『夜の海』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「本当に人間は勝手なんだから」
「あー、はは。なんかごめんね」
真っ黒な海を月が照らす。打ちよせる波が月光を反射しては消えて、また光る。なんてことのない夜の海だった。
その中で異質なのが彼女だ。正直、彼女と呼んでいいのかも分からない未知の存在である。
「あの人はわたしのこと忘れちゃったのかな」
潮焼け知らずの髪と肌は真っ白で、月の光を浴びて一層輝いてみえる。すらりとした上体は人間の女性であるが、問題はその下。人間ならば脚があるはずのそこは鱗に覆われた魚の尾であった。
ひらひらと金魚のような大きなヒレが華やかだ。水面を打って飛び散る雫がまるで彼女を引き立てる宝石のようで、つい見入ってしまう。
「毎日欠かさずわたしのところに来てくれたんだよ」
キャッキャと女子高生のようにはしゃぐ姿は可愛らしいが、なんとも人間臭い。もっとこう、童話に出てくるような人間とのズレや伝説のような恐ろしさがあると思っていたのに。
「ねえ、聞いてるの」
もちろん聞いている。毎晩同じ話をされていい加減聞き飽きてはいるけども。
よくもそんなに語れるものだ。もう何十年も前のことを、とっくに終わってしまった恋心を、何もかも知っているはずなのにどうして。
「じいちゃんが好きだったんだね」
「ちがうよ。『だった』じゃなくて好きなの」
今でもね、と。俺の目を覗き込んで微笑んだ。
何かを探るように、懐かしむように。俺を通して別の人間をみている。
「俺なら…、いや、何もない」
―――人魚の目をみるな、魅入られるぞ
じいちゃんの言葉が頭によぎる。月の明るい夜、海に面した窓や戸を閉め切って誰一人外をみることも出ることも許さなかった。
今になってわかる。あの言葉は本当だった。
もう俺は魅入られてしまった。人間に恋をした人魚に魅入られている。ずっと、ずっと。
【題:夜の海】
夜の海
行ったことは
ないけれど
たぶん
黒い
「夜の海」
僕の手を引いて海に入る
夜の海は月明かりが水に反射して
幻想的な空間に変える
「冷たいね」なんて当たり前でしょ
このまま君と海月のように溶けられたら
"幸せだね"
#夜の海
静かに寄せるその波が
ざわめきや不安を連れ去ってくれればいい
肌を滑る汐風に乗せて
すべて洗い流してしまいたい
果ての見えない夜の海
炎のようにゆらめいて
すべてを包み込んでしまえ
昼間の賑やかさとはかけ離れた夜の海は、さざ波の音だけが響いていた。
「静かだなぁ」
月や星が出ていればロマンチックだったのだろうか。この磯臭さに慣れていればもっと美しく見えただろうか。隣に好きな人がいればさみしくなかったのだろうか。
「私にはこれくらいが丁度いいや」
光の無い夜に、慣れない匂いを胸いっぱいに吸い込む。独りきり、ただ静かに。
夜の海
波音が際立つ
白波も闇に染まる
鳥も寝静まって灯台だけが存在を主張して明滅する
夜の海
練り歩くには危険だけど
吸い込まれそうなくらい穏やかで
掴めないから浸りたくなるくらい危険
お盆の日には
船で送ってさようなら
線香花火で競争をするには
寄せては返す波が風を運んでくる
【夜の海】
海の音が静かで暗い夜に
響いてる
心地よい音でリラックスできるけど
時には
暗い波に連れ去られそう
昼間の穏やかな顔と、がらりと
変わって、
真っ暗で何も見えないけど
微かにきこえる波音に耳を傾けながら
僕は眠りにつく
明日は仕事だから、また頑張ろう
夜の海/夜凪
夜海とは何ですか?
夜の海。
夜海(やかい)とは? 意味や使い方 - コトバンク
ある日わたしはヒーリングを受けた。根源の愛につながって、骨にその0のエネルギーを流してもらったら、今まで溜まっていたエネルギーが自然と体から流れだしてきた。指や腕がくるくるまわったり、、首が八の字をえがいたり。目を閉じて八の字を描いている自分の髪の毛とベッドがコスれる音は、まるで夜の海の繰り返すなみのように一定のリズムを刻んでいて、すごく心地よくて、からだが喜んでる、解放された瞬間だった。
月泳ぐ
紺の水面に
影二つ
夢を語るる
午後十一時
お題:夜の海
夜の雰囲気は落ち着くのでいつか夜に海行ってみたいな。1人では怖いけど笑
夜の海。
その暗い空と黒い海の狭間に誘(いざな)われるように。
わたしは波打ち際へと立った。
君の顔が浮かんだ。
先ほどまで穏やかな顔を見せていた海に途端に恐怖を感じて
わたしは思わずあとずさった。
そこから先の記憶はない。
気がつけば、太陽が顔を出していた。
「夜の海」
夜の海の、まっくら。
夜の海の、底の底の、もっとまっくら。
そのまっくらな海の底で、私はバスに乗っている。
たったひとりで膝をかかえて、壊れたバスに乗っている。
だあれもいないまっくらな、ほんとうは、よるかどうかも、わからない海の底で、
たったひとりでバスに乗ってる…
バスのライトは生きている。
なぜだか灯台の灯りのようにぐるぐる、ぐるぐる回りながら、
古代の魚の大きな骨の連なりが、
ぎゅるぎゅる、ぎゅるぎゅる回っているのを灯りの中に捕まえる。
私は怯えて肩を抱き顔を膝にもっと埋める。
これをごらん?と言って来るような灯りの中から目を反らして、ぎゅうっと目を瞑ったら…
…目が覚めた。
全身から力が抜けた。ホッと息をついた。
夜の海に霞むあなたの影。
追いかけても、追いかけても、離れていく。
思い出しては、目から滴が落ちる。
遠い海の端と空の端の境界は曖昧だ。
そんな空と海の中に煌めく星々。
そのどれかに君を感じた。
夜の海。深い海。
太陽も月も食べてしまう。
波の音は遠くて近い。
波間の煌めきは、何かの蠢き。
星星に誘われて、ひたひたとやってくる。
「さかな」
窓の向こう、風に揺れるカーテンの端から魚籠(びく)が突き出される。
「いらないよ」
「やすい、うまい、おいしい」
死んだ魚の目が上向いている。
部屋の灯りは太陽の代わりになるだろうか。
「いくら」
「くっきー、にまい」
【夜の海】
「僕の従兄弟がね、夜の海で」
と、彼は言った。
彼に従兄弟がいないことは知っている。
「裸足で海胆を踏んでしまったんだ」
彼は目を細めてこちらを見ていた。
ああ、人を揶揄う時の顔だ。
「暗いしさ、サンダルを流されたんだ」
彼はちょっとだけ口角を上げた。
どうやら機嫌が良いらしい。
「大変だったらしいよ」
「海胆を踏むとあの棘がさ……」
冗談にしては随分とリアルで。
ゾッとしてなんだ背筋が寒くなった。
「嘘だよ。君のその顔が見たかっただけ」
アハッと笑って、彼は言った。
ああもう、どこまでが嘘なのやら。
「少し涼しくなったでしょう?」
確かに、今日は暑いからね……
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昔、学校の先生がウニを踏んだ話を聞きまして
詳細な描写は自粛しておきます
夜の海
夜の海に入る。
街から離れ外灯も少ない場所だ。
人知れず楽しむ為に来たが、恐ろしい。
開放感があるだろうと思ったのだが。
未知の生物でも出てきそうな雰囲気だ。
すぐに海から上がり、帰り支度を整える。
気づいた時には無事に帰れる事を祈っていた。
明日には友人に勧めよう。
夜の海
自動車免許取り立てのころ友人たちと出かけた、台風の夜の御前崎。あのころ乗ってた軽自動車に波がかかった。今夜は夜勤だと思いながら車を飛ばした焼津の海岸通り。夜勤はしんどかったけど同僚と話すのは楽しかったな。それから恋人と別れたその夜にヤケクソで走った大崩海岸。朝まで大崩海岸にいて朝日を見たっけ。
あのとき走った道は崩れてしまってもう存在しない。大崩海岸のカフェダダリはまだあるけどね。あそこは元アトリエだったんじゃないかと思う海に開けた絶景の喫茶店で、店にはダリの本物が飾ってあった。今は美術館を併設してる。父は昭和30年代に大崩海岸を無謀にも海から登って別荘に登りついてしまったそうだが、たぶんそれはいまはカフェダダリだ。当時はカムカムエヴリバディの英語の先生の別荘だったと父は言うけど。ホントかどうか。
夜の海の記憶は意外に自動車と結びついてるんだと思い出しながら、私は国道150号を走る。父が入院している浜松の病院を目指して走る。左手に海。あの暗い海に父はもうすぐ帰るのだろう。私もいずれあの海に帰ってゆくのだろう。それはきっと今ではないけれど。
夜の海
君と出かける
遠い水平線と星を眺めて
頬にそっとキスをする