孤月雪華

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【君は今】


 君は今、何をしているだろうか。

 そう思う時がある。
 風呂に入っているとか本を読んでいるとかテレビを見ているとか、そういうのじゃなくて、君は今、僕の知らないところでどういう人生を歩んでいるのか。

 それが気になる時があるのだ。
 
 高校一年生の時だ。
 僕は別に最初は君のことが好きだとか気になっているとか、そういう気持ちはなかった。

 ただ、一人のクラスメイトとして、顔の整ったというより、僕好みの容姿をしていて、「可愛いな」と思うくらいだった。

 三年に上がると別のクラスになって、ただ選択授業は同じで、週に二、三度顔を合わせた。
 君はやはり、べらぼうに可愛かった。

 可愛いから思わずチラ見してしまい、その度に無性に恥ずかしくなって首を振ることが何度もあった。
 そんなことを繰り返していると、だんだん好きとでもいうのだろうか、そんな感じになってしまった。

 結局、僕は告白をしなかった。

 しようと思ったが、今はそうじゃない。
 それが幾度となく繰り返されて、もしかしたら向こうから? なんて妄想を続けて、気づけば卒業してしまっていたのだ。

 臆病なのか、はたまた、人任せなのか。

 全く今頃になって後悔するなら、あの時呼び出してでもなんとでもして、告白しとくべきだった。

 しかしまあ、何度戻ったって、同じことを繰り返してしまいそうだ。
 そんな気がする。

 僕はそんな回想というか後悔の念というか、そういうのを時々、風呂に入りながらじっくり考える。

 どうしているだろうか。

 知ったって、どうということにもならんさ。
 そうに違いない。


◇◆◇


 君は今、どうしているだろうか。
 
 私は時々、昔懐かしいクラスメイトのことを回想する。
 大学一年になって高校生の時のクラスメイトのことを回想するくらいだから、さぞかしクラスの中心人物だったに違いない、などと騙されてはいけない。
 彼は間違いなく普通のクラスメイトだった。

 多分、彼の友達以外は、「あー、あの子いたね!」などと、言われて初めて思い出すくらいの人物だ。

 私の方はといえば、はっきり覚えている。

 高校二年生の時に同じクラスになったというだけ。選択授業も同じだったっけ。

 それだけだ。
 別に仲良しの友達というわけでも、ましてや元カレというわけでもない。

 ただ、気になっていた。

 背が高くて頭が良い。
 無駄口を叩かず黙々とやるべきことをこなしている彼が最初は少し、近寄りがたかった。

 でもだんだんと、例えば廊下ですれ違った時とか、高いところにあるものをさりげなくとってれた時とか、そういう優しいところに、どうやら私は心奪われてしまったようだ。

 結局告白とかそういうのはしなかったけれど、今になってしとけばよかったなぁと、思う。

 何してるかな。
 彼女とか出来たんだろうか。
 それだったら少し、モヤっとする。

 まあ、今頃そんなこと考えたってどうしようもないのだけれど。

 私は時々「また会えたら良いな」と、彼のことを想う。

2/26/2024, 11:54:11 AM