「11月17日が『冬になったら』、14日が『秋風』で先月10月18日が『秋晴れ』。
去年と同じお題なら、12月も季節の、特に冬のネタはバチクソ渋滞するんだわ……」
まぁ、そもそもこの「書く習慣」、季節ネタと雨ネタと、それから年中行事ネタに空ネタにエモネタでほぼ過半数と思われるから、ぶっちゃけお題の重複なんざ日常茶飯事なのよな。
某所在住物書きは完全にコタツムリならぬ毛布ツムリ。おお、ぬくもりの中で食うポテチの美味さよ。
「去年は『ぶっちゃけ最近「冬のはじまりが迷子」』ってハナシを書いた気がする」
物書きは言う。
「今年は冬っつーか、秋も迷子だったよな……?」
一応、北日本では今雪が降っているらしい。
――――――
大きな樹、美しい泉、高い山にありがちなハナシ。
すなわち「何がそこに居るか」、「何故そこに在るか」を辿る、不思議な不思議な物語。
花咲き風吹き渡る雪国に、樹齢数百年とも千年とも言われるイチョウの大樹があり、
まさしくお題のとおり、「冬のはじまり」の頃、他のイチョウから遅れに遅れて見頃を迎える。
大樹の下には小さな小さな祠があり、
それは「イチョウギツネの祠」と言われている。
『他のイチョウより遅れて、冬のはじまりにようやく色づくのは、きっと理由があるに違いない』
『狐だ。きっと狐がイチョウに化けているのだ』
『昔々、悪い狐が妖術で、この場所に黒い穴をこさえて、そこから魑魅魍魎を招き入れ、
悪行の限りを尽くしたものの、その悪行のせいで狐の母親が病に弱り、倒れてしまった。
ようやく己の所業を悔いて、泣いて、反省したイタズラ狐は、イチョウの大樹に身を変じて、自分でこさえた黒い穴を塞いだのだ』
『寒くて寒くて、変化が解けそうになるから、冬のはじまりに葉が狐色になるに違いない』
イタズラギツネの大イチョウは、数百年、上記のおとぎ話を現地住民と共有してきた。
で、ここからがようやく本編。
「イタズラギツネの大イチョウ」のおとぎ話をガチで本気にしている成人男性が約2名。
別の「黒い穴」を実際に、業務として管理・運用している、「世界線管理局」なる所属の2名である。
――「実際に来て見ると、デカいな」
冬のはじまり、イタズラギツネの大イチョウが見頃の早朝。野郎2人がポツンと、感嘆のため息を真っ白に吐き出して、黄色の氾濫を見上げている。
「これが、『イタズラギツネ』か」
この下に「黒穴」が、実際にあるとしたら、相当な規模だが。どうだろうな。
男その1はポツリ呟くと、「この世界」に売っていない銘柄のタバコで口元を隠し、深く吸って、灰もろとも携帯灰皿に吸い殻を押し付ける。
双方、「ここ」ではないどこかの住人であった。
「現地の方々には、丁度良い観光名所ですね」
男その2は非喫煙者らしい。流れてくる煙を片手で軽く払いながら、手元の小さなタブレットを見る。
「異なる世界同士を繋ぐ『黒穴』は、『この世界』の人類からすれば、非科学的なフィクション。
彼等が『それ』を発見すれば、大騒動の大混乱だ」
へっッ、くしゅん!! 雪国の寒さに、その2の方が小さなくしゃみをひとつ。
現地の気温は一桁前半で、明るい晴天に白い雪。
なぜこんな悪天候に、わざわざ彼等は雪国へ赴いたか。「冬のはじまり」のお題のせいである。
しゃーない。
ピリリリリ、ピリリリリ!――途端、着信音。
『やほー、バチクソ久しぶりぃ。俺だよん』
男その1、喫煙者の端末に音声通話。
『経理部が、「何回呼び出しても繋がらない」って。「すぐ帰ってきてほしい」だってさ』
「スフィンクス」が早速「ドSふぃんくす」してるらしいから、早めに行ってあげてね〜。
ひとしきり伝えることだけ伝えて途切れたそれは、野郎2名の昔の同僚。過去の同期。
「で、なんですって?」
非喫煙者が喫煙者に訪ねた。
「先代の『ハシボソガラス』からだ」
喫煙者が口にしたのは、通話相手が昔名乗っていた、いわゆるビジネスネーム。
「経理部でスパイが見つかったらしい。先月から忍び込んで、俺達の資金と情報を持ち出していたと」
冬のはじまり早々から、随分とまた、面倒なハナシが続く。 喫煙者は完全に携帯灰皿をしまった。
「行こう」
ぽつり。喫煙者が非喫煙者に呼びかけた。
「戻るぞ。俺達の『世界線管理局』に」
冬の風が吹き、イタズラギツネのイチョウの葉を巻き上げ、いつの間にか2人の姿が消える。
その後の展開については次回投稿分の展開となるが、特に劇的な物語となるワケでもないので、ぶっちゃけ、気にしてはいけない。
11/30/2024, 4:04:15 AM