望月

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《命が燃え尽きるまで》

 後はないと、わかっている。
「であれば、私の成すべきことはひとつだ」
 この戦いは既に勝敗を期している。
 私たちは、負けてしまった側なのだ。弱者と淘汰され敗者として死に行く側。
 それでも希望を繋げることはできる。
 殿下さえこの戦線から逃れることができれば、また幾らでも立ち上がることができる。
「この命が燃え尽きるまで、貴方様の剣となることをここに誓いましょう」
 さあ、騎士たれ。
 死を最大の華として、主がために死力を尽くして逝けることを誉れとしろ。
「……掛かってくるがいい! 私が生きている限り、誰も通しはせん!」
 まだ、剣を握れる。
 まだ、頭も働く。
 まだ、足も手も動く。
 まだ、私の心は折れていない。
 今、斃れる理由が此処には存在していないのだから。
 だからどうか、殿下。
「貴方様を守り抜く誉れを、頂戴します」
 人殺しとなった私を、よく務めたと、褒めて下さい。
 そう願うのは、騎士として恥ずべきことでしょうか。
 その答えをお聞かせ願いたい。
 この剣を振り切った後に。

9/15/2024, 7:25:58 AM