『好きな本』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
好きな本
本当の私は内向的
自虐的
偏愛的
そんな私をぐっとこらえて
世間様からなんとか浮かないように
平凡的
平和的
平均的な私を目指す
好きな本はなんですか?
私はミステリーとか
災害や怪物に立ち向かう話も好き
誰かを純粋に愛して死ぬ物語も好き
自分嫌いの主人公が
自分を超える物語が好き
さあ、あなたの私への見方は変わりましたか?
もしまだ
私をその優しい目で見てくれるなら
私も知りたい
あなたの本当に好きな本
あなたの世界を私も知りたい
_好きな本
好きな人に教えて貰った本。
初めて会ったときの優しさがずっと心に残っていて、いつの間にか目で追いかけるようになっていた。
勇気を出して自分から話しかけたあの日、お話できたことが嬉しくて沢山質問しちゃったよ。
その時に教えてくれた本。
同じ本好きで同じ図書委員なんて、私ついてるよね。
そんな些細なことでもすごく舞い上がっちゃった。
教えてくれた本、すぐ買って読んだよ。
さすが、すごく面白かった。
まさかここであの場面と繋がってくるとは。
今まで読んだ本の中でいちばん興奮したよ。
素敵な本を教えてくれてありがとう。
わたし、ますます本が好きになっちゃった。
片想いの恋だけど、絶対振り向かせてみせるよ。
好きな本を手に取った。やることがなかった。本を読む気力も起きなかった。本を手にした瞬間腕がガクンと下に落ちてかろうじて本が手についているような感覚だった。床に座り込み伝わる静けさと冷たさ。君が居ないだけでこんなにもこの図書館が寒く感じると思っていなかった。立ち上がることもできず下を見ていたら急に涙が溢れた。止まらないただ涙が流れるだけ感情の変化は何もなかった。好きな本が色褪せて見えるのはこの本を好きだと言っていた君が死んだからだ。
本を見て回るときの
あのワクワク感。
本を手に取るときの
あの緊張感。
新しい世界へ踏み込むときの
あの高揚感。
そして、
本を読み終わったときの
あの達成感や余韻。
この一つ一つの感情や感覚が
たまらなく好きだ。
新しい本に出会う度、
新しい世界を見て回れる。
読む旅をしているような、
そんな楽しさが心をあたためる。
あぁ、やっぱり
私は本が好きだ。
紙上で活字が踊る
頁を繰る度に
脳が潜水する
深く深く
感情の海へ
―好きな本
本棚に並べてある一冊一冊には
わたしが忘れられない恋をした主人公達が
悠然と佇んでいる。
#好きな本
「好きな本」から連想する言葉たち
誰もいない図書室の窓際
君の気持ちをなぞりたくて
下から二段目の一番端の絵本
貸し出し記録の名前
色褪せた表紙
私の思い出を貴方に贈る
貴方が視た世界を覗く
夢に飛び込む
記憶は色褪せない
映画版もとても好き
アヒルと鴨のコインロッカー
いまだに読む
あくまで暫定、でありますように
※好きな本
ベリアン×主
~夢シチュ~
あぁ...この人とずっと一緒に居たい。
いつの日からか、そう思うようになった。
でもこれを恋と呼ぶにはまだ早い。
執事と主の関係...いつか天使狩りをしなくてもいい日が来れば、きっと叶う恋。ベリアンが優しすぎるから...恋に落ちてしまうんだよ...。
デビルズの執事達は皆優しい、頼もしい。
でも、辛い時、楽しいことがあった時、いつも話を聞いてくれるのは、ベリアンだった。
彼の優しい表情、振る舞いを見る度に、私の心はズキズキと疼いていた。
「お帰りなさいませ、主様。」
「ただいま、ベリアン。」
「本日もお仕事お疲れ様でした。私の前ではそのままの
主様でいてもらっても大丈夫ですよ。」
屋敷に帰ると、ベリアンが出迎えてくれた。
会って早々優しく話しかけられると直視できない...
ドキドキする心臓を抑えつつ、私は話しかけた。
「帰る途中友達からお菓子貰ったんだけどさ、
一緒に食べない?」
マドレーヌということを知ってとても喜んでいる、
あぁ...可愛いなぁ...私はベリアンが注いでくれた紅茶を手に
ゆっくりと口に運んだ。
「今日も一段と美味しいね~」
「ありがとうございます。」
...ふと部屋にあるドレッサーの鏡を見た。
こんな私は...ベリアンに相応しくない気が...
と改めて思った。
やっぱり、この恋は叶わない? 嫌になって私は俯いた。
「おや?どうなさったのですか?」と聞いてくる。
何でもないよぉなどと適当な言い訳をつけ、
笑って誤魔化す。
「本当でしょうか?何かあったのでしたらお話を...」
ベリアンは心配をしつつ、私の隣に座った。
腰あたりを摩ってくれる...
「嫌なことでもありましたか?」
あのひとと
初めてのデートで
書店に寄った時に
「好きな本があれば
プレゼントするよ」
そう言われて選んだのが
文庫本サイズの
『ふるさと詩集』
数日後
「あの詩集 僕も買ったよ」と
嬉しい報告がありました
✢
『ふるさと詩集』日本図書センター
室生犀星から石川啄木まで
47名の作詩が収められています
# 好きな本 (176)
【好きな本】
高校へ入学してから、いつも何となく眼を止めてしまう男子生徒が居る。
けれど1年間は、その人と話をする機会もなく過ぎていった。
今思えば、気になる割にはそれ程熱心に名前やクラスを調べてみようともしていなかった気がする。名前もクラスも知らない人……上履きの色で1級上だという事だけは後で知った。
全学年に名の知れているような、例えば生徒会役員であるとか、部活動などで良い成績を残しているような、目立つタイプの人ではない。1年経っても名前を知らなかった事から考えても明らかだ。
そして有名か否かという意味において、所謂イケメンでもない。
なのに……何故か私は大勢の生徒の中からすぐに彼を探しあてる事が出来た。
移動教室で、数人のクラスメイトと何処となくダルそうに廊下を歩く姿や、単語帳片手に下校する姿。
私の事など眼に入ってもいない様子に、安堵のような少し寂しいような、不思議な感情が私の中で渦巻いていた。
ただ擦れ違うだけの私と先輩が、初めて言葉を交わしたのは図書室。
2年生に進級した私は、図書委員になった。正直な所押し付けられた形なのだが、特に部活動に所属していないのもあって、それなりに委員の仕事をこなしている。
その日も貸し出し当番で私は図書室に居たが、たまたま自分1人しか居なかった。
返却された本を棚へ戻す作業を始めると、しばらくしてカウンターの方から声がした気がして私は手を止め耳を澄ます。
「図書委員ー! ……チッ、誰も居ねぇのかよ」
溜め息混じりの、かなり不機嫌そうな声が響いた。
「あっ、ハイ! 今行きます」
いつの間に人が来ていたのだろう。慌てて戻ってみると――
「お待たせしまし……た」
左手に4冊本を抱えた男子生徒を見た瞬間、私は身動きを取る事が出来なかった。
あの先輩だ。
固まっていた私を訝し気に見詰めた先輩は、微かに眉を寄せる。
「何だよ? 俺急いでんだけど」
「あ、いえ! ……カードへ記入をお願いします。袋は使いますか?」
「要らない」
記入しながら、先輩はこちらに眼も向けずに答える。
待つ間、私は一番上に乗っていた深緑色の革表紙の本を見ていた。タイトルは――
(あ、この本……)
「返却は、来週の木曜日です」
「何で? 今日水曜だろ」
「来週は祝日なので」
「あー、そうだったか」
どうも。
そう言って、先輩は図書室を後にした。
ただ、それだけの会話だった。そして私はその時初めて、貸し出しカードで先輩の名前を知った。
先輩が去った後、私は再び返却本を棚へ戻す作業を開始する。
そしてついでに先輩が借りて行った本の著者の他作品も調べてみた。図書カードをチェックすると、やはり先輩は他の作品も全て読破している。
ほとんど無名の作家だけれど、実はずっと好きだった。
自分の好きな本を先輩も読んでいたという事実は、自分だけが知っている秘密のようで少し嬉しい気がした。
けれど何故、私はこんなにも先輩が気になるのだろう。
恋……いわゆる一目惚れの類だろうかと、何度か自分の心に問い掛けてみた事もあった。でも今まで私が経験してきた、例えば相手と言葉や視線を交わしただけで一喜一憂してしまう、あの特有の浮き足立つような気持ちを先輩に対して感じた事はなく、少なくとも私の知り得る恋愛感情――そのどれにも当て嵌まらない気がする。
だから自分でも良く判らない先輩へのこの感情を、今のところ私の中では恋と定義付けしていない。
(恋だと思えた方が取るべき行動が見える分、余程判り易くて気が楽なのに)
あれから8日経った。
私は自分の当番でない日も放課後の図書室を訪れては、先輩の姿を探した。
ここに居ればまた話せるかも知れない――そんな期待と焦燥を繰り返し、結局私はあの本を久々に読み返してしまった。
けれど何故か、以前に読んだ時よりも一語一語に心が騒めく。文章の中に先輩の気配さえ感じるような気がした。
その時、開けていた窓から急に強い風が吹き込んできた。机に広げたまま、半分以上手付かずだった課題のプリントが3枚、ドアの方まで飛ばされてしまった。
取りに行こうと立ち上がった私は、ドアの方に人の気配を感じて、視線を向ける。
――先輩。
「プリント、アンタの?」
先輩はゆっくりとしゃがんで、自分の方へ落ちてきたプリントを2枚、拾い上げる。私は残りの1枚を拾ってから、先輩に礼を言ってプリントを受け取った。
「有難うございます」
「別に。邪魔だっただけだ」
ふい、と視線を外しそう短く答えると、先輩は開いている窓を閉める為に私の座っていた席の方へ歩み寄る。そして机の上の本に気付いた。
「この表紙――ああ、やっぱり」
見掛ける度に不機嫌そうな表情ばかり、いざ会話をしてみれば何処となくぶっきらぼうで幼い印象。
そんな先輩が穏やかに口許だけの笑みを浮かべ、それでいてどこか虚ろで寂しげな眼差しで本の表紙を軽く撫でた。
それを見た途端、何故か酷く胸が痛くなった。
「……好きなんです」
「あ?」
思わず零れ出た私の言葉に驚いた先輩は、我に返ったように顔を上げた。
「好きなんです。その本」
どうしてそんな事を言ってしまったのか、私自身よく判らない。
案の定、先輩は眼を見開いてきょとんとしていた。
「……あー、本な。それは同感だけどよ。紛らわしい言い方するな」
「紛らわしい?」
「人との会話において、主語は大事だって話だ」
勘違いするとこだったじゃねぇか、と先輩はまた普段の不機嫌そうな表情に戻っている。
「あの、急に変な事言って済みません」
「別に変だとか思ってねえよ。謝られると逆に恥ずかしいだろうが」
では一体何と答えれば良かったのか。
(結構面倒臭い人……?)
先輩は、相手の話を1度は反論してみるタイプなのかも知れない。
良くも悪くも、想像していた先輩像とはずいぶん印象が違うなと、勝手にも思ってしまった。
「ところで、今チラッと見えたがそのプリント、問4の答え間違ってるぜ……アンタ、本なんて読んでる場合じゃねえな?」
ごもっとも過ぎる発言にこちらが顔を引きつらせると、先輩は指でコツコツと机の上の課題プリントを叩いて意地悪くニヤリと笑う。
「まあ、余計なお世話ってやつか」
「いえ。集中してなかったのは確かですから」
「……アンタ、『真面目過ぎ』って人から言われるだろ」
呆れと苛立ちの混在した、微妙な表情と口調。
私はどうもさっきから、先輩の予想する答えとは少しズレた反応を示すらしい。
「『冗談通じなそう』とか『下ネタ駄目そう』とは言われた事あります。きっと同じような意味合いじゃないでしょうか」
「なるほどな。で、どうなんだよ実際」
「は?」
「下ネタ関連、イケる訳?」
「別に平気です。でも自分から話を振る事はないです」
普通に、質問の内容だけを答えたつもりだった。だが先輩は私の解答に声を噛み殺し、肩を震わせながら笑い出した。
「確かに冗談通じねえな。何馬鹿正直に答えてんだ、流すとこだろ」
そう言ってひとしきり笑った後。
初めてその眼が私を捉え、見詰めた。
「アンタ、この間の図書委員だよな?」
先輩が私の顔を覚えていた事に、まず驚いた。そして今、何故か私に興味を抱いたのだ。
「はい」
「当番、水曜だったな? 気が向いたらまた来る。良い退屈凌ぎ見付けた」
流れからすると『良い退屈凌ぎ』とは、私の事なのだろう。
(そうか。不機嫌じゃなくて、あれは退屈の表情だったのか)
「先輩は……退屈なんですか?」
独り言のような私の呟きに、先輩は僅かに眉をひそめたけれど、すぐにまたあの意地悪な笑みを浮かべる。
「さあ、どうだろうな」
それ以上踏み込むな、そう言われたような気がした。
先輩と初めて話をしたあの日から約半年。
『気が向いたら』なんて言っていた先輩は、何だかんだほぼ毎週水曜日の放課後に図書室に来て、カウンター越しに私とぽつぽつ他愛ない話をしていく――そんな関係が続いていた。
かと言って、私と先輩の仲が進展する事もなかった。お互いそんな展開は望んでいなかったし、意識するには互いの事を知らな過ぎたのだ。
図書室以外では校内で会っても全く会話のない、先輩後輩のままだった。
そしてあっという間に秋は終わり冬が来て、受験が大詰めの先輩と会わない水曜日が続き春が来て――
先輩と話をするのは、今日で最後。
だけど先輩にとって水曜日の図書室は、元々『退屈凌ぎ』だ。自由登校に入った3年生が、わざわざ雑談をしに登校するなんて事はないだろう。
挨拶くらい出来れば、とは思うものの、来ないなら来ないでそれは仕方ない。
諦め半分で私は図書室のドアを開いた。
「――遅い。授業、とっくに終わってる時間だろうが」
「先輩!?」
不貞腐れた声音とは裏腹に、先輩は何処かか懐かしいものを見るように私を見詰めた。
「俺の退屈凌ぎに半年近くも付き合った物好きな奴に、ご褒美だ」
先輩はスクールバッグの中から、本を取り出した。見覚えのある、深緑色の革の表紙。
「持ってんだろうけど、まぁ記念みたいなモンだから取っとけ」
そう言って、私達がこうして話をする切っ掛けになったその本を、私に手渡した。
「有難うございます」
「もう会う事もないだろうしな」
「そうですか? 私、きっとまた何処かで会える気がします」
「へえ。もしそんな日が来たとしても、俺はアンタの事なんて忘れてるだろうな。……じゃあ」
「お元気で」
「アンタも」
私が図書室に来てから先輩が出て行くまで、時間にしてほんの2、3分だっただろう。
1人残された私は、先輩に貰った本に視線を落とし溜め息を吐く。
「呆気ないな」
(あれ……?)
本の表紙が滲む。
急激に胸の奥から膨れ上がってきた寂しさに突き動かされて……いつの間にか涙が頬を伝い落ちていた。
色褪せた背を引く 重さ 手に受けて
擦り切れた角 古く愛おし
#短歌 #書く習慣 20230615「好きな本」
「なんか好きな本ってある?」
隣の席の彼女が聞いた。
僕は一寸考えて、答えた。
「あー...教科書かな」
「なんか意外。なんで?」
なんでかって、それは、
「それはー...」
その時、授業終わりのチャイムがなった。
僕が教科書を好きな理由。それは、
授業中はあんなふうに君と二人で話せるからだよ。
【好きな本】
リビングの机の上に置かれた二冊の本。どちらから読もうかと迷い、キッチンでコーヒーを淹れている君へと向けて声を張り上げた。
「ねえ、どっちが面白かった?」
片方は著名な賞を取った感動作と話題のヒューマン系小説、もう片方は無名の作家の処女作となる歴史ミステリー。系統が違いすぎて、判断が難しい。と、ちょうどコーヒーを淹れ終わったところだったらしい君が、マグカップを持ってリビングへと戻ってきた。
「受賞作のほうは、まあ可もなく不可もなく。僕は歴史ミステリーのほうが面白かったかな、人物描写が巧みで」
「そっか、ありがとう」
君の評価を聞いてすぐに、ヒューマン系小説へと手を伸ばす。君の眉が少しだけ訝しむように細められた。
「え? 歴史ミステリーのほうがオススメだけど?」
「うん。私、楽しみは後に取っておく派だから」
軽やかに頷けば、君は軽く頬をかく。いささか遠い目をしながら、私の隣に腰を下ろした。
「あー、そういえば君はそうだっけ」
好物は後に回したい私と、好きなものから手をつける君。食の好みも私は甘党で君は辛党。洋服センスすら、モノトーン好きな私と明るめの服装を好む君とじゃ全く噛み合わない。何もかもが正反対な私たちの唯一の共通点が、本の好みだった。
読んでいる本が一緒で、好きな作家も一緒だった。それが、君と私が話すようになったキッカケ。他の全てが真逆でも、その一点が同じなだけで、君の隣はこの世の何処よりも居心地が良いんだ。
君の飲むコーヒーの香りを感じながら、本のページをぱらりとめくる。どんな高級レストランに行くよりも贅沢な、日曜日の午後の過ごし方だった。
好きな本
読書よりも、書く方が好きな人生を歩んでいる。
自宅に棚はあっても、本は収納されていない。棚にたくさんの背が並んでいても、そこにプリントされるタイトルはどれも、ボードゲームのものだ。いや、それだけではなかった。映画のタイトルも並んでいる。
趣味の執筆。頭に浮かぶ、自分だけの愉悦をしたためるために、ローテーブルにはパソコンが一台。本を見つけられるのは、そんなパソコンの周辺に限られる。読書のためというよりも、資料の名目。けれども、まだ四半世紀をわずかに過ぎたばかりの人生で見つけた、自分だけのお気に入りは、確かにそこにあった。
マンガはあまり好きじゃない。でも、絵が上手くなりたいと考えたことは何度もある。勉強はかなり苦手だ。でも、頭を良くしたいと遅れを取り戻そうとしたことは数多い。ゴシップには興味がわかない。でも、記者の仕事に就いてみようかと考えあぐねたことはある。
そんな自分の手元には、やはり、マンガも、参考書も、雑誌も、存在しない。あるのは主に、小説本。ジャンルはミステリに傾倒している。
世の中には数えきれないほどの本がある。
廃れていったって、今なお、消えることはない。
下手な鉄砲も数を撃てば当たるように、読み尽くせないほど存在する本に、あてどなく手を出していけば、誰だって、好きな本に巡り会えることだろう。特に自分などは、好きなジャンルが決まっている分、どれだけ読む数が少なくても、当たりを得ることは多くある。
ミニマリストほどではないけれど、所持品を増やすのはあまり好きな方ではない。本に対しても、その気持ちは同じだ。一方で、収集癖な所もあって、お気に入りだけは、いつまでも、手元に残したくなる性分でもある。ローテーブルに置かれた、一台のパソコン。周辺に並ぶ本の群れのほとんどは、実は、そんなお気に入りたちだったりする。
それでも。そんな中から、たった一冊の好きな本を選べと言われたら、僕はなにを取るだろう。考える必要もない。その本に初めて触れた瞬間から、これだけが、この先で出会うどんな本よりも、特別で、大好きであると分かっていたから。
僕は趣味で物語を紡ぐ。
作家になろうと思ったことは、恥ずかしながら、やっぱりあるのだけれど、なれると思ったことは一度としてない。だから僕は、夢をお金で買った。
必死に紡いで、自分のためだけに、自分の好きなものを多く込めた、そんな物語。依頼をかけた印刷所から送られてきた、たった一冊の夢。喜びと虚しさが同居する気持ちの奥底でも、手にした一冊は、なによりも特別だ。
「好きな本」
古い本が好きである。
古書でなくとも、売れ残りの本でも構わない。
淡い黄土色に変色した紙の匂い。
急いで読み始めた為に舞い上がる埃は夜灯にキラキラ光り舞う。
それを楽しみつつ物語へと没頭する。
古い物語はそれを知らない者に新しい世界を開いてくれる。
新しい本が好きである。
真っ白な紙に印刷されたインクの匂い。
ページを捲る度に、新雪の原に足跡をつけるような子供じみた喜びを覚える。
そんな幸せに浸りながらゆっくりと紐解く物語は今こうして在れる幸せをも運んでくれる。
好きなタイトルは幾つもあるけれど、やはり紙の本が良い。
読書は文字に限らず、指先で、香りでするものだと思っている。
あまりにもそれらが心地よいので、本を舐めたことさえあるのは内緒の話である。
好きな本を聞かれると
いつも決まって答える名前がある
それは初めて君が勧めてくれたもので
会話のきっかけになったものだ
今まで読んだこともないし
そのジャンルも初めてで
今も読むのはこれだけ
内容を暗唱できるほど読み込んだのに
君の心は読み取れない
《好きな本》
#48
『好きな本』
からすのパンやさん
ぐるんぱのようちえん
ぐりとぐら
だるまちゃんとてんぐちゃん
あの子が好きだった絵本は
私が子供の頃好きだった絵本
毎晩 読み聞かせていた本を
今は 孫たちに
読み聞かせている
「僕、この本がほしいです」
「あ……えと。それ、売りものじゃないです」
「え、非売品なんですか? どうして?」
「失敗作だから……です」
「在庫はないんですか?」
「はい」
「ならやっぱり。世界にひとつしかないこの本、僕にください」
「え……どうして」
「好きなんです、僕」
「ひゃ」
「この本が」
「あ……ああ……この、本が」
……
あの時貰ってくれた本。今も読んでくれているのかな。
#32 好きな本
【好きな本】
こんな辛い日は好きな本でも読んで
気を紛らわそうじゃないか。