「好きな色」
黒板のくすんだ緑色。
チョークの白がまた良く似合うんだ。
この色は長時間黒板と向かい合う生徒達の目に負荷がかからないようにと考えて決められたものらしい。真っ黒や真っ白では眼精疲労になりやすいのだろうか。
タブレットやホワイトボードが主流の今日に、黒板のような配慮はなかなか無いように思う。
好きな色と言うより、その色を受け止める相手を思いやって色を決める。その姿勢が美しい。
今向き合っているこの文字色も目に優しく落ち着きがあり、心穏やかに文字を綴ることが出来る。緑色成分多めに入ってるでしょ。違うかな。
どの色が好きなんて決められない。
どれも綺麗なんだもの。
そんな訳で、多くの人に長く愛される色の一つを書いてみたくなったのでした。
「相合傘」
あめ。
かさをはんぶんこ。
となり、くうせき。
あ、あのひと
あめふってる。
あめがやむまで
おとなりどうぞ。
はれ。
よかったね。
わらいあって、またね。
あめ。
かさをはんぶんこ。
となり、くうせき。
あめのひとは
いないみたい。
よかったね。
わらって
かさをくるくる。
なみだあめのあいあいがさ。
はれるまで、おとなりどうぞ。
「落下」
必死にここまで這い上がって来たのに
また落ちるとか
もう何回目か数える気にもならないや
はー、しんどい
上らしき方を見あげて
項垂れ途方に暮れるのももう何回目だろ
ちょっと待ってて
また上がるから
落ちることに果ては無くて
奈落の底にはまた新しい落下口が開く
沈めば沈む程光は見えなくなっていく
よっこらせっと
まあ、生きてりゃ上がるしか無いんだよ
何が上かは知らんけどさ
やめてしまえばもう
同じように這い上がろうと頑張ってる人達に顔向け出来ないし
自分を許すことも出来ないし
生きてる意味さえ分からんし
登れないって感じたら
まだ休んでていいんだよ
またいつかは行くんだって
それ忘れなきゃ大丈夫
落下点に引っかかってしまったなら
周りをよく見る
ちょっとだけ上がれそうな出っ張りが見つかるかもしれない
無ければ作るしかない
みっともないし情けない姿晒すけど
でも蹲り続けるよりはかっこいいよ
でもあんまり何度も落とさないでくれ
こっちもヘトヘトなんだ
這い上がる途中でちょっと一休み
まあ待っててくれ
諦めないから
「未来」
昔からこの言葉が苦手だ。
未来。たったの二文字を目にした途端に思考は停止し、その後何も思いつかずに右往左往するのだ。
未来。未だ来ず、しかしやがて来るもの。
自由に空想するのも良いし、目標を立てて励むことも出来る。未知の猶予は希望として語られることが多いが、それだけとも限らない。
自分にとって未来はある種生物のように感じられる。
見えず、意思も感じないのにおかしな話だが、あらゆる生命や物質が望むからこそ未来も存在出来るのではないか。何ものにも知覚されなければ未来という概念にさほど意味は無いだろう。
そういった意味では今が未来を生かしているとも言える。
未来よ、あなたは生きたいと思い悩むことはあるのか。
未来よ、あなたはどう在れば満足か。
問いかけの先に映るのはただの今の自分の顔。
「あなたが決めてください」
ああ、未来とは嬉しくも厄介なものだ。
「1年前」
1年前の今日も
(明日は君の誕生日だなあ)
ってぼんやり考えていたよ
とっくの昔にお祝い出来る身では無くなってしまっているけれどね
明日の君がどうか素敵な誕生日を迎えますように
大切な人達にお祝いしてもらって
笑って暮らしていますように
1年後にもまた同じことを願うよ
君が幸せでありますように
先取りハッピーバースデー