『君は今』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君は今、どこにいますか?
何をしていますか?
どんなことが好きになって、どんなことを目指していますか?
いつか、もう一度私と君の進む道が交わることは、あると思いますか。もしあるとすれば、それはいつになると思いますか。
君の"今"をほとんど知らない私ですが、これだけははっきり言えるんです。
ずっとずっと君が私の中にいて、ずっとずっと私の支えになってくれてたこと。
いつかまた出会えたら、そう言ってたくさんたくさん私の"今"の力でお返しできたらいいな。
君は今
君は今、どんな顔をして日々を過ごしているのだろうか。
もう知る術はないけれど、良いと思える日が多ければ僕は嬉しい。
いや、しかしあれからどれくらい経ったか分からない。もしかしたら君は僕と同じ世界にいるのかもしれない。
「転生番号百二十五番さん。時間ですよ」
スーツ姿で黒髪短髪の男、柊さんが僕を呼ぶ。
柊さんは僕の担当死神というやつで、ここに来てからよく他愛もない話をした仲だ。
「あはは、なんだか番号って変な感じですね」
「すみません。決まりなので」
前は今呼ばれたヘンテコな名前ではなかったが、転生一週間前あたりから前世の記憶がじわりじわりと消えていくと説明されていたから受け入れてはいる。
まさか本当に自分の名前まで忘れるとは……。
けれど不思議な事に、“君”の事は覚えていた。
名前は忘れてしまったけれど、姿とか声とか表情とかは思い出せるんだ。
「また奥様と一緒になりたいんですか?」
「おくさま? ああ、“奥様”。そうか、彼女は僕の妻か」
「……すみません。転生前のデータの確認作業の為に記憶を拝見しました」
「良いんですよ。仕事ですもんね」
このやり取りに、あの世もこの世も変わらないなあ。なんて呑気な事を考えていると「一緒になりたいんですか?」とまた問いかけられた。
「なりたいと言えばなりたいし、なりたくないと言えばなりたくないですね」
「?」
彼は真っ黒な目を丸くして首を傾げる。きっと「なりたい」が返ってこなかったのが意外だったんだろう。
それが小さい子供のように見えて、僕は少しだけ笑ってしまった。
「生まれ変わった僕は、僕であって僕ではないからですよ」
「転生ですから」
「そう。だから、知らない男に彼女を取られるのが複雑なんですよ」
「ね? わがままでしょう?」と言うと彼は頷く。僕は言葉を続ける。
「でも、生まれ変わって彼女の生まれ変わりに恋をしたら、笑って下さいね。柊さん」
「……ええ。同僚達と“そらみたことか。やっぱり生まれ変わっても彼女を選んだ”って笑ってあげますよ」
僕らは最後に友達同士が見せるような笑顔で会話終えた。
最後の記憶を消されながら僕は、“ああ、きっと来世の僕は柊さんに笑われながら前世の僕のわがままを聞かされるんだろうな。”と考えながら真っ白な世界に消えた。
日々家
「君は今」
わたしは今 生きている
地球という惑星の その空間で
死ぬまで生きる いや
息絶えるまで 生きていく
生かされいるのか 生きているのか
生かされているのだろう
惑星の生命体の一つとして
君は今
君は今
(本稿を下書きとして保管)
2024.2.26 藍
君は今
何にをしてるだろう?何をしたいだろ?目標はある?
何のために生きてるだろうか、幸せと感じる日常を送っているだろうか?楽しく暮らしてるだろうか?
ハマノバナナ
【君は今】
“君は今”となると、大概の人は特別な人を想像するであろう。
私は大して何でもない人の事を思ったりしている。
例えば、一緒のクラスになったが大して話すこともなかったあいつとか。
例えば、たまたま授業が一緒だったとなりのクラスのあの娘とか。
例えば、就活で偶然同じ企業を受け、その時なぜか面接後一緒に喫茶店でダベっていたあの人とか。
私にとって、人生においてどうでもいい人たちを思い浮かべることがあるのだ。
大概こういった人たちは私の事を微塵も覚えていないだろうが、別にそれは良いのだ。
私の記憶にいたという事実があるからである。
こう考えると、私は私自身が気持ちが悪い奴であるような気がしてならない。
人生において影響を与え得ることのない相手を覚えていることは、果たしてどんな意味があるのだろうか。
ふっと息をつき、椅子に座り込む。
何も考えずぼけ~っとしていると、時折過去の記憶が巡ってくる。
90年代のパソコンほど容量の少ない私の脳みそは、こんなに忘れても良い人の記憶を保存している。
私のキャッシュの削除の仕方は不明である。
データの削除方法も知らない。
無理やり削除しようとすると、身の回りの大事な記憶も忘れてしまいそうである。
なんと不器用な脳みそであろうか。
精密でなくともぼんやりと覚えている記憶。
私は今でも過去を生きているのだなと自らの未練がましさに嫌気が差す。
もう会わない人とは死人も同然なのだ。
わたしはもっと“今”の人に会いたいのだ。
まあそんな私にとってどうでもいい人たちであっても、今皆幸せでいてくれれば良いのである。
こんな未練ともおさらば!できるほど私の脳みその処理能力は高くないのである。
次のアップデートはいつだ?
「君は今…めっちゃ怒ってるね?」
湯船に浸水しているスマートフォンからは
激怒のバイブレーション
うんともすんとも言わない
真っ黒な画面には
後悔の色だけが映っている
#君は今
「熱いからね」って置いたカップ
画面に夢中で聞いてないでしょ
少し遅れて聞こえる 「うゎッツ…!」
「君は今」
#344
私には中学生の頃から仲の良い友達がいた。
高校も違ったけどよく一緒に遊びに行った。
社会人になってからも、カラオケに行ったり、食事に行ったりした。彼女が仕事を急に辞めたと聞いては心配し。
彼氏ができたからと聞いては良かったねって自分の事のように喜び、彼女が結婚し、友人代表として挨拶もした。
子供が産まれたって聞いては、病院まで駆けつけたり、出産のお祝いも渡した。
でも、ある日突然音信不通になった。
私、何かしましたか?
どこにいるのかしら?
探さなくっちゃ。
【君は今】
君は今、何をしているのかな
君は今、何を思っているのかな
君は今、何をしたがってるのかな
僕の手の平に収まる小さな君。
大丈夫かな?ちゃんと寝ているかな?
君は今、寝ているのかな?
起きているのかな?
君が幸せなら、それで良い。
僕は君に全てを尽くすよ。
ありがとう。ありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
ずっとずっと大好きだよ。
「君は今」
日常から消えたあなたを想う
私ではない誰かが隣にいてくれますように
“君は今”
『君は今』
「このピヨピヨの毛、風を感じるんだよ」
クルンと巻き上がるように跳ねた前髪の一束を、まるで王冠のように戴いてご満悦の君。
そんな君の出で立ちは、洗いざらしのTシャツに、穴の開いたジーンズ。
背が高くてショートヘアの君は、一見少年のように見えるが、上品な仕草と小さくて高音の可愛い声がフェミニンな魅力も感じさせる。
そんな変わり者の君が、休日の街を闊歩する。
人の目など、まったく気にならない様子で。
4歳上だけど同期だった君。
本当に魅力的な人だったと、今にして思う。
偏見の塊だったあの頃の私には、それが分からなかった。
私とは真逆だったから。
つかみどころがないようでいて、現実的で落ち着いていて、君のそばは、陽だまりのように居心地が良かった。
君という存在は、ものすごく私を励ましてくれていたのに。
連絡も取れなくなってからそのことに気付いた。
君は今、どうしていますか。
時々、君を無性に懐かしく思うよ。
君にはいつまでも、あの屈託のない笑顔でいて欲しいと願っている。
【君は今】
駒形あたりほととぎす
coming soon !
「君は今」
1日に何度考えるだろう
今何してるの
いつ連絡くれるの
でも
待ってるなんて言わない
何してるのなんて聞かない
返事が来なかったら
立ち直れないから
忘れた頃に
必ずくれる
そう信じてる
君は今
何をしてるんだろう
どんなことを考えているんだろう
君は今
誰の顔が頭に浮かんでいるんだろう
どんな思い出が蘇っているのだろう
君は今
涙に濡れる夜を過ごしているのだろうか
明日なんか来ないでと、
心で悲鳴をあげたりするのだろうか
それでもまた、
必死に笑顔を作って、
僕が知ってる君になろうとするのだろうか
僕は今
君の顔が頭に浮かんでいるよ
君との思い出が蘇っているよ
僕は今
君の助けになれるように
君の光になれるように
君のもとへ、
走っているところだよ
君は今
何をしているのかな
何を思って生きているのかな
そんなことを思って
今日の夜空に問いかける
答えの返ってこない問いを投げかける
星たちは逃げ隠れしていて、
果たして私の問いを聞いているのかなど
わからないが
君の今に私はいないのだとわかって
胸が少し痛くなる。
「ごめん」最後の言葉さえ届かずに
今を生きている
呼吸すら苦しい
咳が止まらない
少しの水で死ぬかと思った
君は今から猛省しなさい
そうでないと君の人生詰む
もう嫌だ
母親辞めたい
君の感情を空に押し付けるなよな。
【物憂げな空】
世界にライバルなんてそう多くない。
たいてい、私が踏みつける凡人か、私を踏みつける天才か。肩を並べてくるやつなんてそう居ない。
そういう中途半端な天才が私で、そう、奴もそうだった。
二人で全国に、なんて陳腐な約束は過去の青写真として、ときの濁流に侵食されつつあったそんな頃。
『期待のルーキー』として奴の名前を聞いた。
テレビで特集が組まれていて、界隈を退いて、腫れ物のように情報を拒絶していた私でも知っているくらいの有名チームへ、新人として入ったらしい。
「昔、約束した奴が居るんです。全国で敵同士で闘おうって。ソイツ私より超上手くて! 学生時代は負けまくったんですけど、見返してやります。このチームで、全国で!」
記憶にないと言われれば、奴を私を踏みつける天才と認識して言い訳ができた。
……それなのに、奴は今でも私を目標にしている。
奴は今でも、学生時代の上手い私と闘っているつもりだ。でも、そんな私はもう居ない。アイツが目指す影はきっと私ではなく、奴の理想だ。学生時代の理想だった私にその役目を押し付けているだけだ。
――安心しろよ。あんなの長くないよ。スポーツでやっていける歳なんてたかが知れてるじゃないか!
「……今何してるんですかね。全国で会うまで連絡は無しなんです。でも、アイツなら必ず上がってきますよ!」
地方の大天才は、もう死んでいる。
学生時代つけた筋肉は、都会の飲み屋でのビール運びによく活きた。毎日毎日これだけ。甲斐甲斐しく過去の努力だけが私に残っている。
……私は今何してるんだろ。
両手に掴んだ瓶ビールをそのままに、せり上がってくる何かを必死に飲み込んだ。
【君は今】2024/02/26
【君は今】
君は今、何をしているだろうか。
そう思う時がある。
風呂に入っているとか本を読んでいるとかテレビを見ているとか、そういうのじゃなくて、君は今、僕の知らないところでどういう人生を歩んでいるのか。
それが気になる時があるのだ。
高校一年生の時だ。
僕は別に最初は君のことが好きだとか気になっているとか、そういう気持ちはなかった。
ただ、一人のクラスメイトとして、顔の整ったというより、僕好みの容姿をしていて、「可愛いな」と思うくらいだった。
三年に上がると別のクラスになって、ただ選択授業は同じで、週に二、三度顔を合わせた。
君はやはり、べらぼうに可愛かった。
可愛いから思わずチラ見してしまい、その度に無性に恥ずかしくなって首を振ることが何度もあった。
そんなことを繰り返していると、だんだん好きとでもいうのだろうか、そんな感じになってしまった。
結局、僕は告白をしなかった。
しようと思ったが、今はそうじゃない。
それが幾度となく繰り返されて、もしかしたら向こうから? なんて妄想を続けて、気づけば卒業してしまっていたのだ。
臆病なのか、はたまた、人任せなのか。
全く今頃になって後悔するなら、あの時呼び出してでもなんとでもして、告白しとくべきだった。
しかしまあ、何度戻ったって、同じことを繰り返してしまいそうだ。
そんな気がする。
僕はそんな回想というか後悔の念というか、そういうのを時々、風呂に入りながらじっくり考える。
どうしているだろうか。
知ったって、どうということにもならんさ。
そうに違いない。
◇◆◇
君は今、どうしているだろうか。
私は時々、昔懐かしいクラスメイトのことを回想する。
大学一年になって高校生の時のクラスメイトのことを回想するくらいだから、さぞかしクラスの中心人物だったに違いない、などと騙されてはいけない。
彼は間違いなく普通のクラスメイトだった。
多分、彼の友達以外は、「あー、あの子いたね!」などと、言われて初めて思い出すくらいの人物だ。
私の方はといえば、はっきり覚えている。
高校二年生の時に同じクラスになったというだけ。選択授業も同じだったっけ。
それだけだ。
別に仲良しの友達というわけでも、ましてや元カレというわけでもない。
ただ、気になっていた。
背が高くて頭が良い。
無駄口を叩かず黙々とやるべきことをこなしている彼が最初は少し、近寄りがたかった。
でもだんだんと、例えば廊下ですれ違った時とか、高いところにあるものをさりげなくとってれた時とか、そういう優しいところに、どうやら私は心奪われてしまったようだ。
結局告白とかそういうのはしなかったけれど、今になってしとけばよかったなぁと、思う。
何してるかな。
彼女とか出来たんだろうか。
それだったら少し、モヤっとする。
まあ、今頃そんなこと考えたってどうしようもないのだけれど。
私は時々「また会えたら良いな」と、彼のことを想う。
一期一会とはよく言うが、
私の言葉にすると、出会いとは衝突だと思う。
出会いたくもない奴ほど何度も勝手にぶつかってくるし、
一度しかなかった縁を、もう一度、もう一度と
手繰り寄せる様は、まるで実験の再現性を確かめる
物理学の検証のようだ。
この世の中、ひとは簡単にいなくなる。
だからこそ、意図の如何に関わらず、衝突していくことと
その一つ一つを大切にすることに意味がある。
翻って、別れや音信不通などの衝突しなくなった状態は、
私の中では死に等しい。
例えば、墓の中のひとは、帰省したり、
墓の前に立って初めて存在を思い出す。
写真の中の笑顔だけで、声や性格は思い出せない。
これは、昔住んでいた町の住民等も同じではなかろうか。
顔を見れば思い出せれど、あなたがその町で
思い出して探さなければ出会えはしない。
声も性格も、何も、ひとりでに思い出すことはない。
私が嫌なら、どうぞ離れてお行きなさい。
連絡を寄越さないうちは、君を僕の鬼籍に入れておく。
お題「君は今」