「君と最後にあった日」
ごめんなさい。これは書けません。
君がもういないこと、まだちゃんと受け止められない。今日はパスでお願いします。
「繊細な花」
頂きに如意宝珠冠したるその花
色繊細にして可憐なれど
天に伸びゆく姿の逞しさ龍にも似たる
名を擬宝珠といふなり
「1年後」
来年の事を言うと鬼が笑うので、1日1日を大切に過ごします。
みんなで笑えた方が良いもんね。
「子供の頃は」
子供の頃はおばけが本当に怖かった。
絵本の可愛らしいおばけの挿絵さえ怖くて半泣きだった。
いい歳になっても怖いものは怖い。おばけが怖くて何が悪い。
─などと昔に浸っている場合ではない。もう良い時間だし友人に電話入れないと。
「その日は他の予定があるからまた今度…うん、うん。本当にごめん、それでさ…」
突然に真っ暗な廊下の電灯が灯る。
誰かいらしたのだろうか。どなたでも良いがつけっぱなしは良くないと思う。
「…あ、ううん。何か勝手に廊下の電気がついた。……違うって。吃驚させるの本当に良くないよ。何でいつもやりっぱなしなんだろ。消されても嫌だけど。ああ、それでさ…」
話しながら廊下の電気を消す。
いいか、自分はおばけが怖いんだ。
いらっしゃるのは良いとしても吃驚させるのは控えて欲しい。魂がヒュッてなるでしょ。
「日常」
自分の日常にはいつだって死が付きまとう。己の心の病のみならず、身近な者にも疫病が牙を剥き、友は旅立ち、共にあった日は遠くなってゆく。
詳しく書くことは出来ないが自分たちの周りにはいつも「血と膿の臭い」がある。
安息も安寧も知らない。かつてはあったのかも知れないが、とうに千切れた過去である。
なんてことない日々が如何に貴重で尊いものか。安心て何だっけ。禍福は糾える縄の如し。この言葉を訝しんでしまうのを許して欲しい。
それでも不幸ではないと思うのはただの意地であるかも知れないが、認めて頭を垂れる気には到底なれない。
日常は戦いだ。
諦めろ、負けを受け入れろ、絶望しろと言う己との戦いだ。誰が負けるか食い千切るぞ。人間には頭しか無いんだ。考えることはやめない。
なんて口にしたら怖がられるからね。誰かに言うことでもないし。別に普通。これが自分の日常です。