『命が燃え尽きるまで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
白紙の魂に、たくさんの文字を描く、
徐々に徐々に汚れていく。
我々は常に、激動の炎の中にいる。
じわりじわりと散り際が迫る。
何枚も何枚も積み重ねられた魂の書物
最後は、革に閉じられる
邪悪に縮められる。
いたずらに縮められる。
無謀に縮める。
その中で、火消しに勤める人も
でも、火消しは、尚早まる
余程の無謀者
だとしても、僕は火消しに勤める
「この命が燃え尽きたとしても君を、この国の人を守りたいんだ」
あなたはそう言って笑った
自分なら大丈夫だからと
君の幸せが俺の幸せなんだと
なぜあなたが私の幸せを決めるの?
私の幸せは私が決める
私はあなたに命をかけて守って欲しいなんて思ってない
ただ一緒に食卓を囲めたら、隣で笑ってくれたら
それだけでいいのに
「命が燃え尽きるまで」
あの子とおれは、一心同体となっちまった。
あの子がおれをあわれんだからなんだろうが、何でだろうな。おれを助けることにあの子の利点はなかったはずだ。同情されたからとて、あの子がおれにそこまでする必要はなかったはずなんだ。
そのせいで、おれは囚われ、簡単には死ねなくなっちまったわけだ。
そしてそれは、あの子にとっても同じこと。
はたから見たら、面倒くさい関係だ。
仕方ないから、しばらくの間はあの子に協力してやる。
俺にかけられた呪いが解けるか、おれの命が燃え尽きるまで。
『命が燃え尽きるまで』
蝋燭の様な人になりたかった。
周囲を明るく照らし、役に立ち、人々の癒しとなる存在に。
本能がそれでは足りないと、そうではないと爪を立てている。
害があるとわかっていても手放せないよう洗脳し、籠絡させろと。
煙草の様な人で在れと足を引っ張っている。
今では必死に、火事が起きることがないよう燃え尽きるのを待っている。
【お題:命が燃え尽きるまで 20240914】【20240918up】
リンリンリン
室内に鳴り響く鈴の音に、男は顔を上げると手にしていたスマホをポケットに突っ込んで歩き出した。
1日1回、ロウソクが配達される。
多い時は50本前後、少ない時は0本、平均すると20本程のロウソクが毎日男の元に届けられる。
届けられるのは部屋の中央にある光るサークルの中。
どういうシステムなのかは不明だが、鈴が鳴るのと同時に箱に詰められたロウソクが現れる。
「今日は、っと」
箱の中には7本のロウソクが入っている。
長さは全て違い、太さも違う。
共通しているのは、蝋の色が白いことと芯の色が赤いこと、そして意識して見ると名前が浮かび上がることだ。
「少ないなぁ」
ロウソクの本数が少なければ今日の仕事は楽だ、一応そういうことにはなるのだがそれが嬉しいかと聞かれると、何と返せばいいか分からない。
仕事は適度に忙しい方がやり甲斐があると男は思っているからだ。
それに、この部屋は以前に比べ暗くなったように思う。
光源であるロウソクの本数が少なくなっている事が原因の一つであると、男は知っていた。
「ま、やりますか」
指定されたロウソクを指定された位置へ立て、指定された時間に火をつける、それが男の仕事だ。
男はポケットからスマホを取り出すと、画面をタップする。
表示されたのは、『赤城 結菜 [ほ36ー05ー9824][00:16:24]』の文字。
順番に、名前、場所、時間となっている。
もう一度タップすると『佐藤 浪漫 [り12ー08ー2308][03:36:33]』と、次の仕事が表示される。
同じようにタップを繰り返せば、次、次と仕事を表示することができるし、ダブルタップで最も近い時間の仕事が表示されるし、トリプルタップで今日の仕事を一覧で確認することが出来る。
男は箱の中から『赤城 結菜』のロウソクを取り出し、スマホの画面をダブルタップし、表示された赤城結菜の場所の文字を長押しした。
すると画面の上半分に部屋に地図が表示され、赤城結菜のロウソクを立てる場所が赤く点滅する。
そして同じく、室内の赤城結菜のロウソクを立てる場所からも天井に向かって赤い光が発せられた。
「さて、急がないと」
なんだかんだで部屋は広い、移動だけでもそれなりの時間を要する。
便利なのはこのスマホの地図と光る床。
男の足元からロウソクを立てる場所まで親切に赤く光るので、迷うことはほぼない。
1本目は中央から少し離れた場所だ。普通に歩いて5分ほどかかる。
1度立てて火を灯したロウソクは、その人間が死を迎えるまで燃え続ける。
たとえ男が火を吹き消そうとしても、ロウソクを折ろうとしてもそれは出来ないようになっている。
それがどういう仕組みなのか男は知らなかったが、おかげで時間に間に合わせるため全速力で走って風を起こしても、足がもつれて転んで倒しそうになっても、ロウソクが折れることも火が消えることもなく今までの仕事をこなすことが出来た。
「ここだな」
男が赤くぼぅっと光るロウソク立てに白いロウソクを立てると、赤い光が蒼色に変わった。
次に男は腰にぶら下げていたランタンを手にし、その中でふわふわと浮いている黄色の炎を手のひらに乗せた。
不思議なことに、この炎に熱さはなく、そして消えることもない。
ただ、男がこの仕事に就いた時に渡されたこの炎は少しだけ、小さくなっていた。
ピピピッ!
スマホの音に合わせ男は手のひらの上の炎を、立てたロウソクに近づける。
ピピッ!
男の手のひらの上の炎から小さな炎が生まれ、ロウソクへと飛んでいく。
ピーッ!
男のスマホが表示する時間と、赤城結菜の情報に表示されていた時間が同じになった瞬間、小さな炎がロウソクの芯に灯り、その色を緑に変えた。
「よし、1本目終了。次は3時間後か⋯⋯」
男はランタンに黄色の火を戻すとまた腰にぶら下げた。
ひとつぐぐぐっと伸びをすると、中央に向かって歩き出す。
途中、火の消えたロウソク立てに残った蝋を取り、腰に下げた袋に入れる。
この蝋はある程度溜まったら、中央のサークルに置いて部屋の外へ転送することになっている。
残った蝋は他の新しいロウソク、又は燃えているロウソクと一緒にならないようにしないといけない。
一緒にしてしまうと、新しいロウソクには火が灯らず、萌えているロウソクは火が消えてしまう。
その場合、そのロウソクの残りの時間分が男の仕事を行う期間、つまり刑期に加算される。
また、指定時間にロウソクに火を灯せなかった場合も同じく、刑期に加算されるのだ。
男の仕事は365日、24時間休みがない。
ただ、普通の人間ではない彼らには、食事も睡眠も必要ない。
肉体的な疲れはなく、そのように感じるのは生前の"くせ"のようなもの。
また人間のように、精神に肉体が引き摺られることはなく、精神的に落ちていたとしても体は普通に動くし、病を患うこともない。
「あ、また長いのがある」
中央へ戻る途中、燃えずに残った蝋を取りながら歩くのはいつの間にか日課となった。
火の灯っていないロウソク立てには、そのうち新しいロウソクを立てることになる。
その時、前の蝋が残っていると蝋を取り除くという工程がひとつ発生する。
また、蝋の存在に気が付かなかった場合、刑期が伸びるリスクも生まれる。
よって、そのリスク回避と暇な時間潰しで始めた作業が、日課となったのだった。
そんな中、時折見つけるのが長い状態で残っている蝋の存在だ。
初めはあまり気にしていなかったのだが、一日に1本程度の頻度で見つかるため、何故なのか気になった。
それを知ったのは偶然だった。
彼のように、人の命のロウソクに火を灯す者達を、『黄炎の者』と言う。
なぜなら、腰に下げているランタンの炎の色が黄色だからだ。
因みに、黄色の他には白、黒、青、赤、緑と5色ある。
色の違いは、ロウソクが何の命かという違いだけであり、皆ロウソクに火を灯す仕事であることに変わりはない。
彼らには、この仕事をすると決まった時点で、ある能力が与えられる。
それは、ロウソクの火を通して対象の現在を見る能力だ。
音もあり、思考も把握することができる、ある意味チートな能力だが、可能なのは見る聞く知るだけで、対象の人生に干渉できるわけではない。
それでもこの娯楽の一切ない、誰かと会話すらできない部屋の中で、暇を潰すには持ってこいの能力だ。
それは今のように、次のロウソクまで時間が空いていた時のこと。
フラフラと歩いて目に止まった1本のロウソクの現在を覗いてみた。
見えた景色はどこかの高い建物の上階部分。
手すりの向こうには、同じくらいの高さのマンションやビルが並んでいた。
随分と都会な景色だ。
車の走る音、公園ではしゃぐ子供の声、店先で流れる音楽、そのどれもが遥か下の方から聞こえてくる。
ここはどこだろうか、街の雰囲気からすると日本なのは確かだが、そう、思った瞬間
視界がブレた。
そして気がついた時には、地面が目の前に迫っており、男は思わず叫んでしまった。
木霊していた男の声が部屋の中から消えた時、1匹の蟻が音もなく目の前を通り過ぎ映像が消えた。
そして、それと同時にロウソクの火も消えた。
ロウソクはその人間の寿命そのもの。
寿命とは、事故、病気、他殺など運命で定められた命の長さを言う。
基本的に人間は寿命を自分で変えることは出来ない。
大きな力で定められたものを、小さな命ひとつがどうにかできるはずもない。
ただし例外がひとつだけある。
自死だ。
自死は自分の命を賭した寿命、つまり運命を変える行為である。
そしてそれは、この先⋯⋯いや、未来永劫そこにあったはずのものを無に帰す行為でもある。
大量殺人を犯した者の魂でさえ次の生があるのに対し、自死者の魂は未来に引き継がれることなく全てがそこで終わる。
それほどまでに、自死に対する罰は重いのだ。
そして、その道を選んでしまう人間の何と多い事か。
それからもうひとつ。
自死とは異なり、ロウソクが燃え尽きた後に残っている蝋の存在。
これは言ってしまえば、7割近い確率で残っていたりする。
これに関しては憶測でしかないが、生きている時のその人間がどの程度、生に向き合って生きているかというのが関係しているようだった。
一生懸命に生きている者の場合は蝋が残ることはなく、そうでない場合は蝋が残るようだ。
そしてその一生懸命さはロウソクの炎で判断することが出来る。
男がロウソクに火を灯した直後の炎は、どれも皆勢いよく燃えているのだが、ある程度時間が経ってくると徐々に炎の勢いが弱まってくることが多い。
つまり、赤ん坊の時は生きることに一生懸命だが、歳を重ねてくるとそうではなくなってしまうようだった。
そしてそれは、この部屋の明るさにも影響を及ぼしている。
小さく弱々しい炎、つまり惰性で生きている者たちのロウソクばかりだと、部屋が暗くなるのだ。
逆に一生懸命生きている者たちが多ければ部屋は明るくなる。
ただ男はそれに対し、何かを言うことも、変えることも出来ない立場だ。
男は考える、自分はどうだっただろうか、と。
今のこの仕事をあとどれ位、続ける必要があるのかはわからない。
ただ、この仕事が終わり、次の生を得られたのなら、その命が燃え尽きるまで懸命に生きると魂に誓う。
ほんの少しだけでも、ロウソクがある部屋の一角を明るく照らすことができればいいな、と思うから。
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 情景を文字で表現するのムズカシイ⋯⋯。
「ねーえー、まだ来ないのかよー」
「んー、まだ行きたくねえわ」
「命」をひとつの「炎」だと見立てる、そんな小説を読んだことがある。
オシャレだよな。
小説では、そういう生命を維持するための運動が断たれてしまうことを「燃え尽きる」という。
上手い言い回しだよな。日本って感じだわ。
「来てくれ!頼む!コウノトリ!」
「おい最後」
「マジでお願いだって!!一生のお願い!」
「とか言って他の奴にも『一生のお願い』使うんだろ」
そして俺は今、死神に付き纏われていた。
その死神はイメージとは違って見た目が結構人間に近い。
真っ黒い服なのはそれと同じだが。
ていうかこんなファンキーでいいのか?仮にも人の蝋燭の火を奪う奴らだろ。あと死神も一生のお願い使うんだな。
「よくさあ、一日のノルマとかって言うじゃん?」
「あー」
「それが君なのよ、君が最後の一人なのよ!!」
「だからって死にたくねえよふざけんな」
#2024.9.15.「命が燃え尽きるまで」
創作です。長くなりそうなのでまた書きます。「最近こいつ書かねーな…」と思ったそこのあなた。
テストが終わりまして(色んな意味で)。
死神ともうすぐ死にさらされそうな男。
そういやhzbnホテルってなんか夏休みくらいにシーズン2制作中じゃなかったでしたっけ?アマプラで観れるといいな。
命がいつ終わるかわからないから頑張れるのかもしれないので、今はそれくらい真剣に取り組むという風に捉えたいです。
-命が燃え尽きるまで-
(お題確保です)
彼が 言ってくれた
笑顔が好きだ
君を大事にしたいと
年月がすぎて
例え、離れ離れになっても
君は僕の大事な人だと
そして、彼はいなくなった…
それから 何年も経ったが
私は彼を忘れられない 忘れてはいない
「命が燃え尽きるまで
僕は君を愛するよ」と
言ってくれた あの言葉を
貴方が側にいなくても
私は 貴方を 命が燃え尽きるまで
愛しています
「命が燃え尽きるまで」2024.9.15
昨夜は、、日付が変わってからの就寝
楽しい時間を過ごした後は何故か
虚しさを覚える、、
色に例えるなら黄色と灰色
この先、何回黄色の時間と
灰色の時間を繰り返すのか、、、
#命が燃え尽きるまで
命が燃え尽きるまで
この世界に生まれ落ちたのならば
死ぬまで我武者羅に生きなければならない。
私はこの命が燃え尽きるまでに
やりたいことが数え切れないほどある。
一度きりの人生、一度きりの私。
何度だってこの命を燃やすんだ。
【命が燃え尽きるまで】
「・・・・・・この想い、心・・・・・・機械に
生まれ、て・・・・・・命を、貰った、その全て
ーこの二五一秒に賭けるーッ!!」
著:榎宮祐「ノーゲーム・ノーライフ」より
自分の言葉で書こうと思ったけど、ふと頭を
よぎって書かずにはいられませんでした。
命が燃え尽きるまで、なんて
ごろごろしながら考えることじゃないね
#命が燃え尽きるまで
命が燃え尽きるまで、眺めていようと思った。
ヨーロッパに網戸という文化はない。よって、フランスにも網戸はない。窓を開ければ虫は入り放題で、ハエも、蚊も、ユスリカも、ハチも羽音を鳴らして入ってくる。ホームセンターで買ってきた窓に貼るタイプの虫除けは全く意味をなさず、外からアパルトマンを見上げた時に自室がどこかわかるだけの、ただの目印となっている。
だから今日、再びホームセンターに行って蚊除けキャンドルを買ってきた。マグカップくらいの大きさの青いガラス容器に入った、燃焼時間50時間のキャンドル。マッチを擦ってキャンドルの芯に火をつけて、細く開けた窓のそばに置く。そよそよと入ってくる風が、炎を揺らす。炎の高さが青いガラス容器の中に収まったのを見ていた安心する。これならカーテンに引火しないだろう。カーテン越しでも、炎がゆらゆらとゆらめいているのが見える。
蚊除けキャンドルはシトロネル、日本ではレモングラスと呼ばれる植物のアロマオイルが入ったキャンドルだ。アロマキャンドルの一種だがあまり香りは強くなく、鼻を近づけてやっとレモンに似た爽やかな香りを感じる程度だ。店にはティーライトのような小さなものから、バケツに入ったキャンプ用の大型のものまで、売り場一面にたくさん並んでいた。逆に蚊取り線香やノーマットのような電気蚊除けはほとんど見かけない。売り場の隅に申し訳程度に置いてあるだけであるから、蚊対策の主流はキャンドルなのだろう。
ただ、効果があるのかは、正直よくわからない。蚊"取り"線香のようにピレスロイドが入っているわけではないから、蚊を殺す効果はない。蚊"除け"キャンドルは蚊に避けてもらうのが目的だからだ。だが、そんなに都合よく匂いだけで蚊が避けてくれるのだろうか。そもそもこんな風の吹く夜では、こんなほのかなキャンドルの香りもどこかに流れてしまうのではないか。
歯磨きなどのナイトルーティーンを終え、ベッドにしばらく転がっていた。うとうとしてはいたものの、どうにもキャンドルの様子が気になって眠れない。今のところ蚊は入ってきていないと思うが、それがキャンドルのおかげなのか、たまたまなのかはわからない。ゆらゆら、ゆらゆらと揺れるカーテンと共に炎が踊っているから、風に負けずキャンドルは順調に燃えている。火をつけて既に3時間ほど経っただろうか。様子を見てみようと身体を起こす。
窓辺に立って、そっとカーテンを開けた。キャンドルは、勿論ちろちろと燃えていた。アロマオイル入りの白い蝋は炎に近いところから溶けて、透明になった蝋が池を作っている。その池の中に黒い点がぽつん、とあった。ゴミでも入っているのかと思ったが、よく見ると6本、いや、7本の線が伸びている。黒白の縞縞模様。
ヒトスジシマカ、通称ヤブ蚊、フランス語ではmoustique tigre、訳すと虎蚊。なぜかヨーロッパの蚊はデカいので、虎蚊と言われても違和感がない。蚊除けばかりで蚊に対する有害物質が少ないからだろうか。それともヨーロッパの血を吸うと蚊もマッチョになるのか。想像する蚊よりも大きすぎて、ただのゴミに見えてしまった。
飛んで火に入る夏の虫、という諺が頭に浮かぶ。シトロネルの香りよりも、火の誘惑の方が強かったのだろうか。じーっと眺めていると、まだ蚊は死んでおらず、足をウゴウゴと動かしていた。なんともしぶとい蚊だ。もう羽は蝋に濡れて使い物にならないだろう。蝋の上に立てるわけもあるまい。それでも落ちてしまった罠から逃れようと、必死に細い足を動かして暴れていた。
暴れる足がキャンドルの火に触れた。ぽうっと、蚊の足に小さな炎が移る。蚊はジタバタと暴れ抵抗するが、暴れた足に火が燃え移る。火は燃え盛り……ということはなく、思っていたよりもじっくりと、しかし確実に、じわじわと蚊を燃やしていく。
その様子に、なぜだか目が奪われた。緩慢で、じれったい、目怠い光景。蚊は人間には聞こえない断末魔の叫びを上げながらのたうち回っている。エンディングは死だとわかりきっている。蚊は今晩のうちに焼死する。決定事項だ。それなのに目が離せない。目の前で燃えていく命を見るという趣味の悪いエンターテインメントに、訳がわからないほど魅了されている。
だから、命が燃え尽きるまで、眺めていようと思った。
《命が燃え尽きるまで》
後はないと、わかっている。
「であれば、私の成すべきことはひとつだ」
この戦いは既に勝敗を期している。
私たちは、負けてしまった側なのだ。弱者と淘汰され敗者として死に行く側。
それでも希望を繋げることはできる。
殿下さえこの戦線から逃れることができれば、また幾らでも立ち上がることができる。
「この命が燃え尽きるまで、貴方様の剣となることをここに誓いましょう」
さあ、騎士たれ。
死を最大の華として、主がために死力を尽くして逝けることを誉れとしろ。
「……掛かってくるがいい! 私が生きている限り、誰も通しはせん!」
まだ、剣を握れる。
まだ、頭も働く。
まだ、足も手も動く。
まだ、私の心は折れていない。
今、斃れる理由が此処には存在していないのだから。
だからどうか、殿下。
「貴方様を守り抜く誉れを、頂戴します」
人殺しとなった私を、よく務めたと、褒めて下さい。
そう願うのは、騎士として恥ずべきことでしょうか。
その答えをお聞かせ願いたい。
この剣を振り切った後に。
『命が燃え尽きるまで』
先ほどまで元気いっぱいにカサカサ走り回っていた触覚の長い黒光りした虫は、最近CMでも放送されているスプレーのワンプッシュであからさまに不自然な動きを見せ始めた。ひと昔前の記憶にある殺虫スプレーとあまりに違う薬剤の効きように企業の絶え間ない努力の成果を感じずにはいられない。
ただ、効果の程はあっても静かに穏やかに動かずに天に召されるという現象を引き起こすことはできないらしい。黒光りした虫はやがて苦しみにのたうち回るかのように縦横無尽に部屋を走り始めたので、私は全身の肌を粟立てさせながらあわてて部屋のドアというドアを閉めた。こうなってしまってはあの虫の命が燃え尽きるまで部屋には入れない。というか入りたくない。
しばらく時間を潰すしかないか、とスマートフォンに手を伸ばそうとしたところ、手元にもポケットにもその手触りがない。思い当たるのは締め切った部屋のテーブルの上。虫の命が尽きるのを待つか、犠牲を払って部屋に突入するか。私の心の天秤は振れに振れてまったく定まろうとはしてくれなかった。
命が燃え尽きるまで Ver.2
命が燃え尽きるまで筆を握り続けた巨匠は幾人もいる。
その一人の、色彩の魔術師と名高いアンリ・マティスを私は愛してやまない。
法律家の道も歩めるほどの頭脳も持ち合わせたマティス。
元々身体が丈夫でなかったマティスが長期入院の際、気晴らしになれば…とアマチュアの画家だった母親から絵の具を与えられたその瞬間から、彼の絵画への飽くなき挑戦は始まったらしい。
永遠に色褪せない油絵や切り紙絵の作品…。
天才とは努力の異名なり、と言った識者の言葉を思い出す。
遅咲きの画家マティスは、どれほど研鑽を重ねたのだろうか。
尊敬するマティスの作品を美術館で鑑賞できる機会がこんなにもあるなんて、幸運極まりない。
私はせめて、命が尽きるまでマティスの絵に会いに行こう。
「︎︎ 」 ︎︎︎ ︎︎︎
小さい頃は先生がこのお題に沿って日記を書いてみましょうという言葉にも迷わずペンを動かし書いていた。
だんだん年が経つにつれ、頭を固く考えてしまい、いつの間にか書けなくなっていた。昔の自分の日記帳を見るたびに日記に味があって面白いと感じる。よく子どもの発想は無限大だという言葉を聞いたことがある。その通りだとつくづく感じる。
燃えて
燃えて
燃やして
熱くて真っ赤に燃えるあなたは
いずれ 物理的に燃やされてしまうのに
かなしくて まぶしい
(命が燃え尽きるまで)
命が燃え尽きるまで
この命どう使おう。
そんなことを考えたことはありませんか。
何かに迷い立ち止まった時、
この問いが頭をよぎる。
私のやりがい?
やりたいこと?
今の仕事で今後大丈夫か?
お金の問題は?
私の幸せとは?
いろいろ悩みが絶えません。
しかしこれだけは言えます。
私は誰かの役に立ちたい。
誰かの役に立った時幸せを感じます。
この命が燃え尽きるまで
人の幸せを願い
誰かを幸せにする選択をとっていきたい。
私はあなたを愛すると決めたから。
あなたのことは誰にも渡さない。
「やだ」
あなたがそう言っても
私はやめないよ。
あなたが世界で一番好きだから。
私の命が燃え尽きるまで、愛してあげる。