灰田

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「夜の海」

夜の海の、まっくら。
夜の海の、底の底の、もっとまっくら。

そのまっくらな海の底で、私はバスに乗っている。
たったひとりで膝をかかえて、壊れたバスに乗っている。

だあれもいないまっくらな、ほんとうは、よるかどうかも、わからない海の底で、

たったひとりでバスに乗ってる…

バスのライトは生きている。
なぜだか灯台の灯りのようにぐるぐる、ぐるぐる回りながら、

古代の魚の大きな骨の連なりが、
ぎゅるぎゅる、ぎゅるぎゅる回っているのを灯りの中に捕まえる。

私は怯えて肩を抱き顔を膝にもっと埋める。

これをごらん?と言って来るような灯りの中から目を反らして、ぎゅうっと目を瞑ったら…

…目が覚めた。


全身から力が抜けた。ホッと息をついた。

8/15/2024, 10:41:14 AM