声が枯れるまで』の作文集

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声が枯れるまで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

10/22/2024, 12:52:08 AM

澄みきった空気の秋晴れの帰り道に、私らはお互いの気持ちなど考えず、すれ違いをしだした。喧嘩の始まりはいつも自分から、声を荒げて、声が枯れるまで、余計なことを言ってしまった。今思えば、割りとどうでもいいこと。

右から帰るか、左から帰るか、家に着く時間は違うけど、一緒に居れる時間も、行き着く先も、同じなのにね。私は、遠回りして星空なんか見たりして、あの人と過ごしたかった。あの人は、普通に帰って、家で今日の出来事のやり取りを、一緒に振り返って楽しく過ごしたかったらしい、アナタならどっちの意見に近いだろうか。

10/22/2024, 12:50:26 AM

虫をころさないこと
そおっとおそとににがしてあげること
わたしを見たおかあさんに
あんたなにしてるのって
あたりまえみたいにおこられること

みんながひとをわらうこと
笑われたひとが
みんなにわらわれても
なぜかわるいことにならないこと
それにわたしが
すごくむねがいたくなること
みんながわらうあの人にも
お花のような部分があります
みんなといっしょに
どうして咲いちゃいけないの?
               
おこられることだらけ
笑われることだらけ
まいにちが、とってもいそがしい
でも
わたしはおこってはいけない
ひとをわらってはいけない
だって
わたしのこころがいたむから。

10/22/2024, 12:26:50 AM

「ねえねえ!さっき何があったの?」

 部屋に入ってすぐにマキエから詰問された。

 待ち合わせしたカフェでマキエが後から到着したとき、私は男性の店員さんと直立して向かい合っていた。マキエは変な気を遣ってしばらく話しかけてこなかったが、あまりにフリーズしたままなので見かねて声をかけてくれた。

「やーあのときは助かった。ありがとう」

 あのカフェにいる間、店員さんに気まずくて言えなかった感謝をようやく伝えられた。マキエは話の流れでまたカラオケルームに連れてきてくれたのだ。

「実はあのとき、流れてたBGMがたまたま知ってる曲で、思わず立ち上がって店員さんに話しかけちゃったの、なんでこの曲流れてるんですか?って」

 細かい部分は端折って要点だけ伝える。でも説明足りてないか。

「やば、普通聞く?さすがに有線じゃないの?ていうかあのヘビメタ?」

「違くて、あのヘビメタの前に掛かってた曲があって、『ディ・ファントム』っていうグループの曲なんだけど知ってる人少ないと思ってたから」

 話したらあの店員さんが選曲したらしい。

「マジ?それで運命感じてフリーズしちゃったの?」

 それだったらまだいい。

「それでしばらく『ディ・ファントム』の曲の話が続いたの。話ができて嬉しいなーって思ったのは事実。そこはこの際否定しないよ」

 そういえばマキエとこういう話はあまりしたことがない。私には男っ気が全くないし、マキエは早くに結婚している。こいつニヤニヤして。

「で、話してたらあのヘビメタ。さすがに趣味合わなさすぎて何もしゃべれなくなっちゃった〜!」

 マキエがどひゃーと体をのけ反らせてゲラゲラ笑う。もう!

「悪いことしたなぁ、失礼だよね。恥かかせちゃったかも」

 マキエとカフェにいる間、目を合わせられなかった。

「まあ個人の趣味だもんね。でもあのカフェにヘビメタBGMもどうかと思うよ」

 マキエはまだ笑いをこらえている。

「せっかくカラオケ来たんだから、そのぉ『ディ・ファントム』? 歌えばいいじゃん」

「前に来たとき探したけどなかったんだよ」

 マイナー歌手のファンはカラオケでもマイノリティだ。

「でもこの部屋、たしかJ-Studioが入ってるはず。ほらやっぱり」

「ジェイスタジオ?」

 ここのカラオケそんな名前だったっけ?それとも知らないグループの名前か?

「カラオケの機種!J-Studioはマイナーな曲も結構入ってるからね。アニメの主題歌ならあるかも、ほら、探して!」

 ウソ?カラオケって機種の違いでそんなのあるの?知らなかった。マキエに言われるままに探してみる。

「あった!」

 信じられない。気がついたらもう予約を入れていた。

「あ、やばっ」

「やったね!ほら、立って!」

 しまった。歌う準備できてない。今日もマキエが歌うのに合わせて身体を動かすだけのつもりだったのに。うまく乗せられていた。

「歌い始めれば楽しいから!」

 イントロが流れ出す。やっぱイイ曲〜!ええいままよ!

 …歌い出すが30年以上全く使っていない喉はか細い声しか出てこない。音程もぐちゃぐちゃだし、恥ずかしい。「ディ・ファントム」に申し訳ない。

「ヘイ!ヘイ!」

 構わずマキエは盛り上げてくれる。手で拍子を取りながら踊ってくれている。

「大丈夫!最後まで歌おう!」

 そうだ、せっかく入れたんだから、最後までがんばろう。「ディ・ファントム」のためにも。

「だいぶ声出るようになったんじゃない?」

 ウソつけ。もう声出てないよ。気がつけばマキエと交代で何度も歌っていた。私だけ同じ曲を。それこそ声が枯れるまで。

「これからは一緒に歌えるね。もっと歌いたい曲、見つけてきなよ。それが次までの宿題」

 乗せられているようで悔しいけど、結果として前より人生を楽しんでいる自分がいる。ありがとう。

「ほらあのヘビメタとかいいんじゃん?」

 こらえ切れずに笑い出す。こいつマジで…!

10/22/2024, 12:24:07 AM

「なぁ、最近お前、声が枯れてるんじゃないか?」
妬ましい彼奴から声を掛けられた。たしかに最近の俺は声が枯れている。何故なら、あの人を思って泣きすぎたからだ。よなよなあの人を考えている。
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃねぇよ。ほら、のど飴でも買ってこいよ」
「えー…面倒くさいな…」
一瞬沈黙が落ちる。
「あの人は元気か?」
「おう、相変わらずの愛を与えてくださる」
「そういえば、……。」
「なんだ?」
「俺、出張なんだ」
その言葉に興奮しない訳にはいかなかった。後の言葉には、理想の、夢のような言葉が続いた。
「あの人に会いたいか」
「お前が言うなら」
トントン拍子にことは進み、俺はあの人におめ通が叶うことになった。
「久しぶりですね」
「会いたかった。会いたかった、ずっと…」
返事を聞く暇もなく、あの人にぐりぐりと甘え、膝枕をしていただいた。
「ふふ、子供みたい」
「君の前なら誰だってそうなるに違いないよ」
「そうなのね」
「あー…君を感じる…愛しい人…俺を考えていてくれたよな。俺の事を全て、俺の事を考えて…愛して…気持ち悪い彼奴にキスをせがまれて可哀想に…」
「心配してくれて嬉しい」
「ずっと君を考えて、涙を流したんだ」
「そうなの?」
「君を攫う妄想もした」
ふふ、と相変わらず微笑むあの人は女神だ。彼奴への愛は嘘っぱちで、俺だけを愛している。あの人の彼奴への言葉は、その実俺に向けられている。
「はは」
「ん?」
頭を撫でるあの人。なんて愛しい…
「哀れな彼奴だ。君の愛は全て俺に向けられているというのに、君の口から出る嘘の愛に踊らされて、全く馬鹿な男だ」
「ふふ」
あの人は俺の頬を撫でて、そして、唇を優しく撫でている。綺麗な手が、俺の唇を…
「キスをしてもいいか」
「勿論」
ふ、と優しく唇が触れた。そして俺は天に昇る気持ちになった。あの人はふんわりと、熱を帯びた目で俺を見つめている。
「私のこと、攫ってみますか?」
「いいのか…」
「えぇ、勿論」
刹那、俺は刺された。疑問が浮かんだ。そして酷く裏切られた気分になった。
「私の愛を嘘っぱちだと言ったわ」
………。
「私の友達を埋めたわ、この包丁で」
………。
「愛してる、君を何より…」
………。
「私の愛を嘘っぱちだと言ったわ」
俺はもうすぐ事切れるのか。
………。
愛しいあの人の手で…なんて美しい…

10/22/2024, 12:17:01 AM

夏の終わり
         蝉が鳴いた
         力の限りに
         命の終りに
         山は遠くに
         小さな私は
         地上に立ち
         天を見上げ
         歩きやすい
         道を選んだ
         叫ぶことを
         知らない道         
                  

       『声が枯れるまで』

10/22/2024, 12:14:41 AM

僕の声が枯れたのは、中学1年の自然教室の最終日だった。
自然教室は尾瀬で行われた。前日まで尾瀬ヶ原のトレッキングをしたり、至仏山に登ったり、かなり活動的に行動していた。消灯時間を過ぎても枕投げをしたり、他の部屋に遊びに行ったり。友達と夜まで遊べる事が楽しくてずっと興奮していた。
ところが最終日の朝、ガラガラの変な声しか出ない。
「なんだその声?騒ぎすぎたか?」と友達や先生にからかわれた。健康優良児でお調子者の僕は体調不良を心配される事はなかった。朝ごはんもいっぱい食べたし、顔色も良かったのだろう。声以外におかしなところはまるでなかった。喉の痛みさえなかった。
僕はガラガラの声でいつものように話し続けた。中学校なんてスポーツか勉強ができるヤツか面白いヤツしか残らない。何もない僕はとにかく「面白いヤツ」でいる必要があった。
バスに乗る前の最後の集会の時、全く声が出なくなってしまった。声を出そうとしてカスカスの空気が出ていくだけだ。バスの中では3日間の疲れが一気に出たのか、みんなぐっすりと眠りこけていた。僕はそれどころじゃなかった。ガラガラでも声が出るのと全く声が出ないのでは天と地ほどの差があるのだ。何とか声を出そうと発声練習のように腹に力を入れたり、口を大きく開けたりしてみた。

家に帰ってからも僕の声は出ないままだった。
何日もそんな状態が続くと流石の母親も心配になったらしく、病院に連れて行かれた。レントゲンのようなものを使ったり、血液検査なんかもしたけれど身体的な異常は見られなかった。結局、「心因性のものでしょう。しばらく様子をみましょう」という何ともふんわりとした診断結果だった。

僕の口はノートに変わった。
友達同士の会話は自分が書いている間に話はどんどん先に進んでしまう。僕が書き終わる前に他のヤツがツッコミを入れる。僕の書いたツッコミは行き場を失ってノートの上でフラフラしている。自分の書いた文字を読み返してみる。ノートの上に漂う文字たち。『マジくだらねぇ』『ヤバくね?』『ほんとクズだな』
文字にしてみると何とも言えない不快感があった。自分のノートが醜いものに思えた。これまで軽々しく口にした言葉でどれだけ相手や他人を傷つけてきたのだろうと考えた。
そうするとノートに書くのが怖くなり、必要な事だけ書くようになった。そして書いた文字を読み返し、相手が傷つかないような言葉を選ぶようになった。

声が出ない事で生活に困る事はなかったし、むしろ快適になったと言っていい。
授業中、不意に当てられる事もなくなったし、私語がなくなったので先生からの印象もよくなった。これはそれまでの態度が悪過ぎたのかもしれないが。音楽の授業でも歌わなくていい。歌の上手な人には辛い事かもしれないが、僕は相当な音痴なので嬉しい。ピアノも弾けないので、合唱コンクールでへ必然的に指揮者になった。

一番変わったのは人間関係だ。
『ありがとう』や『ごめんなさい』も口に出す時には躊躇われたが、文字にすると素直に伝える事ができた。
友達は減った。僕が「面白いヤツ」でなくなったから。ただ、今の僕には僕の言葉をちゃんと待ってくれる友達がいる。

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お題:声が枯れるまで

10/22/2024, 12:12:37 AM

明日、貴方は海外へ旅立ってしまう。
私、見送りに行くから…。
いかないで、いかないで、って思うけど、貴方が決めた道だもんね。
仕方ない。

愛してるよ、大好きだよ、そっちでも頑張ってねって叫ぶから。
声が枯れるまで、叫ぶから。

10/22/2024, 12:01:07 AM

『声が枯れるまで』

声が枯れるまで貴女の名前を呼べば、貴女は私の隣に居てくれたのだろうか。
轟々と燃え盛る炎である私の隣は、少し寂しい。ガソリンである貴女が居てくれないと、私は、そうだ。見窄らしい。

声が枯れるまで貴女の名前を呼べば、呼んでいれば、貴女と私は一人になれたのに。
雌蕊と雌蕊では運命を共に出来ないのかしら。神様は意地悪ね。それとも、罪を犯した私に罰を与えたいの?

声が枯れるまで貴女の名前を叫んでいた。あの時の私は獣(けだもの)だった。

声が枯れるまで呪詛を唱えていた。まるで私が悪、みたいに貴女が言うから。

声が枯れるまで、呪いを。
声が枯れるまで、誓いを。
声が枯れるまで、愛を。

私は叫んでいたの。
愛を超える愛を叫んでいたのに。
なのに貴女は遠ざかっていくのね。
貴女は安らかに月へ登っていくのね。。
私を裏切るなんて最低ね。




地獄(こっち)までもう少しだったのに!!

10/21/2024, 11:58:12 PM

声が枯れるまで
叫んだ

LIVE
カラオケ

浮気に気付いたとき
振られたとき
理不尽な仕事

自分の中のモヤモヤ、イライラ
叫べる場所は少ない

声を枯らして
気持ちも枯れてくれたら
穏やかでいられるのにな

10/21/2024, 11:54:40 PM

その日は嵐だった。吹き荒ぶ風が木の葉を散らし、町中のゴミまで吹き飛ばしていった。風は夜更けになっても止まなかった。

斎藤敦史は日課のランニングができずに燻っていた。特に目的があるわけではなく、ただただ走るのが好きだった。滅多矢鱈に走るのは、流石に高校生としてはいかがかとようやく気づき始めたので、堂々と走れる「ランニング」でその欲望を発散していた。
普段は歩いている。
日中走れず持て余す気持ちで夜空を眺めていると、ふと風が止んだように思えた。
一も二もなく外に飛び出し、彼はランニングを始めた。
走っているうちに、日常に感じる不安や苛立ち、後悔といったネガティブな感情が消え失せていった。かに思えた。残るは走る疲労のみ。この積み上がっていく疲労に気分を集中させていけば、日頃の鬱憤は忘れられる。
たとえ問題は解決しなくとも。

彼の向き合う問題は、彼自身ではどうしようもなものだった。そんな彼にも恋人がいて、それなりに充実した毎日、だった。走ることが好きな彼にも理解を示してくれ、馬鹿にしたりだとか忠告したりだとか、そういうこともせずに、ひたすら見守ってくれていた。
そんな彼女の引っ越しが決まってしまった。
彼女の父の転勤で、単身赴任も考えたのだが、都会地への配置転換ということで、彼女への教育的な機会が増やせる、といったぐうの音も出ない、親心満載の決断だった。
そな決断に対抗しうる反対意見など、まだ高校生の彼にも彼女にも持ち合わせるものはなかった。
引っ越しまであと2週間。二人にはとうしようもなく、時は流れていった。

河原に着いた。辺りは田んぼが広がるばかりで、民家も人気もなく真っ暗である。そこで彼は、声が枯れるまで叫んだ。
言葉ではなく、ただの雄叫び。
自分はあの子になにかしてあげられていただろうか、なにか言葉をかけられないだろうか。そんな、生木を引き裂かれるような別れが待っている彼女に、先の人生の灯火になれる言葉をかけられるほど、彼は大人ではなかった。

どれだけ叫んだろうか。彼は暗闇に何か動くものを感じた。
犬だった。犬なのか?確かに犬のように立った耳をもち、長い鼻面をして、ちらりと口から牙も覗く。
だが、立っている。二本足で立っているのだ。
ぬ、とその獣は近づいてきた。
「うるせんだわ」
至極真っ当な苦情を述べた。
いや、こんな生き物いる?犬みたいな顔と体、尻尾。だが擦り切れて入るが服は着ている。そしてなにより、自分が聞き取れる言葉を話している。
しかしその苦情はあまりにも真っ当であった。
「あの、すみません、誰もいないかと思ってて、あの」
と自分でもどういう立場かよくわからないままに平謝りをした。
獣人は、フン、と鼻を鳴らして戻っていった。
「あの、すみません、ちょっと、あなた誰なんですか」そんなことを聞いてどうするかも考えずに引き留めていた。
獣人は振り返る。
「なんだ、あんたらにはわからないだろうが、昔からいたんだよ。俺等は、お前らの言う夜行性ってやつだから、お前らとは時間が被らないんだよ。ここらは夜になると暗くなるからちょうどいいしな。」
知らなかった。真夜中にこんな生き物達が動いていたなんて。
「ここで会っちまったからには、しょうがない、話を聞いてやるよ。何があった」
斎藤敦史は話し始めた。彼女のこと、彼女が引っ越してしまうこと、見守ってくれていた彼女に自分は返せたのか、そしてギクシャクしてしまっている今のこと。
獣人は黙って聞いてくれていた。
そして
「お前、今話せないと一生後悔するぞ。なんでもいい、お前のその気持ちでもいい。話すんだ」
次の日、学校で彼女を呼び出した。昨晩の話をすると、何故だか目を輝かせていた。勿論、自分の気持ちも話したのだが、なんだかそっちはいなされた気がする。
「その人に私も会う、連れていって」
夜中、彼女を連れて河原へ向かった。
さて、向かったはいいが、どうしたらいいだろう。何よりあの獣人が今日もここにいるとは限らないのではないか。
とまごついているうちに、彼女が闇に向かって叫んだ。
「マークでしょ、わかるんだから。出ておいで!」
少しして、闇の奥が動いた。
ゴソゴソと、今日は俯いて獣人が出てきた。
「やっぱりマーク!ここにいた!」
彼女が抱きつく。
斎藤敦史には何が何だかわからない。
「あの、どういう」
「マークよ!昔家で飼ってたシェパード!中学の時に行方知れずになっちゃって、でもこんなところにいたなんて!」
俯いてひたすら撫でられる獣人。
「マーク、家に帰ろう!パパもママも、わかってくれる!」
そうして彼女は引っ越していった。獣人マークと共に。

斎藤敦史は、今日もマラソンを続ける。

10/21/2024, 11:45:35 PM

お題『声が枯れるまで』

 とても仲が良い友達がいた。その子はある日、『実は自分は異世界から来た人間で、早く帰らないといけなくなった』と言って、そのまま突如として空にあいた穴に吸い込まれていくように消えていった。彼女からもらった宝石だけが残っている。
 それは、彼女がいなくなった瞬間、緑色に明るく光っていたのが急に消えた。
 それから数年もの間、不安にかられた。時折、忘れようとすることもあったけど、ふとした瞬間に宝石を見ては気分が塞ぎ込んでいくのが分かった。
 それが今、緑色にほのかに輝いている。私は、「もしかして」と、その石を手に外へ出た。
 時刻は夜〇時を回った頃、向かう場所は私と彼女が最後にお別れを言った場所。
 つくと、いつもと違う光が空にうっすら浮かんでいた。その穴はまだ小さい。
 私は友達の名前を呼んだ。何度も何度も繰り返し呼んだ。声がもうガラガラになるまで、出しにくくなっても彼女を呼んだ。
 そうしたら、私が手に持っていた宝石が急に明るくきらめきだしたかと思うと、空の穴が大きく広がって中から私と同じくらいの女の子が杖を手にして、変わった紋章があしらわれたワンピースを着て現れた。間違いなく彼女だ。
 彼女が地面に降り立つと私は勢いよく駆け寄って、彼女に抱きついた。
「おかえり!」
「ただいま。あいかわらず、甘えんぼさんねぇ」
 彼女が頭を撫でてくれる手がとても温かかった。

10/21/2024, 11:45:33 PM

声が枯れるまで歌い続けるのは貴方だけのためじゃない
その言葉は少しチクンと心を刺した。
でも、本当は、本当の心は、そんなこと思わない。
誰が決めたのか?
知らない。
知らない夜のリリィ
                        ❧

10/21/2024, 11:35:59 PM

《声が枯れるまで》

さわさわ。さわさわ。
青く澄んだ、空の下。風に揺れる、一面の金色。

私は、広大な草原の中に立っていた。
足元を埋め尽くす、秋の色に染まった草達。
風のリズムに合わせ、唄うように囁いている。

こんな時に思い出すのは、とある神話から始まった寓話。
神様に呪いを掛けられた、ある王様。
王様は、その呪いをひた隠していた。
けれど床屋には、呪いの秘密を知られてしまう。

王様の秘密を知ってしまった床屋は、その重さに耐えきれなくなる。
そんな床屋は一面の葦の真ん中に穴を掘り、王様の秘密を穴の中へ思う存分叫び抜いた。
床屋はすっきりしたけれど、その数日後。
一面の葦の葉が、床屋の叫んだ王様の秘密をさやさやと喋り続け。
王様の秘密は、世間の明るみに出てしまった。

他人の秘密をほいほい喋るのは、絶対によくないけれど。
気持ちを押し殺して、黙っているのが辛くなることはある。

好き。彼のことが、本当に大好き。

本人を眼の前にしては絶対に言えないけれど、いつも胸の中はいっぱいになり過ぎて。
抱えきれなくて、溢れそうになるくらい。大好き。

いっそ、大きな声で叫べたらな。声が枯れるまで。

優しい笑顔。柔らかな眼差し。
丁寧な言葉使い。折れない強い意志。
相手への細やかな気遣い。大きな銃で戦う動きの美しさ。

心に思い浮かべた、愛しいあなたの姿。

眼の前の草達は、もちろん言葉を語らない。
互いがこすれ合う音を、通り抜ける風に乗せている。それだけ。
このさざめく音の中ならば、きっと誰にも聞かれない。
だから、今だけ。


「…『あなた』が、大好き。」


草の囁きに紛れて、そっと呟いた。
きっとこの呟きは、風に乗って空へと昇る。
誰にも、聞かれることはなく。
でも、それでいい。それが、いい。

10/21/2024, 11:27:53 PM

「声が枯れるまで」

小学生の時、体育祭では声が枯れるまで叫び続け応援していた。

どうせ明日休みだからいっか
いや、咳き込んだらなかなか治らないからな

そんな葛藤をしながら結局声を張っていた。

中学生からは、後の影響を考えて控えめにしていた。いつもの声量で頑張れーと言ったり、声は張るけど危険を察知したらすぐに止めるようにした。そうすると次の日の影響はほとんどなかった。

10/21/2024, 11:21:15 PM

四百人が俺の歌を待ってる。
袖まで流れてくるどよめき。会場BGMには俺の憧れ。漏れ伝う光。メンバーの呼吸。汗の滴る額、やまない動悸。
俺は俺の為に歌ってきた。メジャーデビューなんてクソ喰らえだ。俺は今から、金の為に歌うのか?
チューニングで掻き鳴らされるギター。俺の鼓膜は哀愁を捉えた。
フッ、と風を切るように息を吸え。すべてを出し切って吐け。
俺が変わらなければいい。俺は死ぬまで声を枯らす。

10/21/2024, 11:18:44 PM

声が枯れるまで彼は夜空に叫び続けた。
バカヤローと。

10/21/2024, 11:17:51 PM

好きだった自分の声がいつからか嫌いになった。

大好きなワンピースもやめて

私はいつもパンツスタイル。

憧れだったハイヒールも

今ではスニーカー一択。

腰まで伸ばしたツヤツヤ髪も

今ではショートカット。

私の大好きはいつも私に邪魔される。

周りが言う私らしさを求めていたら

私が好きなものから遠くなっちゃった。

でもあの子は違かった。

私らしい私じゃなくて

私が好きな私を見てくれた。

嬉しかった。声が枯れるまで泣いた。

だってあの子は

「似合ってない」「いつもの格好の方がいい」

なんて言わないでありのままの私を受け入れくれたから

あの子は私の救世主





─────『声が枯れるまで』

10/21/2024, 11:13:25 PM

「声が枯れるまで」

マイクを構えて、喉を震わせて、声を出す。特に取り柄のない平凡な歌声が、自分の喉から出る。後ろにはベースにドラム、キーボードが歪な音を奏でている。ライトが僕を照らす。自分だけが光の中で、自由でいるみたいな錯覚に囚われて、一瞬で現実へと連れ戻される。光の向こう、暗闇には、10人くらいの観客が見えた。といっても、内3人は友人、2人はスタッフで、実質ファンは5人くらいだった。
歌うことは好きだった。バンドも楽しかった。だが、突きつけられる現実。減り続ける貯金。
僕は、売れないアーティストだった。


『将来の夢』中学2年生、夏課題作文テーマ。
なんでも、将来を見据えて高校進学を目指さなければならないと、この時期から将来について考えさせられるようだった。夏課題には、この作文以外にも、気になる職業・高校調べ学習プリントなんてのもついてきた。もちろん、各教科別の課題も他にあるわけで、夏休みは勉強詰めになることがほぼ確定していた。そんな風に沈んでいる僕とは裏腹に、元気な声で声をかけられた。
「ねーねー、祐ちゃんカラオケ行こー?今日から夏休みなんだし!」
「んーまぁ、いいけど」
「やったぁ!!祐ちゃんと初カラオケだー!じゃあ今日の5時からね!現地集合!絶対きてね!」
ばいばーい!と華ちゃんは嬉しそうに元気よく去っていく。カラオケなんて普段なら絶対に行かないのだけど、1年前から行く行く詐欺をしていたのと、幼稚園からの幼なじみで気の許せる仲であるというのがあって、今日は行くことにした。
家に帰って適当な服を着てカラオケに向かう。着いたらもう華ちゃんはいて、受付は済ませておいたから早く入ろうと言われた。
僕がカラオケを執拗に嫌うのは、純粋に人前で歌うことに抵抗があるからだ。昔歌ったときに両親に「お前は音痴だ」とハッキリと言われてしまったことが今でもトラウマになっている。
言われた番号の個室に着いて、席に座る。何もかもが初めてなので落ち着かない。華ちゃんが歌い出した。最近流行りの曲を華麗に歌いこなしていた。僕の番が回ってくる。僕も無難な最近流行っている曲を入れた。
「え、上手いじゃん!」
華ちゃんはそんな反応をした。嘘をつけ。僕の歌がうまいはずがない。華ちゃんは上手い上手いと連呼している。確かに、音痴と言われて、僕が何もしなかった訳では無い。練習が実ったということだろうか。少しだけ自信が湧いてきた。

「ねぇ夏課題に作文でたじゃん。何書くの?」
帰り道、華ちゃんは唐突に聞いてきた。
「え、まだ決まってないよ。将来の夢なんてないし」
「私はね、実はアイドル目指してるんだー!」
にひひっとこちらを向いて彼女は笑う。
「アイドルって簡単になれないんだよ。オーディションとか受けないとだし、なれても色々大変で」
「知ってるよ!」突然の大声にビクリとした。
「知ってる。私本気だよ。ちゃんと調べてる。」
「…そっか。」
僕が小言を言ってしまった。良くない癖だ。
「ねぇ、夢ないなら歌手になろうよ。」
「え?歌手?」
「うん。祐ちゃんなら絶対できるって!」
そんなに上手かったのだろうか。
「いや、無理だよ。」

彼女は本当にアイドルを目指すつもりらしく、この夏休みにオーディションに参加。結果はなんと合格。
「ねぇねぇすごくない!?」と、キラキラした目で合格通知を見せてきた。
少しだけ、僕にもできるかなと自信をもてた。
勇気を出して、作文には歌手になりたいと書いた。華ちゃんはすごく嬉しそうな顔をしてこう言った。
「祐ちゃんの歌絶対聞きに行くから!」


華ちゃんは中学卒業で疎遠になったけど、しばらくしてアイドルとして有名になった。大手アイドルグループに所属し、大きな舞台にも立つようになった。それと同時に、華ちゃんは切羽詰まっているように見えた。笑顔だけど、どこか不安が見える表情。僕は陰ながら心配していた。すると、つい一昨日、無期限の活動休止が発表された。理由は書かれていない。

華ちゃん、僕はあの作文に、歌手になりたいと書いた後に、こう書いたんだよ。
「人を応援する曲を歌いたい」
僕は君を応援したいと思ったんだ。

売れていなくても、華ちゃんに届いているかもしれない。そう信じて、僕は君を応援し続ける。
「次の曲で最後となります。」
ほとんど居ない観客に向かって言う。
「大切な人にエールを送る曲を作りました。聞いてください。『華』」
この曲は、1番大切だから。ライブのトリを飾る曲。声も掠れているけれど、そんな声を振り絞って、声が枯れるまで歌った。君に届くことを願って歌った。

ライブは終わった。
「お疲れ様でしたー」舞台裏で、バンドメンバーと少ないスタッフに挨拶をする。
バンドメンバーたちは、「打ち上げいくか」などと話しているが、僕はその誘いを断った。華ちゃんの休止で精神的に余裕がなかった。売れていなくても、バンドを続けてきたのは、華ちゃんがアイドルを続けていたからだった。
「祐さん、会いたいって人が」
時々コアなファンがライブ終わりに会いに来る。僕は今日もそれだと思って気を引き締めた。
「来てくれてありが」そこで言葉が詰まった。
そこに居たのは、マスクと帽子をつけた女性。目元だけしか見えないが、僕はとても見覚えがあった。
「久しぶり。祐ちゃんの声が聞こえたから、来てみた。歌手、なってたんだね。ライブお疲れ様。」
その女性はふふっと笑う。
僕は無意識に、目から涙がこぼれた。
僕の歌は、ちゃんと君に届いた。

10/21/2024, 11:09:58 PM

声が枯れるまで


学生の頃は
週に2回も3回もカラオケに行っていた
田舎の学校だったから他にすることもなくて
練習終わったあとにみんなでカラオケに行って
朝まで歌い続けるなんてこともザラにあった
それでも
声が枯れることなんてなかった

でも最近はカラオケどころか
人との会話とか
声を出す機会がものすごく減ったせいで
たまに数時間話し続けただけで声が枯れる
もう歌なんて歌えないんだと思っていた

でもこのままじゃ本当に声が出なくなると思って
久しぶりに全力で歌を歌ってみた
さすがに何時間もは無理だったけど歌えたし
声も枯れなかった

きっとこうやって
もう出来なくなってしまったと勝手に思い込んでいることが
他にもあるんだろうな

10/21/2024, 11:08:41 PM

あーあーあーあーあーあーあーーあ

声が枯れるまで、叫ぶ。

心の濁りが消えるまで。

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