『君は今』
「このピヨピヨの毛、風を感じるんだよ」
クルンと巻き上がるように跳ねた前髪の一束を、まるで王冠のように戴いてご満悦の君。
そんな君の出で立ちは、洗いざらしのTシャツに、穴の開いたジーンズ。
背が高くてショートヘアの君は、一見少年のように見えるが、上品な仕草と小さくて高音の可愛い声がフェミニンな魅力も感じさせる。
そんな変わり者の君が、休日の街を闊歩する。
人の目など、まったく気にならない様子で。
4歳上だけど同期だった君。
本当に魅力的な人だったと、今にして思う。
偏見の塊だったあの頃の私には、それが分からなかった。
私とは真逆だったから。
つかみどころがないようでいて、現実的で落ち着いていて、君のそばは、陽だまりのように居心地が良かった。
君という存在は、ものすごく私を励ましてくれていたのに。
連絡も取れなくなってからそのことに気付いた。
君は今、どうしていますか。
時々、君を無性に懐かしく思うよ。
君にはいつまでも、あの屈託のない笑顔でいて欲しいと願っている。
2/26/2024, 12:04:06 PM