惚気話を聞きたいとは思わない。
他人ならまだしも身近な身内のそういう話は反応にも困るものだろう。
「お兄ちゃんでもそんな顔するんだね」
「え?」
「無愛想だし、家族とだってあんまり喋らないし、そういう感じなのはお義姉さんの側だけなのかと思ってたんだけど」
「何だそれ」
妹の言い草にムッとする。
たしかに俺は愛想は悪いかもしれないし、口数もそう多い方ではないかもしれない。
だけど、相手の勢いに流されただけで結婚するほどいい加減じゃない。
つきあい始めるに至ったのが彼女からの告白だったのは事実だけど、2人でしっかり愛を育んで結婚に至ったのだ。
「あ、ごめん。そういう意味じゃなくて。お兄ちゃんがお兄ちゃんなりにお義姉さんのこと大事にしてるのは分かってるってば。それはそれとして、お兄ちゃんはそういうの表に出す人じゃないと思ってたから。てか、お義姉さんの前では見せても、私とか家族の前では絶対そういう顔は見せないだろうなって思ってたから、そういうの表に出すのはお義姉さんの側だけなんだろうなって思ってて」
「ああ、そういうことか」
「そういうこと。まさかお兄ちゃんの貴重なデレを拝める日がこようとは……お義姉さん凄いな」
調子に乗って拝むように手を合わせるのを軽く小突く。
妹は子供の頃に悪戯を咎めた時と同じ顔で笑った。
「もしかしたらさ」
「ん?」
「お義姉さんが青い色が好きなの、お兄ちゃんに似合う色だからなのかもね」
「……」
昔から青い色が好きで、服や小物は青系統が多かった。
子供の頃も、戦隊物などで一番好きなのはブルーで。
おかげで仲間内でも青系は俺の色と認識されてて、何かで色を選ぶ時は無条件で青系のものは俺に割り当てられていた。
彼女が青を好きだというのは単なる偶然かもしれない。
妹が言うのは都合のいいこじつけかもしれない。
冷静な自分が諫めるけど、自惚れたくなる気持ちは収まらなくて。
「そうだったら嬉しいな」
俺は密やかにそう呟くと、微かに顔を綻ばせたのだった。
好きな色。
ピンク、水色、紫。
わりとパステルカラーが好き。
でも時々、大人目の紫に憧れる。
ファッションでよく使う小物は
大体、黒系だけどね(笑)。
子どもの頃は戦隊モノや
女の子たちが戦うアニメを観て
赤色やピンクが好きだったなぁ
それから少し成長すると
クールな青色
好きな人が初めてできた頃は
また、ピンクやオレンジが好きになっていた
それから推しの色
初夏には
緑色が好きになり
夏には海の色
冬は白が好きになり
あぁ
私の世界はこんなにも好きな色で溢れている
『好きな色』より
期待するだけ無駄
って言われるのは何回目かな
オブラートにつつまなくても、はっきりそう言ってくれていいですよ。
包んでもつつまなくても傷つくのは一緒なので。
【好きな色】
誰かが言っていた。
「学校に空だけが見える場所があってさ、
僕のお気に入りの場所なんだ。
朝は「透き通った水色」
昼休みに見ると「澄み切った青」
部活終わりに見ると「はっきりとした紺色」と
「優しい、寂しい橙色」
見る時間帯によって色が違ってすごく綺麗なんだ」
そんなことを言っていた気がする。
空の色が好きなのだろう。
空の色だけで四つほど色があるから
空色=水色なんて言えないな。
私の好きな色はなんだろうか
よく見るもの…空みたいによく見るもの…
木をよく見てる気がする。
桜とか葉っぱとか紅葉とか色んな色があって
好きかも。
だから木=緑色や茶色なんて言えないな。
自然の色はひとつに絞れない。
だってとても美しい色なんだから
―――――――――久しぶりに空でも見てみようかな
好きな色…
みどり色が好き
春の新緑を見ると、本当にパワーをもらえる
心が落ち着く
昔は1番好きな色はピンク色だった
可愛らしいを追求していたからかなぁ
その時々の気持ちで、好きと思う色も違うことがあるし、占いでラッキーカラーを言われたら、その色がやたらと目についてしまうし…
でも色があることで、心がちょっと踊る
今日の服は上下黒だから、明日は色を入れようっと
好きな色
心晴れやかに
側にいるだけで
解きほぐし
ときめかせる
時に
思いがけない色だったり
過去の色でもあり
心揺らす香りのような
まるで霧のような
温度さえ感じさせる
硬直も
息苦しさも
解呪させる
光をうつして
鮮やかに
輝きを放つ
それは
好きという色
「好きな色」
「好きな色」と「あなたがいたから」を書きました。
好きな色
「あなたの好きな色って、ブルーなの?」
キミとショッピング中、仕事で使うネクタイを選んでいると、そう聞かれる。
「うん、そうだよ」
ブルーとホワイトのストライプの物を手に取りながら、頷くと
「やっぱりそうなんだね。よく考えたら、あなたと会うときは、どこかしらにブルーが入ってたな。って思って」
納得したように笑う。
「ブルー、あなたに似合うし、私も好きな色だよ」
キミは別のネクタイを取り、これもいいよね。と選んでくれる。
「ありがとう。ブルーは俺の好きな色なんだけど、それだけじゃないんだ」
キミが選んでくれたネクタイを自分に合わせ、買い物かごに入れる。
「ん?それだけじゃないって?」
不思議そうにするキミに
「俺がブルーを選ぶのは、気が短いから。っていうのもあるんだ」
俺は苦笑する。
「気が短い?」
「そう。少しのことでイライラするんだ。でもね、そんなイライラしてるときに空を見ると、気分が晴れるんだよね。だから、イライラしたときに見て落ち着くように、普段からブルーを取り入れてる」
「なるほどね。そういう色の効果ってあるよね。オレンジを見ると元気が出るみたいな。私も、自分だけじゃなく、周りの人に良い効果があるような色、身に着けようかな」
俺がブルーを選ぶ理由を聞くと、キミは賛同してくれる。
「そういうのもいいね。タイピン、オレンジにしようかな」
「なら私は、ブルーのブレスレットを着けようかな」
二人で笑いながら、ショッピングを楽しむ。俺のことをよく見てくれて、同じような考えでいてくれるキミと、いつかサムシングブルーを身に着けたセレモニーができるといいな。と思うのだった。
あなたがいたから
「お疲れさまです。今日もお仕事ですか?」
仕事の休憩で寄ったカフェ。どうやら俺は、ここで寝ていたらしい。声をかけられ、目が覚めた。
「あれ?キミこそここで何してんの?」
まぶたが重く、半分ほどしか開いていない目でキミをぼんやり見つめると
「買い物に行くので歩いてたら、姿を見つけたので、思わず声をかけちゃいました」
と、声をかけてきた同期の子に微笑まれる。
「でも、寝てるとは思わなくて…。起こしちゃってすみません」
申し訳なさそうに謝られるけど
「いや、いつまでも寝てるわけにはいかないから、起こしてくれて良かった。ありがとね」
起こしてもらわなかったら、いつまでも寝ていたかもと思うとゾッとする。
「まだ戻るまで少し時間あるし、起こしてくれたお礼に何か奢るよ。時間ある?」
前に座るように促し、にこにこ笑いかけると
「ありがとうございます。では遠慮なく」
しゅんとした表情が晴れやかになり、キミは嬉しそうに笑った。
「課が違うと、忙しさも違うんですね」
注文したものが届き、話しながらキミと一緒に食べる。
「そうだねえ、営業は忙しいよ。ちなみに今日は、入ったクレームの謝罪に行って来た」
「え?そうなんですか?それはお疲れさまでした」
驚きつつも、労ってくれる。
「今日は謝罪で許してもらえたから良かったけど、罵倒されて泣いたこともあった。会社、辞めたくなることも多いよ」
「そうなんですね。事務の私でも、辞めたくなることありますよ」
キミは紅茶を一口飲み、話を続ける。
「私、パソコン作業が苦手で。時間がかかる上に、誤字も多くて。家でタイピングの練習はしてるんですけど、なかなか上手く出来なくて、上司に怒られてばっかりです」
と、ため息を吐いたけれど
「でもそれでも、私が仕事を頑張れているのは、あなたのおかげです」
俺に笑顔を向ける。
「え?俺?」
わけがわからず、ぽかんとする俺にキミは頷き
「入社して半年くらい。ずいぶん前のことだから覚えてないかもしれませんが、ミスして怒られて、屋上で落ち込んでたら、あなたが話を聞いてくれて。そのとき、俺も営業が上手くいかなくて怒られてるよ。でもきっと、同期はみんな同じような思いをして頑張ってる。みんなが頑張るなら俺も頑張らなきゃ。って思うんだ。だからキミも、一緒に頑張ろう。って言ってくれたんです。あのとき、そう言ってくれたあなたがいたから、私は今も頑張れてます。ありがとうございます」
頭を下げる。
「…俺の方こそ、ありがとう。実を言うと、クレーム続きで滅入ってたんだ。けど、話を聞いたら、やる気が出てきた」
俺は、残っていたコーヒーを飲み干すと、勢い良く立ち上がる。
「ごめん、俺、先出るわ」
「あ、はい。仕事、頑張ってくださいね」
「ありがとう」
急に動き出した俺を、キミは笑顔で見送ってくれる。俺は、初心を思い出させてくれたことを感謝しながら、社へ戻るのだった。
あなたはいつも白く儚い人だった。
あなたに初めて触れたとき、本当は蒼くて、黒くて深い惑星のようで、私は少し安心した。
その存在感というものは80インチのテレビ。
奥に惹き込まれる私の身体はバッテリー切れ。
黒って、奥行きが見えて不思議な色だ。
何も分からないような、奇妙な感じがして、
あなた、本当は黒色だったのね、と。
ちょっと待ってよ。ああ。
My favorite color
I like blue.
Blue, is a color of sea, which may be a cause I think, seems grandeur.
In addition, blue is a sensitive color. Sometimes blue express love, sometimes sadness.(but, Japanese may not think blue express love because most of them are unfamiliar with Christianity.)
生まれたての無色透明。
成長して色んな感情を知った私は限りなく黒に近づいている。
#好きな色
自分の苗字に
「黒」って文字が入ってるからって理由で
無条件で好きだったかも知れない。
着る服も持ち物も
朝よりも夜の方が好きなのも
小さい頃から変わってないと思う。
音で喩えてたら
研ぎ澄まされた静寂のような
イメージだって前向きとは真逆で…
だけど黒に染まってくこの背景には
沢山の色が綺麗にキラキラと映えて
今日の終わりに優しい気持ちをくれる…
吸い込まれそうな空に
小さく光る星を見ながらの帰り道
ほんの少しだけ
優しい気持ちで笑みがこぼれる。
きっと主役にはなれない運命なんだけどね
やっぱり黒が好き…
- BLACK & Night -
傷を舐め合うような
始まりだったけど
二人の先には
きっと何も無いけど
奇妙であやふやな
関係の二人だけど
あなたがいたから
涙も消えて
あなたがいたから
顔をあげられて
あなたがいたから
またこうして
私
笑えてるよ
「あなたがいたから」
昔から「うちゅうのいろ」が好きだ。
「うちゅうのいろ」というのは、人によってイメージが異なるかもしれない。
真っ黒と答える人もいれば、青いよねと答える人もいるだろう。銀色と答える人もいると思う。
僕は、紺色 ときどき白 という色が「うちゅうのいろ」だと思っている。
ときどき白 というのは、恒星のことだ。
地球からは...よっぽど良い望遠鏡をのぞき込まないと、視界いっぱいの恒星は見られないだろう。
だけど、僕はいつか恒星をいっぱいみてみたい。
道路沿いのフェンスに座って。
宇宙というのは人間なんかにはとても手に負えないもの(ものというのも何だかアレだけど)である。
道路沿いのフェンス......。これは人間が作り出したものだ。手に負えないわけが無い。とても人工的だ。
人間が手に負えないものと、人間がつくりだしたもの。その組み合わせってなんだかロマンを感じるんだ。
エモいよね。
子供っぽい?............別にいいでしょ。
最近自意識過剰なんだから、そういう言葉はすぐ傷つくんだって...
もし宇宙のどこかに、自意識過剰な方がいらっしゃったら、こういう悩みを共有してみたいな。なーんて。
【好きな色】
「お好きな色って、ありますか?」
「え、いきなり色の質問……? ええと、ぼくは緑ですねぇ。植物の緑に囲まれると、癒されます。こう見えて、アウトドア派なんですよ」
「お好きな色って、ありますか?」
「紫かな。紫の似合う美しい女性に、つい目を奪われてしまうんですよ。あなたのような」
「お好きな色って、ありますか?」
「白。どんな色にも染まる、あるいはどんな色にも染まらない。そういう柔軟性と強さを兼ね備えているところがいいよね」
「お好きな色って、ありますか?」
「#d3d3d3、これ一択ですよ。淡い灰色を表す色コードなんですけどね、目に優しくてボクのエディタの背景ぜんぶこれっていうか、デュフ、この色に設定できないエディタはぜんぶゴミと思ってるんですけどね(以下略)」
「……あの女性、前回もいましたよね。また全員に好きな色を尋ねて回ってますよ」
「こうなると婚活パーティー荒らしだね。彼女が来るとあの容姿で人気一強になるから、ほかの女性陣が気の毒だよ」
ホールスタッフと司会の会話が、僕の耳に入ってくる。
「前回マッチングしたはずなのに、うまくいかなかったんでしょうか」
「前回は渋々選んだ感じだったからなぁ。きっと、彼女にとって正解の色があるんだろうね。それを答える人じゃないと嫌、みたいな……」
「条件が緩いんだか厳しいんだか……。今日こそ、彼女のハートを射止められる男性が見つかるといいですね」
「お好きな色って、ありますか?」
「えっ、好きな色ですか。赤、かな……?」
その答えを聞いた瞬間、彼女の目の色が変わった。
「どういった赤がお好きですか?」
「どういった赤……? えーと、強くて、情熱的な赤が好きですね。あと、夕焼けの赤もいいですよね。そうそう、絶景夕焼けスポットがあるので、こんど一緒に見に行きませんか?」
「……いえ、けっこうです」
彼女はとても残念そうに首を振った。
そしてついに、僕の前に彼女がやってきた。
「お好きな色って、ありますか?」
「ダントツ赤ですね」
僕が答えると、ふたたび彼女の目の色が変わった。文字通り、黒から、赤へ。ほんの一瞬の出来事だったけれど。
「どういった赤がお好きですか?」
「まるで血のような赤です。深紅というか、濃いめで、色気のある赤が好きですね」
後半は、ちらりと見えた彼女の目の色を、そのまま答えた。
いきなりがしっと両手を握られた。白魚のような彼女の両手の中に、僕の両手がある。思わず顔がかっと熱くなる。
「私もです! 私もそういう赤が好きなんです! あなたのようなかたを探していました! マッチングには、ぜひ私の番号を書いてください!」
「え、あ、はい……?」
まさかこんなにも簡単に、彼女に気に入ってもらえるなんて。拍子抜けだ。
ホール内のスタッフ全員、いや、参加者までもが、僕たちを見てざわめいている。
彼女は入場時から、男性陣の注目の的だった。紫色のすらりとしたワンピースで妖艶な肢体を惜しげもなく晒し、ちょっとした仕草にまで洗練された美しさを見せる。そういうところが魅力的というか、蠱惑的すぎる。そしてなにより、顔がいい。
顔に醜い傷痕がある僕では、あまりにも月とスッポン。だけど、彼女は僕の傷を見て引かなかったし、「その傷は?」なんて尋ねもしなかった。醜い容姿も、危険の多い警察官という職業も、どうでもいいらしい。スタッフたちの会話通り、好きな色の一致、それだけが、彼女をときめかせる理想の条件だったようだ。
「ぼ、僕でよろしければ……」
「もちろん! あなたがいいんです!」
彼女と過ごすこれからの時間を考えて、僕の心臓はどくんと大きく波打った。握りしめられた両手は、緊張のせいで冷たくなっていた。
「お時間あれば、どこかに寄りませんか?」
無事マッチングを果たし、僕と彼女は二人で会場を出た。あからさまにほっとした顔のスタッフが、祝福の言葉とともに見送ってくれた。
「僕としては、人目につきにくい……いえ、あまり騒がしくなくて、落ち着いたところがいいな、と思ってるんですが」
近くにいい場所がないかと、スマホの地図アプリを開く。こんなことなら、いい感じのスポットを事前にチェックしておけばよかった。
「それなら、ホテルに行きませんか?」
「……は?」
耳元で囁かれた言葉に、スマホを取り落としかける。
そ、それはもちろん、望むところではありますけど……!
さては美人局か、裏に誰かいるのか、という思考が一瞬脳裏をかすめる。だが、美人局をする女性がわざわざ〝好きな色〟という条件でマッチング相手を探すだろうか。普通は、もっと男性を引っ掛けやすい条件を出すはずだ。「赤」が好きな男性はけっこういるけど、それは戦隊モノの主人公の影響で、きっぱりした情熱的な赤をイメージしての「好き」だ。わざわざ「血のような赤が好き」と言い出す男性なんて、中学生男子ぐらいだろう。あとは、吸血鬼。
「えっと……あ、いや……そりゃ、僕はかまいませんけどね? いいんですか?」
「ええ、もちろん」
彼女はにっこりと胡散臭い笑顔を作って、僕の腕に細腕を絡ませた。そしてその十分後、僕たちはラブホテルのベッドの前に立っていた。
「ま、まずは……シャワーを……」
こういった場に慣れていない僕は、しどろもどろで形式的に促す。しかし、彼女はすがるような妖艶な目つきで、僕の首に腕を回してきた。
「わかるでしょ? いますぐあなたが欲しいの」
彼女が寄りかかってくる力のままに、ベッドへと押し倒される。
「あなたの、血が」
彼女の目の色が変わった瞬間を見逃さなかった。
首に突き刺さりそうだった牙を、手の甲で弾く。正確には、手の甲で彼女の顎を撃ち上げ、同時にもう片方の掌底で彼女の鳩尾を押しのけて、力任せに引き剥がした。
「ど、どうして……」
僕が身を起こすと、彼女は顎と鳩尾を押さえ、ひどく傷ついた顔でよろめいていた。
「あなたも吸血鬼でしょ? 私、あなたの眷属になると言っているのよ? 前の主はとっくの昔に死んだわ。主が死ぬと眷属も弱るって知ってるでしょ? 私、同族の血を取り込まないと、もうすぐ死んじゃうのよ?」
紅い目を潤ませて懇願してくる。くらり、と理性が傾きそうになる。
「……吸血鬼って、みなさんすごく綺麗じゃないですか。で、僕の顔を見てくださいよ。吸血鬼に見えます? 治癒力の高い吸血鬼が、顔に傷痕を残します?」
「変装じゃないの? 慎重な仲間なら、そうやって吸血鬼じゃないように見せかけるでしょ」
「あいにく、僕は純粋なる人間で、この傷は本物です」
僕はベッドから離れ、彼女と間合いをとった。
「あなたが同族の匂いも銀の匂いもわからないぐらい弱ってることはわかりました。でも、どんな哀れな吸血鬼であろうと、これは僕の仕事なので」
スーツを開き、生地の裏から手のひらサイズの十字架を抜き取る。十字架の先端は尖り、杭になっている。素材はもちろん銀だ。匂いで吸血鬼にバレないようコーティングされてるけど、敏感な吸血鬼にはすぐ気づかれてしまう。
「……あっ、警察官って……そういうこと……」
そう、吸血鬼退治専門の下っ端警察官だ。今日は非番で、ガチで婚活パーティーに参加してたんだけどな。見つけちゃったら、おびき寄せて退治するしかない。
「というか、なんで婚活パーティーに参加してたんです? そんなところに男性吸血鬼がいるわけないでしょう」
「えっ、そ、そうなの? 男性の吸血鬼って、いつも女性を探してるから、こういうところにいるかと思って……。マッチングアプリとかと並行して探してたのに……」
彼女は恥ずかしそうに頬を染め、おろおろと目線を外した。
まさか、その蠱惑的な見た目で、中身は天然なのか? ギャップがすぎる。吸血鬼の好きな色は血の赤、と思い込んでる時点で、彼女のピュアさは感じていたけど。僕の中の理性がくらくらと揺れる。
彼女の態度に翻弄されて、僕に隙が生まれた。
「ふふっ、油断したわね!」
吸血鬼特有の長い爪が鼻先を掠める。戦闘慣れした身体が無意識にのけ反ってなかったら、また顔に傷を作られるところだった。
のけ反りざま、背後に両手を突いてバク転の勢いで彼女を蹴り飛ばす。
こうなると思って、いちばん広い部屋を選んでおいてよかった。
彼女の軽い体は吹っ飛んで、壁にぶつかった。しかし、さすがは吸血鬼。ダメージなどなかったかのようにすぐさま体勢を立て直し、また飛びかかってくる。僕はまだ床に手と膝をついたまま、立ち上がりもしていないのに。
「あんたが人間ならただの餌よ! 大人しく吸われてちょうだい!」
「えっ、やだよ」
思わず素の声が出た。
同時に、下からの回し蹴りで彼女の足を払う。立ち上がっていなかったのは、彼女の次の攻撃を誘うための罠だ。僕に被さるように転倒しかけた彼女の顎を、十字架を握り締めたアッパーでぶち上げる。
「……くっ」
彼女は頭を押さえて、膝をついた。吸血鬼にも脳震盪はあるらしい。一瞬だったけれど。
僕がゆっくり立ち上がると、彼女もすかさず立ち上がり、さっと間合いをとった。一筋縄ではいかないと察したのだろう。それはそう、ぱっと見は細身で小柄な僕だって、血反吐はきながら格闘技の訓練を受けた、プロの警察官なんだから。
「前回のパーティーでマッチングした人も、アプリでマッチングした人も、そうやって吸っちゃったんですか?」
僕が一歩踏み出すと、彼女は一歩下がった。
「当然よ、干からびるまで吸い尽くしてやったわ!」
「うわ、ここ最近の男性の失踪事件の犯人、見つけちゃったかも……」
彼女の家を捜索したら、何体かミイラが見つかるかもしれない。あとで婚活パーティーの主催から彼女の情報を聞き出さなくちゃ。
僕がもう一歩踏み出すと、彼女はさらに一歩下がった。
「ちなみに、これまで殺した人数は?」
さらに一歩。
「数え切れるわけないでしょ」
さらに一歩。彼女は壁際に追い詰められた。それ以上近づくなと言わんばかりに、長い爪を構える。
「それを聞けてよかった、危うくあなたに求婚するところでした」
「え、きゅうこ――」
彼女が目を泳がせた一瞬を見逃さなかった。僕は縮地で彼女の懐に飛び込んだ。身を低くして爪を掻い潜りつつ、体当たりの勢いで、まっすぐに杭を打ち込む。
吸血鬼の心臓に。
とっさに僕の背へ突き立てようとしていた爪が、両腕とともに、だらりと落ちる。爪の先端は僕のスーツを引き裂いていた。
「ちなみに、僕が本当に好きな色は、銀です。職業柄、ね」
杭の先が心臓を仕留める手応えは、何度経験しても慣れるものじゃない。だけどこの杭がなければ、吸血鬼と対等に戦うことはできない。僕の命綱だ。好き、というよりは、依存してるのかもしれない。
「でも、あなたが着ていた紫色も、けっこう……」
杭を握りしめた両手を包むように、灰がさらさらと崩れていく。紫色のワンピースごと。
相手が吸血鬼じゃなかったら、と何度思ったことか。何度、彼らの美貌に惑わされたことか。そして、何度裏切られたことか。
吸血鬼が人間を餌として見ている限り、僕たちが相容れることはないのに。
彼女がすべて灰になったのを確認し、提携先の清掃業者に電話をかけた。いつも通り、灰の片付けを依頼する。
洗面所に行き、手に残った灰を洗い落とす。目を上げると、醜い傷痕が鏡に映る。
「……あーあー……へこむなぁ……」
洗面台の下にへなへなとしゃがみ込む。
清掃の人を待つ間に報告書作らなきゃ。主任にはまたからかわれるんだろうな。「非番でも吸血鬼をほっとけないなんて、君はほんっと真面目ちゃんだねぇ」って。
だって、彼らはあまりにも美しすぎる。ほうっておけなくなるほど。
「非番のときってスーツ代申請できたっけ……? 次の婚活パーティーも、申し込まなくちゃな……」
もしまた弱った吸血鬼が潜り込んでいて、その美しい唇と蠱惑的な瞳で好きな色を尋ねてきても、二度と「血のような赤」なんて答えない。僕は心に誓った。
好きな色は何ですか?
と、何の気なしに訊いてみた。あなたが好むものはいくつかあったけれど、特定のそれを感じたことはなかったから興味本位。それから、今後の贈り物の参考にしようと思っての言葉だった。
しかし、あなたはギョッとしてから目を泳がせる。それほど言い難いものかしらと促してみても、「うぅー」だとか「あー」と濁そうとするばかり。
ただ単に色の好みを訊きたかったわたくしは、内心首を傾げながらしかし逃がさなかった。言葉を待っていると暗に示す。
するとやがて、あなたは諦めたように口を開いた。その声色はひどく弱弱しく、奥歯を噛むような表情を。
「…あのね、絶対に引かないでね」
「引くほどひどい色なんてありませんでしょう?」
「……例えば、茶色って言うんじゃなくて、人工的な廃棄物で汚れた海の色が好きって言われたらなんかいやでしょ?」
「た、たしかに驚きはしますけれど。でも、その色が好きなのでしょう? それなら、それでいいじゃあないですか」
「……ちがうの。結果的に示された色じゃなくて、色を示す経緯に問題があるって言いたいの」
「はあ」
分かるような分からないような、…やはりわたくしには想像し難い。そう伝えればあなたはくしゃりと顔を歪めて、もう一度「引かないでよ」と。
連れられたのは脱衣所。
場所柄、清潔な同系色でまとめたそこ。大き目の白い風呂桶が蛇口から流れる透明な水を受け止めてゆく。
半分以上溜まった円状の水。
念を押すようにわたくしを見やったあなたが、「ここ、手を入れて」と。訳も分からず手首までを透明色に沈めた。波立ってゆらゆらと揺れる水をじっと見下ろす。
特に変化も変哲もない。
いったい何をさせたいのか。
疑問をそのまま口にすれば、やはりあなたの目は泳ぐ。言葉を探して口を開け閉めしてから、ようやく観念したよう。
ぽつりと小さな声で告げてきた。
「…あのね、水とかお湯とか、透明な液体に沈んで揺らぐきみの肌色がね……好きなの」
「は」
首の上がじわじわと熱くなってゆく。
今度はわたくしが目を泳がせる番だった。
「だから引かないでって言った!」
「ち、ちが……えっと……」
「めっちゃ率直に言うと! お風呂に入ってるきみの色が反射するお湯の中に沈んで、湯気で隠れながらチラチラ見えるきみの肌の色が好きなのッ‼」
「へ、変態ですか⁉」
「そうだよッッ‼」
くわっ、と食い気味の返事をされてわたくしが面食らう始末。まさか、まさかそんな色を示されるとは思っていなくて。
肌色が好きってことですか、と訊けば。
肌色なんて無限にある。きみの肌の色が好きなの、唯一無二! と半ばキレ気味に返されてしまう。
「わ、わたくし…、プレゼントの、参考に、したくて……」
「そ、そういうことは早く言って! ぼく、ガラスが好き。色のついてない透明なやつが好き!」
「な、なんか、嫌です…」
「ゔぁあっ」
べそかいたあなたが鳴いた。
#好きな色