みとば

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「好きな本」



古い本が好きである。
古書でなくとも、売れ残りの本でも構わない。

淡い黄土色に変色した紙の匂い。
急いで読み始めた為に舞い上がる埃は夜灯にキラキラ光り舞う。

それを楽しみつつ物語へと没頭する。
古い物語はそれを知らない者に新しい世界を開いてくれる。


新しい本が好きである。
真っ白な紙に印刷されたインクの匂い。
ページを捲る度に、新雪の原に足跡をつけるような子供じみた喜びを覚える。

そんな幸せに浸りながらゆっくりと紐解く物語は今こうして在れる幸せをも運んでくれる。

好きなタイトルは幾つもあるけれど、やはり紙の本が良い。
読書は文字に限らず、指先で、香りでするものだと思っている。

あまりにもそれらが心地よいので、本を舐めたことさえあるのは内緒の話である。

6/15/2023, 12:23:46 PM