『友達』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
友達
元気かな、会いたいな。大好きだった友達。
大人になったら、あの頃のような友達ができなくなってしまった。
暮らし方が変わり、いつの間にか疎遠になってしまったけれど、あの頃の記憶は大事な思い出になっている。
でも、思い出のままにするんじゃなくて、
もう一度、連絡してみようか。
「友達なんていたって、面倒なだけじゃないか。僕はひとりでいいよ。ひとりのほうが気楽だしね」
僕はそう語る彼と縁側に並んでお茶を飲んでいた。
「そうかい。まあ、僕もひとりが好きなほうではあるけれど、君のことは友達だと思ってるよ」
そう一言述べて僕が茶を啜れば、隣の友人が何故か急に、ごほっ、ごほっ、と噎せ始めていた。
【友達】
・友達
元カレと、友達に戻れるか。
いくら議論しても、答えが見つかるはずもない命題。
私たちの別れは、昼ドラちっくでもなければ、ロマンティックでもなかった。
気づいたらデートの約束をしなくなって、次第に連絡さえ取り合わなくなって。自然消滅は後味が悪いから、形式的に別れを切り出した。
喧嘩したわけでもない、浮気されたわけでもない。私の場合、友達に戻ったところで、何の問題もなさそうだ。
でも…でもさ。
やっぱり、ケジメってのが、あるじゃん?
二人で映画。
二人でカラオケ。
寒かったら手を繋ぐ。
アイスクリームは二人でシェアして。
私にはもう、どこまでが「友達」で、どこからが「恋人」なのか、わからない。
恋人として、大好きで。友達として、大好きだった。
だからこそ。
さよなら。
タップひとつ。
…ブロックしました。
友達は、自分の事を話さない。
勿論、話すこともあるが知らない事も多い。
自分も話さない事も少ないがある。
歳を重ねて言わない事が増えた。
友達の形が変わったのだろうか。
たまに会えても昔が良かったと思う。
あの頃よりは楽しくなくて。
困った時は助けてくれて。
辛い時はいつもそばにいてくれて。
泣きそうな時、夜中に電話かけると絶対出てくれる。
いつもいつもキミに救われてる。なんて表わせばいいのかな、うちらの関係。
「別に、友達だから助けて当然じゃん?」
「そっか」
友達だからか。友達だから、夜遅い時は家まで送ってくれるし、テストで赤点取って大泣きした時はぎゅってしてくれるし、毎日おやすみなさいのメールくれるのか。
友達って言うか、なんか、これって。
「……ん?」
「やっと気づいた?」
まばたき多めでじっと見ていたら彼が急に笑い出した。そして、なんてことなく私を抱きしめた。別に今は悲しくなんかないのに。こないだのテストはばっちりできたのに。
「じゃ、そろそろ友達からランク上げてもらおうかな」
そう言って。私の額にキスをした。友達はこーゆうことしない。だから彼は友達じゃない。
今から彼とは友達やめる。
その代わりに、
「俺を彼氏にしてよ」
先に言われちゃった。
改めまして。
今からこの人、私の彼氏。
I have many friend who is so kind for me.
But when I talk with them,I feel boredom and not fun.Why am I so feel?I want to feel "fun".My action often discrepancies my reason.
友達 (10.26)
モブAとの距離約5センチ。
吹きこぼれるイライラのままにLINEを開く。
『最近ちょっとAと距離近すぎじゃない?』
送ってから数秒、すんと鼻の奥から背筋が冷たくなる。言いすぎた。慌てて送信削除を試みて、既読の2文字に固まった。
『別にいいじゃん、好きなんだもん』
それが良くないのに。
きゅうと縮まる心を抱えて、続いて送られた言葉に唇を噛み締める。
『応援してよ。友達でしょ?』
ちがう。貴女はそうでも、私は。
その時は訪れる。
『Aくんと付き合うことになった‼︎』
飛び跳ねるスタンプを睨んで滲んだ視界を恨む。おめでとう、と返してから数刻。血の気のない指先を必死に動して送信する。
『私たち、友達だよね?』
私は女だから。決定的な言葉で、この気持ちをはぎ取ってもらえるように。
『違うよ』
息が止まる。
いやだ、あいたい、すてないで。
吐きそうなほど突き上げる感情に声にならない悲鳴をあげる。
『親友でしょ?』
そう、彼女がはにかんだのが見えて。堪えきれず嗚咽した私はスマホを捨てた。
『ずっと大好きだよ!』
私には友達がいる。中でも一番仲良しなのが実花だ。
といっても今は絶交しそうなくらいの喧嘩をしている。
喧嘩の内容は本当に些細なことなのだが、口も聞かない状態がかれこれ1週間以上も続いている。
私も実花も意地っ張りだから謝ろうとしている気持ちがあっても素直になれないのだ。
来週の日曜日は一緒にショッピングに行く予定でなかなか予定が合わないからすごく楽しみにしていた。
どうにかそれまでに仲直りしたいと思い、私は明日の朝実花の家に行ってあやまろうと考えていた。
「やだ、怖いわねぇ。」
リビングでテレビを見ていた母が呟いている。
「どうしたの?」
「空き巣よ、この近くなの。貴方も気をつけなさいね。」
「はーい」
次の日、私は実花の家に向かっていた。天気が良くて気持ちのいい朝だった。
ピンポーン
「実花いる?私だけど…この前はごめんね。仲直りしたいの」
『帰って』
ドア越しに実花の声が聞こえる。
「どうして?仲直りしてくれないの?』
『いいから帰って!』
「なんで?顔だけでも見せてよ。」
ガチャ
実花が顔だけを覗かせている。すごく怒っているみたいだ。
「顔は見たでしょ?いいから帰って」
私は何も言えなくなり自分の家へ踵を返した。
どうして?せっかくこっちから謝ったのに!
もう実花なんてしらない
その後、実花が亡くなった。
私が実花の家を訪ねた日、空き巣が実花の家に居座っていたらしい。
実花は逃げようとして玄関まで怪我をしている足を引きずりながら私と話していたらしい。
怒っているように見えたのも痛がっていたかららしいかもしれない。
実花は私を逃がそうとして声を上げていたのだろう。
私はなんとも言えない気持ちになった。
友達
救われる、1人で抱えきれない事を渡せる、そんな存在。
自分の一部みたいな、人は自分に頼って生きているけどそれと同じように頼りあって生きてく感じ。
好きな人ばっかりで、
ふと気づくのはいつもあなたの優しさ
「ずっと友達だよ」
小さい頃、何度も言った言葉。
でもずっと友達だった子はいない。
たった一人、べとべとさんを除いては。
べとべとさんは妖怪だ。
道を歩いていると、“べとっ、べとっ”と足音を響かせながら、後をつけてくるだけの姿の見えない妖怪である。
初めて遭遇した時、怖さのあまり泣いてしまったが、べとべとさんが戸惑ったように足音を響かせていてすぐに笑ってしまった。
それから仲良くなった。
付き合いも長いと、足音の響かせ方で色々分かる。
嬉しときはなんとなく足音が軽いし、犬の糞を踏んだときはとても足取りが重かった
大学に受かった時は飛び回って一緒に喜んでくれたし、自分が失恋した時は、隣をずっと歩いて励ましてくれた。
正直な話、相手の事をよく知っているとは言えない。
でも、それでいいのだ。
言葉を交わせなくても一緒にいる。
それが友達だから。
ある日、近所の家電量販店で冷やかしをしていたところ、突然足音が聞こえなくなる。
振り返って、べとべとさんの気配を探る。
ここまで付き合いが長いと足音が聞こえなくても、気配でわかる。
近くに歩み寄り、べとべとさんの隣に立つ。
そこはテレビコーナーで、テレビでは渋谷のハロウィン特集をやっていた
「あー、もうハロウィンの季節か」
あまり騒ぐのが好きでない私は、こういったイベントに参加したことはない。
しかし、べとべとさんは何やら興奮している様子だった。
行ってみたいのだろうか。
少し考える。
べとべとさん結構人見知りで、家まで入ってこないし、修学旅行旅行も旅行先までついてこなかった。
しかしこういった他の土地のイベントや旅行番組はよく見ている。
興味はあるのだろう。
遠くに行けない理由があるのか。
あるいは行きたいが、行き方がわからないのか。
考えても仕方がないので、思いきって口に出してみる。
「行ってみる?一緒に?」
そう言うと、べとべとさんは飛び跳ねるような足音を響かせる。
あまりの喜びように自分も嬉しくなる。
思えば友人との旅行は初めてだ。
イベントに興味のない自分でも、だんだん楽しみになってくる。
友達と一緒ならなんでも楽しむことができる。
友達とは良いものである。
ハロウィンまであと6日
❖Friend
友達それは難しいコトバ
毎日登下校する仲だから友達なのか
辛い時苦しい時寄り添って呉れるから友達なのか
好きな事を共有出来るから友達なのか
ボクにはよく分からない。
友達って何だろう
友情って何だろう
クラスメイトって何だろう
君にとっての友達とは。
僕にとっての友達とは。
終。
#004 「Friend 」
友達関係が長くなり
お互いに家庭を持って
幼かった私たちを取り巻く環境は変わった
田舎の長男の嫁になる者
不妊症に悩む者
セーラー服を着て毎日笑い転げていたあの頃
今の私たちを想像することは出来なかった
なんとなく未来は不透明ながらも明るくて
楽しくてと想像はしていたかもだが
悩んだり泣いたり
時に現実から逃げる手段を考え
眠れぬ夜を過ごしたり
こころから溢れた思いは必ずお互いに
伝えて癒してもらったり喝を
入れてもらったり
苦楽を共有し夫婦以上の長い時を
重ねてきた心友よ
どうか私より長く生きて
私に死化粧をして欲しい
まだ死なないけどね
友達はいない。
最近いないではなく、ずっといない。
そういえば、学生の頃はほぼ寄り合いにお邪魔したな。
新学期が始まり、あらかた友達やら仲良しグループが出来てくると
それにあぶれた者同士で何となく集まる寄り合い。
普段は全く交流もないが、学業には往々にしてある
グループで何かをするイベントが発生したときだけ結託するのだ。
今思うと、あの寄り合いはとても有難いものだったな。
友達でなくとも、いざとなるとお互いを思い歩調をあわせる点は
とてもいい関係だったと思う。
誰一人、名前も思い出せないけどね。
友達って
親友とまでは言えない
知り合いよりは近い
友達でも学校のときの
大人になってからの
会社の人は友達とは言わない
そもそも友達は自分のことを友達と思っているのか
親友とは思っていないだろう
知り合いくらいに思っているかも
確かめるのもどうだろう
他の誰かに友達と名乗っていいのだろうか
そう思っているうちに友達という存在は増え、また減っていく
彼等彼女たちもそんなふうに考えたりしているんだろうか
今ペットの猫に話しかけている
君は僕の友達なのかい?
「また、遊ぼうね」
『うん!また明日!』
これが最後の遊びだとは思いもよらなかった。
次の日。私は、いつものように学校に行った。
いつもと変わらない日々なのに、とても幸せ。
給食の時間。屋上で、あの子とお弁当を食べる。
『今日、なんだかいつもより楽しいんだ。』
「そう…なんだ。良かったね…」
『どうしたの?顔色悪いよ?』
「…ううん…心配しないで」
(どうしちゃったのかな…。)
放課後。あの子がいない。下駄箱集合のはずなのに、まだ来ないのかな…。
先生がいる。
『先生、教室にまだ生徒っていますか?』
「もう生徒はいないけど…どうしたの?」
『○○ちゃんを待っていて…。』
「あー。先帰っちゃったんじゃない?」
『えー!下駄箱集合って約束したのにー!』
「先生扉閉めるから、今日は帰りな。」
『はーい…。』
次の日。ムカムカしながら教室に入る。
いつも一番のあの子がいない。
(今日欠席だったら、許さないから。)
チャイムが鳴った。あの子は来なかった。
なんでなの…まさか…
給食の時間。
涙を流しながらご飯を食べる。
まだ絶対ってわけじゃないのに…。
急に具合が悪くなり、保健室に行った。
気づいたらもう下校時間。とぼとぼ歩いて家に帰る。
家に帰ると、お母さんが慌てながら来た。
『お母さん…どうしたの。』
「実は…。あなたの友達が…。
『言われなくても…分かってるよ…』
急いで外に出た。屋上まで走った。
『救急車が止まってる…。あの子はここから…。』
そう考えると、涙が止まらなかった。
どうして…?また一緒に遊ぶって約束したのに…。
いろんな言葉が頭をよぎった。
˹約束破った子は友達?˼
˹守ってあげられなくてごめんね…。˼
˹明日、そっちに行きますよ…。˼
『そうだ。明日、あの子と同じことを…。』
「ごめんね…。ごめんね…」
あの子の声だ。もうついに幻覚が…。
「辛くて耐えられなくて…あなたの事を考えずに…」
「また一緒に遊ぶって、約束したのに…。」
『泣かないで。私も明日そっちに行くから。』
「それはダメだよ…。」
『どうして?明日からまた一緒だよ。』
「私は…私は…!」
「あなたが幸せになるように…ここから…!」
『私が…幸せに?』
「私が死ねば…ここから落ちちゃえば…あなたが楽に、幸せに生きれると勘違いしてたから…!」
『ふざけないでよ。』
『一緒に遊ぶって言う約束、忘れたの?』
「忘れてなんか…。」
『忘れてなかったらそんなことするの?』
「あなたがいなくなっちゃうのが…辛くて…私より先に行っちゃうなんてこと考えたら…」
『何言ってるの。』
「あなた、病気でしょ?そして、余命が短いって…」
『余命なんて関係ないよ。残り少ないこの人生で、○○ちゃんを幸せにするつもりだったんだよ…!』
私は大声で叫んだ。ただの幻覚なのに…
「そんな…じゃあ、私は、大きな勘違いを…!」
『だから…今からそっちに行くんだよ…』
「ダメ…幸せに生きて。」
「残り少ないのだから…。」
「余命が過ぎたら、またここに来て。」
「それまで幸せに…生きてね…。」
『……消えた?』
『…ありがとう。○○ちゃん。』
「友達」
一人でも、楽しむことが出来る大人になりました
案外友達いなくても平気だったわ
友達
友達は人それぞれ
話して遊んだら友達
っていう人もいる
だけど
何回遊んでも友達じゃない
と思う人だっている
何でだろう
あの人が嫌いだから
喋らない?
そんな、
みんなで仲良くすれば
友達だよ、、
『……手、……離、しなよ……』
無言で私の手を掴む相手に、そう語りかけると苦しそうな声が返ってくる。
「離し、た、ら……落ちちゃう、じゃんッ」
声が震えている。きっと普段使わない力を使っているから、辛いだろうに。
私はさっき屋上から飛び降り、体のほとんどが宙に浮いている状態。下に足場はなく、コンクリートが見えるだけ。
飛び降りた瞬間、彼女が急いで私の手を掴んできて今に至る。
『でも、重いでしょ?それに長くもたないんじゃない?』
「だって……そしたら、松原さん、死んじゃう……」
消え入りそうな声で彼女は言う。
でも、彼女からウゥと唸り声が聞こえるし、上の方にあった腕も徐々に下に降りてきている。彼女の腕力も限界に近い。
『もうさ、そういうのいいから。私が消えても、何ともないでしょ?』
「そんな事ないよ……みんな悲しむよ?」
ホロホロと彼女の涙が落ちてくる。
そんな涙の訴えも私の心には、全く響かなかった。
『嘘、だね。みんな私の事嫌いだよ。消えて欲しいって思ってる。』
「思ってな」
『思ってるんだよ!!じゃなきゃこうなってない!!』
私は大声を上げた。
彼女は驚いた顔をして、口をギュッと結んで喋らなくなった。きっと思い当たる節があったのだろう。
それでも彼女は怯むことなく私の手を握る。
『もう、疲れたんだよ……いい加減、楽にさせて……』
自分の頬に涙が伝った。
泣き顔を見られなくて、目をつぶり下を向く。
でもきっと声で泣いたとバレたかもしれない。
これ以上泣かないように、歯を食いしばるが涙がポロポロと出続ける。
その間、彼女は無言だった。
すぐ後に先生が来て、私は救助された。
救助されてお互い緊張の糸が切れたからか、その場で倒れてしまった。
そのまま保健室に連れていかれたが、腕を掴んでいた痣以外特に目立った外傷はなかったらしい。
そして私は眠っている間、夢を見ていた。
放課後。
帰ってる途中に忘れ物に気づき、教室に走って戻った。
すると、教室の中から女子数人の声がする。
最近嫌がらせをされていたので、面倒事になっては嫌だと思い、帰ろうとした時だった。
「松原のやつさ〜、最近反応無くてつまんなくね。」
リーダー格であろう女子の声。
どうやら私の話をしているようだった。
咄嗟に歩き出そうとした足がピタリと止まる。
そして、ドアに聞き耳を立てた。
「わかる〜何しても無反応っていうか〜」
「でも学校は来るんだよね。さっさと不登校になればいいのに。」
ギャハハと笑う声が聞こえる。
そう。
反応したり、嫌になって学校を休んでしまえばあちらの思うツボなのだ。
先生に言っても取り合って貰えず、むしろ悪化する。
だったら、無反応で学校に来続けた方が、相手に効果的だと思っているから、どんな事をされてもスルーを貫き通してきた。
無言で聞き続けていると、リーダー格の女子が口を開いた。
「いっその事階段から突き落とすか。」
その言葉を聞いた瞬間、鳥肌が立った。
「え、怪我はさすがにまずいんじゃ……」
「上手くやれば、あいつが転んだ事にできるでしょ。」
ニタニタと笑う声と、同意するが少し不安そうにしている声が聞こえてくる。
私はその声を聴きながら冷や汗をかいていた。
今まで物を隠されたり陰口程度だったが、さすがに突き飛ばされて怪我まで負えばスルーはできない。
いや、怪我で済めばいいが……
最悪の結果を想像し、顔が青くなっていく。
私は相手に気づかれぬように、その場から離れた。
彼女たちが考えている事に対する恐怖。
何も出来ない自分に対しての悔しさ。
誰にも助けを求められない自分の弱さ。
色々なものを渦巻かせながら、家に帰る。
そこから私は考えた。
なぜ彼女がそこまで私を憎むのか。
考えても考えても分からなかった。
だが、そんな彼女の理不尽に対抗する方法を最悪の形で思いついた。
私が先に命を絶ってしまえば、怯える必要は無いと。
そう思うと気持ちは楽になった。
それが私が飛び降りをした、理由だった。
目が覚めると、白い天井。
オレンジ色の光が窓から差し込んでいる。もう夕方……放課後なのかもしれない。
見渡すとすぐそばに彼女がいた。
『……あんた……なんで。』
「私も保健室にずっと居たから。あの後教室に戻る気になれなくて。」
彼女はそう言いながら苦笑いをした。
まぁ、クラスメイトの飛び降りを食い止めたわけだから、それなりにメンタルにも来ただろう。
何を話したらいいのか分からず、無言でいると彼女が口を開いた。
「楽に……なれないよ。」
ボソリと言われたが、はっきりと聞こえた。
『なにが?』
「飛び降りても、楽にはなれなかったと思う。」
聞き返すと、今度は目を合わせて答えてきた。
そんな彼女の目は何かを宿したかのように綺麗で、まっすぐだった。
その瞳に吸い込まれそうになり、息を飲んだ。
「きっと、苦しんだんじゃないかな……」
彼女に声は切なそうにしぼんでいき、俯いてしまった。
苦しんだ?そんなの……。
「私は松原さんに苦しんでほしくな」
『そんなの!!わかってて行動したに決まってるじゃない!!』
かけている布団をぎゅっと握って声に力が入る。
『苦しいよ!!辛いよ!!でも今の方がよっぽど苦しい!!だったら、ここから居なくなった方が……楽だと思ったから飛び降りたの!!』
先程よりも大きな声を出して荒らげる。
私もそんなつもりないのに止まらなかった。
彼女はそんな私の言葉を静かに聞いていた。
『私なんて誰にも必要とされてないんだから!!居なくなったって誰も悲しまないんだから!!むしろ邪魔なんだもん!!』
彼女がピクリと動いた気がした。
私は構わず続ける。
『どうせ殺されるなら!!自分から!!飛び降りて死んだほうが』
「そんな悲しいこと言わないで……」
『悲しい……?随分と綺麗な言葉だね。そんな言葉で私の決意を踏みにじらないで!!中途半端に助けようとすんなよ!!!!』
ハァハァと、一気に言ったせいか息が上がる。
彼女はそのまま俯いた状態で、無言を貫いている。
沈黙の時間が流れる。
その沈黙を破ったのは彼女だった。
「あの人たちね。多分今、停学処分食らってると思う。」
『え?』
急に言われて素っ頓狂な声で反応してしまう。
あの人たちとはきっと話の流れ的に、私をいじめていたリーダー格の女子とその取り巻きだろう。
「今まで何も出来なくてごめん。でも、もう大丈夫だから。」
彼女が手を握る。
すごく温かくて、気持ちが良かった。
「証拠を集めたり、先生に抗議してたら遅くなっちゃった。決定的なもの出したから、きっと今は職員会議してると思う。担任も立場危ういんじゃないかな。」
『ちょ、ちょっと待って。』
今までと打って変わってスラスラ話す彼女を制する。
『なんで……そこまで……』
ただの一クラスメイト。
彼女は学級委員でもなんでもない。
それなのに、ここまでする理由が分からなかった。
彼女はニコリと答える。
「初めて声掛けてくれたのが、松原さんだったから。ほら、ハンカチ落としたよって。」
『え?』
たったそれだけの事で?
彼女は途切れ途切れに続ける。
「あー……うん、まぁ……松原さんと仲良くしたかったから……かな?」
照れくさそうにはにかんだ彼女はとても可愛らしかった。
今まで張りつめていたものが、一気に無くなったようなそんな感覚だった。
『ふっ、なによそれ。』
彼女の言葉がおかしかったのか、笑みがこぼれた。
でも、悪い気はしなかった。
その様子を見て、彼女も一緒に笑っているように見えた。
『あんた、名前は?』
「あ、私はね、」
ゆっくりと、私の世界が動き出した。
#友達
全くの初対面だった。
たまたま同じ学校に入って、たまたま同じ学年で、たまたま同じクラスで、たまたま隣に並んだだけ。
はじめて交わした挨拶は「あっ、おねがいします…」
話していくうちに趣味が合うことがわかった。
話していくうちにパズルのピースがカチリと嵌るような感覚があった。
「ねぇ、友達になりませんか?」
一言一句違わずに、同時に言った事に、私も相手も驚いて、顔を見合わせてクスクスと声を抑えて笑ったっけ。
「よく覚えてるねぇ、私は忘れちゃったわ」
隣でお酒をあおる親友はニヤニヤしつつこちらを見る。
「でも、あんたは私の一生の友達よ、おばあちゃんになっても遊びましょ」
出会ってから10年以上たっても変わらないこの友情は、きっと墓に入っても、次の人生でも変わらない。