冬のはじまり』の作文集

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冬のはじまり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/30/2024, 4:11:51 AM

冬のはじまり

冬は好きだ。
耳が、頬が冷たい冬の風に触られて
キリキリと冷たくなっていく。
そんな冬が好きだ。

11/30/2024, 4:09:39 AM

冬のはじまり


少し肌寒くなる頃、
街で金木犀の香りがすると
私は冬だなと感じる。

少しの間しか花を咲かせず、
強く力強い香りを発する。

そしてさらに寒くなり、
金木犀は花を散らす。

儚い花の命が、
私の大好きな冬の訪れを教えてくれる。

11/30/2024, 4:09:28 AM

冬のはじまり

ストーブに火を付けて、上にミルクパンをのせる
もちろん中には牛乳を入れて、温める

生クリームととき卵、それに砂糖を入れてすこし温めてから
ナツメグを数量入れる

そうすると冬の寒さを温めるエッグノッグの完成だ

シナモンを最後にかけて、お好みでブランデーも入れる

子どもにも大人にも人気な北米の飲み物
僕は寒くなってきた頃に甘い香りを思い出す

11/30/2024, 4:05:23 AM

冬のはじまり

 紫煙が空気に溶け込んだ時、それが冬だと、冷たい空気のせいか、甘い香りに変わる。その一瞬が好きだった。
 普段は、近くで煙草を吸われると、彼氏、友人、他人に関わらずさり気なく逃げるが、それだけは別だった。すれ違う赤の他人でさえ、煙草を吸っていると、通り過ぎた後、少しの間を置いて(ここがポイント)すうっと息を吸い込む。
 その香りが甘くなったら、冬のはじまりを実感する。

 今は、路上喫煙が禁止のところも多く、紫煙の甘さを感じる機会もずいぶん減ったけどね。

11/30/2024, 4:04:46 AM

「冬のはじまり」

※12年後の前のやりとり必要
真麻子と清の電話のやりとり
トシとの仲良くなった経緯

トシが運ばれて1日おいてから
トシが福岡に旅立つ。

11/30/2024, 4:04:15 AM

「11月17日が『冬になったら』、14日が『秋風』で先月10月18日が『秋晴れ』。
去年と同じお題なら、12月も季節の、特に冬のネタはバチクソ渋滞するんだわ……」
まぁ、そもそもこの「書く習慣」、季節ネタと雨ネタと、それから年中行事ネタに空ネタにエモネタでほぼ過半数と思われるから、ぶっちゃけお題の重複なんざ日常茶飯事なのよな。
某所在住物書きは完全にコタツムリならぬ毛布ツムリ。おお、ぬくもりの中で食うポテチの美味さよ。

「去年は『ぶっちゃけ最近「冬のはじまりが迷子」』ってハナシを書いた気がする」
物書きは言う。
「今年は冬っつーか、秋も迷子だったよな……?」
一応、北日本では今雪が降っているらしい。

――――――

大きな樹、美しい泉、高い山にありがちなハナシ。
すなわち「何がそこに居るか」、「何故そこに在るか」を辿る、不思議な不思議な物語。
花咲き風吹き渡る雪国に、樹齢数百年とも千年とも言われるイチョウの大樹があり、
まさしくお題のとおり、「冬のはじまり」の頃、他のイチョウから遅れに遅れて見頃を迎える。
大樹の下には小さな小さな祠があり、
それは「イチョウギツネの祠」と言われている。

『他のイチョウより遅れて、冬のはじまりにようやく色づくのは、きっと理由があるに違いない』
『狐だ。きっと狐がイチョウに化けているのだ』

『昔々、悪い狐が妖術で、この場所に黒い穴をこさえて、そこから魑魅魍魎を招き入れ、
悪行の限りを尽くしたものの、その悪行のせいで狐の母親が病に弱り、倒れてしまった。
ようやく己の所業を悔いて、泣いて、反省したイタズラ狐は、イチョウの大樹に身を変じて、自分でこさえた黒い穴を塞いだのだ』
『寒くて寒くて、変化が解けそうになるから、冬のはじまりに葉が狐色になるに違いない』
イタズラギツネの大イチョウは、数百年、上記のおとぎ話を現地住民と共有してきた。

で、ここからがようやく本編。
「イタズラギツネの大イチョウ」のおとぎ話をガチで本気にしている成人男性が約2名。
別の「黒い穴」を実際に、業務として管理・運用している、「世界線管理局」なる所属の2名である。

――「実際に来て見ると、デカいな」
冬のはじまり、イタズラギツネの大イチョウが見頃の早朝。野郎2人がポツンと、感嘆のため息を真っ白に吐き出して、黄色の氾濫を見上げている。
「これが、『イタズラギツネ』か」
この下に「黒穴」が、実際にあるとしたら、相当な規模だが。どうだろうな。
男その1はポツリ呟くと、「この世界」に売っていない銘柄のタバコで口元を隠し、深く吸って、灰もろとも携帯灰皿に吸い殻を押し付ける。

双方、「ここ」ではないどこかの住人であった。

「現地の方々には、丁度良い観光名所ですね」
男その2は非喫煙者らしい。流れてくる煙を片手で軽く払いながら、手元の小さなタブレットを見る。
「異なる世界同士を繋ぐ『黒穴』は、『この世界』の人類からすれば、非科学的なフィクション。
彼等が『それ』を発見すれば、大騒動の大混乱だ」

へっッ、くしゅん!! 雪国の寒さに、その2の方が小さなくしゃみをひとつ。
現地の気温は一桁前半で、明るい晴天に白い雪。
なぜこんな悪天候に、わざわざ彼等は雪国へ赴いたか。「冬のはじまり」のお題のせいである。
しゃーない。

ピリリリリ、ピリリリリ!――途端、着信音。

『やほー、バチクソ久しぶりぃ。俺だよん』
男その1、喫煙者の端末に音声通話。
『経理部が、「何回呼び出しても繋がらない」って。「すぐ帰ってきてほしい」だってさ』
「スフィンクス」が早速「ドSふぃんくす」してるらしいから、早めに行ってあげてね〜。
ひとしきり伝えることだけ伝えて途切れたそれは、野郎2名の昔の同僚。過去の同期。

「で、なんですって?」
非喫煙者が喫煙者に訪ねた。
「先代の『ハシボソガラス』からだ」
喫煙者が口にしたのは、通話相手が昔名乗っていた、いわゆるビジネスネーム。
「経理部でスパイが見つかったらしい。先月から忍び込んで、俺達の資金と情報を持ち出していたと」

冬のはじまり早々から、随分とまた、面倒なハナシが続く。 喫煙者は完全に携帯灰皿をしまった。
「行こう」
ぽつり。喫煙者が非喫煙者に呼びかけた。
「戻るぞ。俺達の『世界線管理局』に」

冬の風が吹き、イタズラギツネのイチョウの葉を巻き上げ、いつの間にか2人の姿が消える。
その後の展開については次回投稿分の展開となるが、特に劇的な物語となるワケでもないので、ぶっちゃけ、気にしてはいけない。

11/30/2024, 4:01:45 AM

冴えた夜空には星が輝いている。
唐突に風が吹く。
冷たく強い風だ。

風が吹いていく方角には、昴が冴え冴えと光っている。
星の入り東風だな。
呟いて舵を切る。
星を目指して吹く北東風は、身を切るような鋭い冷たさだ。

波が高くなって、船腹で弾ける。
波を乗り越えるたびに、がくん、と足元が動く。

星の入り東風が吹くと冬がやって来る。
昔、親父から教わった。

親父は島を渡り歩きながら、船とともに海上で暮らし、魚を取って生活を立てる海猫族の一人だった。
こんがりと日に焼けた体で、豪快に笑い、陸で住む人は怒っているのではないかと怯えるほどのデカい声で、いつも話した。

親父は厳ついが、気のいい男だった。
海の只中のポツンと残る離島に捨てられた、孤児の俺を拾ったのも、親父だ。

高い波を乗り越えた。
船が大きく揺れた。

親父にはカミさんも子どももいなかった。
どちらも、身体が弱く、ある秋の日に、冷たい潮風に当たりすぎたのか、風邪を拗らせて…ある日、甲板に出てきたところを吹きつけた突風に攫われて、亡くなったのだという。
「冬が近くなるとな、強い北東風が吹くことがある。昴に向けて吹く強い風だ。星の入り東風といってな、冬のはじまりを告げる風だ。かなり強いから、秋の終わりから冬の初めには気をつけなきゃならん」
秋の日、船員のおじさんに船の操縦を習う俺の背中に、親父はそう教えてくれた。

親父のカミさんと子どもを攫ったのは、その星の入り東風だ。

親父は船の全て、海での生活の術を俺に教えきった後、俺に船を与えてくれた。
「これでお前も一人前だ。海へ出て、好きに暮らすといいさ」

その親父が死んだのは、去年の晩秋、今頃のことだった。
風を見誤って台風に巻き込まれて、船は全滅だったという。

これから毎年、秋になって冬のはじまりを告げる星の入り東風が吹く度に、俺はきっと親父を思い出す。
強く気高い海の男であった親父を。
あんなに広い背中で、でも海風には一生敵わなかった親父を。

今日は風が強い。
冷たく鋭い北風が、ごうと吹いている。
冬のはじまりだ。

強い北風に吹きさらされているというのに、昴は、強く冴え冴えと輝いていた。

11/30/2024, 3:58:59 AM

空が白んで風が冷たい。
体温が奪われていくような感覚でとうとう本格的な冬が来たのだと知る。
顎が震えてガチガチと小さく音が出る。
「大丈夫か?」
わざとらしく君が顔を覗き込む。
「大丈夫」
ぶっきらぼうに答えた。目は合わせない。
「食堂行くか?マジで急に寒くなったよな。」
大学の食堂もどこも人でいっぱいだろう。できるだけ人がいないとこに行きたかった。
「大丈夫」
ビル風が私たちの間を通り抜けていく。
木に絡まったイルミネーションが目の端で煌めく。
「…なあ、どうしたんだ?急に話がしたいって言ってきたのはそっちだろ。」
沈黙に耐え切れず彼が痺れを切らした。
頭に血が上る。風が頑張って冷まそうとしてくる。
「この前の週末何してたの?」
「何って、地元の友達が来るから家で飲んでたよ。だから会えないって言ったよな。」
スマホの写真を見せる。
画面の中でサークルの後輩と彼が顔を寄せ合っている。
後輩がわざわざ誤送信してきた写真だ。
「なんで、」
言い訳の言葉が出ない彼に血が引いていく。顔に当たる風の冷たさを感じなくなった。
「別れよう。」
それだけ言うと私はマフラーに顔を埋めた。

11/30/2024, 3:49:25 AM

寒いねと言い合える彼女がいればいいのにと思うけど、寒いねと言い合える友人すらいるかあやしい。
街はカップルばっかりだし、周りは忘年会を開いてる。

夏とは違って、冬はぼっちに厳しい季節だなと思う。

11/30/2024, 3:43:56 AM

冬が始まる
君はまた泣く
「お別れはつらい」って
春が近づく
君はまだ泣く
「お別れは嫌い」って

「冬のはじまり」

11/30/2024, 3:35:59 AM

真っ白な鍵盤が氷のように冷え
触れる前にストーブで暖を取るわたし

普段は手を繋ぎたがらないのに
暖まったわたしの手で暖を取るあなた

「冬のはじまり」

11/30/2024, 3:28:30 AM

冬のはじまりは寒いもの。寒さから始まると言っても過言では無い。
 外出時にはコートを羽織る。黒いコートを羽織って。
 枯れ木の道を歩いて行く。落ち葉の道を。白い吐息を吐きながら。
 風が吹く。冷たい風が肌にあたる。身震いがする。部屋が、家が恋しく感じられる。
 暖かい部屋の温もり。暖房が効いてくる時間をどう過ごすか。
 毛布に包まるのもいい。暖かい温もりに包まれて。
 今年の冬も寒くなるだろう。日が当たるとしても、風邪が吹いているから。
 日向が恋しくなる季節。過ぎ去った夏の暑さを恋しく思うとしても。
 冬が始まる。数ヶ月のも及ぶ寒い時が。生命が眠りに着く時が。
 冬の終わりは暖かい春。その時はまだ訪れない。冬はまだ始まったに過ぎないのだから。
 時は行き、時は逃げ、時は去る。その時にならなければ春は訪れない。
 来年の春は暖かいのだろうか。その時になるまで誰も分からない。
 今年の冬も寒いのだろう。冷たい風が吹くのだろう。温もりが恋しくなるのだろう。
 人肌の温もりが。暖房の温もりが。それぞれ異なるとしても。寒さがあるがゆえに、温もりがより恋しくなるのだーー。

 ーー世界は巡る。季節も巡る。時も巡る。その循環は誰であっても逆らうことはできない。境界は定められている。その境界を逆転させることは人にはできないのだーー。

11/30/2024, 3:19:13 AM

氷の刃みたいに風が全身に突き刺さる。

涼しくなってきたばかりだ、と思って油断していた。こんなに寒いだなんて。もっとちゃんと厚着すべきだったなぁなんて後悔するけれどもう手遅れだ。

適度に涼しく心地良かった秋は一瞬で、まるで最初から存在して無かったかのように跡形もなく過ぎ去ってしまった。

だけど。
冬は温もりを、貴方の暖かさをより一層感じられるから嫌いじゃない。

吹きゆく風に背中を押されながら、少し足早に歩いていった。

『冬の始まり』

11/30/2024, 3:18:44 AM

今日から冬用の厚めのダウンを羽織って通勤。街中でもぽつぽつダウンを着ている人を見かける。だがいかにも冬って感じの白いダウンを着ているのはわたしくらいか。そう思って歩いていると、遠くから白い羽織を着た男性が歩いてきた。ついに仲間が!と思いよく見たら、透け感のあるカーディガンだった。今朝の気温6度。寒くないのかな。明日から12月。寒がりなわたしには苦手な冬がやってくる。

11/30/2024, 3:16:20 AM

#冬のはじまり


俺の田舎には、小さい子どもにしか見えない

ヤツがいる。

俺が子供の時、一度だけ見たことがある。

それは、真っ白な雪を固めて作ったような、

本当に真っ白な、  〖へび〗

こんな時期に、へびなんているはずないのに、

あまりの白さに、大声で父を呼んだ。

『お父さん!!お父さん!!真っ白な、へび』

『へび?どこだ!!』

『ほら、あそこ!!』

『······何もいないぞ??』

その次の夕方から、雪が降り始めた。

そして、今年

『パパ!!へび』

息子が俺を呼ぶ。あの日の俺と同じように

今日も夕方から雪が降る。

11/30/2024, 3:14:50 AM

俺は疑問に思う

なぜ冬になると失恋系の映画やドラマがあるのか

皆さんはそう思う事はないだろうか

11/30/2024, 3:06:11 AM

ある午後の帰り道、

右隣にいる君のマフラーを巻いて角を曲がると、

風が吹いて、隣の君の前髪が割れた。

隣の君はとっさに下を向く。

思ったとおり君は寒いと言った。

僕は平気なフリをした。でも、

やっぱり寒い。

君の隣でマフラーに顔をうずめてみた僕は、

とても冬らしい格好だっただろう。

11/30/2024, 2:56:39 AM

「冬のはじまり」

                               最近の天候は、変な感じで困る

                              今はいきなり寒くなり、明日から

                                    12月に

                               秋を越えて、冬がはじまった

                                 これから寒くなる

                             師走だから、また、疲れる。12月は

11/30/2024, 2:53:27 AM

冬のはじまり。お風呂、カイロ、手袋、マフラー、鍋、肉まん、あたたかいものが恋しくなる。教室のエアコンが暖房になり、更衣室の日なたがあたたかいと感じるようになる。冬のときは夏に戻りたいって思うけど、夏のときは冬に戻りたいって思う。夏の自然は輝かしいけれど、冬の自然は寂しく、素朴だ。夏の月は綺麗だけれども、冬の月は夏よりも澄んでいて、より綺麗に見える。

11/30/2024, 2:40:38 AM

あの子は親友だ。
 園児の頃からずっと一緒で、家も近くて、親同士も仲が良くて。何をするにも、あの子はいつも隣にいる。
 直子に謝ってよ。
 教室に静かに響く、あの子の怒号。私のペンケースをわざと落として、嘲笑している女子たちに矛先を向けている。
 私はあの子が大好き。
 いつどんなときも、味方でいてくれる。高校生になった今でも、こうして虐めから庇ってくれる。
 でも、いつも貰ってばかりで、何となく罪悪感に苛まれているのは、嘘じゃない。
 私もあの子に与えられているだろうか。私が貰っている温かさを、ちゃんと。
 そういえば、もうすぐあの子の誕生日だ。
 自室の窓から色づいた葉を見やって、そんなことを思い出す。秋も深まり、だんだんと空気が凍てついてくるこの季節。今年はあの子に何をプレゼントしようか。
 色々と考えながら、夕飯の席に着く。長い出張から帰ってきたお父さんの姿を久々に見た。
 学校は楽しいか。
 優しいお父さんは、まるで私が小さな子どものように、そんな問いかけをしてくる。なんだかやるせない気持ちを抱えながら、曖昧に返事を呟いた。
 学校なんて、楽しいと思えたことがあっただろうか。
 昔から集団の中にいるのが少し苦手で、自分の気持ちも素直に伝えられないで、気がつけば常に教室の端っこでひとり、ぽつんと空気と化していた。
 あの子は、そんな私とは正反対の子だった。いつも周りに人がいて、正義感が強くて、誰かの憧れの的だった。
 こんなに違うのに、あの子はそんなこと気にもせず、私の親友として自然に接してくれた。私みたいに卑屈になったりしないで、素直な愛情を与えてくれた。
 あの子は東京の大学に行きたいらしい。あと数ヶ月でお別れになってしまう。
 これまでの愛情を返すときだ。そして、これからも私と親友でいてほしいことを、ちゃんと伝えなきゃ。
 ここ数年でいちばんの熱意を抱えて、ご飯をかきこんだ。

 おはよう。
 学校でこうして挨拶を気兼ねなく交わせるのは、担任の先生とあの子だけ。
 あの子は今日もキラキラした笑顔で、私のもとへ駆け寄ってきてくれる。
 私と違って、あの子に声をかける生徒は大勢いるけれど。あの子から向かってきてくれるのは、いつも私だけ。
 そんなことで優越感を覚える自分に、寒気がする。
 嫌な気持ちを押し隠して、私も笑顔を浮かべながら、ふたりで昇降口へと向かう。
 いつも通り、自分の下足箱に手をかけた。
 開けた途端、何か黒い小さなものが飛び出してきて、思わず悲鳴を上げて振り払う。
 どうしたの、とあの子が心配して振り向いた。
 私とあの子の目に映ったのは、どう考えても長い時間捨てられてあったであろう、どす黒い上履き。周囲を飛び回る何かの虫が、汚らしさをより一層際立たせている。
 こんなの、私の上履きじゃない。昨日まではちゃんと、綺麗な色をしていたもの。
 許せない、とあの子の低めの声が耳元で囁いた。絶対あいつらだ、なんてことしてくれるの。怒ってくれる親友に、平気だよと常套句を述べる。
 嘘だ、全然平気なんかじゃない。こんな上履き履けないし、そもそも自分の上履きがどこにいったのかもわからないし。どうして彼女らがこんなことをするのか、理由だって見当もつかない。
 私が何をしたって言うの。
 何度目かわからない、虚しいだけの心の叫び。
 直接言ってやれたら、どれだけ良いだろう。残念だけど、私にそんな度胸は微塵も残っていないのだ。

 あの子は運動部の助っ人だと言うので、終わるまで正門で待つことになった。
 教室でわかれて、昇降口へと向かう。今朝あんなことがあったせいで、気持ちが落ち着かない。
 客人用のスリッパを履いた私を、彼女らはいつも以上に面白おかしく嗤っていた。あの子も怒ってくれたけれど、何だか今日はその光景も虚しいだけだった。
 でも、大事なことは忘れちゃいけない。
 今日はあの子の誕生日。カバンのポケットに忍ばせた、一生懸命綴った手紙に触れる。今日、帰り道にちゃんと渡すんだ。おめでとうの言葉と一緒に。
 ぐるぐると思考の渦に巻かれていたせいで、誰かと勢いよくぶつかってしまった。
 慌てて謝ると、クラスメイトの女の子だった。
 急いでいるのか、こちらこそと謝罪を口にするなり、風のように走り去っていく。私も踵を返して外へ出ようとしたとき、裾を引っ張られた。
 息を切らしながら、やっぱり待って、とさっきの子が引き止める。困惑したが、とりあえず周囲の邪魔にならないように、彼女を連れて端へと移動する。
 どうしたのかと問えば、彼女は必死に息を整えてから、私を気まずそうに見て言った。
「椎名さんって、本城さんと仲良いよね」
 椎名は私、本城はあの子の名字だ。私は頷く。
 彼女はより一層、眉を八の字に下げるほど、どこか申し訳なさそうな表情になる。
「あのね……こんなこと、言ってもいいのかわからないんだけど。でも、私……見ちゃって」
 何を見たんだろう。何を言われるんだろう。
 彼女の空気感が、だんだんと疑念を募らせる。耳を塞ぎたくなってくる。私が望まないことを言うのではないか。あの子が望まないことを言うのではないか。
 それでも、どうしても気になってしまって。口を噤む彼女に、何を見たのかと催促した。
「……朝練の、時間に。本城さんがね、椎名さんの上履きを……屑箱に捨てるとこ」
 目の前が、真っ暗になった。

「わ、初雪だよ! ねぇ直子、雪積もるかな?」
 白くふわふわと舞い踊る氷の結晶に、あの子は幼い子どものようにはしゃいだ声をあげた。
 その様子を、私はどんな顔をして見ているんだろう。
「直子、聞いてる? どうしたの、元気ないよ」
 私の元気がないのは、いつものことじゃない。
 どうしてそんな心配そうな顔をするの。どうしてそんな優しい言葉をかけるの。
 いつものことなのに、何も信じられない。
 小さく、強く、あの子の裾を引く。
 どうしたの、とあの子はふたたび私に問う。
「誕生日、おめでとう」
 その言葉を、私はどんな顔をして伝えたんだろう。
 あの子は、まるで幼い子どものように嬉しそうな顔をした。

 何が親友か。
 何が味方か。
 そんなものは、時の流れが魅せた幻でしかない。
 あの子はいつも、どんな気持ちで私に優しくしていたのだろう。
 今となっては、もう考えたくもないことだ。
 ビリ、ビリ、とすべてが破れる音がする。
 何もかもが、散り散りになって舞い踊る。それは、きっと冬のはじまりを告げる、初雪と変わらない。
「ばいばい、あの子。東京でお幸せにね」
 破り捨てられた、私の精一杯の愛情。

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